神のふたつの貌 (文春文庫 ぬ 1-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167682019

感想・レビュー・書評

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  • サスペンスやミステリーには殺人事件がつきもの
    フィクションであるサスペンスでは殺人が一つのエピソードでしかない作品と殺人事件そのものが主体になる作品がある
    両者の間では死の位置づけが違う
    重量が違う
    この作品にとって人の死とはとても重い位置づけの作品
    神の存在と沈黙、生、死を題材とし、それが家族という集合体にもたらす影響
    間違った解釈で間違った行動を起こしてしまう恐ろしくも悲しい出来事

    評価は分かれそう・・・・・

    三部構成になる連作短編の形から著者お得意の叙述トリックを駆使して読者を煙に巻く
    出だしから12歳の少年の呼び名は苗字のみ
    『早乙女』
    この表現の仕方で意味を理解することが出来る人は多いかもしれない・・・
    しかし、トリックを楽しむだけの作品ではない
    題材とされたのは宗教と人間
    考えさせられる、考えることが多くある
    牧師一家三世代の狂気と悲劇の物語

    http://momokeita.blog.fc2.com/blog-entry-263.htmlより

  • 大掛かりな見事なトリックに驚いた。神に使える神父一家の苦悩と信者達の迷い、神は存在するのか、といった非常に難しい問題をベースに展開されるミステリー。事件が起きる度に疑いが増して行くのだが…

    貫井徳郎の『慟哭』『修羅の終わり』などの傑作とはひと味違うミステリー。それにしても、貫井徳郎は変幻自在という感じだな。

  • 神の沈黙について想いを馳せる牧師の息子。神の声を求め神に近づこうと進む道は殺人者への道だった。
    というような帯の文句だった気がしたんだけど、期待していたものとはちょっと違った。なんていうか、もっと狂ったようなのを想像していたんだけど。恐らく主人公の淡々とした語り口で終始進むせいかな。
    しかしまぁテーマが重いやね。キリスト教に明るければもっと自分なりに考察するという楽しみ方もあるんだろうなぁ。学校で習った程度じゃどうにも。
    ちなみに、貫井さんお得意のトリック、分かっちゃって残念。

  • ちょっと長い。完全に騙された。途中でやめなくてよかった。もっと短めでもいいかな。

  • 神についての話は難しい。
    遠藤周作の「沈黙」を読んでいるいるような、又外国文学の翻訳を読んでいるような、自分とはちょっと距離があるような感覚。
    第三部に入ってから、第二部がああ、そうだったんだ、とわかった。

  • かなり重たい感じのミステリでした~。

    宗教観バリバリな雰囲気の小説で、「神とはなんぞや?」「神は果たして誰にでも平等に幸せを与えるのか?」「誰でも神に救ってもらえるのか」などのテーマを満載に話が進んでいくのですよ~。
    信者なのに、牧師なのに、牧師の息子なのに。。。神について疑問が沸くわけです~。

    で、神の声を聞こうと、神に近づこうと、神に近づけさせようと『死』を選ぶという。なんとも重い内容の本でした。

    なんかね~、こう書かれちゃうと、「神っていないんじゃないか?」って思っちゃうね。
    私は別にクリスチャンじゃないから、別に苦悩なんてしないんだけど、神を信仰しすぎて不信になってしまう気持ちもわからないでもない。
    アダムとイブが。。。って人間の始まりを語るけど、人間っていうのは猿から進化したもので、その前からオスとメスがあったんではないか?って、思ってしまう。

    「神はみんなに平等に。。」って言うけど、『闇の子供たち』なんて読んでると、親に売られて性の奴隷にされ、病気になったらゴミ山にすてられるあの世界の子供には神もなければ未来も夢も将来もない。そんな子にでも神は平等に救いの手を差し伸べることできないじゃない?って思っちゃう。
    それでもね、やっぱり「神頼み」したいときもあるのよね。
    都合がいいんだけど、そんな都合よく考えられない人々のお話でした。

    最後のほうになってミステリ感出てきて、どんでん返しもあり読み応えあったけど、それがなかったら絶対に手にしなかった本かも。。。

  • 神様に近づきたい一心で、教えの捉え方が変な方向にいってしまう。宗教の考え方や信仰心ってこわいモノだなと思った。

  • ホラーとはまた違った怖さ。
    なんというか、相変わらずのミスリーディングには脱帽。
    しかし、題材があまりに重く、昇華し行く神への崇拝はやはり理解に苦しんだ。

  • 神の福音が聞こえぬと苦悩する神父。
    神は果たして万人に対し平等なのか。
    救いとは何か。

    『裡』という漢字がやたら使われている作品。

  • 牧師の息子が蛙を惨殺しながら生と死について思いをめぐらすという、なかなか興味深い始まり。貫井氏らしく文章も読みやすく、読んでいる最中はそれなりに楽しめた。

    だが、本の仕掛け自体は3章の最初で薄々気づいてしまった。1章と3章の早乙女の初出がわざわざ「早乙女輝」となっていたことが結構大きなヒントになってしまっていたと思う。また、彼ら牧師父子がなぜ、暴力や死に神の救いを見出したのかも、ラストのオチも、私にはよくわからなかった。貫井氏が新興宗教を描いた『慟哭』や『夜想』は面白かったが、キリスト教となると勝手が違うのか。また本書を読まれたキリスト教に詳しい人のレビューなどからは、作者の下調べ不足が指摘されており(これは編集者や校閲で気づくべきことかもしれないが)その辺りは少し残念に思う。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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