夜想 (文春文庫 ぬ 1-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167682033

感想・レビュー・書評

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  • ぞわぞわ怖いけど、続きが気になる。
    そんな感じで読んだ。
    面白かった!
    辛い時どう乗り越えるか、考えさせられるなぁ。

  • 悲しみを乗り越える必要はない。楽しい気分で心を上書きすればよい。楽しいとは、他人に喜んでもらえること。自分を救うのは自分自身しかいない。自分の為に楽しみをみつけよう。
    この物語の主人公・雪藤が最後に悟ったことである。新興宗教めいた言葉であるが、宗教の教えなど必要ない考え方である。
    「真沙子と美悠がいなくなったあの日以来、初めて人のために笑うことができた。」・・・涙がこぼれた。

  • 信仰宗教をテーマに、人が心の傷から回復していく小説。

    おっ重い。。

  • 妻と子を交通事故で亡くした男が、人の心を読む力のある女性と知り合い、救いを求めるあまり、宗教化へ突き進みやがて破局を迎える話。
    人のエゴがたくさんのひとを巻き込んで本当に良いことが見えなくなっていくさまは怖い。あまり触れたくない部分をうまく書いていてそれほど不快感を感じずに読めた。

  • 孤独の怖さ、絶望の愚かさ。現代の「あるある」か。

  • 妻子を事故で亡くし、一人生き残った雪籐。そのショックから立ち直れず、仕事ではミスを連発し、生きる意味を見失いカウンセラーを頼る日々だ。そんなある日、雪籐は一人の女性から声をかけられる。「落とし物ですよ」――そう言って差し出された定期を受け取ろうとすると、女性は泣いているではないか。近くの喫茶店でアルバイトをしている大学生だというその女性・天美遥は、物に触れることで記憶を読み取る力を持っていた。その力に感銘を受けた雪籐と、悲しい過去をもつ女性とが、互いに「救い」を求めて行き着く先は――。

    貫井徳郎氏と宗教ネタといえば、どうしても『慟哭』を連想するが、同じ宗教でも『慟哭』とはまったく異なる話で、もっといえば本書はミステリでもないのではないかな、と思った。

    最初は、妖しげな宗教団体に発展するのだろうと予想した。しかし実際には、雪籐はじめ遥に救われた面々も、そして当の遥も、しごくまっとうでむしろ素晴らしい人たちであると気づく。自分は客観的に見ているのに、彼らを応援したくなるのだ。宗教としてカテゴライズしようとする人は既存の価値観しかもてないのだと、説得されそうになる。組織がだんだん大きくなり、口コミの力がやがてマスコミに伝わってさらに広がり、気づけば雪籐と遥の当初の理想とは離れたところに行きそうになる。その様子はリアリティがあり、すべての宗教がこのように始まっているわけではないだろうが、こういう教団もあるんじゃないかと思わせられるほど。

    終盤、どんどん壊れていく雪籐。講演会の後はもうこの人は廃人になるんじゃないか、と思ったが、目が覚めてハッピーエンドで終わってくれたのはよかった。これで雪籐がおかしくなったら、『慟哭』並みの後味の悪さだ。

    何を選び、誰とどうやって生きていくのか。自分の幸せはどこにあるのか。本質的なことを考えさせられた。

  • 主人公は狂ってしまったのかとおもったが,結末で救われた。

    2011/11/25から読み始め; 11/18帰りの電車内で読了

  • デビュー作の慟哭も衝撃的で面白かったけど、それよりずっと洗練されて、重いテーマだけど読みやすかった。

  • 処女作『慟哭』と通じるテーマである“救い””宗教”を描いています。ただ、”宗教”の部分は「慟哭」と大きく違い「内」から描かれています。テーマに比して重すぎない、だけど軽すぎない微妙なラインを渡りきった作品のように思いました。

  • ズゥーンと重たい方の貫井作品。やはり読んでいても
    なんだか精神的疲労を伴うのですが、それが決して
    不快じゃないんだから、やはり凄い。
    ミステリ作家の描く宗教作品の場合はどうしても
    カルトに寄ったものが多いイメージですが、今作は
    もうガチでテーマが救済だけあって、まるでイメージ
    したものと違ったのも自分にとっては良かったような
    気がします。

    本当の絶望の中から抜け出すという事。救済とは
    どういう事なのか。そして新興宗教というシステム。
    様々な事が絡み付きながら、ゆっくりと静かに
    ストーリーは常に破滅ち終焉を孕みながら進んでいく様は
    ある意味圧巻で、ページを捲る手と目を休ませてくれません。
    主人公の「雪籐」の視点のパートと、母娘関係の破綻から
    家出した娘を探す主婦「嘉子」のパートが挿入されて、
    展開されるのが少々疑問だったのですが、終盤にその
    2つのパートが交錯し、この2人が繋がってくる時の
    恐怖と驚愕は、流石ミステリ作家。救済をテーマにしながらも
    ただ重く描くだけではないところが流石。

    500P越えの長編ですが長さを感じず、かと言って
    軽く読み流せる訳ではない、貫井さんらしい楔を
    打ち込むような作品。そして珍しく読後感は...
    悪くないです。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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