還るべき場所 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2011年6月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (624ページ) / ISBN・EAN: 9784167684037

みんなの感想まとめ

極限の環境で繰り広げられる人間ドラマが描かれた本作は、登山家たちの挑戦と葛藤をリアルに伝えています。特に後半は一気に読み進めたくなるほどの緊迫感があり、読者を引き込む力があります。著者の精緻な描写によ...

感想・レビュー・書評

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  • 結構なボリュームのある本だけれど、それを感じさせない。特に後半部分は読むのが止められなくなるほど夢中になり、一気に読み切って読了(土日でよかった)
    本当に素晴らしい本でした!!!

    物語の場所より遥かに低い日本の平地、酸素も充分にある自室のベッドで読んでいるのに、著者の素晴らしくリアリティのある描写のお陰で(悪い意味ではなく)自分まで高度8,000メートル級に置かれたような感覚に陥って、酸素ほしい!となってしまった。

    交差する人間模様、予想外のアクシデント、容赦ない自然の脅威、生と死、絶望と希望、後悔と-。極限の地で襲いかかってくるあれやこれが、この物語に重厚感を出していて良かったし、最後は希望が持てる終わり方だったのもホッとした。

    にしても。
    かつて登山をしていた私自身も、なぜ山に登るのか?を考えた時期があった。その過程は辛くしんどい。
    友人に”なんでそんな辛い思いしてまで、登るの?”と何回も聞かれた。その時、私は上手く答えられなかった、登山が楽しいからだと思う。と、ぼんやりした返答しか出来なかったが。
    もしかしたらその当時、私自身も魂の糧を探していたのかもしれない。そして今も登山とは違うが、その魂の糧を探し続けているのだろう。

  • 感想
    2024年8月、今まさに、日本の有名なクライマーがK2で遭難していることから、ちょっと思うことがありつつ読む。クライマー死と向き合せだが、無事を祈るばかりだ。

    翔平のK2登山が主要な内容になると思っていたが、その前の公募登山のブロードピークの内容が主だった。悪童のアルゼンチン三人組や悪いリエゾンオフィサーの行く末も書かれていないがどうなったのか?

    あらすじ
    翔平は4年前に挑んだK2で相棒の聖美を失った。失意の中にいた翔平は、仲間の亮太に商隊をヒマラヤに連れていくついでにK2に再び挑戦しようと持ちかけられる。

    それから回想シーンに入る。中学から高校にかけて日本アルプスで鍛えたこと。怖いもの知らずの勢いでマッキンリーに挑み、天候の見誤りと過信で友人三人と死にかけたこと、そして、聖美がパートナーとなり、K2にて帰らぬ人となる。

    2章は、竹原が会社のペースメーカーをつけた会長をヒマラヤに連れていく話。公募登山で登頂を果たし、ペースメーカーの広告塔となる。神津は、亮太が主催するブロードピークの公募登山に応募する。

    前乗りした翔平と亮太はブロードピークのコンディションの確認と高所順応をする。アルゼンチンの素人クライマーに頭を悩ませる。

    神津は、自分がブロードピーク登山に参加している間に甥の副社長が会社の乗っ取りを画策していることを察知する。会長の座は譲るが、株主総会で副社長一派を一掃する計画を立てる。

    ブロードピーク登山を開始したが、ニュージーランド隊の遭難やアルゼンチン三人組の悪さなどが相まって死にそうになる。無事に客をブロードピークの頂上まで連れて行き、自分たちもK2へのリベンジアタックをする。

  • 486p一気読み。
    場所はプロードピーク、死と隣り合わせの登攀で様々な困難と直面する登山家達。
    揺れ動く人間模様。人はどう生きどう死んでいくかを問われている。スリリングで感動を味わえる素晴らしい山岳小説。

  • 正統派山岳小説の力作。

    若き登山家の矢代翔平は、世界第二の高峰k2を登攀中に最愛のパートナー聖美を失ってしまう。しかも、翔平と共に宙吊りになった聖美が、翔平を助けるために自らロープ切断して命を絶ってしまった。

    ショックから立ち直れず引きこもり生活を続けていた翔平に、再びk2へのチャレンジを持ちかけたのは、翔平の以前の山仲間で登山ツアーを生業とする亮太。ブロードピークへの公募登山にガイドとして同行し、その後にk2をアタックしよう。という提案だった。

    そのツアーに参加したのが日本エレクトロメディカル創業者の神津邦正とその秘書の竹原。ワンマン経営者だが経営権を巡る社内抗争を抱えていて…。

    ブロードピークへのアタックは、人為的なミスを含めこれでもかと言うくらいトラブル続出で、ちょっとうんざりするほど。でも、世界屈指の高峰への挑戦はそれだけ厳しい(幸運が重ならないと成功しないくらい大変な)ことなのかも知れない、と思い直した。

    神津が登山の魅力について語った言葉「しかし山に登ることで、わたしは〈魂の糧〉を得た。それは何者によっても奪いとることができないわたしという人間の本質に関わるものだ。それに気づかずこの歳まで馬齡を重ねてきた。だがわたしはいまそれを知っている。それが命を懸けてでも追い求める価値のあるものだということを――」が印象に残った。沢木耕太郎の「凍」を読み直して見ようかな。

  • 初の笹本先生の作品。標高8000m超の自然の過酷さが伝わってくる山岳小説の傑作。「なぜ、山に登るのか?」登山好きの自分も改めて考えさせられる、めちゃ面白いオススメの作品です。

  • 初めて読んだ山岳小説。たまたまブックオフで、この本を推してたので手に取ってみた。
    それぞれの人生が8000メートル、デッドラインで交差する。伏線とその回収も最後にあって、読み応えのある小説でした。今年のナンバーワンになりそう。

  • 「山岳小説の名作」という評判に違わぬ作品であった。ラストに近づくに連れて、手に汗握るようなスリリングな展開を見せ、作品世界に引き込まれていった。
    本作品は、2008年発刊の作品ということで、登山の戦術・技術・装備に関しては現在と大きな違いがなく、最新の登山状況を踏まえていると思われる。
    本作品で主に取り上げられるのは、ヒマラヤ8000m峰ブロードピークの公募登山での出来事であり、ヒマラヤ公募登山の実態や問題点が示されていて、興味深い内容だ。公募登山に関しては、金で登頂を買うなどの批判的な意見もあるが、作者は肯定的に取り扱っている。

    主人公は、学生時代にK2東壁を登攀中に、恋人であり、ザイルパートナーでもある栗本聖美をロープの切断によって失った八代翔平。
    翔平は、聖美がロープで宙吊りになった時に、翔平を助けるために自らロープを切断したのではないかという疑念を持ち続け、それ以降、山から遠ざかり、世捨て人同様の生活を送るが、学生時代の岳友、板倉亮太が企画するブロードピークの公募登山隊のサポート役で参加することになる。
    それ以外の主要登場人物は、竹原充明と神津邦正。
    竹原充明は学生時代にK2登山に参加しており、その際にメンバーの雪崩遭難を目撃し、それがトラウマとなって、登山から離れるが、勤務している会社の会長である神津の要請により、登山を再開し、その繋がりでブロードピーク公募登山隊に参加することになる。
    神津邦正は心臓のペースメーカーを製造する会社の会長であり、自身もペースメーカーを装着しており、人生の夢として、8000m峰登頂を追求している。

    ブロードピーク登山が開始されると、様々なトラブルに遭遇する。特に、自ら先行して登ろうとはせずに、他の登山隊が張った固定ロープを無断で使用したり、デポしてある酸素ボンベを盗んだりする、アルゼンチン三人組の存在が厄介。先行するアグレッシブ2007隊が悪天候に捕まって、救助が必要となるなど、次々と起こる障害や試練を、翔平たちは、勇気と決断で乗り越えていく。金銭を対価として契約でつながっているだけの公募隊が、一致団結して、危機を打破するようになっていく。第4キャンプへの下降中に、致命的とも言える事態が判明するが、それを打開する翔平のアイデアが実にすばらしい。

    作中で、神津と竹原らが、山と人生に関わる問答を行っており、含蓄のある内容で、興味深い。
    終章で、翔平は4年間背負い続けた負い目から解放される。このラストの場面も印象的だ。

  • この手の山岳小説は初めて読みました。本格的な登山経験も無く、初めて聞く専門用語が出てきましたが純粋に楽しんで読めました。

  • 話がおもしろい上にちゃんと謎も回収されてさすが

  • サスペンスやハードボイルドよりも、より強いスリルと緊張感に心が震え胸が押し潰されそうだった。登場人物が極寒と対峙していた8000m付近で本を読んでいるのではと思えるくらい息苦しかった。 どちらかというと諦めがよく、こういうシチュエーションだと命を落とす側のタイプなので、今更だけどもっと前向きで心の強い男になるぞ

  • 面白い。
    易しい文章ではないけれど、言葉がどんどん頭に入っていく。

    登山の知識がなくても楽しめる。
    登山の怖さや魅力を知れた。
    登山に挑戦したいとさえ、思った。

    特に印象に残ったフレーズは以下。
    「夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。そうやって自分を騙しおおせて死んでいけたら、それで本望だと私は思っている」
    作品の中では、夢に対するネガティブな考えとして、何度も出てくる。今の自分に重なる考えだった。

    神津さんと竹原さんの今後が気になった。

  • 登山の本だと思って読み進めていたが、これは人生について考えさせてくれる本だと思った。

    夢をかなえるゾウを読んでやりたい事リストを作らないとなぁと思いながら、なにかもうひと踏ん張りが出来ず、やりたい事リストを作れなかったが、この本を読み進めていくうちに、人生について考えるようになり、リスト作成に手がつけれた。

    次から次へと問題の出てくるブロードピーク登山の緊迫感を見事に表現し、こちらもドキドキした。

    笹本さんの本は初めてだったが、難しい内容なのに状況がイメージしやすく、くどさもなくてとても読みやすいと思った。

  • 次から次へと難関が押し寄せてきてハラハラドキドキした。
    が、主要な登場人物が生きてくれてそれは良かった。
    聖美はどうしてしまったんだろう。
    下山途中で亡くなったのか。

    山を登る意味や人生や夢とかみんな熱く語るが、山が好きやねん!頂上着いた時めっちゃ感動!そんな簡単ではいけないのだろうか?

  • 「春を背負って」が面白かったので作者の書いた山岳小説をもっと読んでみたいと思って読んだ。
    それなりにボリュームのある作品で半分ほど読み進めたところで一旦ストップしてしまいましたが、後半は登山以外にも様々な要素がストーリーに織り込まれていて緊張感を維持しながら一気に読むことが出来た。

    明らかに人生の折り返し地点を折り返してしまった自分に、登場人物の神津の語る言葉の一つ一つが心に沁みた。何というか生きる事へのメッセージがストレートにガツンとくる作品です。

  • かなり面白かったです。

    パートナーの死や人生と山を重ねて…というテーマは山岳小説としてはありふれているし、さらにはザイルの切断、もまたしかり(でもってマイ・ベストに入ってる小説「神々の山嶺」とも重なっている…)し、なぜ星5つ?

    と考えると、この一冊の場合、それはやっぱり、構成と伏線の複々線化とキャラクターの厚み、と結論付けておこう。商業登山と先鋭クライミング、山の世界とビジネスの世界、過去と現在、さらには登場人物の思惑とトラウマ、それぞれの危機がアタックの日に向けて輻輳していき…

    と同時に、

    本当にこんな人物と出会え、このような人生観を語られたい、語られちゃったら生死の境をも超えてしまえるような気もする…と、心理を書き込んでいくのも忘れない、と

    紙上でカタルシスを味わえる、つまり正しく冒険活劇なのでした。

    ヤマと山ヤの物語、というテーマに私は興味があって、つまりはヒトを通して見るからヤマが面白い、という視点の持ち方をしている人には楽しめるストーリーなのではないだろか、と思います。

    ちなみに山域が大切な人には…舞台がK2なのもちょっといいかも。

  • 久しぶりに山岳小説を堪能した。かつて、若い頃登山を多少体験した身にとっては、その当時を思い出す時間となった(もちろん、こちらは初歩的な尾根歩き専門だったが)。
    書き出しは、K2登頂付近で事故のため愛するパートナーを失った主人公が、失意の4年後、山仲間からの公募登山の誘いに、再び山を目指すストレートな山岳小説の様相である。しかし、公募登山の応募者に企業家とその秘書が加わることによって、単なる山行ドラマではなく、重層的な、いわば「生きるとは何か」を問いかける小説となっている。重低音のように再三繰り返される企業家の言葉「人間は夢を食って生きる動物だ。夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる・・・」。
    題名の『還るべき場所』が最後に大きな意味を持ってくる。主人公が苦悩する事故の謎が、最後に解明することによって、さわやかな読後感となっている。
    この本を紹介してくれた、KOROPPYさんに感謝(笑)

    • KOROPPYさん
      おはようございます。
      そんな風に言っていただけて、うれしいです!

      私も、hongoh-遊民さんのおかげで、
      知らなかった素敵な作品と出会え...
      おはようございます。
      そんな風に言っていただけて、うれしいです!

      私も、hongoh-遊民さんのおかげで、
      知らなかった素敵な作品と出会えました。
      いつもご紹介ありがとうございます!
      2012/11/05
    • honno-遊民さん
      こちらこそ!いつもKOROPPYさんの本棚を参考に、次には何を読もう?と楽しませてもらってます。
      こちらこそ!いつもKOROPPYさんの本棚を参考に、次には何を読もう?と楽しませてもらってます。
      2012/11/06
  • ドキドキハラハラしながら一気読みしてしまいました。
    山に興味がなくても、山に登ってる人はなおさら楽しめる一冊だと思う。
    8000m超えの高所で繰り広げられる人間ドラマ。
    神津の言葉がどれも深いい〜。
    K2遠くから眺めるだけでいいからいつか行ってみたいな。

  • 児玉清さんが、帯でコメントしていたので思わず購入。K2の未踏の東壁アタックでパートナーを喪い、4年間山から遠のく主人公...というところから始まる。あぁ、お決まりの山岳物語だなと思いきや、おもしろい!
    山岳ツアーの会社を設立した山仲間の友人からブロードピークへの公募登山ツアーの手伝いを頼まれる。
    そこに参加した、還暦を過ぎた実業家。その秘書。
    それぞれの思いが、8千mの山肌で絡み合い、深みを増す。主人公を含め登場人物のキャラクターがしっかり描かれていて思わず感情移入。
    とにかく場所が場所だけにヒヤヒヤドキドキ。それに空気は薄いし寒いし、危険だし。アルパインスタイル?オーバーハング??ぐったり疲れたけれど満足。
    山岳、登山用語を調べながら、山の稜線の名前がでてくるたびに、これも調べながら楽しんで読み終わりました。

  • 「笹本稜平」の長篇山岳小説『還るべき場所』を読みました。

    山岳小説は今年10月に読んだ「新田次郎」の『縦走路』以来ですね。

    -----story-------------
    登攀中に起こる陰謀やトラブル。
    登頂は成功するのか!
    登攀(とうはん)中に恋人を遭難で失った「翔平」は登山ツアーのガイドとしてK2に戻ってきた。
    圧倒的な迫力で描く感動のアドヴェンチャーミステリー大作

    世界第2の高峰、ヒマラヤのK2。
    未踏ルートに挑んでいた「翔平」は登頂寸前の思わぬ事故でパートナーの「聖美」を失ってしまう。
    事故から4年、失意の日々を送っていた「翔平」は、アマチュア登山ツアーのガイドとして再びヒマラヤに向き合うことになる。
    パーティに次々起こる困難、交錯する参加者の思い。
    傑作山岳小説、待望の文庫化!
    -----------------------

    世界第二位の高峰K2… 未踏の東壁ルートに挑んでいた「矢代翔平」は、登頂寸前の思わぬ事故で最愛のパートナーの「栗本聖美」を最も哀しい形で喪ってしまう、、、

    雪崩に遭い、宙吊りになった「聖美」が「翔平」を救うために自らザイルを切ってしまったのだ… 山で死ぬ事を厭んでいた「聖美」のまさかの選択。

    事故から4年、失意の日々を送っていた「翔平」のもとに、かつての山仲間で、トレッキングツアー会社を経営する「板倉亮太」から、ブロード・ピーク(8,047m)への公募登山で客を登らせた後に、あの因縁のK2の東壁を再び攻めることを持ちかけられる… 「聖美」を喪った事実を受けとめ、引きこもりに近い生活から抜け出すために、「翔平」は公募登山のガイドとして再び山に向き合うことになる、、、

    この登山ツアーに、医療機器メーカーの経営者「神津」と秘書の「竹原」が参加していた… 「神津」は、自社の心臓ペースメーカーを自ら身体に埋め込み、ペースメーカーの販売促進のためにエベレストに登頂した経験を持ち、「竹原」はK2で遭難し登山を捨てたという経緯があった。

    公募登山を見下し、アルパインスタイルで無酸素でブロード・ピークを目指すと宣言しつつ、実は公募登山のために張ったロープやツアー客用の酸素ボンベを勝手に利用するアルゼンチンの三人組のパーティーが巻き起こす騒動や、「翔平」たちに先行してブロード・ピークを目指した「キース」率いる公募登山隊の遭難等のトラブルに見舞われながら、「翔平」たちは公募登山を成功させるために、山の仲間を救うために、考えて、判断して、行動していく、、、

    そして、公募登山を終えて、K2を制覇した「翔平」と「亮太」は、「聖美」が自ら命を絶ったのではなく、アクシデント(ここで、アルゼンチンの三人組が使用していたスペイン製の登攀器具の不具合が伏線として登場します…)からザイルが切れたこと… その後、「聖美」は滑落から奇跡的に生き延びてK2の東壁を攻略していたことを知る。

    ミステリー要素もあり、なかなか愉しめました… 6年前に読んだ「夢枕獏」の『神々の山嶺』を読了したときの感覚と似た感動がありましたね、、、

    サイドストーリーとして展開する「神津」の企業経営者としての活躍も愉しめ、企業小説としての側面もありましたね… でも、「神津」のことで印象に残ったのは、彼の山への想いや、生きることへの考え方等ですね、

    「人間は夢を食って生きる動物だ。
     夢を見る力を失った人生は地獄だ。
     夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。
     夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。
     そうやって自分を騙しおおせて死んでいけたら、それで本望だとわたしは思っている」

    「真の人生は不可視だ。
     それは生きてみることでしかかたちにできないなにかだ。そしてそれこそが、
     この世界で生きることを喜びに変えてくれる糧なんだ」

    「死ぬ前にぜひK2の頂を踏みたい。
     これは勝つとか負けるとかの問題じゃない。
     長い人生で一度くらいは、魂の糧になるようなことをやってみたいんだよ。
     さもないとわたしは魂のレベルで飢えたまま死ぬことになる」

    等々、示唆に富んだ発言が多く、その都度、納得しながら読んじゃいました… 面白かったです。秀作ですね。

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著者プロフィール

1951年、千葉県生まれ。立教大学卒。出版社勤務を経て、2001年『時の渚』で第18回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『太平洋の薔薇』で第6回大藪春彦賞を受賞。ミステリーをはじめ警察小説、山岳小説の名手として絶大な人気を誇る。主な著書に『ソロ』『K2 復活のソロ』(祥伝社文庫)他。21年逝去。

「2023年 『希望の峰 マカル―西壁』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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