猛スピードで母は (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1884
感想 : 255
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167693015

作品紹介・あらすじ

「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小六の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた芥川賞受賞作と、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 羽田圭介さんのYouTubeで紹介されていた本作。
    ちょうど純文学気分だったこともあり、気になり購入、読了。

    いやぁぁぁぁーー、ものスゴく良いーーー(´∀`)

    出会えて良かった。
    久々にどハマりしそうな作家さんに巡り会えた予感…( ̄∇ ̄)

    何というか、とても「潔い」作品だなぁと。
    変に飾り過ぎないストーリーと文章、これ見よがしなザ「純文学」とは対極にあるような感じ。

    さらさらと、そして淡々と綴られていくこの作品の空気感がもう堪らなく最高です(*´∀`*)

    何かこうホッカイロみたいな感じ?の作品ですね、地味なんだけど持ってると心もほんのり暖かい…みたいな。

    ちょっとイマイチ(というか全然)作品の良さが説明し切れていない感じがありますが…
    そもそも「小説」自体が「言葉で表現する文学」なので、その良さを「言葉で表現する」ことにも限界があるんじゃないかと…

    ということで、気になったらぜひ直接本を…

    あと、本作はキャラクターもとても魅力的です。

    「猛スピードで母は」のお母さんとか、ハードボイルド具合が超絶カッコ良かったなぁと。
    息子のためならベランダだってよじ登る(笑)

    理想的過ぎない、写実主義的な作風の良さが出ているようにも思いました。

    完璧過ぎる登場人物は誰一人出てこない。
    短所も含めて表現されているからこそ、とてもリアルな実在する人物のように感じられるのではないかと。

    あと、作品のタイトルもまた秀逸です…
    「サイドカーに犬」、「猛スピードで母は」って、もうこの絶妙な透かし具合…(´∀`)

    この出会いがあるから、読書は辞められない。

    <印象に残った言葉>
    ・パックマンも苺たべるよ(P62、私)

    ・洋子さんにコーラを奢ってもらった自動販売機に、父にもらった偽造硬貨をいれてみた。とたんに警報ベルが夜の路上に鳴り響いた。夏休みの終わりを告げるベルだ。私は走って逃げた。(P74)

    ・慎は新しい担任の先生が嫌いではない。一人で頑張って大変なのはこの人だ。サッカーゴールを守り切れると信じて身構えている。(P115)

    ・しばらく二人は立っていた。須藤君は慎の横顔を何度かのぞきこんだ。「なんで泣いているの」須藤君はいつもより困った口調でいった。慎は上着の裾で顔をぬぐうと「これ預かってくれない」といって手塚治虫の本を手提げごと須藤君に渡した。(P157)

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小六の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた芥川賞受賞作と、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。

  • 二作品の短編には、それぞれ母親、父親、愛人、恋人など子どもの視点からみた大人たちが出てくる。わたしたち読者に、その大人たちは子どもから見た一方面の姿しか映らない。自然とわたしの視点も子どもとなって、母親や父親を見上げるものになっていた。
    あの頃は気づかなかった“変”だったこと、“言葉に出来なかったこと”そんなものが、今なら理解出来るし、想像も出来る。
    子どもって大人が思うよりも敏感に察するところがあると思う。それらの出来事や大切な人の心の動きなんかを、分からないなりにも意外と冷静に受けとめることが出来ていたんじゃないかな。
    子どもっていっぱい、いろんなこと考えていると思うよ。

  • 「サイドカーに犬」5…小4女子と父の愛人・洋子さんとの交流。著者と同世代だから余計そう感じるのかもしれないが、完全に精神がタイムスリップした。

    「猛スピードで母は」4…母子家庭の小6男子の淡々とした日常。子供の思考描写がすっと納得してしまうような生々しさがある。

    どちらの作品も「破天荒なオトナ」により閉鎖空間に楔を打ち込まれたときの子供たちの衝撃が描かれていた。
    自分は幸か不幸か周囲が真っ当な(?)大人ばかりだったので、このパラダイムシフトがめちゃくちゃ遅かった。それがコンプレックスでもあり、20代の放蕩生活の遠因になったと思っている。

  • 目次
    ・サイドカーに犬
    ・猛スピードで母は

    「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」のどちらも、子どもの日常が子どもの目線で書かれているのだが、そのどちらもが親との精神的距離がある。
    親を嫌いなわけではない。
    親も、子どもを嫌いなわけではない。
    ただ、子どもの他にいろいろとあるのだ。好きなこと、やらなきゃならないこと。
    子どもはそれを知っているから、いつか、親に捨てられるかもしれないことを心のどこかで知っている。
    それは特に寂しいことではない、とも思っている。
    結局捨てられることはないのだけれど。

    どちらの作品も主人公の心は終始フラットで、時々不安に駆られることはあっても、大笑いしたり激怒したり泣きわめいたりはしない。
    無口ではあるけれど、心の中ではいろんなことを考えている彼らは、自分の感情くらい理屈で納得させることができるのだ。
    ああ、それはまさに、子ども時代の私のようで。

    無口でぼうっとしていた私は、子どもらしくないと言われ、しっかりしろと言われたけれど、心の中では自分の考えをはっきりと表明できる人に憧れた。
    それは「サイドカーに犬」の洋子さんであり、「猛スピードで母は」の母だ。

    それにしても母たちよ、子どもを簡単に捨てるな。
    捨てるなら、その後の生活の保証をしてからにしろ。
    捨てられたと思わせるな。
    と、読みながら思う。

    私は物理的に母に捨てられたことはないけれど、母がもう少しアクティブな性格だったら、きっと捨てられていただろうな。
    そして私は、それを淋しく思わなかっただろう。
    厄介なことになった、とは思うだろうけれど。
    そんなことを考えながら読んだので、読後切なくなってしまったのだ。

  • この作家は初読。なんか賞を取った本なんでしたっけ?母親が家出して、また帰ってくる家族の話と、母子家庭の話の中編2本を含む。いずれも視点が子供だが、一人称ではなく、あくまでも傍観という形で描かれている。

    登場人物は、各作品とも非常にアクの強い人ばかりなのだが、「○○した」と、徹底して情景を細かく淡々と述べることで、非常にあっさりとした描写である。起こる事件もものすごく大きいものではない。

    そんなもんだから、1作目はなんだこれ?と思っているうちに読みきり、2作目で少し作者のペースに入れた感がある。

    淡々と起伏がなく退屈という人はいるだろう。一方的な視点のみで、ライトノベル的なところも無いでもない。しかし、つい読ませる「何か」があるので、退屈感・不快感などはなかった。

    もう1冊くらい読んでから、判断してみたいと思う。

  • サイドカーに犬
    猛スピードで母は

    大変良質。なんで避けてきたのか。
    少女から見た大人の女性。少年から見た母。
    どちらもややエキセントリックなところがあり、人生にからめとられかけ、しっかり立っている。
    自分の母を思い出したりもして。

  • これはタイトルに惹かれて読みました。
    良かったよ。泣いたよ。また。

    表題作が芥川賞受賞作。もう一遍収録「サイドカーに犬」は候補作。
    こっちもイイ。泣いたさ。また。

    あー、なんだか最近泣くね。よく、泣く。
    齢かね。やっぱり。
    あ、芥川賞面白いのも、齢??
    みんなにフシギに共通してるのは、”こどもの視点”で書いてある。
    本屋で選ぶときに、無意識にフィルターにかけてるのかな?
    いつまでも、こどものつもりで困ったもんだね。
    そのくせ齢は取って。

    …あー。 だから、泣くのか?

  • 古本屋でタイトルに心奪われて読んだ。

    芥川賞を受賞した表題作と、
    文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」の2作を収録。

    『サイドカーに犬』
    母が家を出て行き、替わりにやってきた父の愛人・洋子との共同生活を、少女の目線で描いた作品。
    実の母親と、愛人と、それぞれに対する少女の距離感がさりげなく、かつリアルに迫ってくる。

    『猛スピードで母は』
    母子家庭の息子・慎と、再婚相手を見つけた母の物語が、冷静な子供の視点で描かれている。

    タイトルで予想していたようなドラマチックなストーリーはなかった。
    それでも、読んだあとに、タイトルがまたじわじわと染みこんでくるようで、何度も読み返したくなる。


    どちらの作品も子供の冷めた視点から、大人の女性を眺めているのが印象的。
    文章は平易で、ストーリーはさほど重要視されてないようだ。
    細かな描写から感じる人間観察力の鋭さが個人的に好きだなと思った。
    人それぞれにスポットを当てて、目の前の世界を、主人公の子供の感覚を通して描いている。

    読んでみたら、タイトルの印象が覆った。
    一度じゃ汲みとりきれない旨味があると思う。

  • 母強し?

  • 「猛スピードで母は」というタイトルから勝手に、もっとドタバタしたコメディっぽいものを想像していた(なんでだろう)
    読んでみたら全然違った。カッコいい母親とどこか冷めた息子の物語だった。
    なんかいい。
    よかった。

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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