タンノイのエジンバラ (文春文庫 (な47-2))

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 502
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167693022

感想・レビュー・書評

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  • 短篇集。
    どうも文章が頭に入ってこない。

    職安通いをしている主人公(男)が、隣家の女に押し付けられた娘の世話をする一日を描いた表題作がいちばんわかりやすかった。

    正統派な純文学なのだろう、こう波長が見事に合わない感。
    好きな人は好きなのね、という感じだった。

  • 一定のテンションで話が進むイメージ。登場人物のテンションも(特に主人公)なんとなく一定。
    でも行動の方は結構アクティブで、文章はつらつらしてるけどきっとこのときのテンションはやばかったんだろうな、とか想像しながら読んだら面白かった。

  • うまいしおもしろい。

    長嶋有という作者は強烈なインパクトのある話を書くわけではないけれど、なんかあの作家すきなんだよね、と私の頭に必ず浮かぶ。
    この短篇集はそんな作者の長所が盛り込まれている。
    まず、説明が少ないところが好き。
    情景描写だったり登場人物たちの輪郭からじわじわと話の核を攻めてくる。
    そして最終的に読者に不明瞭な点を残さない。
    2人の姉と引きこもりの弟の奇妙な話を描いた『夜のあぐら』では特に、そう思った。話の組み立て方のうまさが際立っている。

    また、人間の描き方がとてもリアルで、急に気が変わったりする。このキャラクターはこういう人だから、とかそういうセセコマシサがない。キャラクタではなく、まぎれもなく人間。

    あとは単純に言葉の選び方が好き。
    タンノイのエジンバラを題名にもってくるあたり、相当いい。何度も声にだしたし、現物もネットで調べた。誉めすぎか?

    幼少時の些細な記憶とか
    思い出した。とくに姉、というキーワードが私にはよかったのかな。

    長嶋有をみんなに知ってもらいたいと思う反面
    だれも知らなくていいとも思う。

  • もうね、この人の本は、ベストジーニストのキムタクみたいに殿堂入りさせようかってくらいいちいち響いてくるんだよね。
    別格です。

    だからあえてもうこの人の本には5つ星はつけずに4つ星にしときます。

    誰もが、本人すら気づかないような痛みをかかえて生きている。
    本人が気づかないように強がっている痛みを抱えている。
    でも、時にはそっとその無理を吐き出させて上げないといけない。

    いつのまにか、その無理が心で抑える間もなくあふれ出てしまう瞬間がある。
    ただ、それはそもそも抑えるべきものではなく、人間の心の自然の発散作用。
    だからなすがままにするのがよいんだ。

  • 長嶋有の短編集。淡々と何が起こってどうしたということが流れるように書かれており、伏線や表現など何も考えなくていい作品。

    公園で突然1万円を渡され、隣家の娘を世話するように依頼される。ステーキを焼き、家で一緒に食べ、娘の持ってきたCDを聴いてみる。聴くのは、祖父の遺品のオーディオシステムだ。

    短編が4篇。全編にに特徴的なのは表題作のとおり、固有名詞やそれぞれの特徴がこれでもかと描かれていること。小川洋子「原稿零枚日記」のときに感じた、今の小説に不足している点が、固有名詞が少なすぎる問題だが、この作品群に感じることはない。

    それぞれの作品で、情景はサラッとではあるがかなり細かく描かれる。逆にそれらが多すぎて、内容が頭に入ってこないという人も多いだろうが、そもそも全部読む必要など無いのだ。

    それはそうと、中間の二作(金庫とバルセロナ)は、ちょっと長すぎるんじゃないかと感じる。特に金庫の話は、過去に戻ったんだか現在なんだかがフワフワと不明瞭で、弟の立場がよくわからないのはよろしくない。女なら女の話、男なら男の話にしないとダメなのかなこの人。バルセロナも自分の話なのか、自分を見ている妻の話なのかという不鮮明感がいただけない。その点、表題作はそこまでのものはないので非常に好感。

    最後の「三十歳」はこれらの中で、やはり頭一つ分以上飛び抜けた感じを受けた。固有名詞にこだわらず、淡々とした日常と不安と逃避がうまく描かれていたと思える。これだけだと☆4。

    オチを求める人には向かない。こういう小説書きたいな。ブログで始めてみようかな。

  • 「タンノイのエジンバラ」「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の4編収録した短編集。
    大傑作、とはいかないまでもいずれも秀作揃い。
    個人的には「三十歳」が一番好き。

    長嶋有の小説は、情景が在り在りと目に浮かぶところがいい。
    しかもその情景は何の変哲もない平凡な街だったり建物だったり部屋だったりする。
    風景が人の生活や人生と結びつき、情景となる。

    「三十歳」に、パチンコ屋の屋上のシーンがあります。
    これがいい。
    「パラレル」にも屋上の場面があったけど、ビルの屋上という場所は、世間から疎外されているようで離れきれない、むしろ世間を俯瞰して眺めてしまったりする、独特の雰囲気をもった空間で、それが小説の雰囲気とばっちり合っています。

    もう一つの特徴は、「家族」が描かれていること。
    家族、中でも親子や兄弟姉妹といった、子供のころからひとつ屋根の下暮らしてきて、大人になるにつれ何時の間にか「ずれ」が生じてしまったような、微妙な心理的距離を描くのがとても巧いと思います。

  • 佐藤正午さんとかこの方とか、作品というより、こういうのを書く「人」として好き。もちろん作品もいい。とても静かで切なくて温かくて、本の中のひとたちと仲良くしたくなる、1冊。装丁も大好きな色、デザイン!

  • タンノイのエジンバラ
    夜のあぐら
    バルセロナの印象
    三十歳

  • 「夜のあぐら」の中に”定見が無い”という言葉が出てきます。なるほど、どの作品の主人公も定見が無く、周りに流されていく人々です。同じように”定見が無い”人を良く描く作家として川上弘美さんが居ます。
    しかし、この二人の雰囲気は随分違います。川上さんの主人公達は行く先不明のボートに乗っているものの、周りはゆったりとした流れで、波に揺られて暖かくて居心地はなかなか良さそうです。一方、長嶋さんの主人公は、周りの岩にゴツゴツぶつかりながら流されています。なんだか迷惑そうなのですが、かといって必死に抵抗をすることも無く流されているようです。
    どうも、川上さんの世界の方が好きですね。
    ただ、この長嶋さんも悪くない。もう少し読んで見ましょうかね。

  • 同じ団地の隣家に住む風変わりな女の子の世話を押しつけられた男と彼女との、ひと晩の交感を描いた「タンノイのエジンバラ」。3人姉弟と義理の母親との確執を描いた「夜のあぐら」。半年前に結婚した主人公と妻、半年前に離婚した主人公の姉の3人組によるバルセロナ観光の物語「バルセロナの印象」。そして、パチンコ屋の景品係としてアルバイトをする主人公女性のバイト仲間との日常にスポットを当てた「三十歳」。現代家族と個人の関係のありようが、長嶋有ならではの独特の視点と状況設定によって描かれる。

    作者の筆が描き出すのは、失業中の男と少女の束の間の疑似家族的な関係であり、普段は疎遠の姉弟が目的を達成するためにいっとき結束することから始まるドラマであり、海外という逃げ場のない空間での肉親者同士の緊張関係であり、著者自身の年齢にも重なる30歳という微妙な年齢に達した女性の内面の物語である。

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著者プロフィール

長嶋有
一九七二年生まれ。二〇〇一年「サイドカーに犬」で文學界新人賞、翌年「猛スピードで母は」で芥川賞、〇七年の『夕子ちゃんの近道』で第一回大江健三郎賞を受賞し、〇八年には『ジャージの二人』が映画化された。一六年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞受賞。その他の小説に『パラレル』『泣かない女はいない』『ぼくは落ち着きがない』『ねたあとに』『佐渡の三人』『問いのない答え』『愛のようだ』『もう生まれたくない』『私に付け足されるもの』、コミック作品に『フキンシンちゃん』、エッセイ集に『いろんな気持ちが本当の気持ち』『電化文学列伝』『安全な妄想』等がある。

「2019年 『三の隣は五号室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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