デッドウォーター (文春文庫 な 48-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167696030

感想・レビュー・書評

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  • 「19歳 一家四人惨殺犯の告白」をノンフィクションライターで書いて、小説家になって、これが対となるフィクションになる。
    5人を強姦殺人して、死刑判決を目前にしても、平気な犯人。
    「塀の中で国家の庇護のもと、とんでもない化け物に育っている」
    とまで言われ…
    フリーライター加瀬が迫る。これは、永瀬さんの生写しなんかな。
    犯人のいう「至高」とは?
    それがキーワードとなって動き始める。
    賢い人って、何かすぐに、コロッと心酔するんかな?オウムの時も、優秀な人がいっぱい信者に、なってたし。
    塀の中におって、物理的な復讐は出来んけど、別のやり方で。
    最後は、まぁ、ええ感じで。

    永瀬さんのは、文字が小さいのか、内容が重いのか、読むのに時間かかる。でも、面白いので時間は忘れるのでええか!寝不足になる以外は(⌒-⌒; )

  • 基本的にはハードで重いですが、出過ぎないエンタメ色があり、私のようなミステリ嫌いをねじ伏せる巧妙なストーリーラインが素晴らしいです。おそらく元ノンフィクションライターだから出せるリアリティも持ち味かと。いやあ重厚で面白かったです。

  • 重いテーマを好んで取り上げる作者が、自身の記者時代の後悔や、敗北感、やり残した無念さに向き合って掘り下げて、またも重たいテーマの作品に仕上げた、といった感じ、らしい(解説によると)。
    ですが、それを知らなくても、テーマに惹かれてどんどん読み進んでいける。基本はエンタメしてくれる作者なので、けっこう好きな方なんですが、多少の消化不良はあるのかもw
    ただ自分は、帯や裏表紙等から、「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」のレクター博士っぽいのを想像していただけに、さすがにハードルを上げすぎてしまった感は否めない。

  • 6月-2。3.0点。
    5人を強姦殺人した、犯行当時19歳の怪物。死刑判決を受け、
    拘置所で主人公が取材し、本にしようとする。
    怪物は会う人間をコントロールしていく。
    主人公は次第に、塀の中の怪物を壊そうとしていく。
    暗い。何とか良い終わり方になったかな。
    途中から何となく結末がわかったかな。

  • 実際間違えてハードカバー版買っちゃったんですけどヽ(´ー`)ノ

    『踊る天使』でも思ったんだけどキャラクターの書き方がややスパッと切り口鮮やかすぎて唐突に思えないことはない。
    で、特に違和感を感じた人物の描写とかに関してはああなるほどねって思った。

    良いなと思ったのは復讐の手口かな。
    他にやりようがないといえばないんですが、ジャーナリストらしく調べて考察して動いての段取りが筋が通ってた。

    極端に走る傾向のある描写だなとは思ったんですがそれを含めて中盤からラストまでの疾走感が気持ち良かったなー。

  • おもしろかったんだけど、ラストがちょっぴりあっけなかったな・・・(´ω`;)

  • 登場人物はオールサディストですか?許せる。
    それにしても本当、こういったどうしようも無くどろどろとした人間ドラマが大好きです。
    強いていうなら最後、ページ数の少なさから読めてはいたけど穂積の崩れっぷりが極端過ぎて残念!ちょっとだけ!
    もう一捻り欲しかった気がする。


  • 永瀬隼介が、好きだ。


    もしかしたら執筆の10倍以上の取材をし、100倍もの調査時間をあてているのではと思わせるそのストーリーは常に、フィクションとは思わせないがっしりとした骨組みに載せられている。

    人物の書き込みも重厚。
    ばらばらと登場する人物は最初は、まったく違う世界を生きている。

    ボクサーとしての人生を選び、はぐれものの世界を飛び出した中国人とのハーフ、亮輔。
    売れないライターの加瀬。
    5人の女性を強姦して殺し、死刑を待ちながら一向に動じることのない死刑囚、穂積。

    その人生がそれぞれひとつにつながったとき、そこに現れた震撼すべき事実とは。


    読み終わって、膝が震えた。

    このストーリーは、メインの3人だけが輝きを放っているのではない。
    実はそれぞれのサイドに控える脇役たちが、完全に計算された座標軸に、完璧な間隔で配置されているのだ。


    日本人ではないからと執拗ないやがらせを受けた亮輔の過去。そこから逃れて光を目指した亮輔と対比されるのは、亮輔の輝きに嫉妬しながらもまったく逆の向きに走り抜ける政春だ。
    ライターの加瀬の妻、美知子は静かに、しかし確実に自分の中に狂気を育ててゆく。
    そして死刑囚・穂積を監督すべき監察官・白井は、穂積のカリスマ性の前に徐々に、自分の存在を見失い始める。


    それぞれの人物の苦悩と狂気が化学反応を引き起こし、必然の結末に向かって一気にスパークする。
    小説にGがあるとすれば、この小説はまさに、ジェットコースター級の加速度だ。
    吐くまで、読め。

  •  フリーライター・加瀬隆史が今、必死に取材をしている相手・・・18歳の時に5人の女性の連続強姦殺人事件を起こして逮捕された獄中の穂積壱郎。彼は一審、二審で死刑という判決が出たにも関わらず、死の恐怖におびえることがなく、また、反省の色もない。上告しているものの、決して無罪の主張をしているわけでもない。彼に取材を申し込んだ際になぜか気に入られた加瀬隆史は、彼の獄中からの手紙により、事件の全貌、そして驚愕の事実を知ることになる。

     穂積が信じているのは【至高】と呼ばれるものだけだということが彼の手紙から明らかになり、それがいったい何なのか、神なのか共犯者なのか、実体のあるものなのか抽象的なものなのか、それを追うのが話の本筋としてある。が、それだけでなく、冷静で頭がキレる穂積に翻弄される隣室の囚人(とその息子)や刑務官、そしてもちろん加瀬とのやりとりが見もの。獄中にいるにも関わらず、穂積はありとあらゆる精神的打撃を与えてくるのだ。【至高】がある限り、無敵に思われた穂積の最後は少し意外であったものの、人間、信じるものがなくなってしまえば脆いものなんだろうな。
    <BR> 刑務官の苦悩の部分は、あとがきによると以前読んだ「死刑執行人の苦悩」も参考にされているらしい。

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著者プロフィール

永瀬隼介

1960年鹿児島県生まれ。國學院大學卒。週刊誌記者を経てフリージャーナリストとなり、祝康成名義で『真相はこれだ! 「昭和」8大事件を撃つ』を刊行するなど事件ノンフィクションを中心に活躍。2000年『サイレントボーダー』で小説デビュー。事件現場で培った取材力を活かし、現代の深部を抉る骨太のサスペンスや犯罪小説を発表している。近著に『帝の毒薬』『カミカゼ』『三日間の相棒』『白い疵 英雄の死』『12月の向日葵』など。ノンフィクションに『19歳 一家四人惨殺犯の告白』などがある。

「2022年 『殺し屋の息子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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