点と線 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2009年4月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167697143

みんなの感想まとめ

人間の思い込みや社会問題をテーマにしたこの作品は、昭和の風情を感じさせる旅情ミステリーとして、多くの読者を魅了しています。男女の情死体が発見される場面から始まる物語は、時刻表トリックやアナログな捜査方...

感想・レビュー・書評

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  • 66年前の作品。昭和の風情がたまらなく良い。
    冬の夜、博多の香椎海岸で見つかった男女の情死体。男はコート、女は和服。
    その前夜、2人らしい人物を見た目撃者は
    「ずいぶん寂しいところね」と女が言ったのを聞いたという。この場面がとても印象的だ。

    時刻表やら青函連絡船やら、旅情ミステリー要素も味わい深いが、哀愁のある風景が感情を揺さぶる。古さがいいんだよなぁ。
    今とは違って不便でアナログだった昭和の時代。そこがいい。当時の社会問題を取り上げた松本清張の面白さに改めて触れ、また読んでいきたいと思った。

  • 初めて読んだ松本清張作品。
    有名な作品なので
    時刻表トリックの部分は知っていた。

    全体的な描かれ方、表現、言葉遣い。
    そういう部分を感じながら読んだ。

    松本清張自身、この作品を
    評価していないみたいなことを
    あとがきで読んだ。
    でも、面白かった。

    時代のギャップは感じた。

    捜査やトリックの中で電報をうつのは
    私の生まれ育った時間からは
    想像できないものだった。
    電話はあるみたいだが、あまり使ってない。
    鉄道に重きを置いてるのは、
    作品発表の背景かもしれないが
    飛行機も飛んでる時代だ。

    現代の技術からは想像できない程
    捜査も大変だったのだろうと思った。
    電話やメールで即時的にやり取りしたり、
    証拠物も実物を押収でなく
    写真やスキャンでも手に入る。

    いろいろ不思議はあるけれど、
    人間の思い込みによる盲点を
    丁寧な粘り強い捜査で解明していく
    スタイルは今も昔も変わらないのだと思った。

    他の社会派系小説も読んでみたい。

  • 本編とはほとんど関係ないけど「点と線」で好きな場面が一つ。
    九州の出張から帰ってきた三原刑事が、東京の馴染みの喫茶店でコーヒーを飲んでいるとき、東京は自分がいなくてもいつものように時間が流れていて、その時間、井原が何を体験しても、東京は何も変わらず時間が過ぎていく。
    そのことに井原が孤独を覚えるシーン。

    数行で終わるし、本編とも関わりのない何気ない場面だけど、こうしたところをスッと小説内に織り込むのが、松本清張の作品の特徴を現しているような気がします。

    経済成長や都市化によって、日本社会が劇的に変化していく中で生まれた人の孤独や社会の歪み、時代の闇。それが時に犯罪として小説内に現われ、また描写として作品の陰を飾る。
    松本清張が社会派推理小説の祖として君臨し続けているのは、そうした変化と、社会の歪み、人の心と時代の闇を、犯罪と描写に載せたからだと思います(といっても清張作品は、まだ二冊しか読んでないけど)

    博多で見つかった某省の役人と、料亭の女性の遺体。ふとしたきっかけから二人の死に疑問をもった地元の鳥飼刑事と、彼に賛同し捜査を引き継ぐ井原刑事。やがて捜査線には一人の男が浮かんでくるものの、その男には鉄壁のアリバイがあり……

    文春文庫版『点と線』では有栖川有栖さんの解説が載っているのですが、この解説はなかなかに手厳しい(苦笑)
    まあ、自分も読んでいる最中、有栖川さんと同じ部分で引っかかりを覚えたので、メインのアリバイトリックを単体で評価するのは、ちょっと厳しいかも。
    もちろん時刻表の4分間の空白なんかは素晴らしい発想だし、場面を想像するとより興奮が増すのだけど、そこも有栖川さんの言う通り、詰めが甘いことは否めない。

    でも、この『点と線』はそこを越えるドラマがある。北海道から福岡まで飛び回り、二重、三重に仕組まれた犯人のアリバイを突き崩していく楽しみと興奮、そして刑事の執念。

    名探偵の推理って大抵は「まだ証拠がない」だとか「可能性の段階」だとか言って、最後まで推理を明かさず、最後に一気に壁を突き崩す感覚があります。
    一方で、『点と線』で刑事は足で地道に壁を突き崩し、かと思えばまた壁に阻まれ、それもまた推論と足とで突き崩し……。行っては戻り、また行っては戻りをジワジワと描いていく。

    名探偵という印象では無いけれど、普通の人が謎にかじりつき突破口を開いていく、その快感。
    その感覚を描く上で、このアリバイトリックが有効だったのは、確かだったとも思います。だからこのアリバイトリックは、ミステリ的には「むむ?」と思うところがあっても、それを越える魅力があるのだと思います。
    それが『点と線』が、日本のミステリの潮流すらも変える作品として語られる理由だと感じました。

    『ゼロの焦点』を読んだときもそうだったのですが、今回も犯行時の状況や、犯人の心理を想像してしまう。直接的に犯行の様子が書かれているわけでもないし、犯人の心理描写や自白があるわけでもない。それでも、事件の背景を自然と想像させてしまう凄み。
    時代の闇、社会の歪み、人の心理。大仰なアリバイトリックと、忘れがたいインパクトを残す4分間。描かれる様々な土地の風景と刑事の執念。

    そんな様々な要素の合わせ技の結実、様々な要素の点と点が繋がり、一本の線となったのがこの『点と線』なのだと思います。

  • 松本清張作品、実は初めて。
    比較的薄くて、読みやすかった〜!トリックの方向性は途中からなんとなく見えてきてしまうのだけど、それでも最後まで読み切れた!もう少し人間の内側に潜む業(ごう)というか腹の内というか...を深く描いてくれてると良かったかも。主人公視点だとどうしてもそこが十分伝わってこない気がした。

  • トラベル・ミステリーの古典的名作。いち鉄道マニアとして「松本清張を読んだことがない」というのはいかがなものかと思い、手を出してみました。
    雑誌『旅』の連載小説だったという出自もあってか、思いのほか読みやすく分量も軽め。上記課題認識で義務的に読み始めた(笑 ところもあったのですが、普通に面白く没入してしまいました。有栖川先生の解説も素晴らしい。

    物語自体は語りつくされた感もありますので、鉄道マニア寄りの切り口で気になったところを2点レビューとして残したいと思います。
    1. 余裕が必要だった時代の鉄道への郷愁
    2. 当たり前のように書かれる官僚の汚職

    1. 余裕が必要だった時代の鉄道への郷愁
    株主への説明上、固定資産の利用効率をとにかく上げないといけない今の時代。本著が描く昭和32年=1957年当時の国鉄の姿を見るに、隔世の感が…(そりゃそうなんですが)

    ・東京18:30発の寝台特急あさかぜは、17:49に入線しホームを41分間占有!
    →新幹線のぞみ/はやぶさは、長くても15分ないんじゃないかと。諸々積み下ろしが必要な食堂車とか難しいんだろうなぁ。。
    ・東京から鎌倉行くだけなのに、わざわざ2人も入場券を買ってホームまで見送り!(笑
    →しかしこれが、移動に対するあこがれ/リスペクト?を生んでいた感もあり、旅情だなぁと…

    2. 当たり前のように書かれる官僚の汚職
    そのまんまなんですが、官僚が汚職したり、その尻拭いで課長代理級が自殺したりすることがフツーのコトとして書かれているのがまた。
    今でも汚職がゼロになったとは言えないんでしょうが、それでも良くはなってるのかな…と思いました。
    ※直近の"ディール"の事例なんかを見ているとあまり能天気なコトは言っていられませんが…

    ひとまず、ドラマとして面白かったのに加え、鉄道マニアとして読んでおくべき名作をクリアできた達成感がちょっとあります(笑

  •  香椎海岸で発見された心中死体。汚職事件の渦中にいる官僚と愛人であった。
     遺留品に疑念を抱いた老刑事の執念が完璧なアリバイ・トリックを突き崩す。

     高校1年生の時に読んだ。時刻表トリックに関しては西村京太郎作品で馴染みがあったが、元祖の偉大さに魅了された。

     刑事が靴底を擦り減らす系の作品の持つ泥臭さが好きになったのも本作がきっかけ。
     何度もアリバイの壁に阻まれながらも真相を追う刑事たちの姿がカッコ良かった。

    *読了(2010年)

  • 動機が不純だが、点と線と名付けられた日本酒を買い、小説もと手に取ったもの。
    時代を感じるが色褪せない真理があった。
    先入観が間違った線を引く。これこそが最大のトリックなのでは。
    人の心理、行動。自然に入ってくる。不自然と気づいた時、出発点が違っていたことに気づく。
    読後感は良くないが、人物が生きているように感じた。

  • 東京ステーションホテルといえば、という名作。
    トラベルミステリー好きでもあるので気になっていたが、ようやく手に取った。例のホームの見通しの話が早々にでてくるが、これがトリックってどういうことなんだろう(それをホテルで作者が着想したって?)と思っていたが、そういうことか。
    たしかにトリックにはおやっとか甘いなとか思うこともあるけど(●●がない時代のことなんだっけと思って読み進めていたら、全然そんなことがなかったりとか)、
    読者を引き込む話のながれ、語り方、そして明らかになっていく動機や人間関係とか、あの人も●●ですかとかいう展開もあり。いかに人の感情や先入観をコントロールするかという点へのフォーカスもまた本質的(ミステリー自体もそういうものだが、それを作中にも幾度も語らせているのがよい)。
    じっくりミステリーの古典を味わいながら読めた感慨のほうが大きくも感じたし、読んでよかったな。

  • 松本清張は結構好きです。昭和の時代を感じることができるのもこの時代の本の良さですね。飛行機の選択肢は早々に思い付いたけど、なかなか辿り着けない突破口も見つかってホッとする流れ。

  • さすがミステリーの金字塔!素晴らしい作品だった。
    昭和初期の作品だけど人の考えることもやっていることも今と大して変わらない、100年近い時間を経て変わったのは移動時間の速さや通信手段が増えたことぐらいな気がしてくる。
    人の本質に立ち返ること、思い込みを疑うことは何時の時代も大切なのだと言うことがよくわかった。

  • 初の松本清張作品でした。
    トリック自体はそこまで難しく感じなかったですが、たったの4分間だけ成立するなどの時刻表の隙をつくような描写に驚かされました。

  • 名前の知る作家ということで読んでみましたが、面白い! 散歩のついでの本にはピッタリですね。 男と女の関係って時には怖くなりますが、普通の生活をしている私などは想像するだけですが、いろんな人の心を知れるなと。 小説は面白いね

  • 2016年2月24日読了。福岡・香椎の浜で情死した一組の男女。関与が疑われる男・安田のアリバイ「四分間の空白」は完璧に見えたが、刑事たちの地道な捜査により見えてきた真相は・・・?松本清張ミステリの超古典。読む側をあっと言わせる時刻表トリックは「その手があったか!」と言うよりは「え、それ言ってよかったの?」と思わされるのはさすがに時代が違うからしょうがない。読むうちにじわじわ伝わってくる暗くじめっとした怨念、昭和のさびしい街の風景の描写などがたまらない。終章の唐突感も、遠くまで投げ飛ばされるような感覚があって爽快。面白かった。

  • 何度目かの『点と線』。有栖川有栖の解説が素晴らしい。それを読みたさに購入。

  • 会社の同僚に勧められて。初めての松本清張作品。
    勝手に「難しい文体なのかな〜読みづらいのかな〜」って思ってたから、全然そんなことなくて嬉しい驚き。笑

    怪しい人は序盤で明らかになってたので、キーになるのはハウダニットとホワイダニット。一見崩すのが難しそうなアリバイの穴をどう探すか、ジリジリ詰めていく感じは結構好きだった。
    今みたいにインターネットやスマホがないし交通手段も全然違うから、アプローチの仕方の違いがあって面白かった。ポアロも地道に一つ一つ検証するもんね。

    他の松本清張作品も今後読んでいくぞ〜。

  • 今はテクノロジーが発達し、ひとつの目的を叶えるための手段も多様化している。同じく取りうるミステリーのトリックも爆発的に増えたのではないかと思う。だからこそ、いつも思っていなかったようなトリックを駆使したミステリーが登場する。

    複雑な社会システムを駆使した現代的ミステリーの数々を読破すると、否応なくトリックに対するハードルが上がる。この結果、古典的な作品に対する初読時の面白さというのは相対的に下がっているように感じてきた。

    しかし、そんな現代に浸かった視点からでも、本書は綺麗に上手く纏めている、と思った。汽車や電報など、出てくる言葉はとても古風。しかし、時代を超えた今でも通用する面白さがある。寧ろ、昔の限られた技術体系の中で凝ったトリックを作り上げる洗練さがあった。縛りプレイみたいな感じかしら。

    この見方はやはり自分が現代に生きているからだと思う。点と線の発刊当時は、時代の複雑怪奇な最先端を利用した目新しいトリックだったに違いない。

    では、未来の人たちが、今自分が親しむ現代的技術を詰め込んだミステリーを読んだ時、「あぁ、なんてシンプルな技術を上手く使って素晴らしいトリックを仕込んでいるんだろうか」、と思うのだろうか、それとも、「何だかシンプル過ぎてつまらないトリックだな」と思うのだろうか。

    時代の変化と共にトリックへの見方も変わる。そんな事を思わせてくれた本でした。

  • 洗練されていて素敵でした。68年前の作品ですが、こんなに読みやすいんですね。辛口の解説を読み、なるほど気になる部分もあったなと思いましたが、トラベルミステリの魅力たっぷりで大変満足のゆく読書体験になりました。

  • 情死と思われたが、、。刑事がものすごく頑張って一人で行動していて、良い人だしこんな刑事いたらいいなと思った。時刻表とアリバイ崩しが面白く、すごく引き込まれた!

  • 辛口の解説が読みたくて借りたが、挿画もいいね。松本清張は新潮文庫が定番だったが、少し高くてもこっちだな。

  • 後半、九州から北海道への移動が焦点になってくるところを読みながら「飛行機で行けば簡単だけど当時は空路もそれほど発達していなかったのかもなあ」と思っていたら、あっさり「飛行機で行った」という種明かしで精神的にコケてしまった。『砂の器』の超音波殺人といい、読む前のイメージに反してどうもいろいろと緩さの目立つ作家である。しかし容疑者の妻がじつは黒幕だった(らしい)という結末はよかった。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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