球形の荒野 下 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年1月8日発売)
4.09
  • (21)
  • (35)
  • (11)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 250
感想 : 23
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167697297

みんなの感想まとめ

壮大な戦時中の日本外交を背景に、亡霊となった外交官が日本に戻り、真実を追う新聞記者の物語が展開されます。全体を通して、複雑な人間関係や親の愛がテーマとして浮かび上がり、切ない結末が心に残ります。美しい...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読後の余韻がすごい。日本の敗戦をいち早く悟り、これ以上祖国に被害の及ばぬよう敗戦のための工作に動いた野上外交官と、日本の勝利を最後まで信じ、頑なに敗戦に応じなかった伊東中佐。正しいのはどちらだったのだろうとずっと考えている。そもそも「正しい」というのは結果的に決まるものであって、特に戦争において絶対的な善悪はないのだろうな、などと考えた。どちらの判断も絶対的に正しいものではないし、「悪」と決めつけて断罪してしまえるほど簡単なものではないと思う。
    最後の、久美子と野上外交官が父娘の関係を隠して邂逅する場面、松本清張作品の中でも一番泣けるシーンだと個人的に感じた。最後の場面は久美子の目線で進んでいくのがまたいいと思う。野上氏を「父」とは知らずに、でもどこか懐かしさを感じる人物として捉えている。大団円にしたいのならきっとここで父娘の感動の再会を描いていたのだろう。けれど、「父」だと名乗らないまま終わってしまうからこそ、よりこの関係性が美しく切なく感じる。年末にとてもいい本を読めた。

  • スイスの病院で亡くなったはずの外交官が、亡霊となって日本に戻ってきた。
    それを予感した新聞記者が、少しずつ真実に迫っていく下巻。

    全ての謎が世に明らかにならなくとも、満足できる結末は非常に切なく、また親の愛というものを改めて考えさせてくれます。

    私がこれまでに読んだ清張作品とは趣が違いましたが、読んでよかったと思いました。

  • 戦時中の日本外交に端を発する壮大なスケールの作品。
    話の繋げ方に少々の強引さは否めないが、日本の美しい風景と、戦争中の不幸な出来事を絶妙に絡み合わせて書く手法はさすが。

  • 『球形の荒野』
    2023年5月14日読了

    これもよかった。

    第二次世界大戦の自国スパイという大きな題材にも関わらず、
    その焦点は常に家族にある。
    奈良・京都の古都の匂いも本作に趣を与えていた。

    スケールの大きな問題をあえて身近な疑惑と取り合わせることで、
    感情移入でき彼らのもどかしさを共有することができた。

    最後、「カラスの子」を口ずさむシーンはうるっと来るものがあった。
    もう二度と会えないだろう子との再会の喜びと淋しさ。
    自らの本性を明かすことができないもどかしさ。
    子は子で勘付くところもあるが、それが一体なぜなのかはわからない。その悲しみ。

    様々な事件が起こりハラハラさせられたからこそ、
    ラストの穏やかなシーンが心に残る。

  • 「野上さんの行動は、旧い日本精神では解釈できない。こりゃア後世の批評に俟つほかはないね」滝の台詞から。
    正義と正義がぶつかり合い、人間が犠牲になるのが戦争だなと次ぐ付く想った。
    画家の死因がぼやっとしてるけど、そこは松本清張大作家がよくやっちゃうミスとして、許そ。(笑)

  • 最後まで失速せずに大きな余韻を残して物語は閉じました。
    日本のために生き、国籍を捨て、この地球において堂々と喜びの人生を生きることができない(地球=球形の荒野)元外交官の悲哀を感じたし、それでも国を思う気持ちと、官僚はしっかりしていても政治家がダメという構図は今も変わっていない哀しさを感じました。

    三浦半島の観音崎で海を観ながら父娘が『七つの子』を歌うシーンで物語は閉じるのだけど、奈良や京都から始まったストーリーは九州や横浜など日本各地の風景を多く取り上げて、この国の自然や文化の豊かさと人間の愚かさをうまく対比させているように思いました。
    良いお話だったよ。

  • 下卷匿名住入京都M旅館的村尾也被射傷,久美子發現滝居然也來到這裡。回東京後,與添田見面一五一十地告訴添田這些事,添田已經大概猜出一二。蘆村亮一去福岡的學會,不明人士約他在東公園見面,其實此人正式前外交官野上,然而野上嚴厲要求他不要追問並且不要告訴家裡的女眷們,亮一分別約了孝子母女與添田,但最終依然說不出口。

    另一方面,添田開始找尋當時前書記生門田的下落,後來前往伊豆找村尾,村尾得知他是久美子將來可能的夫婿之後態度一變(之前覺得他是新聞記者因此處處提防),請他去橫濱的旅館找滝,暗示法國人ヴァンネード在那邊等他們。添田因此找藉口把久美子硬約出來橫濱,並且找藉口讓她一個人去觀音崎。過程中添田也終於知道真相,野上在戰時中立國為了幫助日本早日停戰,在英美情報機關的協助下,不惜假裝死逃亡英國。而伊東中佐是陸軍強硬派,一直都認為必定獲勝,戰後依然是此類團體之成員,他在奈良古寺發現野上的筆跡自然震怒,這個賣國賊居然還活著一定要處理掉他,因此急忙上京質問村尾和滝,以及門田書記生(改名為筒井源三郎),門田受不了逼問只好說出來,但他也知道伊東一定會危害到野上的安全,就把他誘騙到世田谷殺掉。後來伊東中佐所參加的偏激組織立志要替其復仇,因此開始追蹤村尾、滝,畫伯應該也是慘遭毒手,村尾也被威嚇射傷,滝四處躲,門田也被殺掉,而那些人正繼續在追查野上的下落。而野上的心從1944年逃亡當時就如槁木死灰,心中如荒野,所以世界任何地方對他而言就是球形的荒野....這次回來日本是他決定最後的一次,而由於很想念女兒,透過滝去請託畫伯,當天扮成園丁偷偷地觀察女兒,也拿到那些畫;在南禪寺由於警察在那裏晃來晃去無法見面,但自己的太太在西芳寺拍了久美子的照片讓他燃起希望,偶然又住了同一間旅館,他們開口想邀久美子吃飯卻被拒絕。所以他只好偷偷摸摸地假裝打錯電話打到女兒房間聽聽女兒的聲音。與蘆村亮一見面完之後本來想就此一斷念頭,自己已另娶也不可能去見妻子,但是添田去找村尾,讓他再度燃起了希望。

    久美子在觀音崎燈塔巧遇親切的法國婦人,婦人馬上換手交給自己的先生,一個親切的日本人。老人很親切卻很直接地問她一些很直接私人的問題,但久美子卻不覺得討厭。最後老人說要唱一首童謠給她聽,那是父親以前唱給她聽過的童謠....

    故事就在合唱與久美子突然意識到的部分完結,餘韻裊裊。本來我還有點擔心愛國組織的殺手會衝出來,這樣就俗氣了。故事的句點可謂畫在一個絕妙之處。這部作品,一開始芳名帳上米芾風的書體引發的懸疑,還有外交官在二戰中立國的運籌帷幄的背景本身就很吸引人,而這裡登場的奈良古寺和阿京也是我的最愛,清張的開頭寫得很有情韻,我很喜歡他這部作品裡對古寺的描寫,然後作者一路踩油門讓人感到緊張萬分,中間數度擔心壞人會不會對久美子下什麼毒手,南禪寺和西芳寺的描寫是一個讓人愉悅地休息和閱讀的中繼站,年輕女性獨遊古寺的描寫也很美。過程中還一度誤認村尾和滝是惡人,野上回來對它們復仇之類的。而在下卷中間野上突然現身,正想著這故事要怎麼結束,然而野上終究無法一刀兩斷的父愛,和最後親子之間的見面,讓人非常感動。那時一直在故事中穿針引線的添田刻意不在場,親切的佛國婦人也刻意避開,故事只剩父女兩人,戴著太陽眼鏡的父親無法直接相認,用各種迂迴的方式在說話,但問題卻越來越接近核心。本來以為他會一直克制自己,沒想到居然開始唱童謠,忘記了女兒也會幫他補。這整段寫得也很有情韻,很壓抑但卻有很巨大的感情與激動在裡面,強烈的父愛不斷衝破壓抑,以及早已如荒野的心。始於情韻,終於情韻,真是一部非常出色的作品,也很令人感動,清張最後在此畫下句點也非常巧妙,這種日式的絕佳壓抑感,如同野上顯一郎本人的情緒,和久美子觀察他那些一切的舉動一樣,就是美好的日本本身。

    讀卷後解說,原來這部是1960年開始連載的早期傑作,解說提到當時清張當時正同時開始連載日本の黒い霧、悪いやつら,沒多久又開始砂之器的連載,沒想到在同時居然可以撰寫這麼多優質的作品,真的是很了不起,早期作品還留下戰前的一些情韻與鄉愁,還有一些美好。這部作品似乎沒有其他一直翻拍日劇的清張名作有名,我也是讀到快尾聲才知道球形的荒野的意義(只看書名完全無法想像也無法引起興趣),但是個人認為這是清張作品中,相當相當有情韻,相當出色的作品。

  • これは、やっぱり面白かった。解説が、半藤一利さんというのも贅沢。終戦間際の様々な駆け引き。現代史の勉強にもなる。

  • 戦後からまだ十数年、まだまだ生き証人たちがいた時代、客死したはずの外交官の(本当の)消息をたどりながら終戦直前の外交工作の謎を追う物語。

    名作「ゼロの焦点」と同じく、戦争によって人生を翻弄され、秘密を抱えながら新しい時代を生きている人々の姿が描かれています。
    登場人物たちは経済的にも比較的恵まれているし、在外公館に関わる特別な階層の人々だし、展開される外交の国家機密など、決して私には身近な世界ではないのだけれど、誰しも人に知られたくない(知らせるわけにはいかない)秘め事があるものかもしれないなとも思いました。

    展開はある程度推測できるし、すごいどんでん返しもないのだけれど、登場人物の性格付けや情景描写がとても魅力的。面白くて一気に上下巻を読み終えました。

  • 連合国の諜報機関との接触により日本を終戦に導いた外交官。しかし、祖国日本の国籍を失い、死亡したことに。最後のシーンは、感動的。また、巻末の半藤一利の解説が秀逸。

  • 流石の松本清張。今読んでも古い感じはしない。中盤の引き込まれ具合が良いだけに、最後の落ちはもう一つ。

  •  上巻のレビューでも書いたとおり、あまりにも安易なご都合主義が目立ちすぎ……(´ェ`)ン-…
     着想は悪くないんだけど、とにかく全体に雑としか言いようかない……(´ェ`)ン-…
     特に画家の死因説明、あれで納得できる人がいるんだろうか?……(´ェ`)ン-…
     最後の対話シーンにしても、それ以前にまるでコントみたいにちょろちょろ姿を見せ隠ししてるからなあ……感動も何もあったもんじゃない(>_<)
     あそこまで会えずにいさせた方がよかったと思う(>_<)

     ほんとこれ、クチビルゲ先生の代表作なの?……(´ェ`)ン-…
     まあ、タイトルはすごくいいんだけどね……(´ェ`)ン-…
     失敗作とまでは言わないけど、凡作以上のものじゃないな……(´ェ`)ン-…

    2017/10/22
     

  • 面白かった。感動した。

  • ミステリー的なオチがあるのかと思ったのでちょっと拍子抜け。
    清朝らしいといえばらしいかもしれない。
    先は読みやすいが終わり方は想像と違った。
    でも引き込まれる話で面白かったと思う。

  • ドラマ見た時もだけど、やっぱり最後のシーンには泣けました…

    特に久美子が自己紹介した後の野上さんの一言
    「……いい名前ですね」

    久美子が生まれたばかりで、勁一郎と節子が幸せそうに我が子に名前を付けた時が思い浮かんで余計に泣けました。

    この後添田が到着してから野上さんに会えたのか、野上さんは無事にフランスへ帰れたのか…まだ謎は残っていますが、親子が再会できただけでそれだけで十分だと思いました。

    球形の荒野…それは野上さんから見た地球だったんですね。

    この作品が私の初松本清張作品で良かったです。

  • 読了。

  • 面白かった。ちょっとラストは消化不良な感もあるけど。

  •  途中、福岡(津屋崎と東公園)を野上が訪れる場面も。

  • 着眼点には驚くばかり。最後が切なくて、それがまた良い。読後の余韻にしっかり浸りたい作品。

  • 10年以上前に仕事を教えてもらった大好きな先輩がとても特徴のある字を書く人で、古いファイルをめくっているときにその人の字を偶然見つけて感激したことがある。意図したわけではないけれど、この物語の主人公も文字で自分の存在をほのめかすことになり、そこからストーリーが展開する。やっぱり品のよい美しい日本を感じる話でした。田村正和主演のドラマも、まあ、悪くなかったけど、刑事物語にしてしまった時点で少し下世話になったような。でも、久美子役の女優さんは小説の雰囲気に限りなく近くて、清楚で可憐で素敵だった。

全22件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松本清張の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×