緋色の迷宮 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2006年9月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784167705336

みんなの感想まとめ

家族の平穏が少女失踪事件をきっかけに揺らぎ、疑念が深まる中で崩壊していく様子を描いた心理サスペンス。主人公の父親が抱える不安と疑惑は、家族の絆を試す試練となり、「家族写真は嘘をつく」という言葉が示す通...

感想・レビュー・書評

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  • クライム小説の第一人者であり、〝記憶シリ-ズ〟でも名高いトマス・H・クックによる大人の心理サスペンス小説。平穏だった家族の生活が、少女失踪事件との関わりによって亀裂が生じはじめ、徐々にその深刻さを増していく・・・。原題「RED LEAVES(紅葉)」に隠れた背景的意味合いが、強烈なインパクトとなって息苦しいまでの疑惑と焦燥感に襲われる。

  • 15歳の息子は殺人犯なのか、というミステリだけど主人公(父親)が疑うことにより崩壊していく家族がテーマだった。「家族写真は嘘をつく」という言葉通り普通の家族の裏にある不穏なものを描くのが上手い。疑心暗鬼が破滅の理由ではあるけど、家族の中に仄暗いものはあるというバランスも良い。すごいのは「じゃあどうすれば良かったのか」というまさに迷宮のような読後感だ。あとサラッと小さい街に住む同性愛者が普通に出てくるのがとても良かった。ヘテロセクシャルに対して「いつも同性愛者はイライラしてるとお思いですか」という問いは秀逸

  • ふむ

  • クックこそ、イヤミスの帝王じゃないかと思うんだけど。

    自分の息子と自分の実の兄が、実は幼女を性愛する嗜好を持っているのではないか、と疑い始めたところから始まる、否応なき家族の崩壊。

    最後の最後に踏みとどまったかに思えて、実はさらに別の結末を迎えることにより、突き落とされる絶望、というか、虚無感。切なさ。

    これぞイヤミスと言わずとして何と言おう。

    だけど、読んでしまうんだなぁ。そこがクックの魅力。

  • とても内向的で暗い、最後には希望もあるが、全篇、暗いので希望が押し消されてしまっている。

  •  少女の失踪事件が発生。少女のベビーシッターをしていたキースが容疑者の一人となる。キースの父親のエリックは息子が事件に関わっているのではないか、という疑いに徐々に囚われていく。

     
     家族なら分かり合えるのか、すべてを知っているのか。エリックは少女の失踪事件の容疑者が自分の息子となってしまったのを機に今までの平穏がもろいものであることを知ります。

     意識的にか無意識的にか今まで家族と向かい合うことを避けてきたエリックが、向かい合った結果得たものは?徐々に崩れていく家族の絆と明らかになるそれぞれの顔と真実、構成や展開、エリックの心理描写、どれも光っていて、重い気持ちになりながらも読まされました。

     女児失踪事件を巡るミステリとしては、尻すぼみの感じも否めなかったのですが、元には戻らない痛切さや哀愁を感じさせる文章表現や構成、心理描写はクックの面目躍如という出来のよさだったと思います。テンポや場面転換も今まで読んできたクック作品より良くて読みやすかった気がします。

  • 幼女の誘拐殺人の容疑者になった息子。
    彼への疑いがゆえに、それまでの世界が様相を変える。
    息子との事、妻との事、兄との事、父との事。
    そして彼の中ですべてが崩壊へと突き進んでいく。

    よく言われる、雪崩をスローモーションで見せる
    クック独特の筆致はあいかわらずすごいです。
    他のどんな作家も真似できないでしょうね。

    ほのめかしてはずらしての繰り返しで
    主人公が現実と思っていたことの裏が出るたびに
    彼の思い込みが悲しくなってきます。

    でも、何事にも戦ってこなかった彼に、
    この重要な状況で戦おうとして
    でも経験の無さゆえにずれた方向に進んでしまう彼に、
    読んでる自分と重なる部分がある事も否定できません…

    最終的に事件自体は解決しますが
    それは何もハッピーエンドを生み出さないのです。
    これまでのクックで一番悲しいエンディング。
    クックの重さは大好きなのですが
    沈んで沈んで、
    最後にちょっと浮かせてくれるかなと思いきや
    そこからさらに突き落とすとは思っていなかった。

    クックに慣れてからの方がいいですよ。

  • あらゆる対立を避けていた父親が、息子が幼女殺しの容疑者として追い詰められていき、ついに目をそむけていたすべての疑問と対峙することになるが、その結果は……という話。

    最初に言いたい。確かにこの話は主人公が探偵でも過去を隠しているわけでもないので、犯人捜しをするように楽しむのは少し違うのかもしれない。しかし、あの犯人で最後の最後に肩透かしを食らったのは事実。取ってつけたような最終盤の悲劇も、必要なかったのじゃないか。ハッピーエンドで何が悪いのか。

    とはいうものの、最終盤までは思春期の息子との付き合い方に悩む父親、そして決して愉快なものではない親兄弟との関係がスリリングだった。

    かわいらしい8歳ぐらいの女の子が大好きで、女の子の画像をダウンロードしたり、小学校を双眼鏡でのぞくのがせいぜいのウォーレンが、弟にまで軽蔑されていたと知って自殺してしまうのがとても悲しい。すべてに立ち向かおうとする主人公の成長がもたらした悲劇だった。

  • 自分の息子が幼女誘拐犯ではないのか?…という疑惑だけで、話には特に進展もなく最後まで行く。主人公に魅力があるわけでもなく、テンポがいいわけでもなく、疑惑だけで読ませるのはすごいと思ったが、個人的好みとしては児童ポルノを許せない犯罪としながら、それをネタとして使っている話には嫌悪感を覚えてしまう。

  • これは・・・ミステリなんだろうけど、どちらかと言えば
    家族とは何ぞや?というテーマの方に重きを置いてる感じ。
    自分にとって都合の良いことだけを見て、都合の悪いことは見ない。
    見なければならない時は、都合のいいように解釈をする。
    全てが受身で、自分から挑もうとはしない。
    主人公エリックは、まさにそんな男だったりします。
    そして追い詰められて初めて色んなことを考え出したら
    疑心暗鬼に陥って暴走・・・
    そして、そりゃないよぉ~って終わり方なので
    後味がよくないです。
    なんというか読みやすくて読ませられたのに
    虚しさが残ってしまいました

  • 覇気のない思春期の息子を持て余す「わたし」。ふとした疑念が果てしなく大きくなって行き着いた結末。有無を言わさず読者を巻き込む緻密な筆力に脱帽。そして、毎度おなじみの重たい読後感。ぐったり。。

  •  主人公は写真屋を営む平凡な男性。ある日突然、息子に幼女誘拐の容疑がかけられて…。
     主人公が過去を回想する形で語られるので、全体のトーンが暗い。暗さと、疑われてでもなんともしようのない焦燥感が重なって、読んでてどきどきした。
     主人公の父や兄にも問題があって、彼はそれらから抜け出す形で今の生活を手に入れたのに、事件によってそれに引き戻されていくのが切なかった。
     家族を「愛憎を煮詰める大鍋」と言ったのはジョナサン・ケラーマンだが、クックなら「全てを引き寄せ飲み込むブラックホール」とでも言うのだろうか。

     あっという展開で終わるのだが、やはり主人公の周りは黄昏ている。
     けれど、遠い空に星の瞬きが見えるような終わり方。
     バッドエンディングのようで、そうじゃない。そして、こういう終わり方ができるのはクック以外にいないだろう。

  •  読了。

  • 5月21日読了。8歳の少女が失踪。息子か、兄が関わっているかもしれないという疑念が…。

  • むかしからニールはちょっとずれている男だという気がしていた。おどけたような陽気さや女っぽいところがあるのはともかく、あまりにも感情的で、お涙ちょうだいものの映画に簡単に感動したりするからだ。しかし、いま、その過度に感情的なちころがまさに本当のやさしさであり、真摯さだと感じられた。彼は心の奥底から、まさに骨の髄から、他人に共感してしまうのだろう。そういえば、トラブルというのはレンズをまわすようなもので、その結果ふだんより鮮明に見えてくるものがある。ふいに、だれが心配してくれ、だれが気に留めないか、だれがほんとうに親切で、だれの親切が上辺だけのものかが透けて見えてくる。

  • 070324

  • トマス・クックの本はかなり読んでいるが、期待を裏切られたことはない。この本も、一気読みの面白さであった。読んでいない人のためにネタをばらすことは出来ないけど、結末は圧倒的だ。抑制のきいた話の運びと文体(文体には翻訳者の翻訳の仕方も勿論あるのだろうけど)、全体的に常に感じる暗さ、あるいは、哀切みたいな感覚、クックのこれまで読んだ本に共通の感覚をこの本からも感じる。読み始めたその時から、この物語は悲劇的な終わり方をするのだろうな、という予感を強く感じる、そのような本でもあった。お勧めだ。

  •  あらしじ:写真店を経営するエリックは15歳になる息子キースとのぎくしゃくした関係に不安を感じていた、、、。そんな折、息子がベビーシッターに行っていた家から少女が行方不明になり、息子に容疑がかけられた。息子の無実を信じる裏でどこかで消えない疑念、エリックの兄にもそういう性癖があったのだ、、、。



     「人が考えてるとおりの人間なんてどこにいるんです?」


     悲劇的なラストだが、実はこの作品にはぴったりなラストかも、、、。

  • 家族が犯罪を犯したと疑われた時。最後まで信じ、守りきれるだろうか。むしろ疑い、最大の敵になるかもしれない。息子と兄が疑われ、過去の記憶が蘇り、完璧なはずの家族が壊れていく。相変わらず、最後まで一気読みでした。

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著者プロフィール

1946年、東京生まれ。訳書に、シャルル・ペロー『眠れる森の美女――シャルル・ペロー童話集』(2016)、ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下巻、2012)(以上、新潮文庫)、イアン・マキューアン『未成年』(2015)、ジョン・バンヴィル『いにしえの光』(2013)、マイケル・オンダーチェ『ディビザデロ通り』(2009)(以上、新潮クレスト・ブックス)、トマス・H. クック『サンドリーヌ裁判』(早川書房、2015)、ジョン・バージャー/ジャン・モア『果報者ササル――ある田舎医者の物語』(みすず書房、2016)ほか多数。

「2016年 『果報者ササル ある田舎医者の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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