メイプル・ストリートの家 (文春文庫 キ 2-29)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167705367

感想・レビュー・書評

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  • 「My Pretty Pony  私の可愛い子馬」
    人間がいくら早く数を数えようと、そんなものは時間となんの関係もない。本当にその通りだ。当たり前だが誰にでも時間は平等に流れているし、長い短いと嘆いた所で時間側が譲歩してくれる事は無い。私の可愛い子馬時間を大切にしよう。

    「Sorry,Right Number  電話はどこから...?」
    これは隠れていないネタバレレビューを見てしまったので結末は完全に「無」となったが、世界観が陰鬱で一番キングらしい作品に感じた。言ってしまえば、欧米版 世にも奇妙な物語だろう。やはり、ホラーと電話は相即不離の間柄なのですね...怖かったマンです。

    「The Ten O’clock People  十時の人々」
    ある日、突然人の姿がおぞましいモンスターに見える様になったら私は100%叫び声を上げるだろう、とびきりすんごいやつで。だが、見える事を知られたらそのモンスターに命を奪われてしまうのだ。そんな異世界とモンスターのこれでもかな悍ましさを表す文に恐れ慄くだけの誰得な作品だ。しかし、私は好きなんだなぁ。人間性...。

    「Crouch End クラウチ・エンド」
    これまた世にも奇妙な物語感の強い作品だが、得体の知れない「何か」がしっかり現れるデンジャーの融合然り、ファンタジーホラーの土台は完璧だ。個人的には結構好きだったので長編で掘り下げた状態で楽しみたかった。平穏な街など存在しないのだろうか...謎は謎のままが勿体ない。

    「The House on Maple Street メイプル・ストリートの家」
    これはもうコメディで良いのだろう。カウントダウンの文字盤を見た時、それがゼロを差した時に訪れる未来を想像すると、大抵の人は「爆発」か「離陸」に落ち着くのではないだろうか。さて、不穏を突き付けられ続け、心が沈みきったここら辺にて盛大に裏切られて下さい。読了感の悪さは幾分か払拭される事でしょう。....ハッピーエンドではありませんが。ぐふふ。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    独特の世界観は健在しているし、キングの入門には大変オススメ出来る作品なのだが、やはり薄い。長編でさえ心理描写メインの不穏な空気感がひたすら続く、波の少ない作風なだけあって、短編だとその良さは掻き消えていたように感じる。ジワジワが醍醐味なのに早送りなんだもの。ストーリーで追ってしまうと如何せん理解し難い場面が多いだろう。

    〜四話目まで全て煙草が絡んだ喫煙者にとっては恐怖度が増す仕様だったのだが、最終話では特に触れられなかった。無駄にドギマギしてしまった(照)
    煙草を辞めずに減らすと上司や警官がモンスターになるらしい。つまり、辞めれないなら肺癌と腕組んで仲良く生きていくしかないという事だ。だって、モンスター、怖いもの。

  • 再読。短編集。
    「かわいい子馬」と「十時の人々」はストーリーを追えていないので割愛。
    「電話はどこから……?」脚本。まさか、5年後の自分からとはねえ。なぜそうなったのかは不明。
    「クラウチ・エンド」ラヴクラフトのクトゥルフ神話みたい。彼らはどこへ行ってしまったんだろう?
    「メイプル・ストリートの家」トランスフォーマー的な? ちょっと痛快。

  • 短編集。

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    表題作『メイプル・ストリートの家』について

    <簡単なあらすじ>
    母の再婚相手(四人の子どもたちからすると継父)は嫌な奴だった。母にはつらく当たるし、子どもたちにはやたらと厳しい。そのうえ見栄っ張りでいいところがない。苦痛に耐える母親を不憫に想う子どもたち。

    壁の割れ目のなかに謎の金属を見つけた四人は、継父の目を盗んで家じゅうに小さな穴を開けて調べ始めた。
    どうやら家を囲むように金属は成長している。そして謎のカウントダウンも始まっている。カウントダウンといえば、爆発か発射のどちらかだ。

    母親を外出させるように仕向け、継父を家に閉じ込め、カウントダウンを迎える子どもたち。そして家は継父ごと離陸した。

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    高校生の頃、理不尽な理由で行き過ぎた指導を繰り返す部活の顧問が本当に憎くて、部員たちで相談したことがある。車をぶっこわしちゃおうよ、とか、体育館燃やしちゃおうぜ、いやいや全員で襲っちゃえばいいじゃん、と。それらは憂さ晴らしの冗談だったし、もちろん実行されることはなかった(だから行き過ぎた指導は三年間みっちり続いた)。
    体育館、もしくは顧問の住んでいる家ごと離陸して、宇宙に飛んで行っちゃえばいいじゃん、という発想はなかったな。もちろん実行できるわけないけど。


    家ごと発射された人はいつ死ぬんだろう。
    もし上昇し続けるとすれば大気圏周辺だろうか。ある程度の高さまで上がって落ちてくるとすれば落下の衝撃かもしれない。軍の戦闘機に撃ち落されることだってあるだろう。
    どれもあんまりいい死に方じゃないな。発射されたくないな。

  • ほーー。

  • 読みかけのまま営業車のトランクに入れっぱなしだったのを見つけて再読。

    いつも海外の現代小説を読むとき、その国の一般的な風俗、風習、文化に馴染みがないため、人物たちの言動や思考に感情移入できないもどかしさを感じるが、特にキングの作品はそれが顕著。
    例えば、作品に度々登場するテレビ番組、食べ物、飲食店などの固有名詞は、アメリカ人にはポピュラーなのだろうけど、こちらは聞いた事もない。その辺の知識があれば、もっとキング独特のユーモアセンスやリアリティーを感じ取れるのに。

    また、キングの短編集には、必ず意味不明の一編があるけど、今回も「かわいい子馬」「電話はどこから...?」がさっぱりわからん。爺さんと孫の心温まる交流を描きたかったのか?台本形式の作品が描きたかったのか?
    でもその他には、いつもの調子でちょちょいと軽く異空間に連れてってくれるキングらしい佳作もあった。
    特に「10時の人々」は喫煙者達の反逆という発想が面白かった。

  • スティーブン・キングの短編集の良さは気軽に読めるし面白い、というところにある。本書は「クラウチ・エンド」が印象的だった。キングがクトゥルー神話を!

  • 2014.7.31読了

    スティーヴンキングの短編集。
    「ナイトメアズ&ドリームスケープス」という二巻の短編集を、翻訳するにあたり文庫本四分冊に編成しなおしたものらしい。

    全5作収録。
    ・かわいい子馬
    ・電話はどこから・・・?
    ・十時の人々
    ・クラウチ・エンド
    ・メイプル・ストリートの家

    【かわいい子馬】
    長編の一部とのこと。あるいはスピンオフ的な番外編ともいうべき作品らしい。ホラーやSF的なオチがなく、そのことに肩透かしをくらったような気持ちになるが、改めて文学として接してみれば、不思議と味わい深い作品。年齢を重ねていくことで時間の観念がずれていくことに恐怖を感じる老人が孫に語る教え。かわいい子馬とはつまり、アリアドネの糸やヘンゼルとグレーテルのパンくずのようなものなのだろうと思った。

    【電話はどこから・・・?】
    シナリオ形式。端的な説明が、余計に想像力を膨らませ、映像が容易に浮かぶ。すっきりと筋の通った切ない話。
     
    【十時の人々】
    愛煙家や嫌煙家には見えず、禁煙を決心しつつ挫折を繰り返す者にしか見えない蝙蝠人という発想が秀逸。もしかしたら一番楽しめた話。
    「ランゴリアーズ」と「痩せゆく男」を監督したトム・ホランド監督により映画化されるとのこと。2014年6月からクランクインとか。

    【クラウチ・エンド】
    クトゥルーもの。人智を超えた存在に翻弄され、あるいは例え怪しげなことがあったとしても、敢えて何もみないことこそが長生きの秘訣なのだと思わさせられる。
    不気味な話。

    【メイプル・ストリートの家】
    アメリカの男の子なら、逆に進む時計がゼロを指したときに起きることは二つにひとつしかないことをだれでも知っている。爆発か離陸だ。
    で、どちらかになるのかというのがオチ。
    カウントダウンのスリルが後半に向けて加速していき、最後にカタルシスが、多分に残酷ではあるが、訪れる。
    しかし、やはり子供の世界観が巧い。

    それにしても、キングが自分の作品の一つ一つに対し必ず解説をつけることに、初めとても違和感があったが、今となってはファンサービスの最たるものだと実感。
    並みの作家じゃこうはならない。作品の面白さを半減させかねない。手前味噌で恥ずかしくなる可能性もある。

    なんだかんだ言って、随分楽しんだ。

  • 2014年5月19日読了。スティーヴン・キングの短編集「ナイトメアズ&ドリームスケイプス」を4分割したうちの1冊。この人の長編は時にコッテリしすぎて楽しめないときもあり、また初期の短編は荒っぽくていささか完成度の低いものも多いが、2000年以降円熟期に入った後の短編集はどれもレベルが高い。珍しくクトゥルフモチーフを全面に出した「クラウチ・エンド」やキング得意の少年少女ものが、来るか来るかと引っ張ったオチで爽快に(文字通り)ふっ飛ばしてくれる表題作、映画「ゼイリブ」+筒井康隆テイストな「十時の人々」、妙に印象に残る・この人ならではの「かわいい子馬」、脚本仕立ての「電話はどこから・・・?」など収録作はバラエティに富んでいて非常に楽しめた。近作では、私にもまだ読み落としがありそうだ。

  • 表題作「メイプル•ストリートの家」に星4つ。

  • 短編集。「十時の人々」と表題作の「メイプルストリートの家」が好み。どちらもSFじみた話ながらも、ともするとありえることなのでは?と思わせる筆力はさすがキング。特定の時間になるとこぞって喫煙スペースに現れる喫煙者たちを指した「十時の人々」という言い回しが面白い。

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著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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