世界のすべての七月 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2009年6月10日発売)
3.66
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784167705732

みんなの感想まとめ

青春の延長として描かれる同窓会を舞台に、1969年の出来事や最近の事件を交えた群像劇が展開されます。登場人物たちが語る自業自得感や夢の追求、人生の選択とその影響が、読者に深い共感を呼び起こします。作品...

感想・レビュー・書評

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  • 小説が上手かどうかにかかわらず、なんだかどうしても気になってしまう作家で、だからこそ翻訳したい作家なのだ、というようなことを翻訳者の村上春樹さんが書いています。彼がいうところでは、彼の小説には「下手っぴいさ」があるのだと。でも、翻訳されたあとの本書を読んでみるとそういうところはほとんど感じられませんでした。ストーリーの展開には人生を知っているもののそれがありますし、文章やその展開にだってまっとうな誠実さがあると感じました。反対に、翻訳がもともとの文章の素顔を、慣れた感じで化粧しているかのような感覚が僕にはありました。

    1969年にダートン・ホール大学を卒業し、2000年に同大学で卒業31年目の同窓会が行われている模様を挟みながら、主要な11人の過去がひとつずつ語られていきます。甘さよりも苦さが際立つかれらのその、それぞれの人生の物語。生きることの苦しい部分を、こちらがするすると読めてしまうところは、エンターテイメントの性質を備えている作品だからだなあと思いました。そして、味わい深い。人生の真であるところにぺたっと貼りついているような距離感覚での文章表現が巧みです。そこまで言い得てしまうんだ、という表現、単純な表現で直截に射ぬくのではなくて、レトリックを用いてやんわりと、だけれどそこで作者が言っている中身を考えるとど真ん中のストライクなんです。素晴らしい球で抜いているんです。そういった見事な球がかなりあります。

    作中のそれぞれの人生の話において、その重みや彼らがやらかしてしまったことのオリジナリティについていえば、それはもうどこかに綻びを探そうとするならばそれが愚かで恥ずかしいことであると顔が熱くなるだろうことをすぐに悟るくらい真に迫っていて、この世界のどこかで実際にあったことをエンタメ的な表現で小説にしたのではないか、と信じてしまいそうになるほどです。

    作者はベトナム戦争に従軍したそうですが、ベトナムでの戦地の話があるし、若い女の子の危険なお金稼ぎの方法とそこに続く落とし穴の話、二人の夫を持つ女性の話、などなどもっとありますが、語られる話の幅が広くて、だからこそ様々な人生を経た人たちが会する同窓会をこういった形で立体的な群像劇に仕上げられたのでしょう。かなりの力量と熱意がなければ作り上げられない作品だと思います。

    さまざまな人生。それらの人生の細かいところを知ると途端に親しみを覚えるものです。今の彼・彼女はそうやって出来たのだなぁとわかりますから。とくにその苦しんだ部分、そこは大きいですね。きっと苦しみのディテールにその人の人生の魅力があるんです。誰かにつよく愛おしさや慈しみを感じるのだとしたら、その誰かの苦しみのディテールを知ったからだったりしませんか? 若いうちは、苦しみの意味なんてよくわからなくて、逆に、苦しんだ過去などは弱点だとか汚点だとかと考える人は多いでしょう。けれども、そこを自分で受け入れて捨ておかないでいられるようになったら、そしてカウンターのような心理で自慢のために使ったりしないようになれたなら、この小説の登場人物たちのように、紙一重ででも善きほうへと小さく一歩をふみ出せるのだと思います。

    といったところです。本書のタイトルはどういった意味だろう、と常に頭の片隅に疑問を置きながら読んでいました。ラストに、「あ。」と思う終わり方です。全ての人は、世界のすべての七月に生きている。永遠って実はあるのだ、ということだと読めました。儚いけれどパワーに満ちた永遠であり、信じる者だけの永遠なのかもしれません。

  • 1969年ダートン・ホール大学卒業の彼らの30年目の同窓会で、それぞれが語る1969年の出来事や、比較的最近の事件など青春時代の延長が同窓会の現在視点、回想の交互で語られていく物語。
    なんていうか自業自得感満載なんだけど、これもこれで「夜の果て」なのかなと。
    もともとは短編で、それを編みなおして改稿して長編にしたてたものらしい。
    私は「リトル・ピープル」と「ノガーレス」が特に印象に残った。

    訳者あとがきにもあったけど最近のアメリカの小説はとにかくうまいんだけど心に残るものがない。
    そんな中でたしかにオブライエンのヘタウマな感じは心によくも悪くもひっかかりを残すかも。

  • 面白いか面白くないかで言えば、大して面白くない。でも、読むのをやめたくはならなかった。
    この作品を一言で言えば、「とっ散らかった群像劇」だと思う。あまり読みやすくなくて、まとまりが感じられない。でもつまらない!と切り捨てたいとも思わない、この感じは何だろう?とモヤモヤしながら読み終えて、訳者・村上春樹のあとがきを読んでみたら、村上氏がこの変な感覚をきちんと言葉にしてくれていた。
    小説には、自分の想像を超える幅広い評価方法が存在することを学べた貴重な作品。

  • 4.0 分厚く長い話だが、登場人物像の背景が見えると一気に読める。50歳や60歳になっても成熟し落ち着くわけではないと言う群像劇。戦争体験は、決して前向きに生きていく力にはなり得ないと言う作者のスタンスには共感できる。あがきながら、幸せを求めて生きていきたい。

  • 村上春樹氏の翻訳というだけで手に取った小説。

    自分より年上の50代男女のさまざまな人生が書かれているということで、何か今後の参考になるかもしれないという視点で読み始めたけど、参考にはならなかった。

    とにかく登場人物が多い。理解力のない私は最後まで混乱していたのも、いまいちハマれなかった要因です。

  • なんだろう、とても好きな読後感だった。私はこういう過ぎ去った日々とか、センチメンタリズムとかそういうものに滅法弱いみたい。50歳を過ぎた登場人物たちは大学の同窓会で輝かしかった日々と、その後の現実的な人生について思いを馳せる。そして馳せるだけじゃなくて実際に行動に移すところがいかにもアメリカっぽい。大学の時に思い描いていた人生を送っている人は誰もいなくて、病気や離婚や問題ばかり。だけどもう帰らない青春の日々の記憶を共有している間の彼らは幸せそう。ポーレットとディヴィッドが好き。

  • 自分と同世代の人々の話。ノスタルジーと今後、後悔と希望。誰しもが人生に抱える事柄を何人かのパターンで描いてる。しかし、みんなお盛んなこと。

  • 僕ら大人になったなら
    大事なことを
    忘れちまうらしいんだけど
    そんなのはイヤさ

    ──とはスパルタローカルズ「ボウイ」の冒頭だけど、大人になってももし仮に
    「大切なこと」を忘れ(られ)ずにいてしまったらどうなるのだろうか。
    死に近づく肉体があって、叶わなかった夢があって、愛する人も自分も同じように老いる。
    (ハッピー)エンドを目指し、(ハッピー)エンドを迎えた後に長く続く人生。
    小説になるような人生の、エンドマークの後の時間。
    「俺たちまだまだこれからだぜ!」みたいなことを、言えるか?果たして。どうなのか。
    非常にしんどく、しかし楽しい読書だったです。
    世界の全員に幸せはやって来ない。しかし!っていうね。。

  • ティムオブライエンは、「本当の戦争の話をしよう」をかつて読んでとても感動し、何度も読み返した。村上春樹氏が翻訳していることもあってか、とても素晴らしい作品だったと思う。この作品も、村上春樹氏が翻訳している。1969年卒業した人々の、31年後の同窓会の話。群像劇であり、特定の主人公がいるわけではない。
    文章表現はさすが村上春樹。素晴らしい。群像劇なので誰がどういう31年を過ごしたのか記憶に留めなくてはならないという読者に努力を求めるもの。殆どが、こんなはずではなかった、という悔いと共に思い出を語り合うのだけれど、まだこれから、という希望も持っている。
    自分と比べるとどうかなあ。やはり同じようにこんな人生ではないはずだったんだけどと悔やんでばかりいるような気がするし、少し未来に希望を持っているところもあるかもしれない。そういう意味では共感できたかもしれない。
    村上春樹氏自身の小説よりも、翻訳の方が文章のキレが素晴らしいと思うのでこれからも翻訳中心に読んでいこうかなと思った。

  • 20代の今に読めてよかった。登場人物と同じ50代だったら、くすぐったくて辛くて読みきれないと思う。夢や思想や好きな人や美や居場所を求めて求めて、最後には生々しさや痛々しさだけが残る「人生」のどうしようもなさ。そこから感じられるエネルギーを活字で楽しめた。

  • 同窓会とそれぞれが同窓会までひきづってきた過去、それを交互に描く。

    アメリカ、それもフラワーチルドレン世代の友情や人間関係をしっくり理解することはできませんでしたが、悩む姿、悔恨などはある程度人生を生きてきた身なら多少は覚えのあることで、そこに共感できるものがありました。

    • ポポンさん
      図書館。ポールオースターは未読です。おすすめありますか?
      図書館。ポールオースターは未読です。おすすめありますか?
      2021/06/06
    • pandaclubさん
      ムーンパレスでしょ?
      ムーンパレスでしょ?
      2021/06/06
    • ポポンさん
      ありがとう。
      ありがとう。
      2021/06/06
  • 宇野常寛「遅いインターネット」つながりで。/ダートン・ホール大学の1969年度同窓会と、参加者の学生時代、あるいは現在が交互に語られる。/ベトナム戦争で足を失ったもの、ベトナム戦争の徴兵から逃れるためカナダに亡命したが駆け落ちを望んだ彼女はついてきてくれずそのことをいまだに恨んでるもの、駆け落ちを断って結婚し堅物の夫・優秀な息子たちと裕福な生活を送るがガンで片胸をとってから喪失感になやむもの、二重結婚生活をおくるもの、足を失った夫から逃れるように去っていったもの、事業で大成功をおさめたのち大嘘をついて絶世の美女と結婚したがそのことがバレて一生逃れられない思いをもつもの、目の前で不倫相手が溺死してしまったもの、子供の頃からの夢だった牧師の職を投げ打つのがわかりつつ人のうちに忍び込んだもの、反戦運動や劇団活動に挫折してハンサムで裕福な男と結婚したものの長い長いモラハラを受け続けたもの、50を越えて夢見た結婚生活を手に入れたのにカジノでの大勝を機に二週間ももたなかったもの。それぞれの人物が来し方行く末を語り、わめき、くっつき、離れ、寄り添い、元の生活へもどったり、新たな道を踏み出したり。過去の選択を悔いたり、間違っていなかったと励まされたり。愛する人にずっと言えなかったことを告白して赦しを乞うたり。ずっと言えなかった思いを告げたが、友人止まりで、けれどもとても信頼され帰りの飛行機にともに飛び乗ってくれるぐらいの思いだったり。誰もまっさらな完全無欠な幸福をかかえたものなどおらず、悩み逡巡し、それでも…という思いに。/一兆年くらいは愛なんてそこらじゅうにふんだんにあった。(エイミー)/殺戮のおかげで私の人生ははつらつとしたものになった、戦争がいつまでも終わらなければいいのに。(ジャン)/ドロシーが相手だと、人は語られざるものに対して注意を払っていなくてはならない。消去と削除に対して。/私がいらいらさせられるのはね。みんながいまだに、60年代にべったりしがみついていることなの。(ドロシー)/彼だってひとりの人間だったのよ。そこには熱ってものがあったの。(ポーレット)/戦争反対とか、私たちの外側にあったもの。私たちは世界を変革しようとしていた。でもそれでどうなったと思う?世界が私たちを変革しちゃったのよ。(エイミー)/赦しというものの素晴らしい点は君がそれを自力で勝ち取るわけじゃないということだ。それは無償で与えられる。(デイヴィッド)/

  • 私より一世代上のアメリカに住む若者が大学卒業31年後の2000年7月8日に催した同窓会での一人ひとりの物語を集めたクロニクル集。日本でもアメリカでもベビーブーマーの世代が50歳となって迎える日々は、それでもこの世代の明るさ(あるいは能天気さ)を宿している。ある者はこの日にそれまでの幸せを失い、ある者はもしかしたらこの日から幸せが始まる。それぞれが歴史に名を残すことはない平凡な毎日ではあるが、子細に見ればユニークなそれまでのライフイベントを持っている。1960年代後半に青年期を迎え、市井に生きた人々が振り返るとこんな話になるのかなと思わせる展開が、私にはとても気持ちよく読めた。レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」は読みにくいなあと嘆息する出来だったが、この本はよく紹介してもらえたなと村上春樹に感謝したい。

  • 初めて村上春樹の翻訳を読んだ。彼の作品がアメリカ文学から相当の影響を受けてることが分かった。

  • 春樹翻訳だからと期待したせいもあってか
    頑張って読んでみたけど、途中で挫折。
    読み易くはあるんだけど、中身面白くないよ....。

    グデグテの人間関係とその背景を
    ダラダラと文章にされてもなー。

  • 1969年の若者達が、2000年に同窓会で「かつての若者達」と出会うことから始まる群像劇。

    それぞれが、それぞれの形で傷つき、くたびれている。
    その姿が哀しくも、どこか可笑しく感じた。

    皆んなこうして歳をとって、死んでいくんだろうなぁ。
    そしてその子供たちも、そのまた子供たちも…。

  • 私にとっては大先輩にあたる人物たちの、様々な人生。
    なのに、すべての登場人物が自分の中にいるように感じる。

    人にはどうしようもないところがある。
    危険だとわかっていても選んでしまったり(その後ちゃんと失敗する)、別れてから相手を本当に愛してしまったり、人に知られてもあまり誇れないことをかなりしてしまっている、まさに「恥の多い人生」である(私の場合)。ご丁寧にそのどうしようもない経過を、大切な友人に逐一報告していたりもする。

    この物語に出てくる大人たちは、そんな人生の、もっと汚くて剥き出しな部分まで大胆にさらけ出してくれる。
    元牧師のポーレットの言葉が、そんな彼らの人生の出来事をより人間らしく色濃く印象づけている。
    「私ちちがイエスと言ったとき…最終的な決断を私たちが下したとき。…人生というのはそういうことによって初めて人生らしくなるのよ。」
    彼女はさらに続けている。
    「それ以外の記憶なんか、ほとんど全部どこかに消えちゃう…まるで自分の人生を、一度も使わなかったみたい」

    誰かのものではなく自分の人生であること。
    たとえ最悪な状況に陥っても、それが人生の味付けになることもある。
    この本を開く時間は気のおけない友達とどうしようもない話をしているようで、読了した時淋しさを感じたくらいだった。
    村上さんの読み進めやすい訳もとても良かったが、最大の魅力は村上さんもあとがきで書いてみえるように、「欠点が逆に誠実さを生み出している」この文章だと思う。
    自分が欠点だらけなので、というわけではないけれど、年齢を重ねるにつれて、欠点とみえる部分を持つ人(特にそんな男性)にたまらない魅力を感じるようになっている。
    10年後に読んだら、今よりさらに登場人物たちを愛しいと感じるかもしれないと思っている。

  • ほろ苦い。52歳なんて永遠の先みたいに思えたけど、きっとすぐ。

  • 宇野常寛「リトルピープルの時代」で言及されていたので気にしていたのですがしばらく積読状態でしたが、たまたまページを開いたら止まらない止まらない。こちらが登場人物達の世代とシンクロするように同窓会、同期会多発ジェネレーションに入っているからなのか…会社でも社会でももうちょいなのか、もうそろそろなのか自分の来し方を見つめる機会が増えているからなのか…もちろん若者が世界を変えることを信じた1969年のLOVE&PEACE世代のハチャメチぶりには圧倒されます。登場人物達は世界は変わらず、自分達が変わったのだの嘆息しますが確実に彼らは社会を変えてきたと思います。

  • 途中まで読んで放っておいた本。今読むと登場人物達の心情にかなりシンパシーを感じられた。とはいえ、文化の違いか育った時代や社会制度の違いか、十分に理解はできない。そんな時代やそんな時代を過ごしてきた人たちはこんな風になるのか。へ~。って感じ。

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著者プロフィール

(Tim O'Brien)1946年ミネソタ州生まれ。マカレスター大学政治学部卒業後、1969年から1年間ベトナムで従軍。除隊後ハーヴァード大学大学院博士課程で政治学を学び、1973年に自らの体験をもとにしたノンフィクション『僕が戦場で死んだら』(中野圭二訳、白水社)を出版。『カチアートを追跡して』(生井英考訳、国書刊行会)で1979年に全米図書賞を受賞した。他の著書に、『ニュークリア・エイジ』(1985年)、『本当の戦争の話をしよう』(1990年)、『世界のすべての七月』(2002年、以上村上春樹訳、文春文庫)、『失踪』(1994年、坂口緑訳、学習研究社)などがある。

「2023年 『戦争に行った父から、愛する息子たちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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