兄弟 下 開放経済篇 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167705916

作品紹介・あらすじ

廃品回収業から身を起こした李光頭はのし上がり、女好きが高じてついには「処女膜美人コンテスト」を開催する。一方公営工場を失職した兄・宋鋼は、豊胸クリーム行商人として辺境をさすらう。大絶賛された文革篇に続く開放経済篇は、金と欲望にまみれた現代中国を下品すぎる描写で活写し、顰蹙と議論を巻き起こした大問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 中国の本初めて読んだけどおもしろかった!
    途中、予想したことが起こってしまったよ。

  • 文学

  •  はっきり言って、当初期待していたような兄弟愛の物語を味わうことはできなかったが、そもそも私のこの期待の仕方が間違っていた。
     宋鋼は優しいというよりも愚鈍にすら見え、李光頭はあまりに横暴で自分勝手、それでいてそれを補って余りあるようなカリスマ性もない。李光頭は後半、気持ちの良い男として描かれるが、都合の良い成金との印象の域を出ない。エピソードや表現も物語が進むにつれより低俗度を増す。
     しかし一方で、上巻に続き下巻でも、中国の近現代史が背景として濃く描かれていた。人々が資本主義的な経済に取り込まれ、それぞれが豊かになることを追求し始めた改革開放。人々の変わりように時代の無常を感じるとともに、時に醜いほどにエネルギッシュな彼らの上昇志向は、資本主義の時代に生きる現在の私たちのあり方を再び見つめなおす契機ともなった。李光頭への投資の経過に一喜一憂する点心の店に集まった5人の様子や、経済力が日々の生活における地位や人生の幸福を全て規定するように描かれた劉鎮の姿は印象的であった。その中で、林紅と過ごしたつつましい20年間が最高の幸せであったと語る宋鋼の遺言は燦然とした輝きを放っている。
     物語としての質という意味では個人的にはあまり評価できないが、背景として描かれる中国の近現代を通して、結果的に少なからず考えさせられるという点では、読む価値がある一冊ともいえる。
     

  • 文革後

    2016.10.3 日経新聞

  • 小説としては本当に面白かった。ページを捲る手が止まらない。
    他のレビューにもあるように、内容はとても下品である。
    あの有名な余華の小説を初めて読んだのだが、こんなに下品な内容の本を書くのだろうかと驚いた。

    上巻、下巻はずいぶんと話の内容が違う。
    上巻は目も背けたくなるような文化大革命時のできごとが書かれている。
    義父が本当にかっこいい。
    拘束され批判対象になっていながらも、妻との約束を守るために上海に行こうとする。
    兄弟二人でも生きていけるように、料理を教える。
    こういう人間が多数殺されてしまった時代のことを小説や映画の題材にすることは多い。
    人間とは、生きるとはどういうことか。人間が生きる上で必ず起きる疑問だからなのだろうか。

    李光頭の義弟・宋剛のことが今でも気になっている。彼は幸せだったのだろうか。豊胸手術してまで仕事をするべきだったのだろうか。何も自殺しなくても良かったのではないだろうか。彼は結局、妻のことよりも自分の兄弟のほうが大事だったのだろう。幼少期の辛い時期を共にした兄弟のことがどうしても嫌いになれなかったのだろう。

    読み物としては、本当に面白い。
    ただ、作者はなにを伝えたかったのか。いろいろなことが本書に詰め込まれているため、私にはよく理解できなかった。他レビュアー様の意見をもっと拝見したい。

  • 読んでないけど、上巻で飽きたので売却!

  • こんな不愉快な小説も珍しい。これ程の長編でずっと主人公たちを追ってきて、まじで死んでほしい、と思う程嫌いなことはそうそうない。でも小説としては面白い。面白いけど大嫌いで不快だ。不思議な作品だった。純文学だと言われると首を傾げてしまう。時代は動いているんだなあと思う。あつい。
    近代中国の成長を内側から描いた作品。すごく下品。民度低いなあ、と辟易する反面、本当のことが語られている清々しさもある。嫌いだけどいい作品だと思うし、読み応えがあった。

  • 余華さんのベストセラー小説の後半。
    兄弟の生き様に一人の美女が絡み、そして、劉鎮の人たち、政府のエライさん、詐欺師などなど、たくさんの人達も絡んでくる。改革開放によって劇的に変動する価値観のなかで、兄と弟はどう生き、どう動き、どう悶えたのか。
    一応共産主義の国、中国。しかし、この小説を読むと、日本よりももっと市場と思考と感情に忠実なのでは、と感じます。
    ただ、この展開、下巻は上巻よりも好き嫌いが激しそう。「嫌悪感」すら抱く人がいるかもしれない。この本は、たとえ面白いと思っても、薦める対象は選ぶべきでしょうね。
    最後で痛烈に感じたことがあるのですが、これを言うとネタバレになるので、やめておこう。

  • 下らない中にとてつもないエネルギーが詰まっとるね

  • 文革に翻弄される家族を描いたシリアスな上巻とはガラリと変わって、開放経済の波に乗ってのし上がる主人公らの姿を描いた下巻はハチャメチャなスラップスティック。

    シリアスとスラップスティックとの間、悲劇と喜劇との間の大きな振れ幅は、時代がそれだけエネルギーを帯びていたことの現れだろう。
    登場人物たちは何だかよく分からないエネルギーの奔流に押し流され、あるいは上手いこと流れに乗って、思いも掛けない方向に向かってゆく。その軌跡が悲劇になったり、はたまた喜劇になったりする。
    あるいは、文革以降、中国はひたすら“狂って”いる、ということかもしれない。

    そういうわけで、時代に流されない男たちは悲惨な最期を迎えることになるのだが、滅び行く者の中で宋凡平はひたすらカッコイイ。男の中の男。
    でも、僕の好みは、詐欺家業にさっさと見切りをつけて点心屋のオヤジに収まる、韓流ドラマ狂の周游だったりする。

    泣いて笑って一気に読める。オススメ。ただし、高エネルギーにアテられるのでかなり疲れる。
    それに、とてもお下品。それがいいんだけど。

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著者プロフィール

1960年中国浙江省杭州生まれ。両親の職場の病院内で、人の死を身近に感じながら育つ。幼少期に文化大革命を経験。89年には文学創作を学んでいた北京で天安門事件に遭遇した。80年代中頃から実験的手法による中短篇作品で「先鋒派」作家の一人として注目を浴び、91年『雨に呼ぶ声』(アストラハウス)で長篇デビュー。92年発表の『活きる』(中央公論新社)が張芸謀(チャン・イーモウ)監督により映画化されて話題を呼ぶ。本作『兄弟』は中国で05年に上巻、06年に下巻が発表され、またたくまにベストセラーとなった。他の長篇作品に95年『血を売る男』、17年『死者たちの七日間』(いずれも河出書房新社)、21年『文城』(未邦訳)がある。グランザネ・カブール賞(イタリア)、フランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」受賞。作品は全世界で2000万部以上、40以上の言語に翻訳されており、ノーベル賞関係者が中国で必ず面会する作家のひとり。

「2021年 『兄弟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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