プラナリア (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167708016

感想・レビュー・書評

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  • 現代の「無職」をめぐる5つの短編小説集。
    家庭、仕事、プライベートの恋愛を交えた闇の部分を除ける作品。

    一言で言えば、ハッピーエンドを求める人にはおススメしません。笑
    なんとなく「もやっ」とした気持ちになる。
    「あいあるあした」で、終わって少しほっこりしました。

    どれも共通するのは、主人公が居場所を探してもがいていること。主人公ごと、共感できる部分もあったり、なかったり。

    女性の感情がドロドロした気持ちが上手く表現されており、どの小説の主人公も心のうちが、情景が浮かぶ。

    山本文緒さんの訃報を知り、手に取った次第であります。
    ご冥福をお祈りしますとともに、世の中に素敵な作品を遺されたことに感謝いたします。


    メモ↓↓※ネタバレ注意

    プラナリアの主人公の当てどころの無い、八つ当たりを受け入れる家族と、彼。
    自身も経験がある。
    誰かを悪者にしなければ気が済まない時期とゆうのは、本当にある。
    同じ入院先の店長も、良かれとしたことだろうけど、業務態度や噂になったことどうぞ、直接言わないところが「優しさに見える報いの闇」に感じた。

    「次に生まれてくる時はプラナリアに。」

    その後は、読者の想像次第。
    胸の内が苦しくなった。

    プラナリア→乳がん患者女性
    ネイキッド→バリキャリバツイチ女性
    どこかではないここ→元専業主婦熟年夫婦の妻
    囚われのジレンマ→学生婚約者と不倫独身女性
    あいあるあした→バツイチ居酒屋店主と手相彼女

  • 4つのお話が描かれた短編集

    どれも「そんなはずではなかった」ってお話。
    鬱屈した気持ちってそんな簡単には晴れない
    そんなリアルが鮮明に描かれていた。

    ひねくれた感情って本当にしつこくて、
    気が許せる人にはなおさら爆発するような気がする。
    気持ちの良い話ではないのに
    読んでいて不快にはならないのが不思議。
    (良い意味で)

    身近にも感じるけど
    俯瞰してみているような感覚…
    結論、私はこの本好きです。面白かった。

  • そうそう、こういうのが読みたかった!という痒いところをついてくれる感じでした。
    どの作品も居そうな人が出てくる感じですが、少し個性的で。角田光代さんが描くちょっとひねくれた人物に近いなぁと思うような人が多く登場しました。
    最後の「あいあるあした」が、明日も頑張ろうと思える話だったので、読後感は良いです。


  • 現代の〝無職〟をめぐる短編集。

    「あいあるあした」がよかったな。
    勝手に可哀相がるな。
    なんか、好き、が交錯して切ないけど暖かかっ

  • 発想が自由でありながら知的で感覚が鋭い
    自己の解放を望んでいる自分に気が付く
    初めて山本文緒の作品を読みました
    痛いところを触られて
    そのあとゆっくり優しくなでられているような
    感覚になりました

  • 自分も無職になった経験があったので、共感できる箇所が多々ありました。

  • 今、読まなければならないという焦燥感に駆られ読みはじめた。

    『プラナリア』
    主人公 春香のひねくれすぎた考えや言動には心が痛くなった。相手の気持ちを感じ取りすぎるが故に、皮肉っぽくなってしまうところには共感。

    『ネイキッド』
    一番自分の状況に近しいと思ったし、一番共感した。
    思ったより居心地が良いこの現状に対して、当人はあっけらかんとしているが、周りから見れば痛々しく辛いものかもしれないと感じさせられた。
    ここで留まっていてはいけない、というか、どうせ進むんだろうと思った。これも甘えだろうか。

    『どこかではないここ』
    自分のことはお構いなしで家族のために毎日必死で生きているのに、親孝行どころか家族からの仕打ちは散々で それがなんだか自分の母親と重なって胸が痛くなった。母を大切にしたい。

    『囚われ人のジレンマ』
    損得を考えすぎるうちに自分の感情を見失ったり、周りから客観的に見るともう答えは出ているのに ある種の情や世間体などを鑑みて迷ってしまう。
    それがリアルに表現されている作品。面白かった。

    『あいあるあした』
    ラストの作品にふさわしい、なんだかほっこりする話。
    占いだとかいっても、結局自分の人生を決めるのは自分しかいなくて、『囚われ人のジレンマ』で朝丘が「損の種をまいているのは、往々にして自分なんじゃないかな」と言っていたように、全ては自分の選択の結果なんだと思う。

    主人公の気持ちと客観的に見た主人公の描かれ方が秀逸。山本文緒作品は初めてだったが、もっと読んでいきたいと思った。

  • 5つの短編集が収録されている今作の「プラナリア」
    人間関係がとても複雑でディープな物語でした。読了後も何かモヤモヤした気持ちが残っています

    全ての短編集の中に1度「無職」になってしまった登場人物が現れ、絶望に明け暮れる人や案外何とも思っていない人など各々の感受性によって解釈の仕方が違い、考えさせられました。私は前者の絶望に明け暮れますね笑

    今暗い雰囲気の物語を読みたい人や人間関係のドロドロ感を味わいたい人にお勧めです

  • 山本文緒、初めて読みました。
    女性の持つ、繊細な感情・想い・人生観。
    70歳を過ぎているのに、全く理解していなかった。
    多くの人と逢い、何の問題意識もなく過ごしたけど
    人はそれぞれの、生き方が有るんだなと今更ながら実感した。
    本の持つ力は凄い!

  • 女性特有の行き場のない感情を表現した作品。個人的には「ネイキッド」が特に頷けるものだった。

  • 5編の短編で構成されており、全て一話完結。全体のテーマとしては、正社員「ではない」雇用形態の主人公たちが、生きていくことに働くことを上手く組み込めず、不器用にひたむきに生きていく話のように感じました。

    最初の4編は、少なくともハッピーエンドではないだろう予感に、みぞおちがきゅうとなる感覚に陥りつつ読破。案の定、ハッピーエンドでも、バッドエンドでもないような結末で、読み終えると突き放されたような気持ちになりました。
    最後の5編目の「あいあるあした」だけ、タイトルの通りあいのあるあしたが来そうなストーリーで、一冊を通すと大円団に。まんまと山本文緒先生にしてやられます。

    山本文緒先生節を感じるオススメの一冊です!



    そういえば、この本を最初に読んだのは確か高校生です。当時、働いてもなく、恋愛もしたこともない自分が、この本を読んでどのような感想をいだいたのか当時の私に聞いてみたいです(笑)

  • 短編集。無職になってしまったが、働く気が起きない女性や、パート勤めをしているが、いろいろなことが不安でいらいらしてしまう女性が出てくる。
    世の中にはいわゆるいろんなことがうまくいっていてお金の心配のない「勝ち組」
    と呼ばれる人がいるが、その真逆の人たちの描写。
    誰しも無職になってしまったり、いろんなことがめんどくさくなったり、どうでもいいことにこだわったり、将来が不安になったり、でも無気力になったりという日常があると思う。そのあたりをうまく描いていていろいろ共感できた本。

  • この物語の人達は、今後どのような人生を歩むのだろうかと後を引く話が多かった。
    読み終えて、ちょっと暗くなる。

  • 1最近プラナリアを飼育していて、目に留まったので購入。無職自体に害があるわけではなく、それを取り巻く社会の目が無職の人間に苦痛を与えうる。しかしすみ江さんのように全く動じない人もいる。私は後者でありたかったなあ。徳を積んで来世に期待しますわ。希望はプラナリアで。

    2乳がん無職、燃え尽き無職、もと無職、モラトリアム野郎、ヒモの天才。背景は様々だが、同じく無職の烙印を持つ者たちの日常を詳細に描いた小説。会話の途中途中で描かれる心理描写が生々しく、心に刺さる場面もちらほら。図星を突かれた時のなんとも言えない感じが上手く表現されていて、グッとくる。
    話は変わるけども、登場人物の女性が大抵モテるのは男性への皮肉なのかな、と思った。自信がない男っていうのは、その弱さ足るゆえに、社会的地位が弱い女性を慰み者にしやすい。
    「あたしのこと勝手に可哀想だとか思わないでくれる?」すみ江さんの言葉が刺さる。無職というだけで、蔑みの対象としてしまう人達は、社会の奴隷であり、その価値観も配給制。残念ながら私もその中の一人。子供の時はそうじゃなかったのに...。いつのまにか鎖に繋がれてしまった。教育の賜物というか社会的動物である以上、仕方がないことなのかもしれない。しかし、癪に触る。何かにつながれて生きていくのは気分が悪い。ああ自由になりたい。社会が見えなくなるほどの狂人になりたい。

  • 初めて読む作家さんなので、まずは受賞作が無難だろう。280頁も頃合だし。題名もなんだか面白そうだ。
    プラナリア、目も手足もないこういう形の生物は苦手だが、それじゃあ目があるからといってナメクジやでんでんむしやひるやだにも気持ち悪いと思いながら、身体分裂再生機能をもつプラナリア、どういった内容なのか興味津々で読んでみた。

    *プラナリア
    乳がんになってまだホルモン治療を受けている。結構辛い。飲み会などで受け狙いに病気の話をすると、彼氏が悪趣味だと嫌がる。
    病院で知り合った人に出会って、仕事を手伝うことになったが。”絶対自分好き”と言う女だった。

    *ネイキッド
    店を手伝っていたが、夫よりやりすぎて離婚された。

    --- 暇、と言うものがどういう状態で、どんな感じがするものかをわたしはこの歳になって生まれてはじめて知ったように思う。退屈とはちょっと違う。退屈だったらいくらでも経験してきた---

    だらだらと暮らしていて、昔の部下に出会って付き合ってみた、ところが一言多くて嫌われたようだ、暇つぶしにも飽きた。
    でも、来るかな電話しようかな、微妙に揺れる気持。

    *どこかではないここ
    リストラに会った夫は再就職したが、収入が減ったので夕方からレジのパートに出ることにした。子供たちも大きくなったけれど何かと気にかかる。
    義父は入院。母は一人暮らしで用もないのに電話が来る。
    ああ、やりきれない環境だ、バイト仲間に誘われたホテル行きを撃退してみたりしながらも、お母さんの痛々しくも逞しく頑張る姿が少し明るい話。

    *囚われ人のジレンマ
    --- 両者が相手の戦略を懸命に予想した結果、両者ともに損をしてしまうケースを「囚人のジレンマ」と呼ぶのだそうだ---

    その研究をしている大学時代の彼と結婚するつもりで付き合っていたが、彼の訳ありに気がついた。まだ決心がつかないでいると、彼のアパートに不意に母親がやって来た。
    奇襲攻撃かい。
    憤慨してバスに乗って帰ってしまった。

    *あいあるあした
    離婚して居酒屋を始めた俺に会いに、娘が来た。分かれた妻は再婚している。海外にいくという娘が母親に無断で会いに来てくれた。
    店に変わった娘が来て、手伝ったり手相を見たりしている。常連も出来て、何気ない付き合いがほのぼのとして暖かい。
    女性作家らしくなく、俺と言う男をうまく書いている。


    女について少し嫌味な部分が特にうまい。確かにそうだなぁと思うし、そういう女と付き合う男も、あるあると思わせる。
    それだけに余り見たくない部分もあるが、こういう環境にいる気持ちは良く分かる。女性作家が嫌な女を書くとこうなる。



    職場シリーズのような短編集だった、進んでは読まないが、主人公の心境を現実的に書き出すところは確かに受賞作だと感じた。
    さて休日だしいい女に会いに行こう。

  • 乳がんを乗り越えたが、その後も周りとの関係に悩む女性などの短編小説。

  • 「プラナリア」、「ネイキッド」、「どこかではないここ」、「囚われ人のジレンマ」、「あいあるあした」の5つの短編。何れも定職(主婦業を除く)に着いていない女性の複雑な心理状態を描いている。どの作品に出てくる女性も、男にはちょっと理解し難いんじゃないかな。少なくとも、自分には何だかモヤモヤ感が残った。

  • 山本文緒てもっとぺらぺらでつまんないとおもってた。高校生の時に読んだ恋愛中毒はめっちゃつまんないて思ったきがするんだけど なにこれめちゃすきこの自意識
    山本文緒にはまった一冊め!

  • 面白い短編集だった。
    不完全な人間達の、スッキリしない話。
    それぞらの登場人物についてもっと深掘りして読みたくなった。

  • 無職なひとたちを書いた短編集。女性が主人公の話ばかりのなか、一番いいなと思ったのは男性目線で書かれている「あいあるあした」。でも主人公の男性は働いてるからこれもやっぱり無職の女性が主人公だったかも…。他の作品は女のひねくれた部分とか生々しいところがリアルで一度読んだきり。いい意味で人間らしい感情が充満している。気持ちのコンディションが良いときにまた読みたい。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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