イン・ザ・プール (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.75
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本棚登録 : 18456
レビュー : 2145
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167711016

作品紹介・あらすじ

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

感想・レビュー・書評

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  • 読んだのは3ヶ月以上前で、今更ながらレビュー。

    一時期、私も軽い鬱になったので、本書を読んで、伊良部医師みたいな考え方、言動が出来れば、こんなストレス社会も気にせずに生きられるなあ・・と思いました。あ、いや、考え方はともかく、色んな意味で言動はやめた方が良いような・・。いくらなんでも。

    伊良部医師はほんとにはちゃめちゃで、「この人に診てもらってほんとに大丈夫かな・・」と不安になりつつも、それを察してか偶然か、お医者さんらしい専門知識や、それらしい事をさりげなく口にして、「お? 実は名医?」と思わせる。作中の患者さんと一緒に伊良部医師に不安になったり、期待を抱いたり。お子ちゃまな伊良部医師を俯瞰で見てクスリと笑う。

    全体的に面白かったけど、一部表現が古い(?)言い回しがあって、私の年代でギリ分かるかな・・という感じで、若い子には通じるのでしょうか? まあ、前後の文脈から何となく分かるのでしょうが・・。でも、読んで楽しかったので、次の「空中ブランコ」も読まなければ。

  • 診察のドアをノックすると聞こえる「いらっしゃーい」の声。
    診察室に入ると伊良部先生が満面の笑みで迎えてくれる。「さあ注射、いってみようかー」と嬉しそうに。
    注射をしてくれるのは少々露出趣味のある(?)美人看護婦のマユミちゃん。
    カウンセリングを無駄と言い放ち、治療する気なんてなさそうな伊良部先生に患者が呆れて帰ろうとすると「明日も来てね」とにっこり。

    こんなに胡散臭い医者はなかなかいない。
    そしてこんなに脱力させてくれる人もなかなかいない。

    伊良部先生の患者さんはかなり深刻な症状に悩んでいて、どんどん思い詰めていくのは他人事ながらとても怖い。
    伊良部先生も頼りになるのか分からないし、あぁ今度こそもうダメかもと何度か中断してしまった程だ。

    とりあえず今回はセーフ。
    途中あんなにハラハラしたのが嘘のように読後は爽やか。
    ただ今後も伊良部先生を信じていて大丈夫なのかは自信なし。
    伊良部先生はやっぱりなんかちょっと胡散臭いから。

  • 注射が好きでマザコンで患者の扱いがテキトーに見えて、なのにこの精神科医に診てもらうとなんだかんだうまくいってしまう。

    薬で治る病気じゃなし、むしろ病気のままでもいいんじゃない?生い立ちや過去なんて変わんないし。
    カラッと言える伊良部と美人看護婦のキャラが魅力的。すぐ読み切れる短さで軽い気持ちで読めた。

  • 読後の満足感が心地よい。直近作「罪の轍」の後なので、こんな作風も引き出しに持つ奥田さんにびっくり。面白かった!

    胃腸の不調、無気力などの不定愁訴。
    感情を抑制し過ぎるあまりの体とこころの不調。
    自分の今が受け入れられず、高みを目指すあまりに現実逃避や妄想に逃げ込む。
    人に嫌われたくない。明るく振舞わないと孤立してしまうと恐怖のあまり、交友にしがみつく携帯依存。
    自分の感覚や判断に自信が持てず、確認ばかりで生活に支障をきたす強迫性障害。

    いかがわしさいっぱいの精神科医伊良部氏と、訪れる患者の短編集。
    描きすぎず、余白が醸し出す雰囲気がたまらない。

    患者たちはそれぞれ真剣そのもの。伊良部医師との丁々発止のやり取りから、患者たちはそれぞれ自分の轍や呪縛に次第に気づき、解放されていく。

    一見、理性や世間、常識から解放されている伊良部氏や看護婦だが、患者に与える知見は深い。
    皮肉や風刺めいた言動によって、普段私たちがこうでなくてはならないと雁字搦めになっていることが炙り出る。思わず、くすっと。

    私も掃除や家事で、手が抜けない強迫性障害で通院した経験があるので、最後の章は他人事ではなかった。
    気になることは仕方がないが、次からはバスの「降ります」ボタンは誰かに押してもらうっと。私がやらなくちゃ!から逃げるんだ!
    面白かったあ。

  • 伊良部という神経科のお医者さんを中心に、面白く、サラリと楽しめる話が収録された短編集その1。(2と3があります)

    「イン・ザ・プール」「勃ちっ放し」「コンパニオン」「フレンズ」「いてもたっても」が収録されています。

    知人の勧めで神経科を受診した人たちは医師・伊良部の思い切りが良く、どことなく憎めず、突然びっくりするようなことをする性格に翻弄されながらも、最後にはちゃっかり症状が好転していきます。その過程を追っていくのが面白い。
    何より、伊良部先生のキャラクターが本当に茶目っ気というか、図々しさというか、子供がそのまま大人になったような感じで面白いです。
    患者と同じ趣味にハマり、恋にわずらい、新しいものに夢中になる姿というのは五歳児といったところ。それでも患者の症状を好転させるのだから、天才なのか馬鹿なのかと作中で何度も卑下されながらも、私は偶然だったらいいのになぁと思ってしまいました(笑)

    しかし患者たちの医師・伊良部を評価する目が厳しいこと厳しいこと。自分たちのことは棚に上げておいて、彼を卑下しているのはそれだけ伊良部先生が憎めないキャラだということを信じたいです。

  •  精神科医・伊良部一郎は天才なのか。はたまた偶然なのか、奇天烈なことをしていると患者の精神が楽になっていく。気楽に流されて、思うがままに生きているだけなのに仕事になるなんて良いな。と、思ってしまう私も、仕事というものを真面目に行わなければいけないと神経過敏になっている節はある。伊良部のような医師がいたら通って見たい気もするが、一目見て止めておこうと思ってしまうかもしれない。
    [イン・ザ・プール]
     体調が悪くなって健康のためにプールに入り始めるが、そのプールが中毒になってしまう。何事も中毒になるし、実害がないのならとことんやれば良い。気楽に考えようという気になる。
    [勃ちっ放し]
     勃起が止まらなくなる。大学病院で見世物にされて怒り、警察に捕まることで治る。勃たなくて困るのは年をとってあるが、勃って困るのは中学生くらいで終わりにしたい。社会的に見られたらまずい。
    [コンパニオン]
     ストーカー被害の妄想が止まらない女。伊良部が言う肯定するところから治療は始まると言う言葉は良い。
    [フレンズ]
     携帯でのメールが止められない高校生。私も人に誘われたら断れない。なぜなら自分の知らないところで、みんなが楽しんでいるのが羨ましくなるからだ。ラインやメールやSNSにはハマらなかったので良かったが、現代社会では一人になる時間が少なくなっているので、読書などして一人になるのも良いものだ。
    [いてもたっても]
     家が火事になっているのではないかと不安になってしまう男。ガスが不安になり、自分が取材したホームレスが犯罪を侵さないかが不安になり、関わったものが全て不安を伸び起こす材料になる。
     その全ては自分の責任になることが嫌だという精神からきている。これもよく分かる話だ。万全を期して自分に非はない状態にしたい。伊良部がやっているように逃げちゃえば良いし、心配なんて人にさせれば良いんだけどなかなか難しい。

  • 旅のお供として。何度目かの再読。やっぱり伊良部先生は面白い。シリーズもの全部読み返したくなるな。プールに依存する人、勃ちっぱなしになる人、ナルシストからストーカー妄想になってる人、携帯依存の高校生、強迫性障害からスクープ獲得する人。全部面白かった。

  • 面白かった!伊良部先生サイコー!
    行動療法と称して石を投げるところは吹き出してしまった。症状がピークに達して、あれれという間に緩和されていくのは、わたし的には体験ずみで、いつでも寄り添って?くれている精神科医、伊良部先生の治療は理想的。
    フレンズで携帯依存症の少年の話を読んだら、街で見かけるスマホ持った若い子たち見ると、大丈夫?と心配になってしまった。
    コンパニオンもストーカー被害妄想女性、面白かった。

  • 著者の作品は、数冊読んでいます。読んでいて、伊良部医師に似たキャラクターがあったなあと思い、調べてみると「空中ブランコ」に登場した伊良部医師なんですね。私も精神を病んでいるのですが、こんな無茶苦茶な医師がいても、面白いかなあと思えてしまいます。

  • 胡散臭い医者。患者が注射を打たれている姿を見るのが好きという癖まである。しかも打つのは無駄に色気を放つ看護婦。
    本当にここに通って治るのかと不安になる。患者は精神を病んでいるのに、ちゃんと診療してるのかよく分からない。
    けれど、何度か通って行くうちに不思議と症状は治まっていく。そんな患者から見た視点で描かれる作品。

    自分が患者なら伊良部先生には診察お願いしたくないなと思いながら読んでいたが、読み終わってみたら不思議と心がすっきりしていた。もしかしたら伊良部先生は、物凄く名医なのかもしれない。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『家日和』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』『ヴァラエティ』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。

「2019年 『ヴァラエティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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