イン・ザ・プール (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.75
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本棚登録 : 18398
レビュー : 2142
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167711016

作品紹介・あらすじ

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

感想・レビュー・書評

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  • 読んだのは3ヶ月以上前で、今更ながらレビュー。

    一時期、私も軽い鬱になったので、本書を読んで、伊良部医師みたいな考え方、言動が出来れば、こんなストレス社会も気にせずに生きられるなあ・・と思いました。あ、いや、考え方はともかく、色んな意味で言動はやめた方が良いような・・。いくらなんでも。

    伊良部医師はほんとにはちゃめちゃで、「この人に診てもらってほんとに大丈夫かな・・」と不安になりつつも、それを察してか偶然か、お医者さんらしい専門知識や、それらしい事をさりげなく口にして、「お? 実は名医?」と思わせる。作中の患者さんと一緒に伊良部医師に不安になったり、期待を抱いたり。お子ちゃまな伊良部医師を俯瞰で見てクスリと笑う。

    全体的に面白かったけど、一部表現が古い(?)言い回しがあって、私の年代でギリ分かるかな・・という感じで、若い子には通じるのでしょうか? まあ、前後の文脈から何となく分かるのでしょうが・・。でも、読んで楽しかったので、次の「空中ブランコ」も読まなければ。

  • 診察のドアをノックすると聞こえる「いらっしゃーい」の声。
    診察室に入ると伊良部先生が満面の笑みで迎えてくれる。「さあ注射、いってみようかー」と嬉しそうに。
    注射をしてくれるのは少々露出趣味のある(?)美人看護婦のマユミちゃん。
    カウンセリングを無駄と言い放ち、治療する気なんてなさそうな伊良部先生に患者が呆れて帰ろうとすると「明日も来てね」とにっこり。

    こんなに胡散臭い医者はなかなかいない。
    そしてこんなに脱力させてくれる人もなかなかいない。

    伊良部先生の患者さんはかなり深刻な症状に悩んでいて、どんどん思い詰めていくのは他人事ながらとても怖い。
    伊良部先生も頼りになるのか分からないし、あぁ今度こそもうダメかもと何度か中断してしまった程だ。

    とりあえず今回はセーフ。
    途中あんなにハラハラしたのが嘘のように読後は爽やか。
    ただ今後も伊良部先生を信じていて大丈夫なのかは自信なし。
    伊良部先生はやっぱりなんかちょっと胡散臭いから。

  • 注射が好きでマザコンで患者の扱いがテキトーに見えて、なのにこの精神科医に診てもらうとなんだかんだうまくいってしまう。

    薬で治る病気じゃなし、むしろ病気のままでもいいんじゃない?生い立ちや過去なんて変わんないし。
    カラッと言える伊良部と美人看護婦のキャラが魅力的。すぐ読み切れる短さで軽い気持ちで読めた。

  •  精神科医・伊良部一郎は天才なのか。はたまた偶然なのか、奇天烈なことをしていると患者の精神が楽になっていく。気楽に流されて、思うがままに生きているだけなのに仕事になるなんて良いな。と、思ってしまう私も、仕事というものを真面目に行わなければいけないと神経過敏になっている節はある。伊良部のような医師がいたら通って見たい気もするが、一目見て止めておこうと思ってしまうかもしれない。
    [イン・ザ・プール]
     体調が悪くなって健康のためにプールに入り始めるが、そのプールが中毒になってしまう。何事も中毒になるし、実害がないのならとことんやれば良い。気楽に考えようという気になる。
    [勃ちっ放し]
     勃起が止まらなくなる。大学病院で見世物にされて怒り、警察に捕まることで治る。勃たなくて困るのは年をとってあるが、勃って困るのは中学生くらいで終わりにしたい。社会的に見られたらまずい。
    [コンパニオン]
     ストーカー被害の妄想が止まらない女。伊良部が言う肯定するところから治療は始まると言う言葉は良い。
    [フレンズ]
     携帯でのメールが止められない高校生。私も人に誘われたら断れない。なぜなら自分の知らないところで、みんなが楽しんでいるのが羨ましくなるからだ。ラインやメールやSNSにはハマらなかったので良かったが、現代社会では一人になる時間が少なくなっているので、読書などして一人になるのも良いものだ。
    [いてもたっても]
     家が火事になっているのではないかと不安になってしまう男。ガスが不安になり、自分が取材したホームレスが犯罪を侵さないかが不安になり、関わったものが全て不安を伸び起こす材料になる。
     その全ては自分の責任になることが嫌だという精神からきている。これもよく分かる話だ。万全を期して自分に非はない状態にしたい。伊良部がやっているように逃げちゃえば良いし、心配なんて人にさせれば良いんだけどなかなか難しい。

  • 旅のお供として。何度目かの再読。やっぱり伊良部先生は面白い。シリーズもの全部読み返したくなるな。プールに依存する人、勃ちっぱなしになる人、ナルシストからストーカー妄想になってる人、携帯依存の高校生、強迫性障害からスクープ獲得する人。全部面白かった。

  • 面白かった!伊良部先生サイコー!
    行動療法と称して石を投げるところは吹き出してしまった。症状がピークに達して、あれれという間に緩和されていくのは、わたし的には体験ずみで、いつでも寄り添って?くれている精神科医、伊良部先生の治療は理想的。
    フレンズで携帯依存症の少年の話を読んだら、街で見かけるスマホ持った若い子たち見ると、大丈夫?と心配になってしまった。
    コンパニオンもストーカー被害妄想女性、面白かった。

  • 著者の作品は、数冊読んでいます。読んでいて、伊良部医師に似たキャラクターがあったなあと思い、調べてみると「空中ブランコ」に登場した伊良部医師なんですね。私も精神を病んでいるのですが、こんな無茶苦茶な医師がいても、面白いかなあと思えてしまいます。

  • 胡散臭い医者。患者が注射を打たれている姿を見るのが好きという癖まである。しかも打つのは無駄に色気を放つ看護婦。
    本当にここに通って治るのかと不安になる。患者は精神を病んでいるのに、ちゃんと診療してるのかよく分からない。
    けれど、何度か通って行くうちに不思議と症状は治まっていく。そんな患者から見た視点で描かれる作品。

    自分が患者なら伊良部先生には診察お願いしたくないなと思いながら読んでいたが、読み終わってみたら不思議と心がすっきりしていた。もしかしたら伊良部先生は、物凄く名医なのかもしれない。

  • 変な精神科のお医者さんが、特に治療はしないのに人の心の病気を治す。
    あえてそうなのか、自然とそうなのか。
    どっちにしろ病気を治しちゃうんだからすごいよね。
    きっと人には天職があるのだ。

    すごく読みやすくて、すごく面白かったです。

  • 笑える小説で奥田英朗さんの右に出る者はいない!~と、とあるネット掲示板で評されているのを見て、気になったので読んでみた。

    確かに本当に面白かった!とにかく伊良部先生にすごい笑わせられたw
    それ、人として/医者としてどうなのよ!?~って思っちゃうようなことばかり言う奴なのに、最後は、ひょっとして名医かも?と思わせてくれるところが良かった。
    いつの間にか相手の懐に入るのがうまい人というか、自分でも気づいてなかった本音を引き出させるのがうまい人というか…不思議な人!
    自分の主治医だったら絶対嫌だけどさw

    どの話もとても面白かったけど、心の病気を扱っているので、そこはやっぱり笑って読めない部分もあった。強迫観念からくる確認行動とかは、自分にも大いに当てはまるし…。
    だけど、持った役回りはそうそう変えられるもんじゃないんだ~って分かったら、もう開き直るしかないのかもなと思って。
    伊良部先生の性格が、ちょっとだけ羨ましいよ。笑

    このトンデモ精神科医の活躍(?)を描いた「伊良部シリーズ」は第3弾まで出ているらしいので、ぜひシリーズ読破したいなと思った!
    いやー、小説読んで声出して笑ったのなんて、いつ以来かしら。笑

  • アニメ『空中ブランコ』をみて、手に取りました。

    アニメのタイトルは空中ブランコになっていたので、イン・ザ・プールは別の内容なのかな、と思っていたら、ちょっとかぶってました。

    へんてこな精神科医といろんな症状を抱えて病院にやってくる患者さんのお話。

    伊良部先生の憎めないキャラがいいですね。
    最初はその奇天烈ぶりに困惑を覚えていた患者さんたちが、通院を通して心を許していく様は、心の交流みたいなものが感じられていいです。

    患者さんたちもそれぞれ個性的で面白いです。
    携帯が手放せない少年の話なんかは思い当たる節があってぎくっとしてしまいました。
    強迫神経症も、家を出るときに鍵のチェックを三回くらいしてしまう質なのでよくわかります。

    問題解決の方法は様々で、ある人は無理していた自分から解放されたり、ある人は性格を受け入れてそれと付き合っていくことを決めたり。
    結局、全部患者さん自身が解決しているんですけど、そこまでの道のりを一緒に歩いてあげる伊良部先生はある意味で名医なのかなと思います。

    文章はさらっと読める感じで、内容も面白いです。
    疲れたときの息抜きにいい本だと思いました。

  • 全ての物事におおらかな気持ちになれる。
    笑い飛ばせるのは小説だから、とは限らない。
    実際こんな医者にお世話になるのは絶対嫌だけど、お世話にならざるを得なくなったらひょっこり現れそう。
    何でも過剰になれば「病気」と診断され、いい加減だなーと思う人ほど普通で正常だったりする。
    弛いくらいが丁度良いのかもしれない。
    楽しく読んだ。

  • アニメのビジュアルを先に見てて、こういうドサブカルなのはちょっと…と避けてたけど、電子書籍の余ったポイントで購入し読んだらびっくり!伊良部先生、とってもチャーミング!!伊良部先生に振り回されながらもなんとも幸せそうな患者さん達にほっこりするお話です。

  • アニメ「空中ブランコ」の原作小説です。アニメの描写があまりにも変わっていたので、「一体原作はどんななんだろー・・・??」とすごく気になったので読んでみたのですが。。。
    アニメのインパクトが強かったせいなのか、読んでいても伊良部先生はあの声で出てくるし、マユミちゃんはピンクのナース服で出てくるし・・・。ちなみに伊良部先生は大の方で出てきました。多分、小説での描写に1番近いからなんだと思います。あと、病院は白くてキレーなイメージで描写されてるんだけど、その描写のトコを読む意外では、やっぱりあの奇抜なカラーが脳裏を過ぎる情景でした。読んでいて1番思ったのが、アニメの伊良部先生アレで正解だよ・・・と。この小説のままの描写だと、多分引くわ、私(笑)。あの容姿で、伊良部先生の奇天烈さが緩和されてる気がする。リアルな人間容姿だったら、奇天烈さが際立って引くよ。

    この本にはアニメで放送されたのが3編、アニメで放送されてないのが2編収録されていました。
    各作品に出てくる精神疾患の患者さんたちですが、共感できる人もいればできない人もいました。でも彼らの症状は少なからずとも自分の中にもあるかなぁ・・・なんて思ったりはしました。
    「自分は依存症なトコはないよな。基本的に執着心ないし」とか思ってたんですが、よくよく考えると2次元依存症?(笑)夢見がちなので軽く妄想癖だし?(笑)不定愁訴な部分もあるかな。胃痛が一向に治らないし。
    でも!1番「分かるーッ!!」って思ったのが強迫神経症。あそこまで酷くはないですが、大いにあります、コレ(笑)。寝る前に戸締りと火元を確認しなきゃ寝れないし、確認したのに「あれ?」って思ってまたベッドから起き出して確認したりだとか。出かける時ももちろん同じ。そして確認したのにまた「あれ?」って思って、マンション1階まで下りたのに、また戻ったりして(苦笑)。故に、おばあちゃんの形見の数珠を毎晩して寝るんだけど、朝寝ボケてどこに置いたか分かんなくなったらさぁ大変。見つけるまで寝れません。そして、旅行先にも持って行く。じゃないと寝れないの。そんなカンジで「立派に強迫神経症だな、私・・・」と思いました、読んでいて。

    こういう軽いカンジの(本人的には重いのかもだけど)精神疾患のお話は結構好きです。勉強になる、といった意味で。だって、この世の中、精神疾患ない人の方が少ないと思うもの。とても勉強になります、色んな人がいるんだなー・・・と。そして伊良部先生を見ていて思うのが、そういう人たちに対する具体的な治療策って無いんだな・・・ってすごく思いました。助言はしてるけども、治療はしてないよね、この先生。でも、この先生の場合は親身とは言えないけれど、親身にその人を分かってあげるだとかその上で話を聞くだとか、そういうコトをしてくれる人が周りにいれば病院に掛かるコトもないのかしら?なんて思いました。

  • ヘンテコ神経科医と、病院に訪れる患者たちのエピソードがいくつか。
    環境、性格、ものごとの受け止め方が、ほんのちょっと良くなかったというだけで、心が悲鳴をあげた人たち。こういう病気には一生縁のない人もたくさんいるけど、実際は紙一重だなと思う。
    ヘンテコ神経科医は、医者のくせに医者らしい治療やカウンセリングをしない。命にかかわらないならいいじゃん、とか言う。たしかに、自殺願望がないなら心身症は全て大したことじゃないのか。人の目が気になったり、人と比べ過ぎたり、心を病むきっかけは全て「自分以外の人」だ。人生は一度きり。人生のうち、健康で自由がきく時間は意外と短い。人はひとりでは生きられないけど、「人」に振り回されて過ごすにはもったいない。この医者みたいに生きられたら、いいなと思う。でも、旦那にはしたくない!笑

  • 同一の主人公による連作の短篇集である。主人公は破天荒な神経科医「伊良部」とそのわきを固める扇情的だが冷淡(クール)なナースだ。ここに、プール依存症、陰茎強直症など、変な患者たちがつぎつぎと訪れる。医師が変なら、患者も珍妙だ。
    患者はもちろん真剣に自分の症状に悩み、藁をもつかむ思いで伊良部のもとを訪れるのだが、実際に施される治療は、まず注射である。注射を打つのはセクシーナース「マユミちゃん」の役目だが、伊良部は針が刺さる様子を見て興奮するという注射フェチという設定である。そもそも神経科がかくも注射をするものか、寡聞にして定かではないが、作中では少なくともこの注射で快方に向かうことはない。
    患者は伊良部に振り回され、やがて自分の悩みがちっぽけなものであったと気づく。伊良部と接することから生じるある種の諦念が、結果として患者を治癒へといざなうのだ。
    概ねこのパターンでどのストーリーも進むのであり、つまりありていに言って「バカバカしい」話である。だから、これらの短篇をドタバタコメディとして読むもよし、現代の精神病理を深くえぐった問題作として読むもよし、である。どう読もうと、読者は伊良部の放埓ぶりにあきれ、笑い、そして患者たちに同情するが、それによって患者が抱えていた症状とメランコリーを解消していく様を読むにつけ、何ともいえないカタルシスを得られる。
    ゆえに、この一冊を読んでみれば、奥田英朗がすばらしいストーリーテラーであることが理解できるのである。

  • 心身症や陰茎強直症のサラリーマン、被害妄想のコンパニオン、ケータイ依存症の高校生、そして強迫神経症のルポライター…。
    一風変わった伊良部総合病院神経科の伊良部一郎医学博士の元には、今日もいろんな患者が訪れる。

    久しぶりに再読して、ずいぶん以前に電車の中で読んでいて吹き出してしまったことを思い出した。面白いものは何度読んでも面白いなぁ。。。

  • 代表作の伊良部先生シリーズ。この他に2作あるが、自分はこれが一番好き。なぜなら、この本が一番、悩める患者さん達に「自分も一歩間違えばこうなってしまうかも....( ゚Д゚)」というリアリティがあるから。ランナーズハイならぬスイミングハイ、自意識過剰が過ぎて被害妄想、携帯依存、火の元不安神経症....など(;^_^A 助手のマユミちゃんも、ミステリアスなイメージでいてほしいのでこの本くらいの出番の方がよいかな。 伊良部のおかげかそうでないかは不明だが、皆それなりに治っていくので読後感はよろしい本(^^)/

  • 思っていたのとは違って、面白くて明るいお話だった。
    最初は伊良部に対して、「なんだコイツ…」っていう戸惑いがあったけど、終わりが近付くにつれて、「伊良部とお別れしたくない〜」という思いに変わっていた。登場人物達と一緒だ(笑)

    毎回どんな治療法が施されるのかが楽しみで、どんどん読み進めることができた。「続編ないのかな〜」と思って調べたらあったので、ぜひすぐに読んでみたい。

  • 精神科医の伊良部先生のシリーズ。
    精神疾患は周りにも理解されにくく、その分、当人の悩みは深刻であり、デリケートのはず。でも、伊良部先生はそんなことおかまいなし。結果的には患者を救うことになるけど、その過程は無茶苦茶です。寄り添っているようで寄り添っていないような、自分の興味のまま行動しているようにみえます。それでいてたまに的を得たことを言ったりします。
    実際にはこんな先生いないでしょうけど、テンポよく軽く読めます。短編なので隙間時間にいいです。
    イン・ザ・プール/勃ちっぱなし/コンパニオン/フレンズ/いてもたっても

  • 期待以上に面白かった。伊良部一郎の個性的なキャラクターも強烈だが、どの話の患者も異常なようで、こんな人結構いるんじゃないかと思う。現在ではむしろ増えているのじゃないか?(勃ちっ放しは知らないがw)。意図的なのか、偶々伊良部一郎の言動が功を奏しているのかは不明だが、結果的に病める者は、それなりに自分の生き方を見つけ、満足しているようだ。人生肩の力を抜いた方が幸せみたいだね~。

  • 総合病院の地下にある精神科。
    そこを訪れるのは、プール依存症、陰茎強直症、被害妄想、携帯依存症、強迫神経症の人びと。

    患者さんを迎えるのは、色白で小太りな精神科医、伊良部。
    白衣のボタンを3つあけて太もも丸出しの看護婦マユミさん。

    とにかくこの伊良部、治療らしいことをしません。
    「生い立ちも性格も治らないんだから、聞いてもしょうがないじゃん」
    って調子で。
    患者がプール依存症なら自分も水泳を始め、深夜のプールに忍び込もうとする。
    患者が携帯依存症なら携帯でメールをしまくる。
    常にストーカーにつきまとわれているという被害妄想のあるコンパニオンの女性のオーデションにに自分も応募する。
    ・・・なんて感じで自分が患者さんと一緒に楽しんじゃう。
    その上注射フェチ。
    それなのに患者は落ち着くところに落ち着いてしまう。

    破天荒で常識破りな伊良部ですが、こういう精神科医もアリなのかな~と思います。
    精神科医の医師ってあまりに健全すぎると気後れしそうだし。
    本当にあんたみたいな人に人の悩みが分かるの?と言いたくなる。
    むしろ精神的に病んだ部分があったり、そういう経験のある先生の方が私なら安心できます。

    この中では、常に誰かとつながっていないと不安で携帯依存症になった男子高校生のお話が印象的でした。
    「先生、友達いないんですか?」
    と聞く高校生に伊良部は、
    「うん。いないよ」しれっと答える。
    マユミさんにも同じ質問をすると、
    「いないよ」と何でもないように答える。
    すごいのは次の一言。
    「淋しくないんですか」との質問に、マユミさんは「淋しいよ」と即答する。

    これはすごいと思った。まゆみさんが好きになってしまった。

  • 「いらっしゃーい」
    と、やけに明るく甲高い声を発するのは、医学博士・伊良部一郎。
    病院の地下にある一室で神経科医をしている。

    心身症、陰茎強直症、被害妄想、携帯依存症などなど、彼のもとへ訪れる患者は様々な悩みを抱えている。
    それに対してこの伊良部医師、びっくりするほど素っ頓狂な対応ばかり。
    それ故どの患者も、ここに来たのは間違いだったか、という考えが頭をよぎる。

    とはいえ、だめ医者かというとそうではない。
    どこかピンとがずれてる、型破りな医師を見ていると、なんだか真面目に考えるのがばからしくなるような気さえしてくる。
    気づけば患者は皆、伊良部ワールドにはまっているのです。
    治療に必要なものがなんなのか、見えるようですね。

    肩を張っていたり、疲れていたりする時に読んだら、ふっと息が抜けるかも。
    時折イラッとさせられるけれど、憎めない。
    たまにはこんな短編集もいいですね。

  • 伊良部という神経科のお医者さんを中心に、面白く、サラリと楽しめる話が収録された短編集その1。(2と3があります)

    「イン・ザ・プール」「勃ちっ放し」「コンパニオン」「フレンズ」「いてもたっても」が収録されています。

    知人の勧めで神経科を受診した人たちは医師・伊良部の思い切りが良く、どことなく憎めず、突然びっくりするようなことをする性格に翻弄されながらも、最後にはちゃっかり症状が好転していきます。その過程を追っていくのが面白い。
    何より、伊良部先生のキャラクターが本当に茶目っ気というか、図々しさというか、子供がそのまま大人になったような感じで面白いです。
    患者と同じ趣味にハマり、恋にわずらい、新しいものに夢中になる姿というのは五歳児といったところ。それでも患者の症状を好転させるのだから、天才なのか馬鹿なのかと作中で何度も卑下されながらも、私は偶然だったらいいのになぁと思ってしまいました(笑)

    しかし患者たちの医師・伊良部を評価する目が厳しいこと厳しいこと。自分たちのことは棚に上げておいて、彼を卑下しているのはそれだけ伊良部先生が憎めないキャラだということを信じたいです。

  • 名医なのかただの変人なのか、
    精神科医の伊良部とその患者の物語。

    さくさく気楽に読める本だった。

    人の心は弱くて脆いもの、
    でもそれを救えるのはなんだかんだ
    伊良部みたいな人なのかもしれない。

  • 伊良部一郎シリーズ第一弾!読みやすい!マスターありがとう

  • おデブなハチャメチャ医学博士、伊良部が精神に異常をきたした患者を助ける?はたまた患者と遊ぶ?ために、普通の人とはかけ離れた行動をする。笑わせられもし、なるほどなとも思わせるとってもコメディな作品。
    現代人に心が健康で毎日ハッピーな人って伊良部博士くらいではなかろうかと思う。きっと誰しも自分を幸せにしようと毎日四苦八苦してると思う。かく言う自分自身も不眠症の時期もあったし、何もかもをマイナス面で考えてあがいていた時期もあるし、今もなお自分自身の未来に不安が少し勝っている。でもこの本を読んで、自分だけではないこと、悩んでいていいんだと思えたことは何よりの収穫である。

  • 憂鬱な気分になりがちな時に読みました。なにか前向きになれるヒントが見つかるかもという期待をしながら読みましたが、伊良部先生は奇想天外すぎて笑 参考にはなりませんでしたが、自分の悩みも伊良部先生からしたら、生きてるんだからいいじゃん!と笑い飛ばされそうと思うと、少し心が軽くなりました。

  • #読了 2019.8.6
    イン・ザ・プール/奥田英朗(文春文庫)
    ★★★☆☆

    患者本人たちは真剣に困っているのに精神科医・伊良部の自由奔放で非常識なまでの発言や治療?に散々振り回されつつ呆れつつコミカルに綴られるが、症状は悪化の一途。だが伊良部のおかげか最後は気付けば憑き物が取れたように快方に向かう不思議なほっこりさ。精神科医・伊良部と5人の患者のストーリー。

    伊良部は最初から分かっていた?それとも偶然?でも精神科に通うほど不安定なメンタルの時は、ある意味 伊良部のハチャメチャさがいい治療になるのかも?(笑)
    にしても、わがままボディでマザコンで金と権力に物を言わせて、自意識過剰で面食いで注射フェチ。なのに憎めないコミカルなキャラクターで、読み進めていくほど患者の症状は深刻になっていくのに作品が終始暗くならないのは、要所要所で突飛推しもないことを言う伊良部のおかげ(笑)

    最初は他愛もないちょっとした違和感が、患者本人の自覚・無自覚関係なく悪化していく様は、読み進めていて少し怖い部分もあり楽しめた。ここまで深刻になって一体どうやって症状が緩和されるの?と、通院しててもなんの快方に向かわないままピークを迎える展開は、テンポもよくて読みやすい。実写映えしそう。




    ◆内容(BOOK データベースより)
    「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。

  • 伊良部医師が、患者を軽くあしらう姿がおもしろい。
    患者の病状がすごく深刻なのに、なぜか笑える。

    フレンズ(携帯電話依存)と、いてもたっても(強迫神経症)の二編は、患者の焦りや狂気が患者視点で絶妙に表現されていて、読んでて私も焦燥感をいただいたほど。
    伊良部シリーズ、何度もメディアミックスされているのが納得。おもしろいもんな。
    けど、伊良部医師、阿部寛だとかっこよすぎじゃない?
    小説の中での伊良部医師は、中年(45位に見える35歳)、色白のおデブで、マザコン、注射依存のようです。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『家日和』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』『ヴァラエティ』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。

「2019年 『ヴァラエティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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