- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167711023
作品紹介・あらすじ
伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。
感想・レビュー・書評
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1.著者;奥田氏は小説家。文章を書くのが得意で、広告のプランニングやメディアの仕事を経験。新人賞をとって作家になる人が多い中で、氏は出版社への持込み、「ウランバーナの森」でデビュー。少年時代は、マンガを好んで読み、歴史本や太宰治・夏目漱石にも目を通しました。”小説は、人をどう楽しませるかが大切で、必要なのはサービス精神”が持論。「空中ブランコ」で直木賞、「オリンピックの身代金」で吉川英治文学賞・・など、多数受賞。映像化されたヒット作も多い。
2.本書;精神科医の伊良部(主人公)の元に来る、精神的な悩みを持つ患者に破天荒な診療を施し、悩みを解決していくという5つの短編。短編は、①空中ブランコ(患者;サーカス団員)、②ハリネズミ(患者;先端恐怖症のヤクザ)、③義父のヅラ(患者;伊良部の同期生)、④ホットコーナー(患者;プロ野球選手)、⑤女流作家(患者;女流作家)。5人の患者は、順調な人生を送っていたが、躓き始め、伊良部と出会う。そして、天真爛漫な伊良部の行動で患者が自分を取戻していく話。
3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
(1)『第1話;空中ブランコ』より、「(患者)子供の頃、転校に次ぐ転校の生活だった。新しい友達が出来ても、二カ月で否応なく別れが訪れた。悲しい想いをしたくないので、ある時からバリヤーを張るようになった。新しい付き合いを遠ざけるようになった。・・身内意識が強くなったぶん外に対しての警戒心が敏感になった。たぶん自分は、閉じているのだ。本当は人恋しいくせに、近づこうとしない。友達が増える事に慣れていないのだ」
●感想⇒私は、幼稚園に行かず、祖父母に我が儘に育てられ、小学校の集団生活に馴染めない少年でした。低学年の頃、自分から人に話かけられず、寂しい思いをしました。「人恋しいくせに近づこうとしない」という気持ちは痛いほど分かります。私が変われたのは恩師(女性)のお陰です。先生は、私の長所を見つけ、自信をつけてくれました。頃合いを見て、学級委員にさせられ、対人関係に対する免疫もつけてくれました。悩みは誰にもあります。悩みのある人は、一人で抱え込まないで、解決の糸口を導いてくれる人との出会いがあると良いですね。私は、先生に救われた恩を忘れず、人から相談された時には、本人の悩みをよく聞いてあげます。余計なアドバイスを避け傾聴に徹し、問われた事にだけ答える。本人の立場に配慮しつつ、「余分な事は言わない、押し付けない」がモットーです。私のやり方は生温いかもしれません。本書の精神科医のような真似はとても出来ません。
(2)『第3話;義父のヅラ』より、「(患者)おれは[息子には]雑草の様に逞しく育って欲しい。・・・俺、思うんだけどさあ。体裁を取り繕うって、人生を生きにくくしない?開けっ広げの人間の方が絶対に楽なんじゃない?・・例えばの話。子供の頃からかしこまってばかりいたら、羽目を外せない人間になっちゃうぞ」
●感想⇒「一に勉強二に勉強、三四がなくて五に勉強」という言葉を耳にすることがあります。親は、「我が子に学歴を付けて人並み以上になって欲しい」と願うもので、気持ちはよくわかります。自分を振返ると、塾はソロバン位でした。学校から帰ったら、皆で秘密基地に集合。昆虫採集や川での魚とり・・、自然の中で楽しい時間を過ごしたものです。私は、現在の学歴主義を否定する訳ではありません。子供達には、もう少しだけ自然と接したり、好きな本を読んだり、という自由な時間をあげたら良いのになあと思います。そして、自分なりの夢を描かせてあげたいと思うのです。私は変人なのも。
(3)『第5話;女流作家』より、「“(患者)負けそうになる事は、この先何度もあるだろう。でも、その都度色んな人やものから勇気を貰えばいい。みんな、そうやって、頑張っている”・・人間の宝物は言葉だ。一瞬にして人を立ち直らせてくれるのが、言葉だ。その言葉を扱う仕事に就いた事を、自分は誇りに思う。神様に感謝しょう」
●感想⇒私は人に頼るのが好きでなく、自分の力を信じてきました。しかし、振返れば、独学でも希望大学に入れたのは、受験勉強のコツを教えてくれた、恩師のお陰です。先生は、「科目ごとに名著と言われている受験書を決めて、徹底的にマスターしなさい」と。この助言がなければ、失敗していたでしょう。その後の、会社生活でも、仕事に行き詰った時に、上司や先輩が救ってくれました。「人という字を見なさい、左に立っている人を右の人が支えるんだ」とも教えられました。相互扶助が大切ですね。また、書物からも多くの勇気(言葉)を貰いました。好きな本の文言です。「人間の生き方とは、あくまで一人一人が決めるのである。迷った時には、人生の先輩・先人に学ぶほかない」です。
4.まとめ;正直な所、奇想天外な精神科医の話には少しついていけません。そんな医師がいる訳ないと。しかし、こうしたストーリーを組立てる、奥田さんはどんな頭脳の持ち主か、興味があります。出版社への持込み、なんかすごいですね。氏は、「説明的な小説、説教している小説、自分の事を書いている小説が嫌い」と言います。奥田さんは、計り知れない魅力ある人ですね。(以上) -
精神科医伊良部一郎シリーズ第二作。
またも精神を病んだ人達が彼の元に通院する。
伊良部先生は腕をあげて、行動範囲が広がったみたい。
「空中ブランコ」
サーカス組織が変革期のベテランブランコ乗り。
突然演技ミスが増えてくる。伊良部先生までサーカス参加で、自分自身の問題に気づいて治癒に向かう。
「ハリネズミ」
尖端恐怖症のやくざさん。仕事上困る事が多すぎて通院。同業者のブランケット症候群(短刀で)を知り、理解し合い治癒へ向かう。
「義父のズラ」
医学部長の娘と結婚した一般家庭の医師。強迫神経症に苦しむ。義父のカツラを伊良部先生と剥ぎ取って、ありのままの自分で生活する事で治癒に向かう。
「ホットコーナー」
プロ10年目の野球選手。イケメンルーキーの登場でイップスに。後輩の素顔を知って治癒に向かう。
「女流作家」
心因性嘔吐症の女流作家。自信作の不発から発症。
自分の書きたいものを書く事で治癒に向かう。
先生のユニークな行動は、派手になり、人間関係の描写は濃くなって、面白く読みました。-
いいキャラですよね。
けっして真っ当な治療法とは言い難いですが、患者たちは巻き込まれていくうちに自分で気づいていく。
他人に上から偉そう...いいキャラですよね。
けっして真っ当な治療法とは言い難いですが、患者たちは巻き込まれていくうちに自分で気づいていく。
他人に上から偉そうに言われたことより、自分で気づいたことこそが響くのでしょう。
それを意図して行ってるとはとても思えませんが。
変態も使いよう(笑)
そういや注射好きの看護師なんかもいたっけ。2023/08/29 -
2023/08/29
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やはり面白い!!
伊良部先生も良いがマユミさんも凄い魅力的なキャラ。
皆それぞれ悩みを抱えて生きてるが
悩みなんてバカらしくなる
話は変わり(かわんのかよ!)
インザプール、空中ブランコとも
映画化?映像化?…予告編を見たが
やっぱり小説も漫画も【原作が良い】ですね
最近の映画やドラマは【原作はだいたい漫画でしょ?】と思ってたし、【実写化しても成功するのは一握り】で
実際【この作品面白いな!!と思った実写化作品】はただ「俺が原作知らない作品」なだけなんだよなぁ…
原作見ちゃうと、知ってると駄目…
映像作品を生業にしてる方には悪いけど…映像化するにあたって、事情で内容や登場人物やその性別、設定まで 変えなきゃいけない事も多いだろうから…
映像作品も良いけど、やはり本が好き
自分よりオジサンだったり、おじいさん達は
ラジオ聞いてるだけで【野球が観れた】【野球が伝えられていた】【打席が、ボールが見えていた】
自分もオジサンになってきて
なんかそれって「カッコいいなぁ」と思うようになった。
まぁ…私…野球に興味ないんですけどね
【ねぇのかよ!!!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!】 -
表題作を含む5つの短編集。
前作に続き、精神科医である主人公・伊良部の元へ心の悩みを抱えた患者たちがやってくる…。
個人的には前作のイン・ザ・プールの方が笑えた。
しかしながら、相変わらず最終的には伊良部のぶっ飛んだ治療法の発想で患者たちを救っていく展開は前向きな読後感を与えてくれて好きだ。 -
どこかの何かがきっかけになって改善しますよね。それが何かなんてわからないから色々やってみる。
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精神科医伊良部シリーズの2作目。本作も全作同様、とんでもない治療法で患者を治療する短編集となっております。
伊良部シリーズは落語や小噺のようなオチと、軽快なセリフ、アメリカンコメディのような雰囲気もあってとても読みやすく、隙間時間に読むにはもってこいの作品だなぁと思いました。
今作は特に「気づき」と「開き直り」をテーマにした作品が多かったのかなぁと思いました。
詰まるところ、自分だけでなく他人も同じ思いをしてることに気づくこと、自分が苦しんでることは大したことではないと開き直ること、こうした考え方ってすごく大事なのだと教えてくれてるような感覚がありました。 -
「いらっしゃーい」の伊良部先生が、また今回も際立ってましたね。「この先生、ヤバイ」んですけどね。なのにどうしてか、みんな頼って先生のところに行ってしまう。そしていつも謎の方法で解決。これぞ伊良部マジック。
ある意味寛容な心で見ると、伊良部先生は純粋、自分に正直、素直。相手に忖度なし。
そして時々腑に落ちる事を呟く。
ここですよ。ここ。付箋付けどころ。
これにいつもやられちゃうんだよなあ、私も。
そして最後「マユミちゃ〜ん」が!良い子だ! -
伊良部先生が直木賞⁉︎笑
そんな第一印象(失礼)でしたが、
読んでみて十分に納得出来るストーリーでした。
特に表題の空中ブランコは、
伊良部先生らしさ出ていてとても良かったです!
伊良部先生の、抜け抜けなんだけど、
医者の本質を時より見せるのがまたいいですね。 -
前作で伊良部先生像が確立され、非常にとっつきやすい
オキニは「ホットコーナー」
考えれば考えるほど悪い方向に行く
…なら考えなければいいじゃん
Don't think,feel!
よい頭の休止になりました -
伊良部シリーズ第二弾。
第一弾「イン・ザ・プール」を読んでしまったがために、すぐに第二弾の本書も手に取らずにはいられなかった。そして今回も存分に楽しませてもらった。
特に3話目「義父のヅラ」はかなりヤバかった。
電車の中などといった不特定の人が居る場所で読む行為は危険です。
著者プロフィール
奥田英朗の作品






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ダイちゃんさん、コメントの返信をありがとうございます。私は、ダイちゃんさんの感想を拝読する事はとても勉強になります。こ...
ダイちゃんさん、コメントの返信をありがとうございます。私は、ダイちゃんさんの感想を拝読する事はとても勉強になります。こちらこそこれからもよろしくお願い致します。