都市伝説セピア (文春文庫 し 43-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167712013

感想・レビュー・書評

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  • ノスタルジックなホラー短編集。秀作。
    昨日公園:友達を救うため時を繰返す
    アイスマン:夏祭りの河童の氷漬け
    フクロウ男:都市伝説を具現化
    死者の恋:死者を愛する女の狂気

  • 文庫本になってすぐに読んだけど、
    いまだにふと思い出して
    読み返したくなるくらい、
    郷愁を誘う作品。


    この小説は短編集だけど、
    最初に読んだ時は
    そのバラエティーに富んだ
    作品の完成度の高さに
    ホンマに新人が書いたの?って
    ビックリしたし、

    妖しい世界観の冒頭から
    一気に引き込まれました。



    本書は朱川さんのデビュー作であり、
    ちょっと不思議でどこか懐かしい
    妖しい世界観の短編集が
    五編集められています。


    見せ物小屋で出会った不思議な少女との淡い恋心と
    河童のミイラの謎…、
    帰省先の神社で
    少年が迷い込む異世界を
    ノスタルジックかつ官能的に描いた
    「アイスマン」


    親友を事故で失ってしまった少年が
    何度も過去に戻り、
    彼を助けるために奔走する姿を描き
    “世にも奇妙な物語”にて
    実写化もされた名作
    「昨日公園」


    フクロウの化身に自らがなり、
    都市伝説を作ることに溺れていく愚かな男の狂気を描いた
    オール讀物推理小説新人賞受賞作の
    「フクロウ男」、


    今は亡き作家に恋をした
    女たちの狂気を描いた
    正統派ホラー
    「死者恋」、



    など
    どれも甲乙付けがたいほど
    完成度が高い作品ばかり。


    この朱川さんという作家は
    地味なんやけど、
    淡々とした語り口調で
    読者を引っ張りながら、
    最後の最後で
    物語をひっくり返すうな
    オチが本当に上手いんです(≧∇≦)


    そして全編を切なく貫くのは、
    朱川さんの作品すべてに息ずく
    「昭和の香り」であり、
    昭和だからこその
    おどろおどろしさなのです。


    ホラーと言ってしまうと
    敬遠する人もいるだろうし、
    それで敬遠するには
    本当に勿体無い作品なので、

    ちょっとノスタルジックな
    不思議で切ない話が好きなら、
    (また妖しい江戸川乱歩の世界観が好きなら)

    または昭和を感じたい人、
    昭和の匂いに浸りたい人、

    30代以上の人、


    先入観抜きで
    読んで欲しい作品です(^_^)v

    • メルさん
      はなまるありがとうございます^^
      この本、円軌道の外さんのレビューを読んで
      読んでみたんですよ♪
      いやぁ、読んでよかった!
      おもしろ...
      はなまるありがとうございます^^
      この本、円軌道の外さんのレビューを読んで
      読んでみたんですよ♪
      いやぁ、読んでよかった!
      おもしろかったです◎

      いつも円軌道の外さんのレビューを読んで
      うんうん!そうそれ!そうなのよ~
      と心の中に湧き出た気持ちをそのまま
      ズバリ書いてくださるので
      もうおなかいっぱいになっちゃって
      自分のレビューでは書くことなくてf(^_^;

      これからも参考にさせていただきますね^^
      2013/01/28
    • 円軌道の外さん

      メルさん、
      コメントありがとうございます!


      おおーっ
      読んでくれたんですね(^O^)


      怖くて不思議な話だけど...

      メルさん、
      コメントありがとうございます!


      おおーっ
      読んでくれたんですね(^O^)


      怖くて不思議な話だけど
      なんか切なくて
      心に残る作品集ですよね。


      気に入っていただけたなら
      紹介した甲斐がありましたよ〜(*^o^*)




      あはは(笑)
      いやいや、感動した作品は
      自分の言葉で
      レビューどんどん書いちゃって下さい(笑)


      メルさんをフォローしてる人は
      メルさんの言葉が聞きたいハズだし、
      自分もいろんな感想聞いてみたいんで(笑)♪



      こちらこそ、これからも
      よろしくお願いします!


      2013/02/05
    • メノさん
      コメントありがとうございました!
      返信が遅くなり大変失礼しました。
      私も、ここ最近ログインしておりませんでした。

      円軌道の外さんの...
      コメントありがとうございました!
      返信が遅くなり大変失礼しました。
      私も、ここ最近ログインしておりませんでした。

      円軌道の外さんのプロフィール、かっこいいですね。
      私はしがない派遣社員ですよ。とほほ。
      IT系のエンジニアやっています。
      普段は、本読んだり、ジョギングしたり、最近アコースティックギターを始めました。

      朱川さんは、地味ですよね。
      あと、大抵、切なくて温かい作品が多い中、この都市伝説セピアは、他の作品と比べると、私は最も好きな作品です。
      (もちろん、昭和路線も捨て難いですが、私の嗜好には、こっちがぴったりというところです)
      私自身が都市伝説マニアでもあるので、ドンピシャな感じです。

      角川ホラー文庫で出ているのが未読なので、次はそこを狙っています。

      今後ともよろしくお願いいたします。
      2018/02/12
  • 「情」の爆発力と悲哀の中に混じる温かみかな。

    僕が朱川作品に惹かれてしまうのは。

    この本で言うと、それは②。

    たまにしか出会えないから、必死になって追いかけてしまうのだろう。

    ⑤も好きだなと感じる温かい作品。

    そのほかの3作は、好きかと問われると疑問だが、作品としてはとてもしっかりしていると思う。

    【あらすじ(始めの部分)】
    ①アイスマン
    25年前、16歳の夏、精神を病んで叔父の家に預けられた僕は、夏祭りの見世物小屋に入ろうとしたとき、傍らの少女に手を引っ張られ、別の見せ物を見に行くことに。
    ②昨日公園
    遠藤は息子とキャッチボールをする。三十数年前、親友のマチを見捨てざるを得なかったこの公園で。
    ③フクロウ男 ⭐️デビュー作
    都市伝説になることに憧れ、完全犯罪も成就させた男が、自分の中の10%に衝き動かされて、君宛の告白の手紙を書いている。絞首刑になるやもしれぬのに。
    ④死者恋
    私が本気で恋した相手は朔田公彦。二十歳で自殺した画学生で、17歳から死の前日までの日記を読み、恋してしまったのだ。そんなある日、同じ彼に恋する三ケ崎しのぶに出会ってしまった。
    ⑤月の石
    電車の車窓から見えた、数秒で通り過ぎた光景に藤田は釘付けになった。本村と目が合ったのだ。マンションの窓辺に佇む、自分がリストラした男だった。

  • はじめて、朱川湊人先生の作品を読んだ。

    読みやすくて面白くて、短編集だが全体的に描写がしっかりと描かれていてどれも納得のいく作品。

    最初のアイスマンを読んで、想像できるラストだったが鳥肌が立つほど怖くまた切なくて、感情を揺さぶられた。

    他の作品も脳内でしっかりと映像化されて、とても面白いと感じた。

    次は「花まんま」を積読しているので読んでみたい。

  • 朱川作品は7作品目にして、やっと
    デビュー作を読みます(^◇^;)
    「アイスマン」「昨日公園」「フクロウ男」
    「死者恋」「月の石」の5つの短編集。
    どの作品も懐かしい言葉やシーンが散りばめられていて
    不自由だった時代のノスタルジーに浸れます。
    時々読みたくなるんですよね。

  • 五つの短編が収録された、朱川湊人さんのデビュー作です。

    ホラーあるいはファンタジーの範疇に入る作品ながらも、全編に漂うノスタルジックな雰囲気が、そこはかとない寂しさや哀しさを感じさせます。

    非日常が日常の中に自然に溶け込んだ不思議さは、恒川光太郎さんや乙一さんの作品世界に近いものがありそう。

    類型的でない独自の雰囲気を持つ作品群を、楽しませていただきました。次作以降の作品も是非読みたい、と思っています。

  • 高校1年の時に読み、ここに収録されている『アイスマン』が好きすぎてオマージュした小説を書いてた思い出がある。懐かしい。あれから12年経ち、再読。やっぱり『アイスマン』が好きだ。

  •  短編5編収録の作品集。

     最も印象に残った短編は「昨日公園」息子と遊んでいた父親が、子どもの頃時間を巻き戻し親友を助けようとした記憶を回想する短編です。

     親友を救うため一途に行動し続ける少年の姿、悲しい決断、そしてラストたるや涙を流しそうになってしまいました。読み終えた時登場人物たちに対する愛しさと、切なさがこれ以上ないくらいこみあげてきました。名作の多い朱川さんの短編の中でも一・二を争う完成度の高さと切なさ、悲しくてだけど美しい短編だったと思います。

     ホラー系の作品では「死者恋」もかなりの完成度です。朱川さんらしく人間のもつ歪んだ感情を見事に表現しています。朱川さんのホラーは血みどろの怖さではなく、心理的にひたひたと迫ってくる怖さだからか、怖さの中にも一種のスマートさも感じてしまいます。

    「月の石」は切ない人間心理に迫りつつも、最後にほんの少しの救いがあり、いろいろな意味で心が救われた短編だったと思います。

    「フクロウ男」はミステリ的な仕掛けもあり、主人公の歪んだ感情などの描き方も巧かったです。

    「アイスマン」はノンコに惹かれる主人公の少し耽美的な描写が印象的でした。

     朱川さんのデビュー作を含む初期の短編集ですが、それでいて完成度が非常に高く、デビュー当時から朱川さんの技術が卓越していたこと、そして朱川さんの作品の世界観や空気感というものが完成していたことが分かる短編集でした。

     読み終えてからこの本のカバーを見ると、また感じてしまうものがありますね…

    第42回オール讀物推理小説新人賞受賞作「フクロウ男」
    日本推理作家協会賞短編部門候補作「死者恋」

  • マイ本。久々に再読。
    月日が経つとここまで印象が変わるものかと驚きました。という以前に、作品の記憶がかなり捏造、曖昧なものになっていてビックリσ(^_^;)
    「アイスマン」は河童の氷漬けというキーワードが記憶に残っていただけて、内容は恒川光太郎氏「夜市」に置き換わっていたし、「昨日公園」も美しい話という印象があったのに、こんなにゾッとするような内容だとは…。
    印象に残っていなかった「死者恋」「月の石」が今回は良かったです。
    月日とともに、読書する本の好みも変わってきますが、それでもやはりこの短篇ホラー集の完成度は素晴らしく、色褪せない名作だと改めて思いました。
    数年後にまた再読した時の、自分の反応を楽しみにしつつ、そっと本棚に本を戻しました。

  • 短編集。「昨日公園」と「月の石」が、切なくて好きでした。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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