いっぺんさん (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 385
レビュー : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167712044

作品紹介・あらすじ

いっぺんしか願いを叶えない神様を探す少年とその友人の奇跡を描く感動の表題作「いっぺんさん」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」とその後日譚「磯幽霊・それから」、山奥の村で、ほのかに思いを寄せた女の子に起きた出来事「八十八姫」など、じんわりと沁みる恐怖と感動の九篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 朱川さんお得意の怪奇・幻想ジャンルの短編を9編収録した短編集。

    朱川さんの本を読むたびに書いているかもしれませんが、またしても外れなし!感動系もホラー系も切ない系も全部入っていることに加え、作品数も多めなので大満足でした。

    何と言っても表題作の『いっぺんさん』は間違いなく名作!
    一度だけ願いを叶えてくれるという神様をめぐる二人の子供の物語。
    子供二人の友情はもちろんのこと作品全体に流れる優しさ、ラストの感動……これはどんなレビューを書いても作品を安っぽくするだけになりそう。ぜひ読んでください!

    ホラー系の作品も充実しています!『コドモノクニ』は四人の子供それぞれに起こる物語をオムニバス調に描いた話。

    この四つのバラバラな話を出した意味はなんだろう、と思っていたのですが、ラストに戦慄が走りました……系譜は違うけど綾辻行人さんの『十角館の殺人』並みの一行の衝撃だと思います。

    『小さなふしぎ』は傷痍軍人の鳥使いのおじさんと少年の物語。
    少年の描き方の巧さがノスタルジーを誘います。それだけでなくメッセージ性もあり、切なさもある佳作です。

    『山から来るもの』は祖母の家に泊まることになった少女の話。
    朱川さんの描く人外のものって描写がしっかりしているので、ついつい想像力を喚起させられ怖くなってしまうのですが、それ以上にゾーッとしたのがラスト……なんとも居たたまれない……

    『磯幽霊』と『磯幽霊・それから』はつながった話なので、セットにしてのレビュー。単なる怪奇譜だけで終わらせない朱川さんの巧さが光ります。最後に男が放った言葉の意味、初めはどういう意味か分からなかったのですが、分かったとたんにまた怖さがぶり返してきました。

    ラストを飾る『八十八姫』は前近代的な村が舞台の話。
    人間の怖さももちろんのこと、大人たちの理由のない論理の前に、なすすべもない子供たちの姿が切なさを感じさせる短編です。子供たちの初恋の描写も初々しくて、だから余計に悲しいですね。

    最近、自分の中で朱川さんへの信頼度が半端ないです(笑)まだまだ読んでない作品があるので、当分は「困った時に朱川さん」という法則を使ってしまいそう。これだけ自分の中で、ハードルを上げてしまって大丈夫か、少し心配ですが(苦笑)

  • たった1つだけ叶う願い。今自問自答すると野心丸出しで自欲ばかり考えてしまう。子供の純粋な願いだからこんなに胸が打たれて涙がこみ上げるのかなあ…。
    表題作が1番好きです。他8編成の不思議で少しだけ怖い短編集。
    文章がきれいで比喩や形容がとにかく的を射ていて分かりやすい。
    国語の教科書を読んでるみたい!

  • 少しだけ昔の、日常に紛れたおとぎ話。けして後味はよくないです。

  • 「磯幽霊・それから」のみの感想です。
    短いながらも後味が悪くて非常に良かった。もちろん話の土台はあるけど、特に派手な展開はなく相手の報告だけでこんなに怖くなるのは素晴らしい。

  • どれも面白い。
    チュンスケの話がすき。

  • 読んでいると背筋がぞわぞわしてしまう短編集。
    民俗学のような、地方に古くから伝わる、ちょっと不思議な伝説を現代に持ってきた感じの物語達。
    それぞれの物語の最後に、ゾクッとするオチがついていて……クセになりそう。
    恐いもの見たさと言おうか……。

    全編を通して、子供の居場所とか心の拠り所って大事なんだ、と改めて気付かされた気がした。
    特に表題の物語は、どうしようもなく泣けた。
    「いっぺん」の意味ってそっちなんだね。
    この物語のオチ、特にラストの一行は切ない。
    また朱川さんの物語を追いかけてみたい。

  • 口裂け女の話って「綺麗です」と答えても「ブスや」と答えても結果は死ぬ、トイレの花子さんもそう。怖い話ってのは、絶望的だったり、突き放された感が伴うと、恐怖感がいや増すと思う。
    道中がどんなに怖くても、明るい希望溢れた結末だと、小説としての出来は良くても、怖い話としてはインパクトが弱いと思う。

    その辺、朱川さんはさすがである。ノスタルジックホラーで「三丁目の夕日」的感動作を描いてる部分もあるが、どこかに絶望とか突き放し感をしっかり持たせている話が多い。この短編集でいうと「コドモノクニ」なんかは好例。表題作や「八十八姫」などの感動作も例外ではない。「エエ話」に思わせといて(いや実際エエ話なんだけど)実は登場人物たちを突き放した部分をもたせていたりする。

    「ホラー」と「ノスタルジック」がお似合いなのは、どちらも「もう戻れない」という絶望とか突き放し感が共通しているからかもしれない、そういえば「少年少女の頃」ってのも同じ共通項があるよな。
    そこに着目し、掘り下げていく朱川さんって小説の匠やなぁと思う。

  • 『かたみ歌』『花まんま』に続く、朱川湊人さん関連文庫の3冊目。9つの短編から成る本作。
    上記2冊にも増して、ホラー色を濃く感じた一冊です。

    表題にもなっている「いっぺんさん」は、ホラーながらも心温まる少年たちの物語。とても大好きです。
    「小さなフシギ」は可愛らしさがほんのりと。
    あとの7作品は怖かった...

    人は誰しも幼少時代を過ごします。
    40を超えた私にはそれなりに遠い過去。
    断片的な記憶が残っているものの、記憶の隙間もたくさんあり。
    そして、その隙間を中心に、輪郭ははっきりとはしていないものの、”怖い”と感じた多くの記憶の断片もあり。
    それは、目に見た風景なのか、暗闇で聞いた音なのか、うなされながら見た夢なのか、はたまた人間関係の苦い想いなのかは分かりませんが、その記憶の裏側に”怖い感覚”がしっかりと張り付いていることは確か。
    私にとっての朱川湊人さんのホラー感は、こういった私の中にあるおぼろげな”怖い記憶”にスポットライトを当て、今の自分の中にじんわりと広げていくような”怖さ”です。

    あと、「磯幽霊」と「磯幽霊・それから」の位置関係は、異なる視点からの”怖さ”を見事に表現されており、中身はもちろんのこと、その構成にも堪能させていただきました。

    朱川湊人さんならではの、独特な空気と世界観、そして技巧。
    折に触れて、その独特の読後感を味わってみたくなる作家さんです。

  • いつものほんわか優しく懐かしいホラーではなく、割と本当にホラー。懐かしい雰囲気の怪談と言った所か。柔らかな印象は変わらずなので安心して読めます。

  • 2016.04.17

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著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

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