ドナウよ、静かに流れよ (文春文庫 お 39-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 594
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167715014

作品紹介・あらすじ

ドナウ川で邦人男女が心中…その小さな新聞記事が頭から離れなくなった私は、二人の足跡を追ってウィーンへと向かった。もはやこの世にいない19歳の少女、日実は、異国の地でどんな恋をし、何を思い、そして何ゆえに追いつめられていったのか?悲劇的な愛の軌跡を辿る、哀切さにみちたノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • あまりノンフィクション好きではないので、滅多に読まないんです。
    でも大好きな作家さんのノンフィクションとのことで、自分が大学2年の頃に読んでみた。

    内容はドナウ川で邦人男女が心中という実際に起こった出来事を筆者が追うというものでした。
    その亡くなった女性が19歳の少女。奇しくもこのお話を読んだ私と同い年だったのが、とても印象に残っています。

    どうしてこの少女は心中という道を選んだのか?それは自分の愛の形をこの世に残される人々に証明するためだったのかな、と私は思いました。でも実際の理由は誰にも分かりません。

    残された家族の悲痛な気持ち。特に両親が相手の男性を憎む気持ちも痛いほど伝わってくるけど、その不毛さにも胸が痛みました。

    残された二人の遺書からはその決意の強さが伝わってくる。
    「私たちはすでに死んでいる。
    ありがとう。
    2001年7月30日
    千葉師久
    渡辺日実
    私たちは理想郷にいきます」

    そして二人の遺書の末尾に少女が両親に向けた言葉。
    「渡辺正臣とマリアは人殺しだ。
    テメェらおぼえておけ。のろってやる。死ね。
    クソやろう。ぎぜん者ぶりやがって。死んでしまえ!」
    どうしようもなく、ひどい言葉。
    でもひどい言葉の中に哀しみと愛が籠っている気がするのは私だけでしょうか?

    最後の方にに亡くなった少女の肖像写真が掲載されていて、この物語が実話だったのだと衝撃が走った。彼女のパワーの漲ったまっすぐな瞳に、心の芯の強さが伝わってきました。なんだかその写真を見たとき、涙が出てきました。

    この本の内容、大人になった今でも鮮明に記憶に残ってる。
    ぜひ10代の女の子たちにこの本を読んでもらいたい。

    読んで疲れるという方もいるけど、それだけ人の人生が重いものだということなのだと思います。

    • cecilさん
      >九月猫さん

      コメントありがとうございます〜!!
      「幻想運河」めっちゃ面白そうじゃないですか!早速本屋でチェックしてみます。
      有栖川有栖の...
      >九月猫さん

      コメントありがとうございます〜!!
      「幻想運河」めっちゃ面白そうじゃないですか!早速本屋でチェックしてみます。
      有栖川有栖の作品で実は「作家アリス」シリーズは3冊ぐらい積んでますwただ、このシリーズ超絶長そうなので中々勇気を持って読み始められないんですよね〜w
      先に「幻想運河」を呼んでみます!めっちゃ内容が気になります。
      最近ミステリー読んでないなぁと思っていたので♪
      最近読書意欲が出すぎですが時間がなくて困っちゃうw
      2013/04/03
    • 九月猫さん
      cecilさん、こんばんは!

      あっ、作家アリスも積んでるんですね(笑)
      さすがcecilさん♪

      作家シリーズのほうはたくさん出...
      cecilさん、こんばんは!

      あっ、作家アリスも積んでるんですね(笑)
      さすがcecilさん♪

      作家シリーズのほうはたくさん出ているけれど、学生シリーズと違って話が続いていないのでどこから読みはじめてもいけますよ(*^ー゚)b
      出版社もばらばらですし。

      「幻想運河」cecilさんのお口に合えばいいんですけれど…。
      もし気に入ってくださったそのときは、レビューお待ちしています~(^m^)

      ここ「ドナウ」レビューなのに違う話でコメつけすぎですね、わたし(^^;)
      2013/04/03
    • cecilさん
      >九月猫さん

      全然、レビュー本と関係ない話題でもOKですよ〜♪ブクログが盛り上がるのは良いことですし!!私も面白い本を紹介してもらえて嬉し...
      >九月猫さん

      全然、レビュー本と関係ない話題でもOKですよ〜♪ブクログが盛り上がるのは良いことですし!!私も面白い本を紹介してもらえて嬉しいです。
      読みたい本が増えちゃって大変ですけどw

      作家シリーズは途中から読んでも大丈夫なのですね!
      それは嬉しい!
      マイペースに読み進めようと思います。

      「幻想運河」読み終わったら必ずレビューしますー!


      2013/04/05
  • ルーマニアで命を絶った19歳の少女。彼女に一体何があったのか、著者がその謎を追いかけるノンフィクション。少女の周辺情報や現地での出来事、著者の考える少女の志向性などが丁寧に描かれ圧倒的に引き込まれた。その謎を追う旅の果てに著者が示した景色が胸に刺さる。友人から借りた本だが、出会えて感謝。

  • ノンフィクション。
    もう起こってしまった出来事を、なぜそういう結末になったのかを追っていくため、この女の子がどういうふうに人生を終えるのかを分かっているので、読んでいて胸が苦しくなります。
    ここでこうしていたらとか、こんなことをしていなければとか、過去の出来事に対して“たられば”で後悔するのは良くない事と分かっていても、全ての出来事が彼女を異国の地で心中させるように向かっているようにしか思えず、いらいら、やきもきします。
    もう一度同じようなことが起こったとして、今度は止められるか。

    頁をめくり、最後行き着いた先、ドナウ川が静かに流れる余韻の中で、突然現れた、まだ先のことなど何も知らないような少女の写真に涙が出ました。

    寝る前に読み終わったため、読後の余韻や事件の余韻や少女の人生やいろいろなことを考えてしまい眠れなくなりました。。。

  • 大崎善生以第一人直述19歲的日實和相識不到半年的千葉一同殉情在多瑙河的始末,日實和千葉可以永遠活在多瑙河,ㄧ段無以挽回的命運,讓人唏噓。

  • 残された人たちの無念さ、悲痛さ、優しさがよく書かれている。「人の数だけ正義がある」と言われるのと同じように、「人の数だけ事実もある」のかもしれない。ただ、ルポというより、知りえた事実を基にした著者の願望というほうがあってる気がする。

  • 随分前に読んだことがあるが、すっかり忘れていて再度購入したため再読。
    親の立場から言えば辛いの一言、耐えられない。相手のことも許せないだろうなと。ドキュメンタリーは辛い。

  • 小さな記事から、これだけ書きあげてしまう元「編集長」の力量。

  • 学生時代に読みまたいつか読もうと思ってとっておいた一冊。台湾出張の時に持っていく。

    ドナウ川で日本人が心中の記事を読み気になった著者が調べていくと自分にも関わりがある人だということが分かり、詳しく調べていく。

    なんといったら良いか、若い人の死は悲しい。若さゆえの危なっかしさを思う。真実が見えていくと女の子の親が主張した、男に殺されたと言う主張は違うと感じる著者。両親の主張通りの記事にはできない苦しさ、正しさ、プロフェッショナル。

    真実とは人の数程有るものだろうか。

    若いとき読んだほどの衝撃は亡くなったが、今は両親の苦悩が拠り深くわかる気がする。やはり読んだあとの心に何かを残してくれる一冊。

  • ウイーンで33歳の自称指揮者と心中死した19歳の女子学生を廻る大崎善生さんのノンフィクションです。
    ”純粋”の作家。この作品を読んで、大崎さんの事をそう思うようになりました。
    この作品の主人公の女子大生と、デビュー作「聖の青春」の主人公の捉え方がよく似ています。どちらも悪く言えば我儘で奔放ではた迷惑な人間です。それを著者は「純粋・無垢」と捉えます。「聖の青春」の聖は、難病ゆえにまともな生活が営めなかった人なので、まだ説得力があるのですが、この主人公の場合はどうでしょうか。むしろ世間知らずでエキセントリックな感じばかり目に付きます。それも「純粋・無垢」としている。そういえば、小説でも大崎さんはその傾向があるようです。実は半分くらいで投げ出しそうになりました。最後はそれなりに収まって、まずまずだったのですが。。。。
    「純粋」というフィルターを通して物事を見る。あるいは文章を書く。大崎さんはそんな作家さんだと思えばよいようです。

  • 傑作!

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大崎善生の作品

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