ドナウよ、静かに流れよ (文春文庫 お 39-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167715014

感想・レビュー・書評

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  • 19歳の少女が異国の地で遂げた最期の真実。

    フィクションではなく、ノンフィクションであるということ。事実は小説より奇なりというけれど、これほど胸を苦しまされることなはいかもしれない。誰が悪いとか、こうすればよかったと思うことは簡単だけれど、ただ事実だけを見つめ、真実を知ることがいかに難しくつらいことなのか。

    誰にも頼れず、二人きりになって選んだ最期の時。もっと違う道はなかったのかと思いを巡らせることは簡単だけれど、少女にとってはこの道しかなかったのかもしれない。

    切なくつらい気持ちであふれるけれど、最後まで読むと、なぜか重苦しい気持ちだけでなくて、なんだか清らかなものをみたような気持ちになった。

  • 読みながら、いろんな要因が重なって、つながっていき

    読み進めることが、つらくなった

  • 大崎さんのノンフィクションはじめて読んだ。かなりグイグイ引込まれてしまった。ただ誰にも共感できなかったけど。

  • 自殺とか心中って不幸な偶然が重なって起きるんだなあと改めて思いました。心を動かされたのですがたぶんもう二度と読まない、というか読めないと思います。つらすぎて。




  • ドナウ川で心中した男女の軌跡を辿ったノンフィクション


    安易に大崎善生の作品だからといった理由で選んだ本だけれど
    しばらく実際にこんなことが起こったという事実を受け止めることができなかった
    亡くなったのは私と同じ19歳の少女で
    「女」というのに違和感を感じるぐらいの年齢なのに
    どうしてこんなことが起こってしまったのだろうと


    事件が起こったのは2001年8月3日
    私が中学1年生だった頃
    こんな事件があったなんてことも全く知らなかった


    残される家族がつらい思いをするのを彼女はわかっていたのだろうか
    彼と一緒に死ぬことが唯一の手段だと彼女は信じていたのだろうか


    19歳の彼女が描く「愛」の形は一体どんなものだったのだろう

    全てのレビューを見る(357)編

  • 事実を題材にはしているとしても、この作品は『小説』。生存者へのインタビューや、メール、手紙、各種題材から紡ぎ上げた、ある意味、歴史小説。
    そういう意識で再読したが、これが『愛の軌跡』の話には読めなかった。
    日実の心情を他の誰かが書くと、また違う日実が見えてくる気がしてならない。

  • 聖の青春 で好きになった作家さん。たまたま目についたドナウ川での若い邦人男女の入水自殺の新聞記事に、何やら運命を感じて、ノンフィクション作家として深く掘り下げていく過程が描かれた話。
    とにかく、読み疲れがする本です。
    自殺した当人はもう世の中にいないのだから、当然関わった周りの人からの取材を通じて、真実を探る話になる。
    何が真実か、だけではなく、真実とは何か、真実は存在するのか、その真実は誰にとっての真実か、みたいな問いかけが随所にある作品。
    読んだ後の私の個人的な感想ですが、
    真実云々ではなく、入水自殺をした当人達の周りの人間の苦悩が直で伝わってくる作品です。
    みんな、ありえない『もしあの時、○○だったら』で苦悩している。納得するための果てない理由探し旅に出ざるを得なくなっている。
    はっきり言って自殺した当人はいろんな選択肢がある中から自分で自殺を選んだんやから、結局周りは文句の言いようがない。
    だから、私はこの本は装丁の裏書きにあるような『悲劇的な愛の軌跡を辿る、哀切さにみちたノンフィクション』な作品とはとても思えなかった。

    自殺の真実が何であれ、周りは不幸です。

  • 子どもをお金で育てた罪は重い。
    読了後、真っ先に浮かんだ感想だ。

    「(日本とルーマニア)どちらが自分の母国かわからない」という苦しみ、
    家庭不和の過去からくる寂しさ、
    そのすべてに、両親はまったくもって向き合うことをしていない。
    いつもお金で場所や道具を用意して、あなたをしばることはしないから、と
    遠巻きに見ているだけ。

    千葉の不安定さを受け止め、深く愛し、彼を支えようと異国で
    懸命にもがき続ける彼女の姿からは
    「私もこうやって両親に受け止めてほしかった」という
    叫びが聞こえる。

    著者の大崎さんが、彼女の遺体が発見された地点へと歩みを進めながら自分の胸の中の思いを綴るシーンは、何度読み返しても、重く深く胸に迫る。

    あまりにも悲しい、物語だった。

  • なぜ彼女は男とドナウに身を投げたのかドキュメンタリーな一冊。
    小さな三面記事を突き詰めると壮大なドラマがあるのね。なんだかやり切れない気持ちになってしまった。思春期の頑なさが一人ぼっちの異国で招いた悲劇。

  • 19歳の少女と33歳の指揮者の男がウィーンで入水自殺をしたーーという新聞の小さな記事
    何故遠く離れた地でこの日本人の男女は自殺しなければならなかったのか?
    サラリと読み流せない何かを感じて調べてゆくうちに思いがけない人物に出会うこととなり
    二人の男女の苦悩に近づいてゆく。『聖の青春』に続く大崎氏のノンフィクション。

    読んでいてとても切なく苦しい。19歳で不本意ながらルーマニアに留学した渡辺日実。
    見知らぬ土地で言いようのない寂しさに駆られ、知り合ったばかりの千葉師久と同棲を始める。
    遠く離れた日本に住む日実の両親は素性のはっきりしない千葉との同棲に難色を示す。
    そんな両親に反抗しつつ、心を病んだ千葉へ無償の愛情をそそいでゆく日実。
    本当にこれが事実なのかと思うくらいに運命のいたずらが随所で起こる。悲しいくらいに負の方向に・・・
    あのときにこうしていたら、二人は死なずに済んだかもしれない。
    過去のifは言っても仕方がないこと。でも彼らを見てきた周囲の人たちは思わずにはいられなかった。
    自ら死を選ぶことは残された人たちにとてつもない悲しみと後悔を与えてしまうものだと思った

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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