ドナウよ、静かに流れよ (文春文庫 お 39-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167715014

感想・レビュー・書評

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  • 大崎善生以第一人直述19歲的日實和相識不到半年的千葉一同殉情在多瑙河的始末,日實和千葉可以永遠活在多瑙河,ㄧ段無以挽回的命運,讓人唏噓。

  • 学生時代に読みまたいつか読もうと思ってとっておいた一冊。台湾出張の時に持っていく。

    ドナウ川で日本人が心中の記事を読み気になった著者が調べていくと自分にも関わりがある人だということが分かり、詳しく調べていく。

    なんといったら良いか、若い人の死は悲しい。若さゆえの危なっかしさを思う。真実が見えていくと女の子の親が主張した、男に殺されたと言う主張は違うと感じる著者。両親の主張通りの記事にはできない苦しさ、正しさ、プロフェッショナル。

    真実とは人の数程有るものだろうか。

    若いとき読んだほどの衝撃は亡くなったが、今は両親の苦悩が拠り深くわかる気がする。やはり読んだあとの心に何かを残してくれる一冊。

  • ルーマニアで自ら命を絶った日本人留学生の内面に迫ったノンフィクション小説。

    異国の地ルーマニアで19歳の若さで命を絶った少女(渡辺日実さん)の命の足跡に迫ったノンフィクション小説。明るく活発だった少女を死へと追い詰めていったものは一体何だったのか。一途な愛に命の業火を燃やし尽くした19歳の少女の軌跡。

  • ドナウ川に身を投じた自称指揮者の男と19歳の女子大生。なぜ、2人は死ななければならなかったのか、、、

  • ノンフィクション小説。
    33歳の自称指揮者の日本人男性とともにドナウ川に身を投げた19歳の少女。
    取材により明らかになる彼女を取り巻く状況から、少女渡辺日実の思春期の葛藤と成長を深い洞察をもって描き出す。
    両親、友人、誰も知り得なかった、一人の少女の生き様を掬い出した。これにより、多くの人が救われただろう。著者に敬意を表す。
    パイロットフィッシュも面白かったが、ノンフィクションの方が彼の持ち場なのだろう。


    読み終えた後、19歳と早くに人生を終えた日実だが、果たしてその人生の価値は、彼女の父・正臣と比べてどちらが重いのだろうか、と考えた。
    おそらく、より懸命に人に寄り添い、人に必要とされ、愛を見いだし、人の人生に大きな痕跡を残したのは日実だろう。
    質問をかえて、自分ならばどちらの人生を選びたいか、と考え直す。同時に、その質問は、人生の目的をどちらがより果たしているか、ということだと思う。

    思い出した。
    学生のとき、無人島で楽しく釣りをして暮らすという人生と、とにかく毎日胃が痛くなるような中で働きづめで人の役には立っているのだろうが個人としての幸せ感が得づらい人生であれば、どちらを選ぶか、と考えたことがあったが、そのとき、自分は後者を選んだ。人の中にいてしか自分の人生の意義を見いだせない、と思ったからだ。
    ダライ・ラマは、人は社会的動物である、だから社会の中でしか生きられない、と言った。言葉を加えると、人は社会的動物である、だから社会の中でしか生きられない、なぜなら生きるとは生きる目的を果たすことであり、それは人との関わりの中でしか果たし得ないものだから。
    内村鑑三が『後世への最大遺物』の中で記したように、自らを顧み、人と関わり、その生き様をもって、人にその痕跡を残していくことこそ、最大遺物であり、生きる目的であると思うから。

    少し脇道にそれるが、山川草木悉皆成仏(山川草木悉皆仏性)という言葉がある。もし、人が山や川や草や木といったものとその仏性において交歓することができるのならば、私は無人島での生活を営むことでも良かったのだろうか、とも思った。そうなれば、人の中、社会で生きずとも、人生を全うすることができるのだろうか。

    母・マリアは言う。
    「日実にとっての事実と、あなた(夫)にとっての事実と、私にとっての事実は違う。」
    その通りだと思う。私は客観的に明らかなものを「事実」と呼び、主観的なものを「真実」と呼ぶので、マリアとは言葉の遣い方は違うが、そうである。
    周囲がどう見ようとも、日実は自分の真実の人生を生きた。だからこそ、輝き、周囲の人の人生にいまだなお影響を及ぼしている。

    私はやはり日実の生き方に惹かれるのだろう。

  • 読みながら、いろんな要因が重なって、つながっていき

    読み進めることが、つらくなった

  • 大崎さんのノンフィクションはじめて読んだ。かなりグイグイ引込まれてしまった。ただ誰にも共感できなかったけど。

  • 自殺とか心中って不幸な偶然が重なって起きるんだなあと改めて思いました。心を動かされたのですがたぶんもう二度と読まない、というか読めないと思います。つらすぎて。

  • 19歳の少女と33歳の指揮者の男がウィーンで入水自殺をしたーーという新聞の小さな記事
    何故遠く離れた地でこの日本人の男女は自殺しなければならなかったのか?
    サラリと読み流せない何かを感じて調べてゆくうちに思いがけない人物に出会うこととなり
    二人の男女の苦悩に近づいてゆく。『聖の青春』に続く大崎氏のノンフィクション。

    読んでいてとても切なく苦しい。19歳で不本意ながらルーマニアに留学した渡辺日実。
    見知らぬ土地で言いようのない寂しさに駆られ、知り合ったばかりの千葉師久と同棲を始める。
    遠く離れた日本に住む日実の両親は素性のはっきりしない千葉との同棲に難色を示す。
    そんな両親に反抗しつつ、心を病んだ千葉へ無償の愛情をそそいでゆく日実。
    本当にこれが事実なのかと思うくらいに運命のいたずらが随所で起こる。悲しいくらいに負の方向に・・・
    あのときにこうしていたら、二人は死なずに済んだかもしれない。
    過去のifは言っても仕方がないこと。でも彼らを見てきた周囲の人たちは思わずにはいられなかった。
    自ら死を選ぶことは残された人たちにとてつもない悲しみと後悔を与えてしまうものだと思った

  • すごくキツかった。

    ドナウに身を投げた日本人男女のノンフィクション作品。

    同作家の『別れの後の静かな午後』を読み、別の作品も読んでみたくなって手に取った本。
    本を手にして2日間、吐きそうになりながら涙を溢しながら読んだ。

    19歳という若さで心中をした少女。
    19歳という年齢は、今の私からしてみるといちばん不安定でいちばん危うくていちばん正直で純粋な年齢であるような気がする。それは自分の過去を思い返してみてそう感じるのだ。20歳という成人を前にして自分の生きる意味や生きてゆくということを真正面から受け止めなければならない時期。揺れ動く様々な思いと裏腹に付きまとう切ろうにも切れない両親との関係。社会に対する怒りや憤慨、両親に対する苛立ち、人間に対する不信感、そして初めて経験する人を愛するという気持ち。
    私も同じような19歳を過ごしたから、作中の少女の気持ちが痛いほど分かる。

    "少女はきっとこう思っていたんだよ" と、作者が感じたこととは違う思いがあって、そのせいで、まるで私がその少女を助けられなかった関係者のひとりであるかのように苦しく遣る瀬なく涙してしまったのかも知れない。

    物語の舞台となる国々を過去に行ったことがあるということで、文字からその景色を映像と記憶で思い描くことができ、作品にのめり込んでしまったのかも知れない。
    ドナウの流れるドイツ、オーストリア、そして近隣のフランス、スイス、チェコ、を訪れたことがある。舞台の主軸となるルーマニアには行ったことはないが、チェコに行ってみて社会主義国の独特の空気というものを肌で感じたから、より少女の辛さがわかる。
    ルーマニアで18歳の少女が独り冬を過ごすというのは相当キツいと思う。

    話が脱線しかけたが、この本は私にとって心に残る一冊となった。

著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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