- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167717049
作品紹介・あらすじ
豊かな汽水域の恵みは森があってこそ生まれる-ダム開発と森林破壊で沿岸の海の荒廃が急速に進んだ1980年代、おいしい牡蛎を育てるために一人の漁民が山に木を植え始めた。漁師だからこそ見出し得た森と海の真のつながりとは!?「森は海の恋人」運動の火付け役となったみずみずしい一作がついに文庫化。
感想・レビュー・書評
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高度経済成長期以前の日本の自然がいかに豊かだったのかがひしひしと伝わってきた。また一つの憂慮に気づき、それは僕も含め1970年以降生まれの方は本当の豊かな海を知らず、自然破壊で生き物が激減した海を普通の海と認識している点である。
もう少し自然に対して貪欲に生きてやるぞって思った! -
国連フォレストヒーローズに選ばれた畠山重篤さんの随筆。選ばれる理由になった植樹活動の話も出てくるが、印象に残ったのは、気仙沼市唐桑町舞根に住む漁師の暮らしや、その周辺の海や山に棲む魚、貝、鳥の話。無性に海鞘(ホヤ)が食べたくなった。
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“ 森は海を海は森を恋ながら悠久よりの愛紡ぎゆく” 三陸の牡蠣士さんが綴る、その地の豊かな森と海にまつわる短篇物語。 海の食物連鎖を支える植物プランクトン。それを育む森からの豊かな河川水。気仙沼の豊かな海と森と、それらの愛に満ち満ちている。
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著者畠山重篤さんを初めて知ったのはNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」。
津波で壊滅的な被害を受けた気仙沼唐桑で牡蠣養殖の復興に奔走する姿が取り上げられていた。
畠山さんは、以前、気仙沼の養殖業界が赤潮により大きな損害を受けていた当時、森を豊かにすること(植林)で海も養殖に適う水質になることを世に明らかにし、それを具体的な活動に落とし込んだ功労者。
そして、その活動が評価され国連よりフォレストヒーローとして受賞されている。
昔からの海と森は共存してきた。
自然の摂理、生物循環に逆らわず、それと共に生きていくこと。共存共栄。
それが人間にとっても真に豊かな生活になるのではないかと実感した。
そして、その発想が三陸復興へのヒントであり、全国的にも地方活性化のヒントでもあったりする。
牡蠣と性格が似ている人が牡蠣士の称号を得ている、と表現するところも面白い。性格がゆったりとしていること、瞬発力があること。
牡蠣の生育について学ぶにつれ、これ程までに多くの人が牡蠣に魅了される所以も理解できたような気がする。
2年前に室根山の山頂から気仙沼の花火を見たことを想い出した。
室根神社は千年以上も前に建てられ、それ以降、海の民からも崇め祀られていたようだ。
「森は海の恋人」であることは古よりの教えでもあるのだ。
津波で壊滅的な被害を受けたにもかかわらず、今でも牡蠣養殖を続けている畠山さん。ぜひ、その奮闘記の筆も執っていただきたい。 -
森は海を海は森を恋ながら悠久よりの愛紡ぎゆく (熊谷龍子)
畠山重篤「森は海の恋人」を読む。以前から、森から流れ出る有機成分が海のプランクトンを育て、それが海の豊穣をもたらす、ということは聞いていたが、こんなにも因果関係がはっきりしているとは・・・・!? だからこそ、川をダムで堰きとめたり、山の広葉樹を伐採することが、海にも甚大な影響を及ぼすのだという。畠山重篤さんは気仙沼に近い海で牡蠣の養殖を行う漁師だが、牡蠣の成育と大川とその上流にある室根山の落葉樹がいかに深い関係があるかということを科学的に分析、解明した報告書とでも云えるこの本。翻って広島牡蠣は大田川がもたらす恩恵によって大きくなるのかと合点するようなわけだ。(畠山さんは昨年の津波で大被害を受けられた模様、早い復興をお祈りするばかりだが)
行政と云えばやたらとダムを作りたがるが、それがどれだけ海に悪影響を与えているか、いわば警告書でもある。国土の7割が森林というこの日本、森林と海は別々に存在しているのではなく、森があるから日本近海の海が生き、沢山の魚が生息できるという事実。また海から還流する水蒸気が雨を降らせ森を潤すという自然のサイクル。島国日本ならではの素晴らしい自然の相互作用が働いているということなのだ。改めて知るこの摂理、大切にしなくてはとつくづく考えさせられると云えようか。
それにしても、この本の中で紹介されている畠山さんが子供の頃の海の様子、わくわくしながら読ませてもらった。自分とて、広島湾の海も海に近い天満川も子供の頃からの遊び場だった。宇品や井口の岩場での小動物や貝類との出会い、貸し舟の小さな伝馬船の櫓を操り広島湾に漕ぎ出して牡蠣イカダでデンゴ(小あじ)釣り、毎週のように自転車を駆って江波に出かけた雑魚釣り、もちろん前日には潮の引いた天満川でゴカイを掘ってゆくのが当たり前のことだった・・・・・。こんなことを思い出すにつけ、最近の子供は海や自然と向かい合う機会が少なく、将来大人になってどのように海や自然に対峙できるのかと心配になる。子供の頃の原体験がないまま、自然を大切にする気持ちが育たないのではなかろうかと。 -
自然博愛主義では全くないというところに、説得力があり、また、商売に直結した考えだからこそ、宮沢賢治を思わせる追憶の語りで訴えたかと思ったら、科学的アプローチで海の荒廃が回復できると思っているかのような節も垣間見せてしまう。大学の教授には語れない物語を持っているはずなのに、大学の教授になろうとしてしまう、でもその人間くささがまたこの人のいいところ何だろうけど。
しかし、鉄は一つのアプローチであって、鉄を海に入れればまか不思議、というのも、「これが行きすぎると怖いな」と思わせる一面もあります(あれ?この本では鉄の話してたっけ?)。 -
上川などを舞台とした作品です。
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●未読
◎「辰巳芳子 食の位置づけ」p.146【牡蠣の養殖〜畠山重篤氏】で紹介