十楽の夢 (文春文庫 い 61-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (638ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717421

感想・レビュー・書評

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  • 長島一向一揆を題材にした作品。主人公は伊勢で廻船業を営む弥三郎という架空の人物。前半は戦国時代の商人としての生き様が描かれているが後半はガラリと変わり新しい領主として信長が北伊勢に君臨し今まで保っていたそれぞれの自治を壊す破壊者として登場する。弥三郎は反発し生まれた時から信仰している一向宗として長島の砦に入り抵抗する。今までは宗教対信長のイメージが強かったが地域の自治権の抵抗とそれに便乗し本家大坂本願寺から遣わされた坊主に翻弄される百姓の悲哀を感じる。領主は土地の保証をする代わりに年貢を徴収するが坊主は死後の浄土へ行けることを保証に門徒の命、お布施を求める。結局組織が巨大になると武士も坊主もやっていることは変わらない。個々の自治などは認めない。最後のどんでん返しで主人公のたくましさを観た作品。

  • 前半は星2。後半は星4
    テーマは本願寺が浄土真宗の祖、親鸞の教えを忘れ、腐った団体になっていたことへの批判だと思う。

  • かつて直木賞候補になった作品だったので買っておいたものを今回の出張の機上のお供に、加えて夜もホテルからは出かけなかったのでじっくりと読書の時間が今回あったのでちょうど帰りの電車の中で読了。織田信長と長島一揆との戦いを舞台扱ったお話で著者は歴史小説を得意とする岩井三四二さん。かなりのページ数だが一揆の背景や当時の民衆と宗教の関係、なぜ宗教グループと信長が戦いになったかなどの歴史背景を学ぶ事が出来る。一揆と言っても農民が主役ではなく長島一揆はそのリーダーの一角は商人達だったのは全く知らない事実だった。ただ著者が伝えたかったのはそのような歴史のまめ知識ではなく、戦いにまで向かってしまう狂信をうむもとになるたぶらかしにいつの世のひとも弱いのではということではないか。特に宗教と欲(政治)が絡んだときにもたらされるリスクは大きなもので、みんな目を覚まさなくてはと言われた気がした。

  • 結構期待して読み始めたのだが、どうも焦点が定まっていない感じでどことなく纏まりに欠けている。
    民衆を主題にするならそれで押せば良いのに、どうして信長とかその家臣の話をちょくちょく挿入するんだろうか?
    背景材料としては扱うだけなら理解できるが、本筋を乱していると思う。
    少々惜しい。

  • いろいろ有りつつも、結局ハッピーエンドなのかな、と思わせておいて最後の最後にオチた。いい意味での期待を裏切ってくれた。

  • 織田信長と長島一揆との戦いを舞台としたお話。主人公は一向宗の商人である坂田党の頭領・坂田弥三郎。商人や百姓から見た戦国時代と宗教観がわかり、現在の日本人の宗教観とは違ったものが感じられます。ちなみに直木賞の候補作品です。

    2009.1.16読了

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著者プロフィール

1958年岐阜県生まれ。一橋大学卒業。1996年「一所懸命」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。98年『簒奪者』で歴史群像大賞、2003年『月ノ浦惣庄公事置書』で松本清張賞、04年『村を助くは誰ぞ』で歴史文学賞、08年『清佑、ただいま在庄』で中山義秀賞、14年『異国合戦 蒙古襲来異聞』で本屋が選ぶ時代小説大賞2014をそれぞれ受賞。『太閤の巨いなる遺命』『天下を計る』『情け深くあれ』など著書多数。

「2017年 『絢爛たる奔流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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