ベルカ、吠えないのか? (文春文庫 ふ 25-2)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717728

作品紹介・あらすじ

キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、"戦争の世紀=20世紀"を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテインメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新に収録。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争が終わり、アリューシャン列島にあるキスカ島には、4頭のイヌが残された。4頭のイヌの系譜に連なる何千頭ものイヌたちとともに20世紀をまるごと駆け抜ける一大クロニクル。(そしてとにかく表紙もかっこいい)

    これは凄いものを読んでしまった。太平洋戦争、ベトナム戦争、宇宙進出、ソ連崩壊。歴史の裏には、イヌたちの存在がある。犬橇を引き、北極では主人を救うことになる北、品評会優勝を狙うシュメール、地下のトンネルで犬同士の抗争を繰り広げるDED、似非冒険家とともに無謀な航海に出るグッドナイト、様々なイヌの生きざまを見ていくだけでも十分に面白い。
    イヌたちの吐息が、遠吠えが、行間から聞こえてくる。
    歴史に残るべき本だ。

  • ネット知人が「オールタイムベスト」な一冊と言っていたのに激しく興味をそそられ、読んでみた。

    ベルカというのは実在の犬の名で、ソ連のスプートニク5号に乗り、初めて生還した。その前に初めて宇宙に行った犬ライカ(生還は考慮されていなかった)とともに物語の重要な軸線となっている。ただし、その名以外はすべて虚構である。

    話は、太平洋戦争の末期に日本軍がキスカ島に残した4頭の軍用犬に始まる。この4頭の血統が、ソ連からロシアにかけての極東の歴史に揉まれつつ世界に散り、何世代もの時を経てあざなえる縄のごとくひとつところに収斂していくさまを「神の視点」で書きつづった小説なのである。

    犬(の血統)に対して呼びかける「神」の声に導かれ、数奇な運命を歩む犬たちの姿は「野性の呼び声」のようでもあり、犬に人間の言葉で語りかけながら高度な攻撃技術を教え込んで行くさまは「羆撃ち」を思い起こさせる。歴史の変転のダイナミズムを、犬をフックに描ききるというプロットも面白い。

    ジャンルで言うならハードボイルドかピカレスクロマンかというところだろうが、独特の文体は最後までなじめず、残念ながらオールタイムベストとまでは行かなかった。

  • 途中挫折。

  • イヌ達の駆け抜けた壮絶な20世紀を描く物語。
    ベルカとストレルカ。その他のイヌたちが描かれます。

    イヌに思い入れの大きい人は逆に辛いかも。
    兵器として人間のエゴのために使用されるイヌ達。

    それでも、生きようとする気持ち、意志の強さに驚きます。
    この作品を最後まで書ききった作者が本当にすごいと思います。

    あとがきで爆弾を書きたかったと書いていましたが。
    爆弾としてではなく、純粋にイヌたちの物語として読みたいです。

    今のペット化されているイヌたちも元は野生のものもいて。
    数十年前とは全く違う状況になっているけれど。

    本当にイヌたちにとって住みやすい世の中になっているんかな。
    イヌを飼ったことはないけど、買う人には覚悟を持ってほしいと思います。

    ただ、この話は戦争が主な話に関わってくるので。
    イヌの話と思って読むと結構痛い目にあうと思います。

    それでも、久々に本気で頭を使って読み込んだ話でした。
    こういう本にあたるから、読書はやめられないんですよね。

    告白や悪人を読んだ時のような背中に刃物を突きつけられる感じと。
    蒼穹の昴やテンペストのような何代も続くストーリーに引き込まれました。

  • 独特の文体。超越した存在の語り部、そして疾走感
    たまに出現する下品な言葉に違和感をおぼえつつ
    一気読み。分類不能な感じ
    好きかと問われれば違うと答える

  • 声に出した時にリズムのある文章を書く、というのを聞いたことがあり、独特なんだろうと覚悟はしていたが、だからといって1冊丸々この文体はきつい。
    状況が全然頭に浮かばなかった。

  • ハードボイルドな歴史小説?下品でよくわからなかったです。

  • 人間社会や時代に翻弄される犬達の視点で描かれていて、犬視点なのに、懸命に必死に生き伸びようとする姿が鮮明に目に浮かぶ。

  • じっくり読みたいような内容だが、ちょっと時間がなかったのでまた別の機会に再読することにする。評価は暫定。

  • 鳴り物入りだったのに評判が非常に悪かった本です。個人的には名作。犬の系譜そのものが主人公なので感情移入し難いところが敗因か。

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著者プロフィール

1966年生まれ。著作に『13』『沈黙』『アビシニアン』『アラビアの夜の種族』『中国行きのスロウ・ボートRMX』『サウンドトラック』『ボディ・アンド・ソウル』『gift』『ベルカ、吠えないのか?』『LOVE』『ロックンロール七部作』『ルート350』『僕たちは歩かない』『サマーバケーションEP』『ハル、ハル、ハル』『ゴッドスター』『聖家族』『MUSIC』『4444』『ノン+フィクション』『TYOゴシック』。対談集に『フルカワヒデオスピークス!』。CD作品にフルカワヒデオプラス『MUSIC:無謀の季節』the coffee group『ワンコインからワンドリップ』がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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