ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 232
  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717728

作品紹介・あらすじ

キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、"戦争の世紀=20世紀"を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテインメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新に収録。

感想・レビュー・書評

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  • ネット知人が「オールタイムベスト」な一冊と言っていたのに激しく興味をそそられ、読んでみた。

    ベルカというのは実在の犬の名で、ソ連のスプートニク5号に乗り、初めて生還した。その前に初めて宇宙に行った犬ライカ(生還は考慮されていなかった)とともに物語の重要な軸線となっている。ただし、その名以外はすべて虚構である。

    話は、太平洋戦争の末期に日本軍がキスカ島に残した4頭の軍用犬に始まる。この4頭の血統が、ソ連からロシアにかけての極東の歴史に揉まれつつ世界に散り、何世代もの時を経てあざなえる縄のごとくひとつところに収斂していくさまを「神の視点」で書きつづった小説なのである。

    犬(の血統)に対して呼びかける「神」の声に導かれ、数奇な運命を歩む犬たちの姿は「野性の呼び声」のようでもあり、犬に人間の言葉で語りかけながら高度な攻撃技術を教え込んで行くさまは「羆撃ち」を思い起こさせる。歴史の変転のダイナミズムを、犬をフックに描ききるというプロットも面白い。

    ジャンルで言うならハードボイルドかピカレスクロマンかというところだろうが、独特の文体は最後までなじめず、残念ながらオールタイムベストとまでは行かなかった。

  • 途中挫折。

  • イヌ達の駆け抜けた壮絶な20世紀を描く物語。
    ベルカとストレルカ。その他のイヌたちが描かれます。

    イヌに思い入れの大きい人は逆に辛いかも。
    兵器として人間のエゴのために使用されるイヌ達。

    それでも、生きようとする気持ち、意志の強さに驚きます。
    この作品を最後まで書ききった作者が本当にすごいと思います。

    あとがきで爆弾を書きたかったと書いていましたが。
    爆弾としてではなく、純粋にイヌたちの物語として読みたいです。

    今のペット化されているイヌたちも元は野生のものもいて。
    数十年前とは全く違う状況になっているけれど。

    本当にイヌたちにとって住みやすい世の中になっているんかな。
    イヌを飼ったことはないけど、買う人には覚悟を持ってほしいと思います。

    ただ、この話は戦争が主な話に関わってくるので。
    イヌの話と思って読むと結構痛い目にあうと思います。

    それでも、久々に本気で頭を使って読み込んだ話でした。
    こういう本にあたるから、読書はやめられないんですよね。

    告白や悪人を読んだ時のような背中に刃物を突きつけられる感じと。
    蒼穹の昴やテンペストのような何代も続くストーリーに引き込まれました。

  • じっくり読みたいような内容だが、ちょっと時間がなかったのでまた別の機会に再読することにする。評価は暫定。

  • 鳴り物入りだったのに評判が非常に悪かった本です。個人的には名作。犬の系譜そのものが主人公なので感情移入し難いところが敗因か。

  • 犬の一族から20世紀の歴史を概観するという趣きが強く、犬とその時々の人の関わりを通じて、上手く消化していると思う。日米の対立から始まった犬の物語が、米ソの対立に巻き込まれるまで。

  • 運命と、それに導かれる犬たち。硬質な、少し稚拙にも思える力強い文体が独特。あちらで交じり、こちらで交錯し、どんどん読み進めていった。

  • 想像力がもつ破壊力に、完敗

    トヨザキさん激推し、の印象が強かった本。
    その記事から何年経つんだ、と調べると8年ですね。
    8年気になっていて、ようやく手に取りました。

    世界を、歴史を、自分の中で知り、解釈し、その凝縮で
    自分の世界を本の上に作り出している。
    余りにも独特な文体で。

    イヌに語り掛け、イヌが「うぉん」と答え、
    語りはじめ、また、文章が、単語と、句読点と、独特なリズムで連なる。
    例えば

    それでも雪が残るのは峰々においてばかりで、
    谷には清冽な真水がほとばしり、地面には草が
    いちめんに繁った。つねに露に、びっちょり、濡れながら。

    といったかたちで。
    それが様々な時代、20世紀を生きたイヌの場所、時代を
    行き来していくので
    巻頭のイヌたちの系図をどれだけ見返したことか。

    最後、文庫版のあとがきを見て驚愕。
    この本を、「想像力の圧縮された爆弾」として創るにあたり、
    歴史に挑んだのだという。
    元々歴史の知識が多分にあって(もちろん、おありには
    なったのでしょうが)
    その得意分野だから、書くのではなく、創作のために
    歴史に挑むという姿勢。

    想像力がもつ破壊力に、完敗しました。
    古川さんの本はgiftに次いでまだ2冊目なので、
    次は「聖家族」読もうかな。

  • 近代史、冷戦時代。
    時代に、運命に翻弄された人と「イヌ」の物語。

    世界のパワーバランスが変わる複雑怪奇な時代を、軍用犬にスポットを当てて総ざらいに洗い直した意欲作。
    イヌへの語り掛けを多用したハードボイルドな文体は、どこか後ろ暗いこの時代を描くのにとても合っていると思う。
    調査・構想も綿密で、大きな史実と絡めてリアリティたっぷりに描かれるため、もはやどこまでがフィクションなのか分からない。
    構成・ロジックの完成度は相当に高いと思われる。

    が、しかし。
    読後感としては、「で?」というのが率直なところ。
    何が言いたかったのか分からない。
    支離滅裂で陳腐な歌詞のロックンロールみたいだ。

    具体的には少女・ストレイカの存在と扱いがストンと来なかったことが大きいのかな。
    邪推するなら「狙いすぎ」か。


    荒廃した雰囲気。あくまでもハードボイルド。どこまでも硬派。なんとなく知的。
    そんな空気が味わえれば充分というなら傑作と呼べるかもしれない。

  • ハードボイルドなお犬さん達の物語。
    途中まで苦しみながら読みましたが、文体が
    肌に合わず断念しました。

    古川氏の別作品も読んでいて辛かったので、
    私と相性が合わないようです。…無念^^;

    作品としては1/3程しか読んでいないので、判断は
    つきかねます。

    ただ表紙はインパクト凄いですね^^ 
    アゴはずれないのかな(笑)

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著者プロフィール

1966年生まれ。98年『13』で作家デビュー。『アラビアの夜の種族』で推協賞、日本SF大賞、『LOVE』で三島賞、『女たち三百人の裏切りの書』で野間文芸新人賞、読売文学賞。最新作は『ミライミライ』。

「2018年 『作家と楽しむ古典 平家物語/能・狂言/説経節/義経千本桜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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