- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167717728
感想・レビュー・書評
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ソ連のスプートニク打ち上げから生還したベルカという犬。それから日本軍によりキスカ島に置き去りにされた軍用犬。ベトナム戦争時に地下道により合いまみえる中国とアメリカの犬。ソ連の特殊部隊の精鋭とされ、そして証拠隠滅のため消される犬たち。
軍用犬のはじまりから数々の戦争を経て、犬たちの星であり始祖でもあるベルカのもとにその系譜は集約されていく。
さて感想だが、なんとなく、はまらなかった。
たぶん作者と肌があわない。
あとがきで確信した。
リアリティ?言葉のひとつひとつの重み?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古本で購入。
1943年、アリューシャン列島。
かつてキスカ島であり、鳴神島であり、今またキスカ島となった地に、かつて日本籍であり、元アメリカ籍であり、今アメリカ籍となった4頭の軍用犬がいる。
1960年、ソ連。
英雄となるべく宇宙に送り出され、生還した雌雄のイヌがいる。
彼らの系統樹は続く。彼らの系統樹は邂逅する。
そして1991年、モスクワ。
イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?
ということで初・古川日出男。
それっぽく書いたあらすじどおり、以前読んだ星新一『きまぐれロボット』(角川文庫)にある解説どおり、どうやらナルシシズム全開の文章を書く作家らしい。
その勢い・リズムにハマる人はハマるだろう。個人的には、う~む、あと一歩、ってな感じ。
「20世紀=戦争の世紀=軍用犬の世紀」という“史実”を踏まえた“偽史”の創造という試みはおもしろい。
一種の神話としての「イヌ史」。
「犬」ではなく「イヌ」。この語感は大事だ。
1943~1990年のイヌ史の中で世界情勢にかなり触れているが、これがちょっと冗長な印象で残念。
そこで出てくる人間どうしのやりとりや会話がほとんどギャグみたいだけど、人間世界の馬鹿馬鹿しさを表してるのか作者が本当はそういうのが好きなのか、そのへんは謎。 -
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「・・・ニンゲンガ消えた、と四頭は思う。モウ誰モイナクナッタノダ。」
”犬が思う”という表現に面くらいながら、ついていければOK。
「イヌよ、イヌよ。お前たちはどこにいる?」
物語の語り手=筆者の呼びかけ、神の目線からの呼びかけに違和感がなければ、なお良い。
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物語は大きくふたつの舞台から、イヌの現代史を駆け抜ける。
ひとつは日本軍に占拠されたアメリカ領キスカ島に残された4頭のイヌの物語である。
軍用犬としての高い能力を秘めたそれぞれはその後どうなったのか。
イヌたちの系譜による現代史。
もうひとつの舞台は、イヌの歴史の革命。
人類にさきがけたイヌ類の歴史から物語はスタートしている。
この本が、エリツィンに捧げられている所以である。
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イヌの一人称の語りがあり、神目線の語りがある。
政治史でありハードボイルドであると同時に、イヌの文化史である。
冒険小説であり、社会派小説であり、動物物語であり、歴史小説である。
ロシアでのプロローグから、アメリカ領キスカ島かつ日本軍占拠の鳴神島にいたる世界をかける物語。
「想像力の爆弾」という著者の言葉に感心する。
書評家の豊崎由美さんは、直木賞に「ベルカ・・・」を押していた。
この本が選ばれるために選考委員の自宅を街宣車で回って大声で訴えたいと、ラジオ番組で語っていた。
豊崎さんの書評はチェックしようと思った。 -
犬側の話。
好き嫌いがはっきりわかれそうな本。 -
犬ものって、犬が好きすぎて読めない。傷つきたり、まさか死んだり、するじゃない。無理!と思う。
「ベルカ、吠えないのか?」は、いい作品だ、ということを周りから聞いていたけれど、そういう理由で長年手が出なかった。けれどついに読んだ。
犬かっこいい。見た目ではなく、かっこいい。すごくいい。尊厳のある小説だった。血筋、人間よりずっと早いスパンで生まれる次世代、たくさんの次世代。犬の生きる戦争の時代。駆け抜ける小説だった。 -
初めは本格的なハードボイルド調でわくわくしたが、読み進むにつれて陳腐になっていった。
時代背景や犬の系譜をしっかりと構成しているのは感嘆するが、主となる登場人物が陳腐で安っぽい。
自分には合わなかった。 -
犬よ犬よお前はどこへいく
作者の書きたい気持ちが全面に出ていて圧倒された -
端的に綴られる犬たちの生き方。人間に翻弄されながらも、世界各地でそれぞれを生きる犬たち。母性や性欲や闘いなど、生き方を見つけた犬たちはどれも美しい姿。
合間に描かれる人間たちの抗争、マフィアや軍隊の戦闘を通して、フィクションとしてなんらかの革命を起こそうとしていたのだと感じたが、そこまでは理解不足により、把握できず。