物乞う仏陀 (文春文庫 い 73-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717919

作品紹介・あらすじ

アジアの路上で物乞う人々と触れ合い、語り合ってみたい-。そんな思いを胸に、著者の物乞いや障害者を訪ねる旅が始まる。カンボジアの地雷障害者やタイの盲目の歌手、ネパールの麻薬売人らと共に暮らし、インドでは幼児を誘拐して物乞いをさせるマフィア組織に潜入する。アジアの最深部に分け入った衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • カンボジアの地雷障害者やネパールの麻薬売人、幼児を誘拐して物乞いをさせるマフィア組織。アジアの最深部に分け入ったノンフィクション。

    アジア諸国で物乞いをする障害をもつ人々について、なぜ物乞いをするに至ったのか、なぜ手足を失ったのか知りたいと思った著者が、現地で実際に人と触れ合いながら知った現実を書くノンフィクション小説です。
    先天的な障害、地雷による事故、薬物中毒の症状、憐みを誘いより多くの金銭を得るために手足を切り落とされた子供達。障害を持つに至った経緯は様々ですが、理不尽で辛い話ばかり。全体的に置かれている状況に対して本人たちも著者自体も諦めの雰囲気が強いのもより気分を落ち込ませます。
    そんな中、産婆の女性の話や呪術師の話など、前向きで希望の持てる話がわずかに救い。

    話を聞くため、真実を知るためと言いつつ、個々の語りたくない事情を問い詰めたり、その結果相手を精神的・状況的により辛い状況に追い詰めたりしているので、そこまで踏み入って良いものか、それこそ先進国と呼ばれる国に生まれた人間のエゴや歪んだ好奇心だけではないのかと、そんな本を読んでいる自分自身に対してもだんだんと嫌悪感が強くなっていきます。ジャーナリズムの闇というか。
    とはいえ、誰も知らなければ変えるための一歩すらも踏み出せないわけで、そのあたりの気持ちの折り合いはなかなか難しい。

  • 著書の作品はこれで5冊目の読了となりました。

    本書でスポットライトを当て照らし出されるのはアジア諸国で物乞いをしながら生きながらえる子供や障害者。

    いわゆる社会的弱者と呼ばれる人々を潜入取材した衝撃のノンフィクション。

    世界の他の国々よりも日本人としては親近感が持てるアジアの国々。

    目を覆いたくなるような事実と共に、物乞いで命を繋ぐ人々の日常が描かれています。

    彼等、彼女達が物乞いをしないと生きていくことさえ出来ない事実とそこに関わる戦争の悲劇やドラッグ、売春、臓器売買、マフィア...

    先天的に障害を持って生まれてきた方も含め、彼等に罪はない。

    むしろ国家や周りに居る人々が共に生きる為にサポートすることが必要。

    自分自身、振り返って出来ているのか?と問えば、出来ていないとしか答えられません。

    自分の中で何かが変わるキッカケとしないといけないと思いながら読み終えました。

    説明
    内容紹介
    アジアの路上で物乞いをする子供や障害者たち。彼らと共に暮らし共に食らうことによって、その実相を伝える衝撃の大宅賞候補作
    内容(「BOOK」データベースより)
    アジアの路上で物乞う人々と触れ合い、語り合ってみたい―。そんな思いを胸に、著者の物乞いや障害者を訪ねる旅が始まる。カンボジアの地雷障害者やタイの盲目の歌手、ネパールの麻薬売人らと共に暮らし、インドでは幼児を誘拐して物乞いをさせるマフィア組織に潜入する。アジアの最深部に分け入った衝撃のノンフィクション。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    石井/光太
    1977年、東京生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに雑誌や本に寄稿、そのほか、ペンネームでの写真発表やラジオ、漫画のシナリオなども手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • アジアの仏教国の身体や精神に障害を持った物乞い・乞食の人達に取材をしていく。違う国の人という立場だからこそできることなのかも。著者も話を聞いてもどかしい気持ちかもしれないが、悲しい辛いを表す言葉を引き出すべく質問を投げかけ、結局救いがないのが辛い。それでも前向きな気持ちを持ってる人もいるからすごい。最後のインドでの話は衝撃で、これは何とかしないとならないし、世界の機関は何とかできないものか。

  • 一度には読めずなんどか読んだりやめたり。読後感が悪くないのが不思議。

  • 著者が東南アジアから南アジアにかけての国々でホームレスのような障害者と出会ってのルポ。先天的な身体障害者、知的障害者もいれば、稼ぐために手足を切断されたような子どもたちも出てくる。子どもたちの手足をほんのいっとき稼がせるために奪い、使い捨てのように扱うようなことがこの世の中で起こっている不条理。「物乞う仏陀」という美しいタイトルとしっかり練られた文章と構成にぐんぐん読んでいけるのだが、それだけにちょっとあざといような感触も。
    何かというと売春したりスケベ話をすることで男どうし渡りをつけていくのって、それが真実なんだろうけど嫌悪感。実際そうなんだからしょうがないじゃん的にしっかり利用している感じが嫌だ。しかもこの本、障害者のことは気の毒だ何だといっておきながら、買われる女性には無頓着なんだもの。そういうところにもあざとさを感じるのだろうな。 
    この本に限らずなんだけど、読みながらふと思ったので書いておくと、最近の世界放浪ルポって著者の言葉が陳腐だし感じがするんだよね。どこかで聞いた、誰かも同じようなこと言ってるって印象。たとえば、「無論、このような利用する利用されるといった構図は肯定されるべきものではない。しかし、それによって絶望と悲嘆に暮れる者もいれば、喜ぶ者もいる。あらゆる人間がひしめき合っている。それが都市の姿、バンコクの真の姿なのではないだろうか。」(p.125)みたいな感じ。「だろうか」って、ふんわりと保険をかけて言い切らないのも何だかね……。

  • インパクトが強い。
    世界の状況(そっくりそのまま真実かはさておき)がわかる本。
    貧困から抜け出せない人々が仏陀の輪廻転生を信じる。それは、死をもってしか貧困から抜け出すことができないからなのだと思う。
    宗教になじみの薄い日本人には印象的な本だと思う。

  • アジアにおける乞食の生活を取材したノンフィクション。現実だと思えない描写が多々あった。
    自分も何度か訪れたことのある国々なのに、自分が旅した際には目に入ってこなかったという事実にも衝撃を受けた。

  • 世界の物乞いと障害者。貧困層にとって、障害者が産まれるとだいたい更に貧困になり、生活が苦しくなる。なかなか海外の障害者にスポットを当てている本に出会ったことがなかったので、知らないことばかりだったが、情景が浮かぶとなんだか辛くなってくる。
    カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、スリランカ、ネパール、インド。
    インドはずば抜けてエグい。赤子をさらい、レンタルチャイルドとして乞食に貸し出し、5才になって使えなくなったら、手足を切断し、物乞いさせる。マフィアももともとストリートチルドレンや、さらわれた過去を持ち、加害者であるが被害者でもあり、どうしようもない。どうしようもできない事実、現実に筆者も苦しむ。読んでいる方も苦しい。
    自分の想像を超える現実があるが、どうしようもできない。大抵の人はどうしようもしない。

    そして、どこにでもいる娼婦…。

  • 石井光太さんの本をあれこれ読んだので、最初に発行した本に手をつけた。
    やはり日本で暮らしていては想像もできない暮らし……。あまりにも衝撃的すぎる。
    そして日本にいても忘れがちだが、当然障害者はどこの国でもいる。
    厳しい世界で医療に頼ることもできない国での障害者は、本当に生きていけるのかと思う。だからこそ著者は調べにいったんだけど。
    身体的にある障害で同情を得ることによって物乞いで稼げるお金は、健常者とあまり変わらないことにも驚き。
    物乞いしかできない国なのはわかるけど、物乞いでお金をだす人がいるってことだ。
    どんな人がお金をだすのだろう?裕福な人たち?旅行者?物乞い同然の人が物乞いにお金を出すのでは?
    むしろ豊かな日本のほうが物乞いしてもお金は得られないのではないか。

    赤ちゃんのころに誘拐されて5歳まではレンタルチャイルド、それ以降は腕や足を切断されたり目をつぶされたあと障害者の物乞いになるなんてとても信じられない話だ。もちろん女性は娼婦へ。
    貧困な国ってここまで悲劇が当たり前なのか…。

    一番気になったのは、麻薬中毒者と仲良くなるために、著者がマリファナやハッシシを吸うところ。どっちも大麻だよね。知識ないので想像だけどまだ安心(というのも変だけど)な麻薬なのか?(タバコも麻薬みたいなもんだよね)身体は大丈夫なのかと心配。もちろん大丈夫な範囲で納めているんだと思うけど。
    私「異国の障害者を調べて本で稼いでいる」とは思えない。危険も多いし…。興味本位なのはあるだろうけどそれがあるからこそこうして踏み込めるのではないかと思う。興味本位だったらいけないのだろうか?本にすると日本に現実を知らせることができるし、売れればお金がはいってくるのは当然のことだ。
    まだまだ若い著者なので、これからも頑張ってほしいな。

  • 衝撃でした。20年前の事だけど、今はどうなっているのかな?
    貧富の差は、益々広がっていて、日本もそんな風にならないようにしないと。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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