ガールズ・ブルー (文春文庫 あ 43-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167722012

感想・レビュー・書評

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  • 時代小説と青春小説のあさのさんを良く読むが、今回も筋が似ていると思ったら8年前に読んでいた。感想を書くために再登録。
    落ちこぼれの高校に通う、普通の高校生の普通の話し。ガールズとあるが、男子高校生も中学生の弟も登場する。
    20年前に書かれた小説だが、今読んでも通用する内容。短い期間ながら教師だった経験が存分に入っている作品。高校生達の日常が丁寧に、そして淡々と描かれている。

  • 2006年発行の落ちこぼれ高校の若者たちの青春群像を描いた文庫本。その時に書いた書評を今さっき見返して、我ながら感心したので載せてみる。

    文庫解説の金原端人が「80年代、ヤングアダルト小説は振るわなかった。なぜならそれに代わるものとしてマンガがあったからだ。」という意味のことを言って大島弓子、岡崎京子、吉田秋生、山岸涼子、岡野玲子、吉野朔実、川原泉、水野英子、内田善美の名をあげている。どうしてこれらの名の中に萩尾望都、清原なつみ、三原順の名が無いのか、疑問ではあるが、確かに昔の少女漫画には輝きがあった。(どのようにあったのかはここでは立ち入らない。)一方、ヤングアダルト小説なるものを私は読まなかった。ワンパターンの恋愛小説だと思っていたからである。金原端人によると、90年代からその様相が逆転したらしい。江口香織、三浦しをん、角田光代、梨木香歩、藤野千夜、野中柊、梨屋アリエ、森絵都、佐藤多佳子らの名があげられ、(何人かは直木賞作家になっている)「もうマンガではすくい取れなくなってしまった若者たちを驚くほどたくみに細やかにすくいあげているのだ」と評価する。その中でひときわ輝いてるのが、あさのあつこだというのだ。確かに、これらの作家のほとんどを私は読んでいないが、あさのあつこの中には吉田秋生や三浦順的世界が確かにあるのを私も感じる。

    この本の感想をメモしていた土曜日の朝、私はマクドナルドにいた。4人くらいの17歳ぐらいの男の子がどやどやと入ってきて、店全体に響き渡るような声でおしゃべりを始めた。いや、4人がではない。よく聞くと、大きな声は一人のみ。一時間ほど聞いていると、この男のがどんな子なのか分かるくらいあけすけに思ったことをそのまましゃべっているという感じである。そういう性格なのだろう。
    もてるらしい。
    女の子たちはこの男の子をどうしようもない、と思いながら、でも良いところが忘れられずに付き合っているのかもしれない。なんか、そんなことまで分かるくらい彼はいろいろなことを喋り出した。
    彼の言うには、
    たくさんの女の子と付き合ってきて桃子のことが一番好きだったこと。
    今の彼女とは上手くいっていなくて別れたいこと。
    理科のテストで一番を取ったこと。
    3ヶ月の子どもを堕ろしたこと。
    3回浮気して許してもらったけど、
    彼女の一回の浮気が許せないこと。
    そういう彼に対して、一人の男の子は浮気なんて考えられない、と自分の彼女の話をする。
    一人の男の子はぼそぼそと一言二言話す。
    声の大きい男の子は「まじめな話‥」と言い出すと、隣の男の子はすぐに「お前が言うとまじめだと思えない」と返す。でもその男の子も本気で怒っているわけではない。
    「だって遊びたい年頃なんだもん。今すぐカラオケに行って何時間でも歌いたいんだよ。」といって彼らは店を飛び出していった。
    そのあと、店を出ようとした中学生の女の子が、テーブルの上に片付けられていない紙コップを見て鼻で笑って出て行った。

    この小説は「落ちこぼれ高校」に通う女の子、男の子が出てきて、小説的には深刻な事件は一切起こらない。大半は彼らのおしゃべりで埋まっている。けれども、そこからは17歳の世界が、いかにりりしく、強く、反対に弱いかを何とか掬い上げている。子どもを堕ろすような「悪い子」は出てこない。けれども、すこしずつ危うい。あるいは頼もしい。微妙な世界をあさのあつこはよくもこうもリアルに書けるものだと感心する。

    先のマクドナルドの男のたち、いつか君たちとじっくりお話ししたいものです。

  • 夏だな、と感じるとなぜ青春に浸りたくなるのだろう。久し振りにあさの先生の本を引っ張り出す。若者であった当時から十代のリアルさが刺さるなと思っていたが、端々に痛みを感じられるから、リアルなんだろうなあと今になって気付かされた。
    夏の気配を感じるところから、初秋に思いを馳せるところまで、本当に読んだ時期がぴったり(例によって記憶が定かではないため偶然の産物)。主観で語られるため、時系列がたまに入り乱れるが、視点や思考が反復横跳びする17歳感があってむしろ自然な描写なんだろうな。理穂と美咲はもちろんのこと、如月や真央やスウちゃんも、個々の人物像が夏の浮き立つ空気の中に鮮やかに立ち上がっていて、ただただ眩しい。
    度々登場する「禍福は糾える縄のごとし」のキーワードが、この物語に影というか、奥行きを持たせている。物事には揺れ幅があって、気持ち良いことのあとには気持ち悪いことが起こるもの。瑞々しい友情と青春に、揺さぶりが絶えずかけられる。ごく近くにいる人の表情も瞬間で変化することもある。そんな平坦でいて複雑な日常をしたたかに突き進むから、読後感が気持ち良いのだろう。
    読み終えてググってみて気付いたのだけど、続編があったのか。続きも読みたいなあ。

  • 帯もなっている金原瑞人氏の解説が絶妙だ。
    ”理穂と美咲の関係を「親友」とか呼んだりしたら、ふたりにしかられてしまうだろう。とすると、おそらく「共犯者」なのかもしれない。世界で最高の共犯者。恋人や親友よりも得がたいもの。それは共犯者なのではないか。そしてこの作品は、犯罪小説なのだ。そしてこの小説は、世界に対してふたりが挑む、ささやかな冒険小説なのだと思う„
    何かに夢中になったりするわけでもなく中途半端な高校生活だ。特別ドラマチックなこともロマンチックなこともないけど、ワイワイガヤガヤ笑い声がある。でもそれぞれが命を燃やしていて、彼女たちにはなんでもないことをとても大切なモノに変えてしまうチカラがある。
    オイラはなかでも如月が好きだ。兄はスーパースターの睦月
    だけど、自分と比べることなくマイペース。何にも考えていないようだけど、時々「やっぱり男だよな」ってところを見せてくれる。真央に優しい。将来きっといい男になると思う。

  • 学生時代に読んで、とても大好きだった小説のひとつ。
    あさのあつこさんの書く物語は読みやすく、あたたかい匂いがすると思います。
    青春時代を思い出すときは、いつもこの本を読みます。

  • 落ちこぼれ高校に通う理穂、美咲、如月。十七歳の誕生日を目前に理穂は失恋。身体が弱く入院を繰り返す美咲は同情されるのが大嫌い。如月は天才野球選手の兄・睦月と何かと比較される。でもお構いなしに、それぞれの夏は輝いていた。葛藤しながら自分自身を受け入れ愛する心が眩しい、切なくて透明な青春群像小説。

    高校生の夏の一コマを描いており、悩んだりしているが、楽しそうだな、と。

  • 3時間ほどで読み終わり、非常に読みやすい物語だった。大きな出来事や事件が起こるわけではなかったが、高校生の日常がテンポ良く描かれていたため、物語に引き込まれた。
    こんな高校生活もありかもしれないと思った。

  • 優しさっていうプラスなものを与えるときも、覚悟を持とうって思った。

  • 理穂と美咲、どこにでも居そうな高校生2人をメインに話が進みます。

    話が進むと言っても大きな展開などはなく、どこにでも居そうな高校生らしさを感じさせながら少しずつイベントが起こるみたいな感じです。イベントが非現実的でも、理穂と美咲をはじめとした登場人物のリアリティがあるため世界観まったく崩れず楽しめました。美咲の性格、物言いが好きです。

  •  これが青春やと思いました。もしかしたら違うかもしれません。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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