ガールズ・ブルー (文春文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167722012

感想・レビュー・書評

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  • 2006年発行の落ちこぼれ高校の若者たちの青春群像を描いた文庫本。その時に書いた書評を今さっき見返して、我ながら感心したので載せてみる。

    文庫解説の金原端人が「80年代、ヤングアダルト小説は振るわなかった。なぜならそれに代わるものとしてマンガがあったからだ。」という意味のことを言って大島弓子、岡崎京子、吉田秋生、山岸涼子、岡野玲子、吉野朔実、川原泉、水野英子、内田善美の名をあげている。どうしてこれらの名の中に萩尾望都、清原なつみ、三原順の名が無いのか、疑問ではあるが、確かに昔の少女漫画には輝きがあった。(どのようにあったのかはここでは立ち入らない。)一方、ヤングアダルト小説なるものを私は読まなかった。ワンパターンの恋愛小説だと思っていたからである。金原端人によると、90年代からその様相が逆転したらしい。江口香織、三浦しをん、角田光代、梨木香歩、藤野千夜、野中柊、梨屋アリエ、森絵都、佐藤多佳子らの名があげられ、(何人かは直木賞作家になっている)「もうマンガではすくい取れなくなってしまった若者たちを驚くほどたくみに細やかにすくいあげているのだ」と評価する。その中でひときわ輝いてるのが、あさのあつこだというのだ。確かに、これらの作家のほとんどを私は読んでいないが、あさのあつこの中には吉田秋生や三浦順的世界が確かにあるのを私も感じる。

    この本の感想をメモしていた土曜日の朝、私はマクドナルドにいた。4人くらいの17歳ぐらいの男の子がどやどやと入ってきて、店全体に響き渡るような声でおしゃべりを始めた。いや、4人がではない。よく聞くと、大きな声は一人のみ。一時間ほど聞いていると、この男のがどんな子なのか分かるくらいあけすけに思ったことをそのまましゃべっているという感じである。そういう性格なのだろう。
    もてるらしい。
    女の子たちはこの男の子をどうしようもない、と思いながら、でも良いところが忘れられずに付き合っているのかもしれない。なんか、そんなことまで分かるくらい彼はいろいろなことを喋り出した。
    彼の言うには、
    たくさんの女の子と付き合ってきて桃子のことが一番好きだったこと。
    今の彼女とは上手くいっていなくて別れたいこと。
    理科のテストで一番を取ったこと。
    3ヶ月の子どもを堕ろしたこと。
    3回浮気して許してもらったけど、
    彼女の一回の浮気が許せないこと。
    そういう彼に対して、一人の男の子は浮気なんて考えられない、と自分の彼女の話をする。
    一人の男の子はぼそぼそと一言二言話す。
    声の大きい男の子は「まじめな話‥」と言い出すと、隣の男の子はすぐに「お前が言うとまじめだと思えない」と返す。でもその男の子も本気で怒っているわけではない。
    「だって遊びたい年頃なんだもん。今すぐカラオケに行って何時間でも歌いたいんだよ。」といって彼らは店を飛び出していった。
    そのあと、店を出ようとした中学生の女の子が、テーブルの上に片付けられていない紙コップを見て鼻で笑って出て行った。

    この小説は「落ちこぼれ高校」に通う女の子、男の子が出てきて、小説的には深刻な事件は一切起こらない。大半は彼らのおしゃべりで埋まっている。けれども、そこからは17歳の世界が、いかにりりしく、強く、反対に弱いかを何とか掬い上げている。子どもを堕ろすような「悪い子」は出てこない。けれども、すこしずつ危うい。あるいは頼もしい。微妙な世界をあさのあつこはよくもこうもリアルに書けるものだと感心する。

    先のマクドナルドの男のたち、いつか君たちとじっくりお話ししたいものです。

  • 落ちこぼれの高校に通う3人の同級生。主人公の理穂、弱い身体で生まれ強い心を持った美咲、バカで明るくて優秀な高校球児の兄を持つ如月。 ちょっとぽっちゃりのスゥちゃん、理穂の弟の真央。
    大きな事件が起きるわけではない。 恋人にフラれた理穂から物語はスタートするが、その恋人は跡形もなく出てこないし、祭りがあったりみんなで海に行ったり、街で起きた猫の殺害事件の聴き込みに警察が来たり、、、そんな程度のことしか起こらないんだけど、笑えるような会話や胸を締め付けられるような青春、泣けるような家族や友人との愛があって、とにかくよかった。

  • 2007年1月11日読了。

    あさのあつこといえば、少年たちの光るシーンが印象的。でもこの少女たちも眩しく輝いてる。特別大きな事件が起きるわけでもなく、淡々と進む17歳の夏。

    理穂と美咲の、決して仲良しでもなくベタベタしてない女同士の関係が良い。
    解説者は彼女たちのことを「共犯者。恋人や親友よりも得がたいもの」だと書いてたけど、どうなんだろう? 親友だとか軽々しいノリではないことだけは頷ける。

    ふたりとは幼なじみの、如月(弟。理穂とは「親友」)、睦月(兄。理穂に想いを寄せる)兄弟とのバランスも良いねぇ。
    でも「タッチ」世代には、どう見ても優等生じゃない弟との関係が気になるのですが。

    続きの話はありえない。なくても安心できるというか、17の夏は一度きりだし。
    こんなにすっきりする話って初めてだ。

  • この作品の中には、「起承転結」がないと言えるのではないかと思う。
    事件らしい事件は何も起こらない。普通の高校生が体験するような…ありきたりなことがあるだけ。

    ドラマチックな物語や、ロマンチックな展開もない。
    作りものの感動もないし、泣けるような切なさもない。

    万引きを疑われたり、花火大会に行ったり、犬を連れて海へ行ったり…と、そんな感じで物語は集結してしまう。

    この作品の魅力は、何よりも登場人物たちの驚くほどの魅力にあるのだ。

    このことについては、巻末の解説で金原瑞人さんが特筆していらっしゃる。

    "登場人物が、信じられないほど魅力的なのだ。とくに主人公の里穂と美咲がいい。ふたりとも、ろくに勉強もできないし、何かの目的に向かって邁進しているわけでもないし、中途半端だし、いってみれば、なんの根拠もないくせに、「何とかやっていけるという自信」だけはある。

    あんたは、負けないよ。負けたことなんて、一度もないじゃないか。美咲だけじゃない。あたしたちは、負けないのだ。しょっちゅう酸素吸入器や点滴のお世話になっていても、万引きを疑われても、「いくら?」と、おじさんに尋ねられても、高校を退学させられても、負けてしまうわけには、いかないのだ。

    こんな理穂と、病弱でどこかで死を意識しながらも、理穂以上に現実をたくましく生きている美咲のふたりは、(~省略)なんとなく、似ているのだ。"


    理穂と美咲の関係は決して"親友"とか呼べる類のものではない。

    ふたりはどこかでお互いに支え合っているし、お互いを大切に想い合っている。

    だけどそれを親友と呼べるか、と言えば、答えは否なんじゃないだろうか。

    金原さんは解説の中で、ふたりの関係を『共犯者』だと言及している。

    共犯者。

    素晴らしい比喩。

    端的で、的を得た――。

    この言葉に含まれたもろもろは、読めば分かるんじゃないか、とだけしか言えない。

    とにかく、この小説は犯罪小説らしい。

    実際には犯罪など全く無関係の世界なのに、

    犯罪小説らしい。

    理穂と美咲は共犯者、なのだ。


    彼女らの魅力に、息遣いに、思わず息を呑んでしまうだろう。

    余分な登場人物がひとりとしていないのだ。

    壮大な世界観の中、すべての登場人物が自分らしくそれぞれ生きている。

    そんなところが、面白い。


    私は文春文庫の「ガールズ・ブルー」を購入したのだが、実はポプラ社からも出版されている。ポプラ社の方では、2巻が続編として既に出ている。
    こちらも読まなきゃ。
    理穂や美咲、如月、睦月がどんな魅力を放つのか、続編も楽しみで仕方ない。

  • 特別何かがおこることもなく、さらっと読める青春小説。
    高校のときって友達といることが本当に楽しかったな~と思い出された。

  • 心に沁み込む清涼飲料水。

    指を触れないまま過ぎ去った。
    きっと一生求め続けるだろう。
    いや、そういう気持ちを持ち続ける事って、逆にいいかもとか思った。

  • 古本屋で格安で購入。1ページの文字数が少なめなので読みやすい。
    主人公の気持ちに共感できるところと、共感は出来ないがなんとなく理解できるところがあり、
    地の文章での感情の変化がわかりやすくまとまっているので、
    戸惑うことなくすんなりと読める。良作。

  • 落ちこぼれ高校に通う理穂、美咲、如月。
    葛藤しながら自分自身を受け入れ愛する心が眩しい、切なくて透明な青春群像小説。

  • 【あらすじ】
    落ちこぼれ高校に通う理穂、美咲、如月。十七歳の誕生日を目前に理穂は失恋。身体が弱く入院を繰り返す美咲は同情されるのが大嫌い。如月は天才野球選手の兄・睦月と何かと比較される。でもお構いなしに、それぞれの夏は輝いていた。葛藤しながら自分自身を受け入れ愛する心が眩しい、切なくて透明な青春群像小説。

    【感想】

  • 「おれたちがやれることって、思ってる以上にいっぱいあるとか、思うだろ」
    ー如月


    理穂、美咲、如月の3人の会話や関係が良かった。ケイくんがどうなったのか…続きが気になる。

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著者プロフィール

あさの あつこ
1954年生まれの小説家、児童文学作家。岡山県英田郡美作町(現:美作市)湯郷出身。幼少の頃から本に親しみ、中学の頃から創作日記をつけはじめ、中学2、3年生の頃から作家を志す。青山学院大学文学部入学後、児童文学サークルに入り活動。卒業後小学校の臨時教諭を2年間務め、結婚。日本同人協会「季節風」同人となり、そこに連載した『ほたる館物語』で作家デビュー。
代表作に、1996年から執筆を続ける『バッテリー』。97年野間児童文芸賞受賞、99年『バッテリー2』で日本児童文学者協会賞、2005年『バッテリー』全6巻で小学館児童出版文化賞をそれぞれ受賞。シリーズ1000万部超の大ベストセラーとなり、映画化・アニメ化された。

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