弱法師 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2007年2月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784167726010

感想・レビュー・書評

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  • 恋とは死に至る病である――

    難病を患う少年と、彼を助けようとする医師であり継父である男との、その関係を越えた純愛の物語《弱法師》
    かつて優秀な編集者だったホームレスの女が振り返る、若き作家との身を滅ぼすほどの恋の物語《卒塔婆小町》
    父と母、そして大好きな叔母との許されない愛の形を描いた物語《浮舟》

    古典"能"を材にとり、繊細なまでに張りつめた愛の悲しみをとらえる中篇3篇。

    うわ〜、これすごかった、、←語彙力なし笑
    叶わぬ恋ほど美しいと言うけれど、まさにそういう恋を描いた3篇でした。
    中山さんの描く文章がとても美しくて、それが故に鋭さや脆さをも感じさせる作品でした。
    「弱法師」から引き込まれましたが、「卒塔婆小町」はもうその世界に引きずりこまれて没頭。。
    身を削るほどの狂おしい恋に心持ってかれました。

    能を題材に描かれたそうで、こういう恋の形ってどこか古典的と言うか、純文学っぽさを感じるんですが、それはそこからきてるのかな〜。
    とても印象に残る作品でした。
    これは手元におきたいな〜♡♡

  • 能の演目『弱法師』『卒塔婆小町』『浮舟』を現代風にアレンジした短編集。
    それぞれ独特の雰囲気に圧倒され、厳かで静かに進む文章に引き込まれる。

    特に『卒塔婆小町』は破滅の道へ追い込まれていく二人の様子に目が離せなくなる。
    一昔前の文豪の多くが自らの命を断つ理由が少し分かった気がする。
    他人からは決して理解してもらうことのない愛だったけれど、二人の愛は叶えられたのだと思う。

    そして源氏物語をモチーフにした『浮舟』。
    あの話をこの設定にするとは驚いた。
    「男が本気で女に惚れたら、奪うもんだ」
    「女が本気で女に惚れたら、引くもんだ」
    姉弟のセリフは実に奥が深い。

    死をも辞さない究極の愛に圧倒された。

  • じゃがいもかさつまいもかの話めちゃ好き!

  • 三篇とも胸にズンッとくる話、言葉、雰囲気だった。正に狂おしいという表現がぴったり合う。
    特に好きなのは二作目の「卒塔婆小町」。形はどうあれ、あの二人は間違いなく愛し合っていたのだと思う。

  • 「報われない恋」というテーマの中編を三編収めた作品集、今回はレズビアン的要素を抑えているのが特徴というか。

    表題作(弱法師と書いて「よろぼし」と読む)も悪くないが何と言っても白眉は「卒塔婆小町」。

    自暴自棄になった主人公が捨てた原稿をホームレスの老婆が拾うシーンから始まり人の業というものを凝縮したような終わりを迎える編集者と作家の壮絶な物語は圧巻としか言いようがないのだった。

    ラストの鎌倉を舞台にした「浮船」がまた良いんだ。

    財布の一番奥にしまわれていたぼろぼろになった写真――……切ないよなあ。

    それはそれとして結局最後まで明かされなかったけど、薫子おばさんの職業はいったい何だったんだろかね。

    ほんとにスパイだったらそう簡単にやめられないだろうし……気になるやのう。

  • 文章が美しすぎます。
    こんなに研ぎ澄まされて、一滴一滴絞り出すように紡がれた文章と出逢えたことが幸せです。
    この文量でこの濃度、必要な描写がすべてなされていて、しかも美しいのです。

    『卒塔婆小町』と『浮舟』がとくに好きです。
    恋をすること。想い続けること。心が引き裂かれること。

    愛について考えることは作家にとって一生の宿題だ。
    『卒塔婆小町』

    にある通り、著者の中山可穂さんも、その一生の宿題に取り組んでいるところなのだと思います。

    以前から強く、ほとんど憤りのように、中山可穂さんは日本文学史上であまりにも過小評価されている小説家だ、と感じています。
    2022年河出文庫からの復刊はほんとうにうれしいです。

  • 「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」という、能楽をモチーフにした3編からなる作品。
    私にとって初の中山作品で、彼女が主に女性同士の恋愛を描く作品を書いている作家さんだと知らずに読んだ。
    標題作はふ~んという感じで終わったが、卒塔婆小町を読み始めてからは周りの音が耳に入らないくらい完全に作品に引き込まれた。
    今は墓地に住むホームレスとなったある敏腕編集者と、ある夭逝した天才作家との激しい関係を描いた作品。
    女性にしか恋愛感情を持たない女性編集者を愛し、彼女に愛を受け入れてもらうためだけに自らの命を削り100冊の作品を書き上げていく作家。
    その狂気ともいえる創作活動をたどるうち、作家の編集者への狂おしいまでの思いが重く、重く、のしかかってくる。
    二人が破滅的な結末を迎えることを知りながら、最後のその時に向かって読み進めざるを得ない。
    彼の墓に寄り添い、雪に埋もれて絶命した彼女の最期はあまりに美しく、読後はしばし放心。
    すごい作品だった。

  • 中山可穂と言えば同性愛を扱うことが多く、本書も僅かだが関連する。
    でもそれ以上に表現されているのは、それぞれの登場人物が辿る切ない人生だ。
    その根底には、様々な形の"愛"が垣間見れる。中でも「卒塔婆小町」は印象深い。
    バリバリの女性編集者が辿った数奇な人生が描かれている。
    「浮舟」もなかなかイイです。

  • 中山先生の文体はとても綺麗で読みやすい。
    いつもなら、絶対濡れ場が入っていたところを、この短篇集は、そういった描写は一切ない。それでも、心くすぐられるえろさは何なんだろう。

    以下の短篇3つが収録されています。
    「弱法師」
    「卒塔婆小町」
    「浮舟」

    「浮舟」はとにかく泣いた。
    愛する人を譲らなければならなくなった薫子おばさんのやるせなさ。
    愛する人との板ばさみの中、自分は幸せだ、という姿勢を、絶対に崩さなかった文音さん。
    愛する人を奪ったことで得た幸せに、微かな罪悪感を抱きながらも、愛する人を守るため、健気に生きてきた香丞。
    自分の恋心にも似た独占欲を抑えられずに、母と交わした最期のやり取りが、とても悲しいものになってしまった碧生。
    切ない、もあるけど、本当に、やりきれない。
    それでも、前に進んでいく人間の強さがしっかり描かれている。
    この作品、大好きだ。

  • すごーーーーくよかった!!中山さんは「猫背の王子」がだんとつだ!と思ってるのと同じくらいよかった。どの話も登場人物がせいいっぱい毎日暮らしてて寂しくてもの悲しくてきれいな世界でした。引き込まれた。
    「弱法師」が一番好きです。噛み合わないようでいて噛み合っていて、交錯して、消失してしまうかなしさ。最後のほうの愛してる、がつらい……
    二番目の話も好き。

  • 私は能楽などに造詣が深くないのでどうしても源氏物語などの小説や説話のほうだと思ってしまうのですが、こちらは能楽から題をとっている一冊。「弱法師」「浮舟」も印象的でしたが、私は「卒塔婆小町」に一番感銘を受けました。深草少将の百夜通いは作家の「百篇の小説を書き上げる」ことに形をかえ、小野小町は美しい編集者に姿を変えてますが、編集者は作家の愛を受け入れられない理由があった。
    悲しい結末ですが、どこかラストに救いがあったような気がする。中山可穂の小説はいつも心をめちゃくちゃにえぐってくるところが好き。

  • 日本の能をモチーフにした3編の物語。激しい恋心、届かない想いを、絶妙の文章で描いています。
    その中でも私は「浮舟」が一番好きです。全てを投げ出してしまうくらいの恋も良いですが、身を引き好きな相手を守る愛というのも、切ないけど美しいと思いました。

    単行本が発売した時に一度読んだんですが、文庫本も買ったのにそのままにしていたのを思い出し再読しました。
    初めてこの作品を手にした5年前、息を止めていたのかと錯覚するくらい苦しい気持ちで読んだのを思い出しました。
    とても苦しくて、先が気になってても一編ずつしか読めなかった。

    読者の呼吸まで止めてしまうなんて!!と衝撃を受け、それと同時に今までの作品とは何かが違うと感じたっけ。それまでの作品でも、心臓を鷲掴みにされるようなことは多々あったけど・・・。
    その後に出版された「ケッヘル」で殻を破ったんだ!と知り、中山可穂さんをますます好きになったんだよな~と、内容とは別に懐かしい気分で読んでしまいました。
    何度読んでも好きだと思える作品です。

  • 普通の恋愛小説とは違って、痛くて切なくてやるせない。


    性別なんて関係ない愛が好きなんだ。

  • 極限まで思い抜いたがゆえに儚くなってしまった、純粋で妖しい情愛が三篇。特に「卒塔婆小町」は、小野小町に対して百夜通いをした深草少将がモデルの話だけに、その妄念とも呼ぶべき痛々しい懸想ぶりが恐ろしいまでに美しく、引き込まれた。

  • 一番心に残ったのは「卒塔婆小町」。天才的な小説家の男が、編集者に恋をし、彼女の為だけに小説を書き、捧げる。と、こうして書くと何の変哲もない話だが、登場人物達の、確かな存在感・愛の重量。誰に感情移入して読めばいいのか。誰に感情移入しても、苦しくて押しつぶされてしまいそうになる。どうしてここまで狂おしい感情を表現できるのか。最後まで揺ぎ無い「美しさ」を貫き通す作者の文章力にも圧倒される。読み終わった後、心にずしりと「何か」が残るはずです。純度の高い「愛」の本質とは、透き通るものでもなく、こんなにも重いものだったのか、と気付かされました。

  • 叶わぬ恋情、儚き生命。たとえ孤独を身に纏おうとも、死の淵に誘われようとも、人は誰かを恋する事を止められない-。能をモチーフに現代の不可能な愛のかたちを描く、静かで激しい純愛小説。
    中編三編「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」、何れも痛々しいほど純粋で美しい話で引き込まれた。三編共に秀逸で甲乙付け難いが、原典に思い入れがある分、「卒塔婆小町」が最も心に沁みた。作家の狂おしい迄の一途な愛、女性編集者のこれまでの人生の道程、共に壮絶で圧倒される。
    ホラーでも怪談でも無いが、恐い物語である。

  • 【かなわぬ恋こそ、美しい―雨の気配を滲ませた母子に宿命的に惹かれ、人生設計を投げ捨てたエリート医師(「弱法師」)。編集者の愛を得るために小説を捧げ続けた若き作家(「卒塔婆小町」)。父と母、伯母の不可思議な関係に胸をふるわせる少女(「浮舟」)。能のモチーフをちりばめ、身を滅ぼすほどの激しい恋情が燃えたつ珠玉の三篇】

    深くて叶わぬ愛。
    それがこの3作品で共通に感じたことでした。
    人が人を好きになるには性別も年齢も何も関係ないんだということがとても伝わり、
    どれも泣きたくなるような作品でした。
    そしてどれも苦しいほどの恋を描いているのに、
    文章が綺麗なのですーっと心に染み渡っていきます。
    3作品とも良かったですが、特に心に響いたのは【卒塔婆小町】。
    最後の数行で涙がぼろぼろこぼれました。
    最後は救われたような救われなかったような・・・
    でもこれで2人がまた出会えたんだと思うと、
    「長かったね。でも良かったね」と声をかけてあげたくなりました。

  • 卒塔婆小町がすき

  • 泣きました。三つのお話が入ってるんですが、後ろにいくにしたがって、とん、どん、すがしゃーんって感じで泣きました。こんなにまで誰かを想えたら、つらい恋でも、いいな。

  • 短編が3つ収録されてるんですけど、
    2つめの「卒塔婆小町」になんでかかなり号泣しました。恋愛小説で初めて泣きました。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で朝日新人文学賞、2001年『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞。著書多数。

「2022年 『感情教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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