- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167728021
作品紹介・あらすじ
大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。すべての責任を押しつけようと暗躍する支店長。四面楚歌の半沢には債権回収しかない。夢多かりし新人時代は去り、気がつけば辛い中間管理職。そんな世代へエールを送る痛快エンターテインメント小説。
感想・レビュー・書評
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1.著者;池井戸氏は、子供の頃から国内外のミステリ―を読み漁ったそうです。大学卒業後に三菱銀行に入り、32歳の時に退職。その後、コンサルタント業の傍らビジネス書を執筆。「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。氏は、ミステリ―のセンスを企業小説と融合させた新しいタイプの小説家と言われています。江戸川乱歩賞(果つる底なき)と吉川英治文学新人賞(鉄の骨)及び直木賞(下町ロケット)の三賞を受賞した実力作家。
2.本書;「倍返し」で有名な半沢直樹シリーズの第一作。半沢は大手銀行に入行し支店の融資課長。気乗りしない融資条件を支店長のゴリ押しで通したばかりに追い詰められていく。いわれなき責任を負わされ、濡れ衣を自ら晴らしていく、というストーリー。銀行用語が所々に出てくるが、分かり易く解説されており、池井戸氏(元銀行員)ならではの読み応えある小説。九章の構成。序章;就職戦線~終章;嘘と新型ネジ。
3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
(1)『第二章;バブル入行組』より、『「お前んとこの支店長(浅野)、あの融資はお前のミスだと主張している」「西大阪スチールでの信用事故は、融資課長である半沢の力不足により、通常であれば当然に見破る事の出来た粉飾を看過ごした故に起きたもので、半沢の財務分析を信用して行った自分(浅野支店長)の与信判断は間違っていなかった」』
●感想⇒集団の人材構成には、2:6:2という原則があります。優秀な働きをする人が2割、普通の働きの人が6割、貢献度の低い人が2割。これを応用すると、人に責任を擦り付ける人が2割、責任を認める人が2割となり、嫌な人は何処にもいます。ある課長の話です。彼は社内の共同仕事で失敗があると、自分は逃げていつも他部署に責任を負わせる人でした。その仕事のリーダーである役員はそれを見通して曰く、「ああいう課長の下で働く部下は可哀そうだ」と。彼はそれ以降、昇進する事はありませんでした。こうした人を見る眼があるトップは少数派と思います。こういう人の下で仕事をしたいものですね。
(2)『第三章;コークス畑と庶務行員』より、『態度が悪いという点では国税はヤクザの比ではない。・・気に入らない事があると「シャッターを閉めるか?」と常套句と化した脅しの言葉を吐く。間違ったエリート意識、歪んだ選民思想の産物で、つまらぬ奴らに権力を持たせるとこうなる、の典型だ。・・上げ膳据え膳の殿様商売、どうせ局に帰れば上役にへこへこしているに違いなく、その腹いせに銀行に当っているのではないかと勘繰りたくもなる見下げ果てた連中だ』
●感想⇒私は、若い頃に経理の仕事をした経験があります。会社は、特別監査法人に指定されていました。4~5名の国税調査官が約3カ月監査します。その中に、1名は叩き上げのの調査官がいて、気に入らな事があると、「課長を呼べ」と言い、鬼の首をとったように怒鳴り付けました。何かの腹いせに、当たり付けているように見えました。会社も、昼食やティータイムでの配慮が行き過ぎと思いました。現在は、そういう事は減ったと思います。「人のふり見て我が振り直せ」と言います。名言ですね。最近某税務署を訪問した際、言葉遣いや対応が一般企業並みになっていました。当り前の組織になったのですね。
(3)『終章;嘘と新型ネジ』より、「半沢は、銀行という組織にはほとほと嫌気がさしていた。古色蒼然とした官僚体質。見かけを取り繕うばかりで、根本的な改革は全くないと言っていいほど進まぬ事なかれ主義。蔓延する保守的な体質に、箸の上げ下げまで拘る幼稚園さながらの管理体制。なんら特色のある経営方針を打ち出せぬ無能な役員達」
●感想⇒半沢の銀行に対する思いは、歯切れがよく共感を呼ぶでしょう。バブルの絶頂期には、大企業は銀行に限らず、護送船団方式で成長してきました。従って、保守的な管理体制で、長期的視点でものを見ず、短期指向でもそれなりの業績を上げられました。企業は、社員の生活を守り、社会貢献しなければなりません。厳しい競争を強いられている中で、そうした使命がある以上、経営的には、なかなか冒険出来ないと思います。しかし、組織人には半沢の反骨精神が羨ましく、その言葉に溜飲が下がるのも事実です。半沢の言葉が愚痴に終わらない社会が来ると良いのですが。
4.まとめ;本書は、テレビドラマになり、初回の平均視聴率は20%と人気を博しました。主演の堺雅人さんの名演技もさることながら、「倍返し」のセリフなど、多くのビジネスマンの共感を呼びました。作家の新野さん曰く、「どんなに小突かれても折れない半沢の姿、組織に従いながらも譲れない一線、捨てられない矜持が見えてきた時、明日も働く元気が湧いてくる」と。働く人を奮い立たせる一冊で、ビジネス本というよりも、人間ドラマがあります。池井戸さんは、「女性読者にも是非読んで頂きたい」と言っていました。 (以上)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
池井戸潤さん初読み。
有名なテレビドラマの「半沢直樹」も観たことありません。
銀行員のお仕事小説。
悪~い上司をぶっとばせぇ~♪ っていう話し。エンタメですね。
結果は見えているのでドキドキハラハラはまったくない。
特に過程も楽しめない。
スカッとできればいいのだろうけど、ダメだった。
あの有名な「倍返しだ!」は出てこなかったな? 見落としたのかも。「十倍返しだ」はあった。-
ひまわり師匠、やっと帰ってきましたか!
土瓶師匠があっちこちで暴走中w
止めれるのはひまわり師匠だけです!
よろしくお願いしますwひまわり師匠、やっと帰ってきましたか!
土瓶師匠があっちこちで暴走中w
止めれるのはひまわり師匠だけです!
よろしくお願いしますw2023/02/15 -
外しにはいっとらんわ~(爆)(ノД`)シクシク
暴走もしとらんわ~\(゜ロ\)(/ロ゜)/
常に新人(?)を開拓中どす!
外れ...外しにはいっとらんわ~(爆)(ノД`)シクシク
暴走もしとらんわ~\(゜ロ\)(/ロ゜)/
常に新人(?)を開拓中どす!
外れのない数人の作家さんの作品だけ読んでいてもいいんだけど、それじゃあ広がらないんよ。
う~ん。円錐の底辺を広げたい。みたいな?
円錐の高さは、もういっぱいいっぱいだろうし。
どんなに凄い作家さんでもピークはあるし、ひとりで考えられる着想にも限界はあるだろうしね。
何の話???2023/02/15 -
2023/02/15
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テレビドラマを見せてもらえない家庭だったため、今もあまりドラマを見る習慣がなく、よくテレビで耳にする「半沢直樹シリーズ」が池井戸潤さんの本作を原作にしたものだったことをつい最近知った。
最初は銀行特有の難しい用語に戸惑ったけど、そこを過ぎれば、組織で働くことの大変さや理不尽さに耐えながらも、最後には自分を陥れようとした人物をコテンパンに仇討ちするという痛快でわかりやすいストーリー展開だった。
「夢を見続けるのは実は途轍もなく難しいことなんだよ。その難しさを知っている者だけが、夢を見続けることができる。」という半沢の言葉には「うーむ、確かにその通りだな」と思ったし、そういえば自分は最近夢を抱いていないなと気付いた。
また本作を読んで初めて著者の経歴を知ったが、本当に元銀行員・コンサルだったとは驚きで、書かれている銀行内部のことによりリアリティを感じられた。 -
「オレたちバブル入行組」池井戸潤さん
1.抜粋
「目の前の人事ひとつで全てが決まるわけではなく、人生というのは結局のところ、自分で切り開いていくものである。肝心なことは、その時々で全力を尽くし、納得できるように振る舞うことである。」
2.概要
老舗ホテルが舞台です。
二代目社長の戦略があたり、稼働率があがるも、財務部の運用失敗で大赤字に転落します。
銀行側では、継続融資をする、しないの議論とともに、金融庁の監査に対して、正常債権を主張して乗り切りたい思惑があります。
老舗ホテルの行方、金融庁の監査結果はいかに??!!
3.本書からの学び
①大企業、グループ企業が多い場合の財務政策
資産価値がある会社と少ない会社の目利き、区分を行うこと。
②貸付先の実態把握
現場観察による客足、在庫管理状況、さらには登記簿謄本確認という基本も大切であること。
③資本業務提携
どの会社と組むのか?相手方そして自社がどの領域で補完しあえるのか?
お金だけの目的だけでは企業価値には繋がりづらいこと。
④プロフェッショナル
誰の何の目的で仕事するのか?
半沢でいえば、金融業が金融業であるを目的に働いている。
そこに、組織や、ましてや、自身の保護の視座はなし。
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H29.5.18 読了。
・「成功は上司のもの、失敗は部下のもの。」は嫌な言葉ですね。
・出世はバツが付いたら終わり。出世はトーナメント方式とは、言えて妙ですね。
半沢直樹の出世の続きが気になりますね。 -
有名なドラマは未視聴。銀行を舞台に繰り広げられる小説は初めてだったので、少し時間がかかった。
最後の結末はお決まりのパターンでわかっていても気持ちがいい!
なかなか現実で組織の理不尽さ歪みに立ち向かって勝てることなど経験できないのだから。だから気持ちいいのだ。
「夢と思っていたものが、いつのまにか惨めな現実にすり替わる。そういう気持ち、お前にはわからんだろう」
「そんなことないさ。夢を見続けるってのは、実は途轍もなく難しいことなんだよ。その難しさを知っている者だけが、夢を見続けることができる。そういうことなんじゃないのか。」
たまにはお仕事小説もいいな。明日からまたお仕事頑張ろうと思える。 -
半沢直樹シリーズ第1弾。
ようやく1を読みました。笑
半沢直樹が産業中央銀行に入行する所から始まります。
東京中央銀行大阪西支店の融資課長となった半沢が、融資を承認した西大阪スチールが倒産。
全ての責任を取らされる前に、融資金を回収することができるのか?
銀行に就職すれば一生安泰と言われていたバブル入行世代の様々な思いと、人事が全てと言われる銀行の内部事情が伺えます。
半沢直樹はとても芯を通していて、正しい事を思っていたが、そればかりじゃ銀行員は務まらないと分かりました。笑
池井戸潤の金融小説、ハマりました。
面白いです。 -
池井戸潤の作品をはじめて読んだ 正義は勝つ みたいなのは読んでいて気分がいい テレビドラマもみていたがあまり覚えていない 原作のほうが面白いことが多いけど、エンターテイメント性という点でいえばテレビドラマのほうに軍配があがるかもしれない
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初、池井戸潤読破です
ちょー面白い!!!!
夢と希望にあふれた新社会、1数年の今は大阪の融資課長「半沢直樹」へ
融資5億の焦げ付きを部下のせいにする支店長
「良いのは上司の評価、責任は部下に押し付け」
焦げ付きの融資の大どんでん返し!!!
よくぞやった半沢直樹!スカッとしたぞ!
しかし印象深いのは「銀行員はものすごいプライド」が高い!
そのおかげで退職しても再就職先は困難だそうだ。。
銀行員として通用する資格は外では通用しないとか -
半沢直樹はバブル景気時代に大手都銀である東京中央銀行に入行、
今は大阪西支店で融資課長を務める。
支店長浅野の強引な命令により5億円の融資を行った「西大阪スチール」が、融資直後に倒産。
西大阪スチールは粉飾決算をしており、半沢は、浅野らに融資の責任を押し付けられる。
半沢は反論するも、何とか5億円の回収をしなければ、子会社への出向は免れない。
浅野や副支店長からの叱責、浅野に根回しをされた東京本店の陰湿な事情聴取、
開き直って逃亡する西大阪スチールの社長…
四面楚歌な状況の中で、半沢が突き止めた真相とは。
「倍返しだっ」
と、どや顔で言うのが(世間より遅い)最近のマイブームなわけですが、夫曰く「全然似てないから」。
ドラマは、テレビをつけたときに偶然やっていた2回くらいを何となく見ただけで、
その中でも「倍返し」は何度か登場していたと思うのに、この本では1回だけ、
それも台詞の中でちょっと出てくるだけでした。
オリジナル版では、別に半沢の決め台詞ってわけでもなかったのか。
池井戸さんの他の作品でもそうだけど、最初の方はこれでもかというほどの試練がある。
身内での足の引っ張り合いや責任の押し付け合いの醜いこと。。
その中で徐々に解決の糸口をつかんで、最後は勧善懲悪、「悪は滅びる!」というわかりやすい展開。
それでも、責任は押し付けるばかりのいけ好かない(どころでない)上司、
迷惑をかけても反省のかけらもない取引先、陰険陰湿な本店の面々に、
今後の展開は「V字回復」をするとは思いつつ、上昇気流に行きつくまで読むのは、
半沢がいくら荒ぶる反骨精神をもって立ち向かえど、なかなか苦しい作業であります。
こんな嫌な上司や取引先で、仕事が山のように降ってくるだけの状況だったら、
チキンな私には到底1年も持たないだろうなぁ。
やってらんねぇって辞めたくならないのかなぁ。というか池井戸さんはそういうのが嫌で辞めたのかな(笑)。
元銀行マンの目線で書かれているだけに銀行内の描写は信ぴょう性もあるけれど、
たまに一個人の小説の枠を超えた私怨が感じられるときあるもんね。
他の職業ものにもいえることだけど、これが銀行業界のすべてと思ってはいけないのでしょう。
話題になっているだけあって面白かったけど、世のサラリーマンのお父さんは大変だなぁとも思いました。
(って他人事のように言ってちゃいけませんね!)
著者プロフィール
池井戸潤の作品





