かばん屋の相続 (文春文庫 い 64-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167728052

感想・レビュー・書評

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  • 中小企業経営というのは、大変やな。
    こんな自転車操業してたら、経営者は体が保たん気がする。体もそうやけど精神的にも。
    彼らを支える銀行マンと大変やな。凄い仕事量やし。
    そういう銀行も今は厳しい状況。
    ここで登場する銀行マンは、義理人情に厚そうやけど、限度もあるしな。
    タイトルにもなってるかばん屋さんって、京都の一◯帆布店の事?
    めちゃめちゃ状況は似てる。お兄さんが銀行マンで、急に店継いで、今まで、店をやってた三男を慕って職人さんが辞めて、三男さんのとこに移るとか…
    名前だけ名乗っても、質悪かったら意味ないしな…
    でも、あの店も昔は、ガラガラ〜って開く戸で、手作りのカバンがぶら下げてあった感じの店やったのに…
    何か今はブティックみたいな感じ。
    昔ながらの店が風情があって良かったな。(確か、POPEYEか何かで紹介されて有名になったんと違ったっけ)

    中小企業は、大変やから、銀行か、信金さん頑張って支援してね〜

  • 銀行は、営利企業である。

    そのために、顧客のためにあるのではなく、自らの企業の業績を上げるために客(企業、個人)があるのだ。好業績の企業を見つけたら強引に借金をさせて、業績が悪くなったら銀行が損をする前に担保を処分して資金を引き揚げる。もし銀行に損をさせた支店長、融資課長は左遷される。
    そんな銀行界において経営者に肩入れする行員の姿が見える。

    【十年目のクリスマス】
    あきほ銀行で主に中小企業融資を統括するセクションの融資部調査役、永島真司は、デパートで店員に送られて行く神室彦一を見てハッとする。十年前に倒産した経営者がなぜ何十万の買い物が出来るのか。当時の会社の決算書を調べて行くとコンサルタント料として毎月払っていた金額が、実際は火災保険料であって、倒産寸前に倉庫に放火して架空在庫を燃やし、保険金を受け取ったことが分かった。

    【セールストーク】
    京浜銀行羽田支店の田山支店長は、融資先の小島印刷社長にトラブルになった女との処理をして貰い、手切金三百万円を支払ってもらった。田山は、その見返りに今月末の決済資金五千万円を融資した。仕組みは、田山が、ハネダ塗装店に五千万円を融資して、ハネダ塗装店から田山が借りて、小島印刷に田山が貸す方法を取った。これが支店で行われた「与信検査」で発覚した。支店長は、懲戒解雇された。

    【手形の行方】
    関東第一銀行の西原敬子は、仕事中に同じ支店に勤務する不倫相手の堀田とファミレスで会う。堀田の妻が妊娠しているのを知り、堀田が集金してきた取引先の割引用の手形を堀田の鞄から盗む。堀田は、支店に帰って来て手形がない事に気が付き、支店を上げて探し続けるが発見されなかった。堀田は、左遷されたが、西原のことは言わなかったが、上司が気がついた。西原は、子供が出来たことが「許せなかった…」

    【芥のごとく】
    大阪の銀行に入社して二年目の山田一は、初めて融資課に配属されて担当したのが業績の悪く、毎月の資金繰りが大変な従業員5人の土屋鉄商であった。土屋鉄商が、6月26日の決済日に、30日振出日の得意先発行の手形を持って来た。山田は、期日前の手形は割引できませんと。土屋社長は、マチキンで手形を担保に金を借りてきた。それから2ヶ月後、土屋鉄商には、ひとが居なくなった。

    【妻の元カレ】
    都内の東都銀行に勤めるヒロトは、絵里香と結婚して5年、子供は居ない。普段使わない引き出しに妻の元カレ森中の会社設立の葉書きが。それから妻は、夢であった希望の職種の旅行代理店に派遣として勤めだした。ヒロトは、妻の友人に森中のことを聞くと、絵里香が森中と別れたのは、恋愛と結婚とは違うと。妻が美しくなってくる。ヒロトに大阪への転勤の命が下る頃、森中の会社が倒産する。妻は、カレは私を必要としていると…。

    【かばん屋の相続】
    白水銀行支店長をやめた亮は、父・義文と弟・均が40年営んで来た「松田かばん」の社長に強引に就任する。亮は、こんなちっぽけな会社の経営なんか簡単だと豪語した。義文は、病床で均に取引先に5億円の連帯保証債務があるため、会社は潰れる、相続は放棄して、新会社を設立して従業員を頼むと。均は、相続を放棄する。そして松田かばんが倒産する。これを池上信用金庫の一行員の視点で書いています。

    【読後】
    短編6話、すべてにおいて主役が、脇役が、誰が主役かわからないくらい登場人物が全て溌溂としていて素晴らしいです。池井戸潤さんの物語から、人を描くことの面白さが伝わってきます。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【音読】
    2022年8月15日から21日まで、音読で池井戸潤さんの「かばん屋の相続」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、2011年4月に文春文庫から発行された「かばん屋の相続」です。本の登録は、文春文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    かばん屋の相続
    2021.11埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
    2022.08.15~21音読で読了。★★★★☆
    十年目のクリスマス、セールストーク、手形の行方、
    芥のごとく、妻の元カレ、かばん屋の相続、の短編6話。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 久々に池井戸潤さんの小説を読んだ。短編集だが、銀行と中小企業をめぐる話に人情も含まれる話の進め方が相変わらず面白かった。銀行の支店の内部のリアルな様子が垣間見れるのも、実際に身を置いていた池井戸さんの小説ならでは。短編集なので、終わり方があっけなく個人的に不完全燃焼なものもあったが、どれも読み応えがあった。

  • 久しぶりの池井戸作品

    銀行ミステリーとも言うべき銀行員や融資を題材にした短編集

    半沢直樹シリーズを追いかけていた時には、難しい銀行用語も分かりかけていたけれど、しばらく遠ざかっていたから、またまた難しい銀行用語に四苦八苦

    稟議、与信、割引・・・などなど、読むうちに何とか分かってきたけれど

    銀行や信用金庫の融資課の職員と中小の町工場の社長の
    やりとりは、双方にとって死活問題なだけに切迫感がある

    「セールストーク」や「かばん屋の相続」など勧善懲悪的な読んでいて溜飲が下がる話もあったが、

    「芥のごとく」など、頑張った人が報われない悲しい話もあった
    土屋鉄商の女社長と融資担当の山田一の信頼関係がいいなと思っていただけに、予想を裏切る結末に悲しくなった
    綺麗事でもハッピーエンドが好きだ

    全てハッピーエンドになるわけがない、現実は厳しいということだろうか



  • S図書館
    「オール読物」の連載 6編の短編

    10年前のクリスマス
    セールストーク
    手形の行方
    芥のごとく
    妻の元彼
    かばん屋の相続

    《感想》
    どの話もわかりやすくすらすら読めた
    ドラマにできそうな安定感

    「10年前のクリスマス」では、悪いことに目をつぶる珍しい結末だった
    倒産から10年後、ジャガーに乗った元社長を見かけた
    こんな生活ができるはずがない
    不審に思い調べてみたら、火事は自作自演の放火で、銀行では知ることができなかった多額の保険金を手に入れていたのだ
    主人公はその元社長の妻に好意を寄せていたことと、10年という歳月が経っていたことで時効にした
    本当はガツンとやって欲しかった

  • 銀行員5人の物語。短編集ながらも登場人物全員の人間らしさが滲み出ていて、銀行ミステリーという括りだけでは収まらない面白さがある!社会ではこんな出来事が現実でたくさん起こっているんだろうなと学生ながらに想像できた。

  • 池井戸さん初読みです。
    サラリーマン家庭からしてみれば
    銀行さんとのお付き合いというと住宅ローンくらいですが、
    町の中小企業と銀行や信用金庫は
    ビジネスだけじゃない深い繋がりがあるんですね。
    銀行が企業を育てるという意味が初めてわかりました。

    出世や保身に必要以上にこだわる銀行員の
    ダークサイドも垣間見えて面白かった。

  • まあ、気軽に読める。旅行に行く時の新幹線や飛行機の中で読むのに最適。笑

  • 短編集。表題の短編を目的に読み始めましたが、その他の短編もグイグイ読ませる面白さ。短編なのがもったいないと思う一方、短編だからこそ面白いとも感じながら読了しました。池井戸潤さんの本は、お名前は当然存じておりましたが、これが初で、ここまで面白い本を書かれている方だとは・・・。さすがです。時間があれば他の有名長編も読みたいと思いました。

  • 短編集ですが、それぞれが読み応えのある話でした。
    6編のうち、「十年目のクリスマス」が一番面白かったです。
    10年間の時の流れが、登場人物を通して想像できるステキなストーリーでした。
    池井戸作品の中では、色々なタイプの銀行員が描かれていて、読む楽しみの一つです。

著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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