木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.16
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本棚登録 : 3962
レビュー : 493
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167729035

作品紹介・あらすじ

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿-共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台はアパートの一室。別々の道を歩むことを決めた男女が、引っ越し前夜、最後の夜を徹して語り合う。
    男女が関わるひとつの死亡事故、そして複雑な過去。
    濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。

    たった一晩の物語なのに、近い過去から遠い過去まで行ったり来たりして、しかも展開が一転二転して、濃いミステリ小説だった。
    時々頭のなかで相関図を整理しながら読まないとややこしくなるかも知れない。
    ミステリの感想はうっかりネタバレしたらまずいからあんまり詳しく書かないけど。笑

    恩田陸さんのミステリってたまに伏線を回収しないまま終わることがあるけれど、この小説はすっきり終わる。

    禁じられるから強く求めてしまう、という心理って実際ある、と頷いた。駄目と言われるとどうして欲しくなるんだろう。
    それが“駄目”じゃなくなったら興味を失う、という人間のおかしな心理。
    その関係にこだわるのは、愛情なのか執着なのか。目が開けてそれが分かったあと、果たしてどうするのか。

    お互いを疑いながらの関係は、どれだけ騙し騙し過ごしたとしても長くは続けられない、苦しすぎて。
    そんなことを、改めて思った。

  • いつも聞いてるラジオで推してたし本屋にもズラっと並んでたから読んでみた。期待高まってたし設定が面白そうだったから最初はワクワクしながら読めたけど、中盤から微妙に…。明らかになる事実にいろいろ無理あるような(しかも想像なので真実はわからない)。公園で遊んでる記憶辿るとことか、なんじゃこりゃと白けてしまった。エンタメ小説としても微妙だし、恋愛小説の切なさとかリアルもなかった。欲目ありで入ってもつまんなかったです。ガッカリ度大きかったので辛口で…。

  • 舞台は終始アパートの1室。登場人物はそこに住んでいた男女。二人は恋人同士ではなく、幼いときに生き別れた双子の兄妹。引っ越し前夜から明け方にかけ、男性目線、女性目線が切り替わりながら話が進みます。
    はじめは登山に行った際に起きた死亡事故の真相を、お互いがお互いを犯人ではないかと疑いながら話していきますが、途中からは話がずれていきます。
    なんだかな~。
    妄想力豊かな彼女の思い込みの推理のみを事実としています。何の解決にもなっていません。彼女のピアスだったり、彼のナイフだったり、ばら撒いた伏線が全然回収されず。部屋の片隅に置き去りだった写真立ては、最初から引っ張る必要があったのだろうか。最初に「実は1つだけあるものが残されている」と書いてあったとき、死体かなくらいに思っていたのに写真立てかよと突っ込んでしまった(笑)
    出だしの期待感は見事に裏切られます。
    心理戦を繰り広げていますが、大袈裟だなという印象。タイトルはステキなのに、なんだかほんと残念。

  • 奇妙な題名の通りの作品。
    直接登場するのは兄と妹という双子の男女二人だけで、その二人の視点が章ごとに入れ替わる、たった一晩の出来事を綴ったユニークな傑作長編。
    この二人の関係も、何やら裏がありそうで、さらに殺人か事故かという事件も絡むようで、題名と相俟ってミステリアスに物語は進み、読者もその謎に引きずられながら頁を捲ってしまう。

  • 構成としては好き。

    ある一夜を巡る、双子の男女。
    でも、既に一緒に住んでいた部屋は片付けられていて、二人はお互いに「相手が殺人を犯した」ということを切り出そうとしている。
    そのことに怖さもあるのだけど、それが本当であれば、二人を繋ぎ続ける枷にもなるという、かなり危険な悦びを匂わせる。

    面白いなあと思うのは、交互の視点で話は展開しているはずなのに、少しずつ場の重力がアキ側にシフトしていく所だ。
    一方でヒロは、どんどん真実からもアキからも置いていかれてしまう。
    ま、アキから逃げようとしながら、アキの気持ちの端っこも掴んでおきたい、なんて考えているのだから、全然構わないけどね。

    結局のところ、二人の父親がどういう末路を辿ったのかは、アキの推測でしかない。
    それを言うなら、その夜の思考は全て、裏付けがきちんと為されたものでもない。
    けれど、思考し、整理されることで、アキに物語の重みがかかる反面、彼女は夜から軽くなってゆく。
    それでいいんじゃないかな、と素直に思わされる。

  • これは何のジャンルになるのだろう。ミステリーのようなロマンスのようなサスペンスのような、でもどれとも違う雰囲気を持つ作品でした。きっと意識的にそうしているのだと思う。

    主人公であるカップルがある事件から別れを選び、部屋を引き渡す前日の一晩に探り合い、議論し、確認し合いやがてそれぞれが一つの結論に辿り着く。というお話。
    本屋のPOPはどんでん返しな展開を煽るような内容で、実際それに興味を惹かれて手に取ったわけで作品の読み易さ、スピード感の大部分はこういったミステリー部分が大きく寄与している事は間違いないのだけど、この物語の本質はどちらかと言えば人間の情とか憐憫、恋愛の本質とか男女の恋愛観といった人間の内面を掘り下げる事がテーマのような気がした。

    人間関係、とりわけ男女関係においては「どちらがより相手に依存してるか」によって力関係がシーソーのように上下するものですが、山岳ガイドの死の真相と並行して、アキと千明のどちらがより相手を深く愛しているのか。というポイントもシーソーゲームのように危うく揺蕩っていきます。

    既に別の女性と住むことが決まっている千明と、プロポーズまでされた別の男性と別れ自暴自棄になっているようにすら見えたアキ。

    勝負としては完全に女性側が不利な展開でしたが、山岳ガイドの死と自分達の出生の謎が解けた途端、千明への想いは自己愛の投影と障害のある恋愛によるものに過ぎなかったと気付いてしまい、一切の未練が急に断ち切られる描写は女性作家にしか描けない巧みさだったと思います。

    そして表面的には別の女性が家で待っている「勝者」である千明ですが、実はその家を牢獄のようだと気付き将来に起きる破滅的な別れを予感してしまっていて、アキへも実は未練タラタラな所が男ってそうだよな。と思いつつ、妙に共感して辛くもあり。笑

    それにしても恩田さんの作品はどれも読みやすくて、ハズレが無いなぁ〜。

  • 静かに、じりじりと真相が明らかに。
    「引っ越し前夜のアパートの一室」という限られたシーンの中で、事件の真相が主人公の男女それぞれの視点で語られています。
    舞台や映画の方が、この作品の持ち味であるなんともいえない不穏な空気感が伝わるのかなぁ、とも思ったり。

    • しんべいさん
      映像化されたら見てみたい!
      映像化されたら見てみたい!
      2019/03/24
    • しんべいさん
      高校生のころ恩田陸けっこう読んでました。
      高校生のころ恩田陸けっこう読んでました。
      2019/03/24
  • 人が親しくなるということは、何かを与えたがり、実際こまごましたものを与えあうものなのだ。自分の存在をアピールする数々の品が交換され、それぞれの世界に互いの痕跡を残し、少しずつその領域を広げていく。そうして、お互いが特別な存在になる。私たちはそんな存在のはずだった。(本文より)

  • 独特な世界観、これぞ恩田陸。

    2人の男女が最後の一晩を過ごし、
    真実を明らかにするミステリー。

    2人の思いが徐々に変化していく様子が面白い。

    2人だけで、ここまで物語がかけるものかと、
    恩田氏の小説家としての力を感じる。

    「こんな話かな?」ということを裏切ってくれる。

    舞台化してほしい。絶対面白い。

  • 本当に人を愛したことがあるのか。
    手に入らないという憧憬。
    純粋な独占欲。
    性欲と履き違えた。
    寂しさを埋めるため。

    自分の事こそわからなくなるなか、
    過去を振り返るように
    愛を探って行く。

    先を暗く灯す自分自身への猜疑心は
    今、まさに感じているものだった。

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著者プロフィール

恩田 陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。幼少期は名古屋、長野、富山、仙台などを転々とする。高校時代は茨城県水戸市に在住。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。
1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。
2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞と第14回本屋大賞を受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。2019年秋、石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化。

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