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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167737016
感想・レビュー・書評
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この本好き。
「切羽へ」の影響で、井上荒野は全部読んだけど、これが一番好きだなー。
だりや荘はペンション。はかなげでおとなしい姉と、気の回る明るい妹、そして妹の優しい夫とで営んでいる。
当然、それだけじゃない。
不倫も性愛もなんでこの人はこんなに透明に書けるんでしょうか。「筋だけとったら昼ドラ」 と言った知人の意見に賛成です。
誰が繊細で誰が無神経か。何が善くて何が誤りか。
登場人物の内面を見つめる過程で、自分の美しいところ、汚いところを少し見つけた気がします。
救いがあるとか新しい道を見つけるとかではなく、そういう話。
2009年12月09日 13:46詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これが、姉妹でなかったとしたら平凡な話なのだろう。いや、姉妹であっても平凡なのかもしれない。「姉と、妹夫婦。残酷なかたちしかしれない幸福がある」と、帯には書いてある。残酷なのに幸福なわけは、たぶん姉妹の隣、すぐ隣にある死。だとしたら、幸福は生そのものなのだろう。
姉の椿の狂おしいほどの愛情はなんだろう。迅人への愛ではない。妹・杏への愛情だ。椿は、杏の半身であることをやめない。杏の半身としてしか生きられない。椿が愛してやまないのは杏その人であって、杏もきっとそうなのだろうと思う。迅人はあくまで、姉妹の愛情をつなぐだけの役割にしか過ぎない。男の身勝手さを描いているようで、彼は彼である必要はない。杏を深く愛するからこそ、椿を愛する。椿が杏の姉だから、と迅人はいう。まるで迅人がふたりの女を動かしているかのように見えるが、最後に疲れ果ててしまう迅人は、姉妹にすべてのパワーを吸い取られてしまったのだ。姉妹の愛を完結させるだけの迅人。
親の血が流れている、と椿は自分を醜く思う。そうであれば、杏だって醜いはずだ。だけれど、杏こそが神聖化されている。つまりは、椿は自分を愛する手段が杏を愛することであり、杏を愛する迅人を愛することなのだ。すこしずつでも、外へ気持ちを向けようとしたってうまくいかない。一方、杏は外に気持ちを向けられるのに、うまくいかない。
結局、男は消費される。それがわかっている男はどれだけいるのだろうか。いや、迅人のようにわかっていない男ばかりだろう。男は女を消費しているように思っているかもしれないけれど、真に消費されるのは男なのだ。 -
ペンションが舞台だけどちっとも楽しくない。
全体的に漂ってるアンニュイな雰囲気。
迅人ももちろん悪いけど椿も嫌い。 -
事故で亡くなった両親から受け継いだペンション、だりや荘を経営することになった椿と杏の姉妹。椿は杏の夫である迅人と人目を忍ぶ関係になっていく…。
ミステリかと思ったんだよね。早々に違うかな?純文学かな?みたいになるけど、そうでもない。だらだらとした関係を最後まで見ている感じになる。
この本のポイントはわかっている。兄弟の信頼、不倫、友人、田舎の町ならではの人間関係といった状況が、ギリギリのところで続く危なさと、何か一つどこかが綻びることで、その関係が全て壊れてしまうのではないかという緊張感と、ほころびていく状況を描きたいのであろう。
しかし、文章が守り守りに入っていってしまって、どうも読んでいてその緊張感が感じられないのだな。純文学として成り立たせるのであれば、どこかこう、壊れてしまう危うさを時間や環境から感じさせる何かが欲しかった。
本作においては、女性二人が言ってしまえば始終脳天気だし、男性側も煮え切らないのではなく楽天的。その辺は、読んでいて焦燥感を感じさせられないので読みやすいが、肝心の綻びのインパクトも無し。
天性の天才的な料理の能力を持つ姉妹や、不倫しようがなんだろうが、女性側は仕方がないんだもーんという開き直りなど、女性向けの雑誌の連載小説の設定という感じ。好きな人は好きだろうし、嫌いではないけど、何も残らない人も多いだろう。 -
一見穏やかに見えるペンションでの生活。でも妹の夫の迅人は個人的に嫌。優しくて頼りがいがあってどんな生活も楽しんでしまい何と言っても妹のほうで妻の杏のことを愛している。それでもダメでしょ。
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妻の姉と浮気がやめられず、姉妹両方愛しているし愛されていると思っているどうしようもないダメ男の話なのだが、物語としてなぜか美しくまとまっている。
一目惚れした同僚と結婚し、幸せな夫婦生活を送っていた杏は、両親の死をきっかけに夫の迅人とともに長野へ移住する。
両親の経営していたペンション・だりや荘を継いだふたりは、病弱で美しい杏の姉・椿と三人で穏やかな生活をはじめる。
だが迅人は椿と不倫関係にあって、杏は長野に来る前からふたりのことを気づいているが知らないふりをしている。杏は迅人を愛しているのである。
椿はふたりの関係が露呈することを恐れているものの、不思議と杏への申し訳無さのようなものを感じられない。
杏、椿、迅人それぞれの視点で夏から冬にかけて三人の関係が変化していく様子が描かれる。
椿の恋人である新渡戸や、ペンションでアルバイトをはじめた旅人の翼などが絡んでくるが、基本的に三人の関係性が中心となっている。
杏は姉も夫も大切だからふたりの関係を黙殺し、迅人はふたりを愛することが自分の役目だと信じている。そして椿は迅人への思いに傾きだんだんと壊れていく。
スローな展開と緩慢な語り口なのだが不思議とだるさがない。
物語の起承転結はあるものの、結局なにも解決していないというところがもやっとするか、風情に思えるかで読後感が変わるだろう。
個人的には迅人痛い目に遭えと思っていた。 -
妹の夫が妹の姉と不倫関係。引き込まれて読んだが貞操観念がいかがなものか。
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愛してるからって許せるとは思えない。
むしろ夫も姉も愛してるからこそ許せない。
きれいな風景なはずなのに。 -
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いやぁ、途中気分が嫌になって投げ出そうかと思ったが、どうなるか見届ける気持ちで読了。一番我慢してるのは、きっと杏だろうな。大事な、小さな時からの思い出を共有しているお姉ちゃんと、惚れ込んでる旦那との板挟みにいて。どっちとも大事、だからなかったこと、見なかったことにする。でも疲れちゃうと、どうして迅人がいるんだろう、ってつい思っちゃう。杏には申し訳ないけど、こんなペンションはどんなに料理を頑張っても、内装が素敵でも、居心地悪そうだし、美味しくなさそうに思える。
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「切羽へ」で初めて井上氏の作品を読み、それをきっかけに過去作品へと遡って読んでいるのだが…この「だりや荘」が今のところ一番いい。「切羽へ」よりも。
両親の死をきっかけに、信州のペンションを継ぐことを決意した杏。夫の迅人とともに、姉の椿が一人残るペンションへ移り住むことになった。
この小説の感想を述べるとどうしてもネタバレになってしまうのが苦しいところだが、何とか避けてみると…。どろどろしてもおかしくない、むしろどろどろするのが必至の状況を、びっくりするくらいの透明感で描いている。その透明感は「切羽へ」と通じるものがあるけれど、こちらのほうがより勝っている。そしてゆえに切ない。時に土足で彼らの間に入っていて「わーっ!」と叫んでやりたい衝動も。 -
知らないのは当人ばかりだよね。
男ってやつは調子良いなぁ。
女ってのも怖いね。
ドロドロしたような内容だけど、何故かさわやかな印象が残ってます。 -
まったく共感できない部分とできる部分の混在感がすごかったなぁ。
大人のおとぎ話と言いますか。
最後の展開はどうかと思ったけど、この話の面白さや機微がまっったくわからない、という人とは仲良くできない気がする。 -
繋がりの脆さを描くのがこの人は巧いな。妹の旦那は好きになれなかったけれど。
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もうどうしようもないところまでいっている物語を、ゆるやかに堕ちてゆくように描いているのが怖かった。
こんな閉塞感のある物語も珍しい。。。
井上荒野の物語は、食べ物が本当に美味しそうに描写されるなあ。
ただそれと一緒に描写される物語は本当、ぐったりくるものが多い。 -
姉の椿、妹の杏、妹の夫ハヤト。
誰が一番イヤかと言えばハヤトである。
嫌と言うよりも気持ちが悪い。
考え方も行動も。きもい。 -
どろっどろである。
七角形ぐらいになってて、しかも親子二世代にわたっててもうぐちゃぐちゃ。
どちらかというと静謐とした文章の中にそういったどろどろが描かれており、そのギャップがなんだかはらはらする。大変なことが起こりそうで。
まぁでも、リスクとか背徳感に裏打ちされた恋愛って魅力的なのかもなぁ。
人間は禁忌を破りたい生き物なんだろうな。 -
すいません、これはダメでした。シンクロに失敗しました。
ペンション「だりや荘」を継ぐことになった妹夫婦と、
心身の弱い、美しい姉との物語。言ってしまえば姉妹どんぶりってヤツですな。
このおねえちゃんの椿さんが、もう全然だめでした、気持ち悪くて。
妹の杏ちゃんがかわいかったので、何とか最後まで読めたようなもの。
阿呆でいい気なダンナの疾人も、ただただムカつきましたし。
不倫と見せかけた姉妹愛の話でもあるわけですが。
東京から疾人を追ってきた醜い女を「あのくるった女」とさげすんでいたけれど、
容姿が美しいだけで、椿だって彼女と大して変わりない。
妹たちの愛犬、かわいいサブレに害意を向けるエピソードなんて、ほんと度し難い。
妹夫婦にこどもがいれば、彼女はそれにも何がしかの悪意を向けたのか。
そういう彼女を哀れに思い、その情念を美しいと見られれば、
これは少女マンガのような雰囲気を持ったきれいな小説で、悪くもありません。
でも私はその世界に入れなかった。残念ですが。
ラストはハッピーエンドと解釈することもできるでしょうが、
私には、ああはいはい、もう勝手にやってください、としか・・・。
なんかこう、とても食傷した気分が残ってしまったので、
少しほとぼりを冷ましてから、また次を。
キライになったというわけでもないので。 -
読むんじゃなかった。
後味わるい、がっかりだ。
今の自分には後味の悪さしか残らない。
まえは、
「スィートリトルライズ」みたいな結婚が真実だとおもったし、
理想ではないにせよ、ありだと受け止められた。
「流星ワゴン」を薦めて、批難してきた人を思い出す。
裏切りなんていらない。
優しいも、思いがけないも、言い訳も受け付けない。
認められないし、受け付けられないだろう。
信じるってのは、
裏切られても恨まないってこと。
そのことば通りなら、
きっと誰も信じられない気がする。
まだまだ捨てきれぬ俗物よ。
裏切りや、ねじれた関係を
繊細な表現にすることで「綺麗だ、とかせつない」とか
やめようよ、って思うってしまう。
それくらい、きつい。
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