風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2009年4月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167741037

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

多様なキャラクターが織りなす短編集は、さまざまな人生の選択や価値観を描き出し、読者に深い考察を促します。パティシエの秘書や仏像の修復士、文学青年など、各短編は異なる設定ながらも、主人公たちが直面する葛...

感想・レビュー・書評

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  • 6つの短編集。パティシエの秘書、仏像の修復士、文学青年、UNCHRの職員、サラリーマン、犬保護のボランティアが登場する。どれも面白い。いろんな世界を縦横無尽に描いてしまえることに驚いた。
    そうか、森絵都さんは児童書も手掛けていたのか。だから、文章が非常に読みやすく、映像として内容が浮かんでくるのだ。
    中でも傑作は「守護神」に登場する文学青年裕介とニシナミユキとのやり取りだ。チャラそうな裕介の見方が180度変わる思わぬ展開が待っている。それがおかしく思いっきり吹いてしまった。久々にこんな面白い短編をみた。一方で大学で文学を学ぶってこういうことなんだ、これはすごいなと脱帽する思いだった。徒然草や伊勢物語の解釈バトルがすごい。読書を極めるとこんなに会話になるのかも知れない。
    「鐘の音」は井上靖の歴史小説を読んでいるようであった。言葉遣いも漢文調で深い味わいがある。仏像を通して歴史に思いを馳せるような雄大さがあった。「ジェネレーションX」の友情物語は心に涼風が吹いた。やはり昔からの付き合いっていいなと改めて思う。仲間と久々に集まりたくなった。
    どの短編も外れなし、よいひとときをくれた作品であった。

  • 直木賞受賞の短編集、6編。連作短編集ではないので、何を共通項としたのかを読めれば良いなと。
    読了後、裏筋で“お金よりも大切な何かのために”という表現があったけれど、各短編の主人公達は、もとよりお金と比べる何かという感覚は見当たらなかったかなと思う。今、自分が選択した生き方が、その時の優先する多少偏狭な価値あるもの。しかも、それに自信があるわけでは無い揺らぎ。そこから、その価値を再確認させてくれる瞬間。不器用な登場人物達の、気持ちや身体が収まる場所を描いたことで、読んだ後、なんとなく安堵の気持ちが広がる。

    「器を探して」が一番好み。人生の岐路に、雇い主と彼氏に振り回されている女性が、結局本人がその手綱を握っているのではと思わせる痛快さがある。
    「風に舞い上がるビニールシート」すれ違いの夫婦の形は多々あれど、その仕事が難民保護の国連機関となると、自分の命よりも重いものとの選択まであり、そこに愛情をどう落とし込むか、短編では惜しいストーリーに思いました。

    「DIVE!!」って、飛び込みの青春物でアニメ気に入って見てたのですけど、原作が森さんと知ってびっくりです。

  • 短編集でどれも設定は全然違うのに
    すごく考えさせられる作品ばかりでした。

    自分だけの価値観って、、
    お金より大事なものって、、
    物語の世界に入り込むことで自分自身にも問いかけたくなる一冊でした。

  • 高校生だった頃、バラエティ番組を見て笑っている親がとても嫌いでした。世界には今こうしている間にも飢えて死んでいく人がいて、終わりのない内戦から逃げまどう人がいる、国内に目を向けても学校ではいじめがなくならず、介護疲れから肉親を殺める人もいる。バラエティなんて見ていないで、そういった問題に目を向けるべきだ、そう思っていました。でも、時が経ち、気づいたら、そういった話題から今度は自分が目を逸らして逃げていることに気づきました。普段の生活で気持ちがいっぱいいっぱいだから、考えても自分の力ではどうにもならないから、そして他人のことで重い気持ちになるなんてゴメン被る、こんな風に考えてしまう自分がいます。そして思います。あの頃の親も同じだったんだろうなって。

    6つの独立した短編から構成されるこの作品。それぞれにストーリーの繋がりは全くありません。なのでどれから読んでもいいはずなのですが、6つ目の〈風に舞いあがるビニールシート〉だけがかなり異質です。というより、正直なところ、この表題作〈風に舞いあがる〉を読み始めた途端に、それ以前に読んできた5つの短編が頭の中から全て吹き飛んでしまいました。分量としては全ページ数の4分の一を占めるこの短編。冒頭からその内容のあまりの重さに逃げ出したくとなる、というより、本を閉じたくなりました。『企業戦士から国際公務員への転身をはたした』という里佳。その転職理由はあくまで『国際公務員の威光に惹かれて』というものでした。その転職先は『国連難民高等弁務官事務所(UNCHR)』。そして、その職を選んだ理由は『国連の空きポストがたまたまUNCHRだったというだけ』でした。しかし、その際に面接官だったエドとの出会いが、その後の里佳の人生を大きく変えていきます。職員になって三ヶ月経った里佳にエドは尋ねます。『難民問題への関心は芽生えてきたかな』。それに対して『私は現地採用の一般職員ですから、転勤はありません』と、あくまで他人事と捉える里佳。その後、夫婦となるも『新婚生活はまるで旋風のようだった。二十五日。これが里佳とエドの送った新婚時代のすべてだ』というように、世界のフィールドでの業務が基本のエドと、東京の事務所で内勤する里佳はすれ違いの日々を送らざるをえません。生活だけでなく、気持ちさえもすれ違っていく二人。里佳はそんな生活に不満を募らせていきます。

    直木賞を受賞した作品であるという以上の事前情報を全く持たずに読んだこともあって、〈風に舞いあがる〉で描かれる内容にはかなり戸惑いを受けました。UNCHRという国連機関があるのは知っていましたし、弁務官として活躍され、この作品でも著作が参考図書としてあがっている緒方貞子さんのお名前も存じています。しかし、その活動の実態はおろか、そこで働く職員の生活・人生ということなど全く考えたことはありませんでした。この作品が秀逸だと思ったのは、敢えてそのフィールドでの活動内容自体はほぼ描かれていないところだと思います。この作品では、フィールドではなく、フィールドから離れた先にあるそれぞれの専門職員の人としての生き方、その生活の舞台、つまりその専門職員にも帰る家は必ずあるはずで、そこには家族が待っているだろうというバックグラウンドに光を当てることで、UNCHRの専門職員になるということ自体がどういうことなのか、まさしく人生を賭けたものであるということをいやが上にも浮き上がらせるという見せ方をしているところだと思いました。作品中では『年に何度か顔を合わせる大学時代の友人たちは皆、里佳が勝ち組との結婚に成功した』と羨ましがります。そんな彼らに里佳は『この地球から難民がいなくならないかぎり、エドは絶対に今の仕事をやめたりはしないの。そしてこれも誓えるけど、世界が今のまま機能しつづけるかぎり、難民は決してこの地球上からいなくならない』と必死に抗弁します。でも友人は『そんなあ』、『謙遜しちゃってえ』と決して真剣に捉えてはくれません。『平和ボケ』とはよく語られる言葉です。ボケていてもこの世界で現在進行形で様々なことが起こっているだろうことは誰にでもわかるはずです。でも、真実に真剣に向き合うことで自分たちが嫌な思いはしたくない、他人のことまで気を回す余裕はない、ということから結果的に目を逸らしてしまうのだと思います。作品の結末で里佳はある決意をしますが、ハッピーエンドとはとても感じられないその重さに、逆にしばらく考えこんでしまいました。

    ということで、すっかり〈風に舞いあがる〉の内容だけになってしまいましたが、一方で〈器を探して〉にはこんな一文が出てきました。『ひとにはそれぞれの持ち分がある』、〈鐘の音〉にも『人それぞれ、なにをあてにして生きるか』、そして〈風に舞いあがる〉にも『人それぞれの役割がある』という言葉が出てきました。確かにUNCHRの専門職員の役割は大きく重いものだと思います。でも一方で、この世界には、6つの短編それぞれにでてきたように多くの職業があって、裏方としてそれぞれに世の中を支えてくださっている人がいる、彼らの存在だって欠かせないものであり、またそれぞれの分野でそれぞれの価値観を大切にして懸命に努力し、生きている人たちがいる。そのことも決して忘れてはいけない。そう振り返った瞬間、〈風に舞いあがる〉以外の短編についてもそれぞれ感じるところがあったなと、一度気持ちが離れてしまった5つの短編の内容にも思いを馳せました。

    森さんの短編集は初めてでした。当初、全く関係を持たない6つの短編をただ一冊にまとめただけだと思っていました。でも、6つの短編を読み終えてみると、なんだか全体として一つの長編を読んだような、そんな印象も受けました。

    「カラフル」とは全く違う印象のこの作品、これも森さんなんだなと、森さんの違う魅力が垣間見えた、そんな作品でした。

  • 文学書評
    読書レベル 中級
    ボリューム 342頁
    ストーリー ★★★★★★!
    読みやすさ ★★★
    ハマリ度  ★★★★★
    世界観   ★★★★★
    知識・教養 ★★★★★★!
    読後の余韻 ★★★★★
    第135回直木賞受賞
    一言感想:
    読書初心者だけど直木賞受賞に挑戦したい方、短編集が好きな方、じっくり読み込んで激変する世界観を味わいたい方に超オススメです!

    本書はいろんな方がオススメしていたので読みたいなーと思いつつ、後回しにしていましたが、読んで良かった!これはスゴイ!唸りました(笑。

    本書で本当に不思議な読書体験ができました。6つの短編集で構成されていますが、各短編集で抱かされる感情が「全く理解できん!→ん?まあそういう考えもあるかも、、、→その気持ちめちゃわかる!」というように悉くガラリと変わります。

    私のおすすめの短編はダントツで「ジェネレーションX」です!読み始めはどう足掻いても100%理解できない「石津」というキャラが登場しますが、読み終わる頃には「石津」を応援してました(笑。読書でここまで感情を弄ばれたのは初ですよ、はい。本当に面白い体験ができると思うのでオススメです!

  • H30.3.14 読了。

    ・「大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。」。
    ①器を探して・・・「女子の人生迷い道小説」
    ②犬の散歩・・・「家族小説」
    ③守護神・・・「青春+自分探し小説」
    ④鐘の音・・・「お仕事小説」
    ⑤ジェネレーションX・・・「大人の友情小説」
    ⑥風の舞いあがるビニールシート・・・「愛情小説」
    で構成されている(解説より抜粋)。
     どれの作品も引き込まれるように読めて、読後にじわじわと温かな気持ちや感動に満たされていくような感覚にとらわれた。
    解説の藤田香織さんのコメントも作品が要約されていて、「私が言いたいことがギュッと詰まっている。」と思えてとても良かった。森絵都さんの他の作品も読んでみたい。

  • 紛争地で活躍するエドは立派だと思うが、パートナーとしては耐えられない。里佳がいうように、そばにいてほしい、子供がほしいと訴えるのは当然のことで。せめて子供がいれば、エドの心が柔軟になって家族というものを欲していたかもしれない。
    が、紛争地で難民をサポートすることが自分の道と信念があるから、誰も咎めることはできない。こういう考えの人との結婚は難しすぎる。
    後に、エドは少女をかばって・・。
    里佳がエドとのことをひとつひとつつまみあげた箇条書きは、辛くて読めなかった。
    エドが言う、「日本にいる限り、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない。生まれ育った家を焼かれて帰る場所を失うことも、目の前で家族を殺されることもない。好きなものを腹いっぱい食べて、温かいベッドで眠ることができる。それをフィールド(紛争地)では幸せと呼ぶんだ」
    これを心のどこかに残しておこう。読んでよかった。

  • 第135回直木賞受賞。短編集。森絵都といえばヤングアダルト作品のイメージだが、これは大人が主人公の一般向け短編小説だった。
    表題の小説「風に舞いあがるビニールシート」は、前にNHKのドラマで見たことあるストーリーだなと思って調べたら、2009年にドラマ化されていた。クリス・ペプラーがドラマに出ていて、役者もやるんだと思った記憶があった(ウィキ情報ではクリス・ペプラーの俳優デビュー作とのこと。)。
    個人的には表題の作品だけは、直木賞っぽいというか、ストーリーがきちっと出来ている完成度の高い大衆小説な感じ。
    ただ、残りの小説がよくないというわけではなく、どちらかというと、個人的には表題以外の作品のほうが、ヤングアダルト作品中心だった森絵都の作品に近いという感じ。個人的は「守護神」という作品が好きです。
    森絵都が、リズムからはじまり、カラフル、そして、ヤングアダルト作品だけでなく、一般向けの作品を作るようになり、本作品の「風に舞いあがるビニールシート」、そして、塾を題材にした長編小説「みかづき」へ続く、変化の流れを知ることができたというか、この短編集を読んで実感しました。

    今、ブクログの感想数と登録者見たら、1100以上の感想と12000以上の登録があってびっくりした。直木賞受賞作品だからなの!?直木賞ってやはりすごいな。

  • 『大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語』と帯に書かれているように、置かれた状況や立場の全く違う主人公たちの6編の短編集。
    表題作でもある『風に舞い上がるビニールシート』が特に良かった。
    UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の東京事務所に勤務する里佳と、フィールドスタッフとして世界中の紛争地帯の最前線で活動するエド。夫婦になったからこその葛藤やすれ違いがリアルに描かれている。
    ビニールシートのように軽くて簡単に舞い上がってしまう紛争地帯での命を守るエド。『仮に飛ばされたって日本にいるかぎり、君は安全などこかに着地できるよ。』と里佳に言った言葉が、読んでいて身にしみた。
    最後のシーン、ビニールシートを敷いて花見を楽しんでいる場面で、里佳がアフガン行きの意思を宣言して終わるところが良かった。

  • 直木賞受賞作。
    予想を覆された!良い意味で。

    著者はKindleでショートストーリー2作と「カラフル」を既読。いずれも10代から読める軽やかで爽やかな文体だった。

    本書6話はガラッと変わり、それぞれスパイスが効いた大人の短篇集。そして各々特色が異なる話だった。

    仕事と恋愛で悩む女性、保護犬の活動費のために水商売をしている主婦、大学の2部で学ぶフリーター、元仏像修復師の拘り、新人類会社員と客先に向かう中堅社員の心境、元夫の死から立ち直れない難民支援の国際公務員女性。

    主人公たちの探し物を、一緒に見つけたような気持ちで読了♡

  • 「懸命に生きる人たち」を描いた森絵都さんの短編、全6編。2006年の直木賞受賞作品。

    6編とも全く異なった職業、立場で働く大人たちの話で、個人的には、「犬の散歩」、「ジェネレーションX」、そして表題作の「風に舞いあがるビニールシート」が特に好きでした。

  • どの短編もすごく良かった。

    周りの環境に揺さぶられながらもそれぞれの場所で自分の価値観を冷静に大事に静かに主張しているかのような現実味のある主人公たち。

    とくに3つ…また読みたい。
    鐘の音 潔と松浦との衝突?とある種の後悔と開き直り、全てが仏様に包みこまれているかのような静けさの中にあるようだった。
    ジェネレーションX 石津と健一の世代を越えた交流。ひとまず相手を受け入れることで広がった温かい時間。
    風に舞い上がるビニールシート 夫婦の価値観の違いはまぁある事だけど難民問題とは…大きいテーマだけに本人達の努力ではどうにもならなくて。最後の里佳の決意にぐっときた。人の命や幸せをビニールシートに例えるなんて…すごい分かりやすかった。

  • 昔、読んだ時はピンと来なかったけど、30代も後半の今、再読すると感慨深いものがありました。500円で誰でも手にいれられる確かな幸せを手に入れに行きたくなりますね( *´艸`)

  • 大切な何かの為に生きる人々を描く6つの短編集。

    きれいな部分だけではなく、したたかさや、人に見せないような弱い部分も書かれていて、生々しい。だからこそ、人間らしさ、いきいとした生命力、力強さを感じました。

    “器を探して”、”犬の散歩”、”ジェネレーションX”は、気持ちを想像しやすくリアリティがありました。仕事への思いやジェネレーションギャップに共感。”守護神”は、リズミカルなやりとりが読んでいて楽しい章。”鐘の音”、”風に舞いあがるビニールシート”は、他の章より熱量が高い感じがしました。

    ”風に舞いあがるビニールシート”は、徐々に明らかになっていく過去と、ラスト4ページがとてもよかったです。想像つかなかったタイトルの意味にびっくり。心にズンときました。
    主人公が難民支援に情熱を傾けるエドだったら、遠い世界の出来事で終わってしまったかも。彼を愛する里佳でよかった。ラストに勇気づけられました。

  • 表現は変だけど、「孫の手」みたいな本だと思った、自分じゃ届かないところに手が届く心地よさって意味で。でも読書まで痒さに気付いてなかったんだから、違うか。適切な表現考え中。

    あまり馴染みのない世界に身を置く人たちの細かな心の動きに意外とスッと共感することができる。

    6つの短編それぞれに濃厚な色があり、中でも表題作が秀逸。

    2020.8.1

  • 同じ人が書いた作品とは思えないほど一つ一つの物語が全く違う独立した別の小説のような印象だった。共通しているのは自分の大切なもののために懸命に生きている人達。
    大切なものはそれぞれ違うし優先順位をつけるのも難しい。鐘の音の潔のように手放して初めて気付くパターンもある。
    表題作の風に舞い上がるビニールシート、ジェネレーションX、鐘の音が特に好き。

    エドの言葉が印象的だった。
    “仮に飛ばされたって日本にいるかぎり、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない。家を焼かれて帰る場所を失うことも、目の前で家族を殺されることもない。好きなものを腹いっぱい食べて、温かいベッドで眠ることができる。それを、フィールドでは幸せと呼ぶんだ。”

    与えられた環境に感謝しながら日々過ごさないといけないなと改めて感じた。

  • 恋愛 仕事 人生観

    短編集
    いずれも譲れない価値観が描かれている。
    共感できたりできなかったりして、様々な人の感性を感じられた。
    私自身も何か譲れないものってあるのかなと考えさせられました。

  • タイトルが気になっていて、読みたかった本でした。

    「風に舞いあがるビニールシート」
    家族仲間がいて腰を落ち着けて“ここが自分の居場所“と言えるところがある。それ自体がすでに平和であり、幸せなのだ。ビニールシートが風に捲れ、煽られ、もみくちゃになって飛ばされるように、いとも簡単に自分の居場所や存在そのものが奪われてしまう世界が、今この時にも存在する。
    そのような人たちを護り助けたいと願う国連職員のエドと里佳の関係を描いた章。せつないけれど最後は熱いものがこみあげてくる力強い物語でした。

    お仕事小説とひと言で言い表わせないくらい、どの章も深く内容が豊かで、「守護神」「ジェネレーションX」も好きです。
    新緑の風が心地よい4月に読めて良かった一冊です。

  • 森絵都さんの作品は
    『みかづき』に続き本作で2作目。
    前回超長編だったが今回は短編集で6つの物語。
    これはきっとサクッと読めるだろう。
    なんて軽い気持ちで読み始めたものの、どうやらその予想が大きく裏切られたと2章目あたりから気付いた…

    自分の価値観を大切にし、そのために懸命に生きる人々を描いた6編。

    こんなにも6編全てが異色で、其々に個性を放ち主人公の価値観に魅了され翻弄され…気付けばとっぷりと森絵都さんの世界にはまっていた。
    とりわけ読後の短編らしからぬ満足感に敬服した。

    どの物語も所謂分かりやすい良い話ではない。
    人間の醜さや狡さや滑稽さを真っ向から描きながらも、その一方で人の強さや優しさを伝えてくれる。その分、読み手側も心して受け取らなくては怯んでしまうほど圧倒的な力を秘めていた。

    特に「ジェネレーションX」「風に舞いあがるビニールシート」が印象的だった。

    人それぞれ価値観は違う。
    何を大切にどう生きるのか…
    誰しも様々な経験や周りの方とのご縁を通じて、自分でも気付かないうちに少しずつ変化を繰り返しながら、自分の軸となる部分を形成しているのだろう。

    一度きりの人生…
    自分と大切な人の価値観を、まるごと愛せるような生き方ができたら幸せだと思った。

  • どの作品も良い。短編ではなく続きが読みたい。個人的には犬の散歩の続きが1番読みたい。
    お金より大切な何かのために生きる人達の話。
    お金が無いと困るけれど、大切にしたいものが無ければ人生は寂しい。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森絵都の作品

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