風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 6710
レビュー : 805
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167741037

作品紹介・あらすじ

才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 2006年直木賞受賞作の短編集。
    森絵都さんの小説を読むのは「つきのふね」以来で、それは確か括りとしては児童文学だったから、一般文芸の作品を読むのは初めて。

    第一印象、あらゆる意味において、巧いと思った。
    読ませる文章力もだし、それぞれの短編のオチもだし、そもそも収録されている六編の印象が違うから、同じ作者が書いているように思えなかった。
    表題作と「器を探して」「鐘の音」辺りは“お仕事小説”的な側面もあって、とくに国連の職員が主人公の表題作と、仏像修復師について描かれている「鐘の音」は、自分が普段触れることがない世界を垣間見ることができて興味深かった。

    難民を救出する活動をしているアメリカ人の夫を持つ女性が主人公である表題作を読んで、今の世界の状況と照らし合わせて色々と考えてしまった。
    風に舞いあがるビニールシートのように、はたはたと揺らめきすぐにでも飛んで行ってしまいそうな命たちの重さ。取り憑かれたように立ち向かった夫と、保身を考えてしまい立ち向かえなかった妻とのすれ違い。そしてその後。
    実際、他人の命を救うために我が身を投げ出すことが出来る人間はこの世にいるのだろうけど、果たして自分は、と考えるととても気が遠くなった。そういう思いは一体どこから生まれてくるのだろう、って。

    各物語の主人公はみなそれぞれ自己というものを強く持っていて、周りと調和するためにひた隠しにしようとしたりその逆に人とぶつかったりしながら、自分の生き方というものを探っているように見えた。
    一本取られた!という思いですかっと読み終えられる物語ばかりで気持ちよかった。

  • 短い物語の中に、きちんと凝縮された人それぞれの考えや生き方がスパイスのように散りばめられていて、面白い作品でした。
    忘れかけていたこと、忘れようと思っていたこと。
    登場人物それぞれがとっても物語の中で生きていた作品だと思いました。
    これから生きていく中、自分自身どのように成長し変わることができるのだろうか?
    そう思える短編集でした。

  • 6つの作品からなる短編集。
    器を探して
    犬の散歩
    守護神
    鐘の音
    ジェネレーションX
    まで読んで、良いけれども★は3つかなと思っていたが最後の
    「風の舞いあがるビニールシート」を読み終えた時、これだけは★×5と思った。
    文章力のある作家さんだ。

  • とても好きな本でした。

    特に最後の風に舞い上がるビニールシートはとても好きです。エドと里佳は大変に思い合ってる。
    夫婦、という枠から外れれば、とても素敵なパートナーで、読んでいくうちに胸がきゅーっとなる。
    でも最後とても素敵な終わり方で、きゅーっとした胸が、とてもいっぱいになった。

    大切なもの、譲れないもの、が誰にでもある。
    それとどう向き合っているかの、6通りの物語。
    私の譲れないものはなんだろう。

  • 2018.5.3
    6つの話が収録された文庫本。森絵都さん、すごい。6つ読み終えて、全部おんなじ人が書いた作品なんや・・ってなった。藤田香織さんのあとがきに書かれていたことと、同じようなことを感じた。自分にとって大切な物はなにかーそれは一つじゃなくて、時として順番をつけるのもすごく難しい。正解はなくて、模範解答もないこと。自分で自分を見つけていくしかないし、気付きたくないことにも気付かないといけないときがくるのかもしれないなあなんて、読了後の余韻の中で感じました。短編集はあまり好きではないけれど、これは短編というよりは、一つひとつしっかり物語を読み終えたような感覚。

  • H30.3.14 読了。

    ・「大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。」。
    ①器を探して・・・「女子の人生迷い道小説」
    ②犬の散歩・・・「家族小説」
    ③守護神・・・「青春+自分探し小説」
    ④鐘の音・・・「お仕事小説」
    ⑤ジェネレーションX・・・「大人の友情小説」
    ⑥風の舞いあがるビニールシート・・・「愛情小説」
    で構成されている(解説より抜粋)。
     どれの作品も引き込まれるように読めて、読後にじわじわと温かな気持ちや感動に満たされていくような感覚にとらわれた。
    解説の藤田香織さんのコメントも作品が要約されていて、「私が言いたいことがギュッと詰まっている。」と思えてとても良かった。森絵都さんの他の作品も読んでみたい。

  • 先日読んだ著者の塾の話が面白かったので、 もう一冊読んでみました。
    直木賞受賞作品です。

    長編が面白かったのに本作品は短編集だったので、どうかなあ?と少々不安でしたが、予想以上にとても面白かったです!
    短編も長編も両方ぴったりの分量で描けるのってすごいと思う。
    深く掘り下げられにくく、あっさり終わってしまう短編は好みではないのだけど、本作は短編なのに読み応え十分。感動しました。

    例えば表題作のビニールシートは、難民の、どこかに飛んで行ってしまう命を表しています。
    愛し合って結婚しながら、難民のためにすべてを捧げる夫と、夫を理解しようとすることに疲れてしまった妻の物語。
    ラストシーンで彼の価値観が彼女の価値観にかわる瞬間がとてもいいです。涙が溢れました。。

    他にもボランティアで犬の保護をする主婦、大学で学ぶフリーターの男性の話など、扱うテーマは多岐にわたりますが、それぞれについてよく調べてあることにも驚きます。
    それだけでなく、例えば仏像修復師の話「鐘の音」なんて、鬼気迫る心理描写に圧倒されました。すごいよ。
    とにかく、人生に向き合い、信念を持って生きている人を描くところは各短編に共通していて、さわやかな気持ちで前向きになれる読後感でした。

  • それぞれに頑とした大切なものがあって、そのために懸命に生きる様子に勇気をもらえる
    不器用でも、大切にしたいものをしっかり持っていれば真っ直ぐに生きていけるのかも

  • 自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。
    一見、ちょっとかわった人たちの生き様が描かれているのだけれど、どの登場人物にも「羨ましい」という感情が芽生えた。どの人も、「自分が最も大切にするもの」がわかっているからだ。
    私は今、「あなたの人生でいちばん大切なものは何か」と問われても、答えられない。答えられない自分が嫌で、もどかしい。私も「大切なもの」を見つけたい、と思った。

    森さんの著書は「カラフル」しか読んだことがなかったけど、他の作品ももっと読みたい!

  • 大切なもの。

    大切なもの。

    考えてみると、たくさん浮かぶ。

    命、健康、家族、親友、恋人、友人、お金・・・

    誰もがみんな、大事なものを抱きしめてる。

    そして、その大切なものに気づく過程も、それに向き合う姿勢もみんな違う。

    そんな当たり前のことに、心の芯から気づかせてくれる小説。

    自分のすべてをかけて大切にしたいと思えるほど大切なものがあるという事実、
    そして何かを犠牲にしてでもそれを大事にしていこうとするまっすぐな姿勢は、
    とても魅力的だと思う。

    自分の大切に想ったものを貫けるひとは、かっこいい。

    ここに出てくるのは、不器用で、一生懸命で、でもそんなかっこよさを持っているひとたち。



    私もそう在りたいよ。

    大切なものを、まっすぐ大切にできる自分でいたい。


    そう思うと、身近な人を大切にしようと思う。

    もっともっと、大事にしたい。



    「風に舞いあがるビニールシートがあとを絶たないんだ」

    「僕はいろんな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々と吹きとばされていくものたちを見てきたんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくしゃになってとばされていくところを、さ」

    「仮に飛ばされたって日本にいるかぎり、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない。家を焼かれて帰る場所を失うことも、目の前で家族を殺されることもない。好きなものを腹いっぱい食べて、暖かいベッドで眠ることができる。それを、フィールドでは幸せと呼ぶんだ」

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著者プロフィール

森 絵都(もり えと)
1968年、東京都生まれの小説家、翻訳家。早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。
1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞し、同作は2008年に映画化もされた。2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で、第135回直木賞を受賞。
その後も活躍を続けており、2017年『みかづき』で第12回中央公論文芸賞を受賞、2017年本屋大賞2位。同作は2019年にNHKでドラマ化された。それ以外にも、多数の文学賞を受賞している。

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