赤い長靴 (文春文庫 え 10-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167748012

作品紹介・あらすじ

「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、くすくすと。笑うことと泣くことは似ているから。結婚して十年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景-幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、かぎりなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。

感想・レビュー・書評

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  • 結婚して10年、子どものいない夫婦、日和子と逍三。

    「私と別れても逍ちゃんはきっと大丈夫ね」
    人の話を聞いていない夫。どこにも属さない夫。
    可笑しそうにくすくす笑う日和子。

    夫婦の中でありがちなことがたくさん含まれている。
    日和子の言葉がぐさりと突き刺さる。驚きと恐怖に満ちてる。けれど何かが起こるわけでもなく…

    あぁ、この二人夫婦なんだなって、確実に思える。

  • 主人公は、無口な夫と暮らす女性。子供はいない。
    夫へ話しかけてもほとんどが通じない。
    注意しても聞いてもらえない。
    結婚当初は自分の「ほんとうの」感情を夫にぶつけていたが、
    今では諦め、その世界を受け入れている。

    「ほんとうのこと」は言ってはいけないのだ。
    と、いつも自分の気持ちをコントロールする。

    主人公は絶対に納得してはいない。
    でも、外の世界より内の世界が落ち着く。
    その「内の世界」を壊したくないから、夫を受け入れているのではないだろうか。

    何かを守りたいから我慢する。
    読んでいて、同感できるところもあるので、かえって胸が苦しくなった。

    気になったフレーズ↓

    気温差に鈍感な人間は、ほかのことにも鈍感なのだ

    ほんとうのことは言ってはいけないのだ、という真実

  • 今まで読んだ江國作品の中で一番好き。結婚10年を過ぎて子供がいない夫婦の日常を描いている短編集。出来事ともいえない出来事、ほんの少しの揺らぎ。これってどういう言葉になるんだろう、って日頃感じているような些細な気持ちの動きが最小限の言葉でつづられている。
    最初は幸せだなと思いながら読んでた。
    でも悲しくなった。そのあと悲しいだけじゃない微妙な暖かい気持ちになった。

    作家の耐用年数とはよく聞く言葉だけど江國さんって最近になって急に技巧派になった気がする。

  • いないときのほうが、すき。
    結婚の前後が思い出せない。
    くすくす笑ってしまう。
    わかるかもしれない、私におどろく。

  • 子どもがいない結婚10年目の夫婦の日常。
    価値観が違うというか、日和子が夫に歩み寄ろうとしても夫はそんなことに全く気付かずにいて、そんな夫に読んでいてずっとイライラした。日和子はもうそれを通り越したからずっとクスクス笑っていられるんだろうか。

  • たぶん、どこの夫婦もこんな感じなんだと想像する。「夫婦あるある」
    うちの母も、日和子みたいな思いをして、父の文句を言ってることがある。何を言っても、生返事なときとか。
    でも、二人は仲が良いし、お互いいなくてはならない存在なのだ。
    だけど!独身の私は…こんな夫婦になりたくないな。結婚に、夢見すぎかな?
    逍三みたいな旦那さんと結婚したら、毎日いらっとして、ストレスたまりそう!
    非常に不愉快!
    ***************************
    というか…読み進めていくうちに、逍三のあまりに会話ができない様子はもう、何か名前のつく生まれつきの病気なんじゃないかと思えてくる。傘の差し方が下手でびしょぬれ、ってエピソードで強く感じた。
    「夫婦あるある」で済まされるのか?世の中の旦那さん、ここまではないでしょ?って…信じたい。
    とにかく、逍三の著しくコミュニケーションが取れない様子は、長年連れ添った夫婦の“慣れ”とは違う気がする。
    異常。
    逍三目線のパートもあるけれど、彼がなんでそうなのか、納得できるわけではない。
    妻だけでなく、誰の話も聞いていないらしい。

    読後感は悪いけど、私にここまで感想を書かせてくれる小説は、秀逸。

  • つまらんダンナとの生活の何が楽しくて、一緒にいるのか、日和子の気持ちがよく知れんなあ。こういう夫婦というものも、世にはあるのだろうか?

  • 気持ちが悪かった

  • 読みながら、世の中の人は
    この夫をどう思うんだろう?
    と、気付いたら、レビュー検索していた。

    逍三にイライラする、こんな結婚はいやだ
    というレビューをいくつか見かける。

    けど、私は、
    こういう夫婦の形もダメじゃないと
    思ってしまった。

    むしろ、今まで言葉にできなかった何か、
    誰かと共感できない、しようとも思わない感情を、
    あっという間に言葉にされてしまった感じ。

    同じような気持ちの人もいて安堵する。
    だけど、やっぱり、この気持ちは
    心の中にしまっておきたい。
    (と言いつつ、レビュー書いちゃう)

  • 江國香織さん特有の美しい表現は好きなのだけれど、お話はそんなに好きに慣れなかった。
    というか読んでいてただただ逍造にいらいらした。こんなに会話噛み合わなかったら、日和子みたいに笑ってられないと思う。何を聞いてもうん、とかああ、とか。質問しても返ってこない。日和子も日和子で、そのことに痺れを切らすのかと思えば、 そういうわけでもなく肝心なことは言わないんだなぁ、と。
    ただ、読んでいて母方の両親が思い起こされた。おじいちゃんは無口であまり喋る人ではなく、かなり逍造に近かったし、亡くなった後おばあちゃんも何考えてるか分からなかった、と言っていた。けれど、2人は幸せそうだったし、幸せだったのだと思う。しあわせの形は、誰かに認められるものじゃなく、本人がそう感じればそうなのだろうな、と思った。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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