ハルカ・エイティ (文春文庫 ひ 14-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167753092

作品紹介・あらすじ

大正に生まれ、見合い結婚で大阪に嫁ぎ、戦火をくぐり抜け、戦後の自由な時代の波に乗り…。人生の荒波にもまれつつも、平凡な少女は決して後ろ向きになることなく、その魅力を開花させ、みんながハルカの天真爛漫なキャラクターに引き込まれていく。ヒメノ式「女の一生」、直木賞候補の傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • こんな80歳になれるのなら歳を取るのも悪くない。
    女三界に家なし、だの、男尊女卑、だのという薄く暗い女の人生はここにはない。そんな時代に生きていたはずのハルカの、どこまでも前向きで明るい人生は、20××年の今を生きる女にとってもうらやましくて仕方がない。

  • 初姫野カオルコ。今まで、ドロドロの恋愛モノを書くヒト、と勝手に思い込んで読もうとしなかったのだけれど、ものすごーーーくおもしろかったー。昭和の女一代記ときくと、苦労に苦労を重ねてみたいな、じめっとした話も出てくるんだろうと思っていたらそうではなく、明るくてさわやかでじめじめしたところがなくてすごくよかった。登場人物全員いい人、みたいな。お姑さんが本当に優しくて、ハルカがわたしもこういう人になろうって思うところなんて、なんだか涙が出たくらい。ときどき著者の視線というか、二〇〇×年の視線で語られるところがあるんだけれど、それもわたしは違和感なく、おもしろかった。当時の社会状況を解説されているみたいで。ハルカと夫が、お互いをいちばん愛していると思いながらどちらも浮気をするっていうのは、どうなんだろう、賛成とも反対ともわからないんだけれど、文章の雰囲気なのかな、ハッピーな感じがした。結局、人生、人と違っていようがなんだろうが自分がここちよく楽しく生きられればいいんだな、というようなことを思った。自分が機嫌よくいられれば人にも優しくできる。人と自分を比べず、くよくよせず、せかせかもせず、おおらかに生きていくハルカはすばらしいー。娘の恵の話で続編なんて読みたいな。

  • 戦争って悲惨で暴力的で血みどろで悲哀なことばかりだけど、戦時を生きる人の生活と日常をちゃんと書いた本はあまりないと思う。

    小さな喜び、友達を思う気持ち、困惑などだってあるはず。
    一日100パーセント戦争のことじゃない。

    空襲のあと、義母とちらし寿司を手掴みで食べて、美味しいなと思うシーンが好き。

    ハルカさんは、楽しみやユーモアをより強く感じて素直に生きるのが人生のメインで、不倫や夫婦の危機は添え物みたい。
    それなりに不幸もある普通の人生なのに、普通じゃなく芯からエンジョイしている。

    昭和の女性の人生をスキップで駆け抜けるハルカさんは素敵です。

  • なにかがひとつ欠けているような気持ち。なにが欠けているのかはわからない。なにかが欠けていて、それはどうすれば埋まるのか検討がつかない。

    よって、きれいだ愛しているは、女性を性の行為に痺れさせる、実はしたたかに男々しいテクニックなのである。

    どうか、ドアが開きますように。…どうか、開かなくてもがっかりしませんように。

    女体をとろけさせる最たる行動がある。G8諸国全域でとろけさせる行動がある。それは「よりそって星をながめる」である。

    「…女子の貞操は男の貞操より高いんや。もう戦後やないて、そんなことは関係あれへん。いつでもそうや。商売女でも素人でも関係あれへん。大事なもんをあずけてもろた。それがかかわったっちゅうことや。…」

    愛妻家でなければ浮気できない。

    しおどき。恋する男と女のあいだには、しばしばこれが訪れる。倫ならぬ恋なら、いつかかならず。

    しかし、相手の身に指一本ふれなくてすむような感情は恋だろうか。

    親戚のだれそれが入院した。だれそれが突然倒れた。だれそれが死んだ。こうした知らせが親戚から、直接入るようになれば、その人は、もう若くない。

  • 作り話ではなく、半ノンフィクション(?)で、こんなに色々なことをこと細かに臨場感を出して物語れるというのは、本当にすごいなと感じました。
    小説家として、話を聞き込んだりしたのではあろうと思うけれども、親族の中でそんなに過去の話などをする関係性がすごいなと思いました。
    作品の感想になってない笑

  • 長編としては、2003年度下半期直木賞候補となった「ツ、イ、ラ、ク」角川書店2003/10/31)以来二年ぶりの作品。丹念な取材を元に描かれた作品としては「整形美女」(新潮文庫2002/10/01)以来、約六年ぶりの作品。取材の対象は、本書では特定の女性。著者初のモデル小説です。ただし、モデルは有名人ではなくて、一般人。大正生まれの女性。
    歴史に名を残すでもなく、またマスコミに登場するでもない彼女の半生です。が、しかし、彼女の人生は僕にはうらやましい限りの個性的な人生として映りました。
    もちろん、現代とは違って選択肢が限られた彼女の人生には、たとえば自分がしたいことを選んで進路を決めるような自由さはありません。逆に時代に流され、状況に身をゆだねざるを得なかった事の多い、彼女の人生です。それでも、僕が彼女の人生をうらやましく思えたのは(僕の読書に偏るかもしれないけれど)彼女が自分の個性を肯定し、限られた選択肢の中で自分の身の丈にあった選択をしてゆくところにあったように感じます。

    自由と言われる現代にあって、僕は、本当は何をしたいのだろうかと考える事も多く、また、思うようにいかなくて悩む事もあります。でも、たとえば、ハルカのように生きることもできるのだと思えば、僕も、僕なりに、自分らしく生きる事ができる、そのヒントを与えられたように感じた一冊でした。

  • 大正九年生まれ、小野ハルカさんのお話
    80才のハルカさんはヒルトンホテルの35階のティーラウンジで一人でお茶を飲むことを好む
    こんな素敵なお婆ちゃんの少女時代からの物語なのですが、ビックリするような事件も事故もなく、その時代に生きた女性なら、そう珍しくもない内容です

    ただ、いくら職業婦人とはいえ、この時代にからだの関係を持つ異性の友達が三人もいるというのは…フシギかな

  • #bookoff

  • ホテルに泊まるのが新婚旅行の代わりだったり
    その時代の状況下がよくわかる。

    恋愛に対する男女の考え方の違いも面白い。
    けれども
    男は時間を蒐集する
    というのは言葉としては美しいけど、
    やや正解ではないような気もする。
    男性は女性よりも想い出を大切にするのは事実だけれど
    それは基本的にもう取り戻せない失われた時間に限って、
    女性こそ記念日など進行形で続いていく時間を大切にするのでは。

    あとは不倫を重ねて夫婦の愛情に決着するのはどうなのだろう。
    娘の描写があまりに少ないが、このような夫婦の元に産まれたことで
    何か心煩うものはなかったのだろうか。

    大切なものが書き漏れているのではないか、
    そんな気持ちにさせる本でした。

  • 初の姫野カオルコさん。

    とても前向きに生きるハルカの姿に励まされる。
    生きてるように生きてるなぁ。
    そしてなぜか関西弁に色気を感じる。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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