マイ・ビジネス・ノート (文春文庫 経 7-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167753528

感想・レビュー・書評

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  • 「マイ・ビジネス・ノート」とタイトルだけでは中身がわかりづらいが、グローバル化、社会システムの変遷、と変革の時代にある今を生き抜く思想本、といった内容である。経験やうまい喩を用いて論じられる本書は、読み物としてもかなり興味深い内容だった。

    これまでの日本はいわゆる横並びで、組織論や全体論を持って成長を遂げてきた社会である。しかし、今後の社会では、顧客側の視点を理解したり、複雑化する国際化を理解するための大局観が必要であったりと、従来のやり方では不足している。適応してゆくためには、結論すると、これらの変革を生き抜くためには、個々人の成長が必要不可欠であると論じられていた。

    これが2005年代に書かれた書物だというのは驚愕に値する。今でこそ個人個人と叫ばれるようになったが、作者本人がここに至った事実と、当時の常識を照らし合わせると、いかに先を見据えた思想であるのかがわかるだろう。少し古い本なので多少喩に古臭さはあるが、根幹は十分すぎるほど通ずる内容である。私としてはあまり好まないジャンルであったが、今後はもっとあさって見ようかなと食指を動かされた一冊だった。

    興味深い内容をいくつか抜粋。

    〇顧客側の真の需要の理解
    顕在化している需要は外目から見ても分かりやすいが、顧客が抱いている潜在的な需要、顧客自身も気づいていない需要といくつか種類分けできることを、氷山の例で示している。この顧客自身も知りえない欲求を解することが、より発展してゆくうえでのファクターとなりうる。

    〇MVP論
    物事を達成するには、M:ミッション、V:ヴィジョン、P:パッションというみっつの考えが必要であるとしている。とくに重要なのはMとPで、ヴィジョンは後から付けられるとしている。

  • もともとは『ビジネス脳はどうつくるか』という書名が、文庫化に伴い『マイ・ビジネス・ノート』になったわけだけど、この本の骨頂は、ビジネスにどう向き合うかというこより、どういう心もちで生きていくべきかということを説いているのだと思う。
    今北さん流では、M(ミッション)、V(ビジョン)、P(パッション)としているが、それはビジネスに限らず、人生すべてに共通する姿勢だろう。そもそも、ビジネスとプライベートや恋愛とか家族との生活とかで姿勢が変わること自体、その人のMVPほんものではないというわけ。
    ところで、書中では「左岸からの発想」とか、潜在需要のさらに奥にある「絶対需要(顧客が気がついていないが必要不可欠となり得るニーズ)」にアプローチすることが大切だと述べているのだけど、絶対需要の例に挙げているipodは好例なのだろうか。2006年の本だからipodが出ているけれど、その後のiphoneにせよ、必要不可欠だとは思わないし、それが顧客の気づかないニーズに訴求したというのも違う感じがする。それこそジョブスが自分のほしいものを創ったら、ほかの人もなびいたものだと思うので、ジョブスの場合、顧客を考えていたのではない気がするから。

  • Yesterday is history. Tomorrow is mystery. Today is a gift. That's why it's called "the Present." -- Alice Morse Earle

    ・いつの時代にも「時代の特権」がある。今の日本における「時代の特権」とは、個人が活躍し得る時代である。
    ・「個」を確立するためのMVP: 夢や目標がミッション(M)。そこに至るロードマップがビジョン(V)。それを実行するプロセスで燃やすパッション(P)。
    ・サプライヤ・パラダイムからカスタマ・パラダイムへ。「絶対需要(顧客が気がついていないが必要不可欠となり得るニーズ)」を開拓するには、プロダクト・アウト(優れた技術に基づく商品とサービスの提供)からマーケット・イン(市場が求める商品とサービスの提供)への意識改革が必要。
    ・グローバル化とは、「見えざる財」の国際化
    ・自分の人生の裁量権は自分で持ちたい

  • H23.2月
    基本的だけど大切なことがしっかりと書かれていると思う。
    「どんなに小さなインパクトでもいいから、何らかのかたちで世の中のためになるような仕事を手がけ、実績を地道に積み上げていくプロセスこそが、ビジネスを快楽とする一番確実な方法である」

  • ◎日本はこれからも、ものづくりで生きていく国だ、という意見があるが、「見える財」だけでなく、「見えざる財」をも以下に国際化するか、これからの日本にとって最も大きなチャレンジング・ファクターとなるはず。

    ◎どうしたらチャンスの目利きになれるのか。
    まず、これまでのように日本の窓から世界を見るというアウトバンド・アプローチだけでは不充分。
    世界の窓から日本を見るインバウンドのアプローチほ補充していく必要がある。

    ◎「このシナリオなら相手に勝てる」「このシナリオならお互いに共存共栄できるかもしれない」
    このプロセスなくしてビジネスは成功しない。

    ◎目先の業務から離れ、将来への時間軸をしっかり設定したうえで、この先会社として何を改造すべきか、社会にどのような利益や便益をもたらしたいのかを、夢を持って提示できるグランド・デザインを設計しなければならない。

    ◎絶対需要を探り当てるプロセス
    通常、P(顧客の嗜好・性癖)、Q(データでとらえた需要)、R(絶対需要)
    は一つになっていて、目に見えるのはPの部分だけ。
    そこからPを分離し、さらにQを分離すると、顧客本人でさえ気づいていなかったRというニーズが、新たに見えてくる。

    ◎構想力、想像力、完成を使って”ないもの”を形にし、気づかせれば、
    「こんなにいいものがあったのか。これならぜひ買いたい」ということになる。

    ◎エンドユーザーの立場からの開発
    日常、じかに接している顧客だけしか見ていないと、どうしても目先の商談ばかりになってしまいがち。もっと大局的なところでトレンドを押さえていくには、エンドユーザーは誰かをきちんと見極め、それを取り巻く環境の変化に注目すべき。


    ◎面白い話を人から聞いたら、メモしてポケットに入れておく。
    すると思考の材料は山ほどできる。そうした蓄積がたくさんあると、仕事の場で「例としてエピソードを」と求められたとき、次から次へと話が出てくる。

    ◎単に話題が豊富になるというのではなく、面白いことを見つけるのを面白がるような意識になると、精神的な快楽を手に入れられるよう。

    ◎「仕事に過剰期待をしてはいけない。仕事さえすれば自分の人生は充実すると思うのは、とんでもない間違い。まず、個人として充実しないことには、何をやってもダメ」ホッファー

    ◎帰属を超える「個人」が社会を変える
    ただ生活のために馬車馬のように働くのではなく、組織の中でもそれができ得るようになった現代のサラリーマンは、なかなか魅力のあるポジションにいる。

    ◎「個」が充実すれば、サプライヤー視点から脱却することができる。「右岸」から「左岸」にまわり、カスタマー視点で見ることもできる。

    ◎日本の社会や企業がさいせいできるかどうかは、個人一人一人がアイデンティティをいかに身につけるかにかかっている。
    そこから生まれるミッション、つまり、あなた自身が本当にやりたいことを始めることによって、あなた自身も、そして企業も社会も、新しく生まれ変わることができる。

    ◎達成感、知的興奮、情緒的感動をいった主要素が、精神的快楽を手に入れるための必要条件。

    ◎ドレ一つとしてお金で買うことはできない。
    他ならぬ自分がイニシアティブをとるという能動の姿勢で行動することが大前提。そして、自分自身の向き不向きや潜在能力をできるだけ冷静に見極めつつ、どんなに小さなインパクトでもいいから、何らかの形で世の中のためになるような仕事を手がけ、実績を地道に積み上げていくプロセスこそが、ビジネス(仕事)を快楽とする一番確実な方法。
     

  • さすがに今北。

  • メモ
    ミッション・ビジョン・パッション。
    「見えざる財」の国際化。目利きの必要。
    カスタマー主体のビジネスモデル。マーケット・イン。
    氷山理論
     ↓
    顕在需要(今売れている商品・機能やサービス)、
    潜在需要(顧客自らが意識しているニーズ。これは販売やサービスに関するデータや情報収集・分析)
    絶対需要(顧客自身がまだ気づいていない、その必要性をすぐに理解できない、しかし客観的情勢から必要不可欠なものとなり得るニーズ)
    構想力や想像力、感性で「ないもの」を形にする。
    21世紀は「個」の時代。  

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