帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。 (文春文庫 た 71-1)

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  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167753696

感想・レビュー・書評

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  • タイトルが本当に秀逸。


    料理家であり文筆家の
    高山なおみさんが書いたこの本と
    三年前に出会い、

    あまりにも好きで
    あまりにも読み過ぎて
    あまりにも共感し過ぎて、
    ずっとレビューが書けなかった
    切なさの塊のようなエッセイ集です。



    ウォン・カーウァイ監督の「天使の涙」での
    愛する人を亡くした若い女が
    ひとり夜中の食堂で
    焼きそばを食べるワンシーンの
    強烈に胸を打つエピソードと
    高山さんの家族との
    病室でのやりとり、

    家に帰りたくない人たちがあふれる
    夕方の公園で聴く
    フィッシュマンズのナンバー、

    桜の木の下でひとつになる
    たましいの恋人たちの話、

    ひとりで食べる
    手作りのカレーと
    背中からずんっと入ってくる
    「さびしい」という言葉、

    死んだ友人が作った
    雨の中を進む
    マーチのような曲、

    自分はこういう者ですと誰かに言える人になるために
    アメリカに旅立った彼女の話、

    そんな夢のように儚くて
    センチメンタリズム溢れる
    甘やかな文章と
    浮かんでは消えてゆく哀しい色たち。


    そして
    「落ち込んだ日のスープ」や
    「彼女の焼き豚」
    「眠れない夜のカクテル」
    など様々な料理のレシピや写真、
    高山さんのプライベートを日記形式に綴りながら、

    自分と向き合うこと、
    曖昧な自分自身を
    受け入れることしか
    生きる術はないのだということを
    この本は教えてくれる。


    高山さんが
    まだ何者でもなかった頃の苦悩や葛藤が、
    同じように今現在
    何者かになろうとして
    悶々とした心を抱えて生きてる人や
    過去に囚われ立ちすくんでしまっている人の
    胸の中の深い深い
    核の部分に
    共鳴していく。


    そんな、もがき続ける人たちには
    本当に切なくて
    もどかしくて、
    苦しくて
    胸が痛くて、
    でも愛しい一冊となるんだろうな。
    (クラムボンの原田郁子の解説がまた
    本当に素晴らしいのです!)



    自分に正直であること。

    誰が何と言っても、
    自分の好きに
    誇りを持っていいのです。

    自分にしか分からないスペシャルなことを
    一つ一つ味わってゆけば
    それは自分の核となり、
    いつか自分自身を救ってくれる。


    そうですよね、高山さん。

    • vilureefさん
      こんにちは!

      うわ〜、素敵なレビュー(≧∇≦)
      高山さん好きです、あの力の抜け具合が。
      素材を生かしたお料理はもちろん。
      高山さんも色々迷...
      こんにちは!

      うわ〜、素敵なレビュー(≧∇≦)
      高山さん好きです、あの力の抜け具合が。
      素材を生かしたお料理はもちろん。
      高山さんも色々迷って今に至るのですね・・・

      絶対読みます。
      ありがとうございました。
      2013/07/16
    • 円軌道の外さん

      遅くなりましたが
      vilureefさん、
      コメントありがとうございます!


      いやぁ〜この本は
      もう何度読んだか
      わかんな...

      遅くなりましたが
      vilureefさん、
      コメントありがとうございます!


      いやぁ〜この本は
      もう何度読んだか
      わかんないくらい好きで、
      一時期いつも鞄に入れて持ち歩いてたくらい
      ずっと手離せなかったんですよね〜(^_^;)

      いまでこそ
      明るくて凛とした感じの印象が強い高山さんやけど(笑)、

      まだ高山さんが何者でもなかった頃の
      苦悩や葛藤が文章の隅々から
      匂い立つようで、

      こういう感性を大事にしたいし、
      忘れないでいたいなぁ〜って
      いいおっさんになった今も
      これ読むために思うんです。


      はっきり言って
      暗い内容が多いし(笑)
      内省的過ぎるので
      誰にでもオススメできるエッセイではないけど、

      音楽好きや
      切ない時を忘れたくないって人には
      確実に響く内容だと思います(^_^)v


      もしよかったら
      また読んでみてくださいね。


      2013/08/18
  • 初めて読んだのは私がまだ30代後半の頃だった。
    料理家さんのエッセイだけど「食!レシピ!健康!」というものではなくて、もっとパーソナルな部分を書き留めたものという感じ。
    私と同じ小説を読んでいたり、同じようにぼんやりとした不安を持っていたり、カサついたり…とても親近感を覚えたっけ。
    それから幾度となく本棚から取り出し読んでいる。

    登場した料理は終わりの方にレシピが載っている。
    そして日置武晴さんの写真が最高。
    最近Instagram等で見る写真たちはキラキラして眩しくて、時に煩さを感じるくらいだけど、この本の日置さんの写真はまるで違う。
    憂いを帯びていて、料理だけでなくキッチンの匂い、生活感、湿度や時間さえも感じる。
    生活とは、決してキラキラだけではないのだ。
    それでも食べて、寝て、起きて、生きて行く。
    タイトルの「帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。」が登場するプロローグは、とても正直で、印象的だ。

    余談だが、ハナレグミの永積さんのアルバムに「帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。」ってあるよね(笑)

  • 読み始め...09.6.2
    読み終わり...09.6.20 

  •  高山なおみさんは料理家で、今は絵本作家もしている。自身のHPで書かれている日記「日々ごはん」はこの本の後から続いてるのかな。

     この本は高山なおみさんが厨房で働いているところから、料理家になる変化の部分の、日記のような、エッセイのような寓話のような本。

     高山なおみさんのエッセイにはたまにあたることがある。尖ってるわけでもない、毒が強すぎるわけでもない。読んでいるとつい入り込んでしまい、ずぶずぶと沼にハマっていき、身動きが取れなくなる。息が詰まる。目から鼻から耳から毛穴からどろどろと何かが入ってきて、絡め取られて、捉えられてしまう。何かのタイミングが合うのか、今回もなぜか涙が込み上げてきた。泣くような話は書いてない。

     これを書かれているのは30代だったそうだ。まだ何者でもない、無垢さすら感じる高山なおみさんの文章が大好きだ。ここからもっとご飯ばかりの日常になることを知ってる。食べることは生きることだ。それを私は高山なおみさんから強く感じるから、好きなんだ。

  • 友人に薦められた一冊。日々をこんなにドラマチックに感じるセンスがあるのか。私の平凡な毎日ももしかしたらもっとドラマチックなのかも?どんどん読み進められるわけでもなく、気持ちの良い文章でもなく、でも読まずに居られるわけでもなく。エッセイのような短編小説を読んでいるような。煮詰まったスープを飲みたい。

  • 高山なおみさんの本を読むと、どんな内容でも美味しいごはんが食べたい、作ろうっていう気持ちになる。

  • 土門蘭さんが紹介していた本。

    筆者が30代の頃に書かれたものらしい。自分と同年代で書かれた作品に出会うことは、なんて幸福なことだろう。

    悩んだり、いろいろなことが起こっている。飲み物を買ったり、飲んだりする描写が多いような気がした。

    それにしても素敵な表現をされる方だ。どうやったらこういう書き方ができるようになるんだろう。

  • ささくれだった若者の気持ち、日常の料理の色、味。そんなものが、全部、心地よかった。ささくれだって、苛立って、諦めて、寂しくて、いまの私みたい。みんな通る道なのかしら。

  • 心の深くまでさらけ出したような、
    エッセイ集でした。

    普段は小説ばかりでエッセイをあまり読まないから、初めは読みにくかったけど、毎日少しずつ読んでいくうちに高山なおみさんと話をしているみたいになって、すごく親近感が湧いちゃいました!

    言葉たちが、ぴったり自分の感情にリンクするところもあれば、「そういう考え方もあるのか」と気付かされる部分もあったり。

    クラムボンの原田郁子さんの解説や、巻末のメニュー集も含めて素敵なエッセイでした!

  • 料理家が書く食べ物エッセイ集である本書について
    上白石萌歌ちゃんが
    推薦コメントを残しています。
    食べ物と思い出の関係について語っています。
    2020年6月5日発売『ダ・ヴィンチ 2020年7月号』に掲載。
    https://ddnavi.com/interview/628515/a/
    https://www.amazon.co.jp/dp/B088N2F3SM/

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著者プロフィール

1958 年静岡県生まれ。料理家、文筆家。レストランのシェフを経て、料理家になる。におい、味わい、手ざわり、色、音、日々五感を開いて食材との対話を重ね、生み出されるシンプルで力強い料理は、作ること、食べることの楽しさを素直に思い出させてくれる。また、料理と同じく、からだの実感に裏打ちされた文章への評価も高い。著書は、経験や体験に裏打ちされた料理書や料理エッセイのみならず紀行記や日記、絵本など多数。

「2023年 『帰ってきた日々ごはん13』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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