橋をかける (文春文庫 特 1-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167753818

感想・レビュー・書評

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  • ☆☆☆☆美智子様の言葉が美しいです。
    「名は体を表す」と言いますが、「言葉はその人を表す」と言ったことを感じました。
    一部引用します。
    〜〜〜貧困をはじめとする経済的、社会的な要因により、本ばかりか文字からすら遠ざけられている子どもたちや、紛争の地で日々を不安の中に過ごす子どもたちが、あまりにも多いことに胸を蓋がれます。(中略)多くの悲しみや苦しみを知り、これを生き延びて来た子どもたちが、彼らの明日の社会を、新たな叡智をもって導くことに希望をかけたい思います。どうか困難を乗り切っている彼ら一人一人の内にひそむ大きな可能性を信じ、この子どもたちを、皆様方の視野に置き続けてください。〜〜〜

    美智子様が子どもたちを、多くの期待を抱きながら見つめる姿が感じられる言葉です。

    昨今の、少子化対策の根幹にある「社会の子どもたちへの慈愛の欠如」を逆に省みさせられる言葉でもあります。

    政府がどんな対策を打ち出そうが、行政がどんな施設を設けようが、社会を構成する私たちのなかに、『子どもは社会(全体)の宝』という共通了解がないと、子どもを見つめる視線が変わっていかず、子どもに対する考え方が育たず、環境を作りあげることはできないのかもしれません。

    なにか、子どもに対する新たな視線を得たような感覚が身についた本でした。
    2016/04/07

  • 美智子様のご幼少の頃の思い出と、小さい頃から本を通して悲しみと喜びに触れることが、美しいシンプルな文章で綴られていました

  • 1998年インドのニューデリーで開催された国際児童図書評議会(IBBY)の第26回世界大会において、美智子皇后さまが基調講演されたことを覚えているだろうか。その原稿と、2002年スイスのバーゼルで行われたIBBY50周年記念大会の開会式でお祝いのご挨拶された原稿が、末盛千枝子さんの注釈ほかを含めて収められた一冊。美智子皇后の講演は、ご自身の子ども時代の読書の思い出を、大会テーマ「子どもの本を通しての平和」に沿って話されている。子ども時代の読書は、「それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育って行くときに、大きな助けとなってくれました」とのこと。この言葉を読むだけでも、文庫活動を続ける意味を感じることができる。(運営 海保由子)
    NL73号2014年1月発行

  • 1998年インドのニューデリーで開催された国際児童図書評議会(IBBY)の第26回世界大会において、美智子皇后様の基調講演の書き起こし。

    やはり、学識があり教養があるお方は違う。私皇族の方々についてこの本読んだ後、見方がだいぶ変わりました。

    そして翻訳もされていたとは。すぐ読めるのでまた読み直そうと思う。

  • 子どもの本購入時の参考に

  • この本を読んで、子供や青少年に必要な本について、芯の通った明確な思いを持つことが出来た気がする。
    ただただ胸に静かに響き、本に対する熱い思いが湧きあがってくる。

  • 著者のあたたかいやさしい人柄が、気持ちのいい読後感をもたらしてくれます。
    皇族崇拝者じゃなくても、著者のことを尊敬できるようになると思います。

    [09.4.15]

  • 2010/03/24-2010/03/29

  • 図書館では返しにいったら予約リクエストしていた本と交換して帰るようなことが多いので、たまに次に借りる本よりも返す本が多くて、貸出冊数に「空き」ができたときはけっこうウレシイ。またどうせ明日か明後日には次の予約本がまわってくるのだから、「空き」は空けておけばいいのだが、ついうろうろと書架を見てまわる。なので、貸出限度の10冊いっぱい、だいたいいつも借りている。読んでしまっても、仕事のためにしばらく手許に置きたいこともあり、そうなると返す本が少なく借りたい本がたまることがあり、(ちゃんと返すから、もっと貸してくれへんかなア)とよく思う。

    3月の終わりに「空き」ができたとき、小説の棚を見てみたり、自然科学の棚をうろついたり、マンガの前に立ってみたりしたあと、図書館(010~)の棚で『橋をかける』が目にとまる。文庫サイズのハードカバーというと童話屋の詩集くらいしか思いつかないが、文春文庫のハードカバー(これはトクベツ扱いか?他にもあるんか?)

    これは美智子さんが、自分の読書の思い出を講演したのが文庫になったもの。インドのニューデリーであったIBBY(国際児童図書評議会)世界大会へ、ほんまは行くつもりだったのが、インドが核実験をおこなったという政治情勢のために出席がかなわなくなって、ビデオ講演したというやつである。

    1934年うまれの美智子さんは学童疎開世代なんやなあと思い、その限られた暮らしのなかで父親がもたらしてくれたわずかな本を読んだことが子どもの頃の自分にとってどうだったのか、などが書かれている。

    ▼今振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。
     何よりも、それは私に楽しみを与えてくれました。そして、その後に来る、青年期の読書のための基礎を作ってくれました。
     それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました。
     読書は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれました。本の中には、さまざまな悲しみが描かれており、私が、自分以外の人がどれほどに深くものを感じ、どれだけ多く傷ついているかを気づかされたのは、本を読むことによってでした。(pp.36-37)

    子どもの頃の本の話、読書の話も興味はあったのだが、美智子さんが自分の「結婚」を語り「夫」を語り「子ども」や「子育て」を語った部分を読んで、なるほどなーと思った。世間様では「さま」付きの存在として、年端のいかぬ子どもにも敬語をつかうようなことになっている「ご一家」ではあるが、ご本人が表現すればこういう言葉になるんやなと思う。もちろん、自分が行きたい、行こうというようなことは決して第一にはならず、ナンタラ庁やナントカ省の御意によって自分の行動は決まるという存在であることは、ご本人が「わきまえて」はるんやなとも思った。

    今思ったが、江戸城方面のみなさまの暮らしは税金の拠出によって支えられている。それってのは、きわめて対象を限った、たいへん潤沢なものなので、そうよんでいいかどうかビミョウな気はするものの、ベーシックインカムみたいなもの?あるいは、あの税金の拠出は「公務」への報酬なのか?(源泉徴収されてるんやろうか?) あるいは、籠の鳥生活への「ガマン料」みたいなものか? しかし、カネの割り当ては女が男の半分というところが、あのカネがどういう性質のものにしても、アカンやろ、とやはり思うのであった。

    こんな本でな、推敲に推敲を重ねたような文章やったわと同居人に話していると、「すごいゴーストライターがいるんでしょう」と言う。市長や議長や知事や社長名の文章を、必ずしも名義人が書いてないのと同じで、ああスゴイのがいるかも、と思った。

  • 初見はNHK。
    心うたれる講演だった。
    絵本は前から好きだったけれど、IBBYという団体を初めて知った。
    ハイビジョン映像で再放送してほしい。

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著者プロフィール

美智子
皇后。昭和9年10月生まれ。聖心女子大学文学部を卒業されたのち、昭和34年、テニスを通じて皇太子・明仁親王(当時)とご成婚。初の民間からの皇太子妃となったことで、当時は「ミッチー・ブーム」が起きた。皇太子妃から、今上天皇即位に伴い皇后となる。読書が趣味で、少女時代も本に支えられてきたという談話が残る。英文学に親しまれていることもあって、まど・みちおの詩を英訳し、まどが国際アンデルセン賞を受賞するきっかけをお作りになったことでも知られる。著作として、講演録『橋をかける』、歌集『ともしび』。「ねむの木の子もり歌」作詞者でもあり、著作権を社会福祉法人日本肢体不自由児協会に下賜、これをもとに「ねむの木賞」が設けられることになった。

美智子の作品

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