- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167753979
感想・レビュー・書評
-
どこにでもある日常の些細なさざ波を、ほのぼのとした語り口で描いた作品集です。どの作品も心温まる話というわけではないのですが、文体が清々しくて読んでいて気持ちが良くなります。ほんのり口角が上がる可笑しさがあります。まるで昭和のホームドラマのようです。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
8月最後の日に、飲料自動販売機の商品補充に回るドライバーとその相方のそれぞれの人間模様を描いた作品。
ドライバーの水城さんは、この日を最後にドライバーから内勤へ異動する。主人公は、妻との離婚届けを明日提出する。
登場する2人の人生観や価値観に、強い何かを感じさせない表現になっている。どちらかの登場人物からも強いメッセージ性のある言葉が語られません。淡々と、精緻な自販機への商品補充業務を表現しています。ある八月の仕事の情景を描きながら、2人の男女間、結婚感が語られます。プライベートの上手くいかない部分も、仕事という生きていくための作業の一部に組み込まれているかのような感じです。離婚することになったから、仕事に集中できないなんて、描写は出てきません。そんなことも生きていることの一部に過ぎないという感じさえします。生きる上で、仕事/プライベートのどちらかが、どちらかに影響を与えて、干渉すること自体が、無意味な感覚です。題名にある「八月の路上に捨てる」の”捨てる”ものは、何だったのか?2人の登場人物のそれぞれの過去を捨てて、それぞれに出発し直すということだと思います。ただ、それさえも強い共感を励起するわけではありません。人生の時々を、それなりに生きてきた人間のあるがままの明日に向かう姿を描写しきったものだと言える。 -
自販機の補充する仕事はリアルで興味深かったけど、離婚とかに興味なかったからかいまいち入り込みかけては戻りの繰り返しだった。
-
結婚と離婚と、男女の微妙な距離感を淡々と描いた作品。読みやすいけど、芥川賞って、よく分からないな。
-
012012.
自販機に缶を詰める仕事のデティール、男女の友情にも似た仕事仲間同士のつながりなど、日常風景を描いた三編。 -
芥川賞の審査員が好きそうな要素としては、自販機という誰でも知ってる世界の業界用語、しかも何も守られてないバイトという世界。冒頭であれ?と思わせるさりげないジェンダーのシカケなど、人物に興味を持たせること。心理描写で必死感は出ている。十ページに一行ぐらいの鼻につかないジンセイロン。
-
『カンランシャ』に続き、伊藤たかみ2作目。
3作収録されてるけど、どれも夫婦の関係を描いた作品。
表題作は、水城さんが非常にいい味出してた。
敦と知恵子の夫婦は、知恵子がちょっと精神を病んだ時に、敦がうまく受け入れてあげられなかったために関係がおかしくなった…それで離婚に至った。それだけだと思う。
でも、ただ単にそこだけ描かれると面白くないけど、水城さんの言葉が重いし、すごい大事なこと言ってる。
『カンランシャ』に比べると、リアリティある夫婦像だった。
「安定期つれづれ」も、お父さんのブログ中心の展開が面白かった。 -
短編集。やっぱり表題作がいちばんよかったかなぁ。
でもなんせ短編なので、消化不良気味。短編っていうところが余韻があっていいのかもしれないから、これは単に好みかな。
もっと長編にして、知恵子側の言い分も知りたいし水城さんのその後も知りたい。 -
芥川賞受賞作品の表題作と、あと中編2本を収録。なんとなく芥川賞作品はもっと難解なのかと思っていたけれど読みやすかった。家族で同じものを食べていると安心する、という感覚は良くわかる。