まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 15847
レビュー : 1978
  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167761011

感想・レビュー・書評

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  • なんたるハードボイルド!

    タイトルから勝手に「便利屋を通じて出会う市井の人々との心温まる交流」みたいな話を想像して敬遠していたのだが(あながち間違いとはいえないが)『風が強く吹いている』が抜群に面白かったのと、続編のドラマ化の影響でようやく手に取った。

    多田と行天がどうしても瑛太と松田龍平で脳内再生されてしまう。

     「なんじゃこりゃあ!」
      多田は呆然とつぶやき、
     「それ、だれの真似? 全然似てない」
      と行天は笑った。

    『ジーパン』の物真似に息子がツッコんでいる姿を想像して僕も笑った。

    それにしても三浦しをんさんって女性なんでしょう?
    なんでこんなに、30過ぎた子持ち男の哀愁を描けるのだろう。
    女性作家が書く男性って、スキンケアも万全で高級車のCMに出てくるような人ばかりだと思っていたけれど、この雄の匂いを発散させた輩どもよ! そして格好悪いながらもギリギリのラインで踏ん張る矜持。
    三浦さんってなんか特殊な嗜好でもあるのだろうか(褒め言葉です)。

    多田や行天をはじめ、ルルやハイシー、星と清海、由良公に「元妻」凪子など、善悪では割り切れない「心優しき人々」
    一匹のチワワから細く微かに繋がっていく「縁」がいい。

    病院で買ったお茶にカステラを浸し、ふやかしながら食べる曽根田のばあちゃん。
    スーパー横の暗い道にへばりつく何台もの自動販売機と、必要とは思えないほどの数の証明写真のボックス。
    里山の風景などではない21世紀型の郷愁も凄い。

     金色のスプーンでコーヒーに深い渦潮を作ったり、
    等の、何でもないシーンにも随所にさらりと織り込まれた表現も贅沢。

    軽く読めるエンタテインメントのようでありながら寓意に満ちた味わい深い物語。
    早く続編が読みたい。

    • kwosaさん
      まろんさん!

      逢瀬!? ですか!
      実はドラマのほうは初回を観て
      「ヤバい! 面白い!!」と思い、あわてて原作を読み始め、一時中断しているん...
      まろんさん!

      逢瀬!? ですか!
      実はドラマのほうは初回を観て
      「ヤバい! 面白い!!」と思い、あわてて原作を読み始め、一時中断しているんですよね。
      映画版は昨日、早速DVDをレンタルしてきたのでこれから観ます。

      三浦しをんさん、いいですね。
      じわじわとハマってきましたよ。
      すでに『まほろ駅前番外地』と『神去なあなあ日常』が待機しているので、ゆっくり楽しみたいと思います。
      2013/02/16
    • MOTOさん
      あ、そう、そう!

      私も、この本…(じゃなかった。未だに未読!でも、映画見て。それと、『風が強く吹いている』の印象も、兼ねて)

      「しをんさ...
      あ、そう、そう!

      私も、この本…(じゃなかった。未だに未読!でも、映画見て。それと、『風が強く吹いている』の印象も、兼ねて)

      「しをんさんって、なんでこんなに男心がわかるんだろう??」と、同じ疑問を抱いておりました♪
      作品に充満している、あの男くささは一体どこからくるのでしょうね。
      >特殊な思考の持ち主・・・。

      あはは♪実際、そうじゃなければ、こうもリアルに女性が男性の心情描ける事は無いかもしれません。
      kwosaさんのレビューを読んで、ますます本のほうも楽しみになってきました!
      (でも、購入した本って、ほんと後回しになるからつらいとこです~~)

      2013/07/06
    • kwosaさん
      MOTOさん!

      花丸とコメントをありがとうございます。

      >作品に充満している、あの男くささは一体どこからくるのでしょうね。

      本当に思い...
      MOTOさん!

      花丸とコメントをありがとうございます。

      >作品に充満している、あの男くささは一体どこからくるのでしょうね。

      本当に思いますよねぇ。
      最近、エッセイ『本屋さんで待ちあわせ』を読んだのですが「なるほど、そんなご趣味が......」
      謎の解答の一端を垣間みた気がします。
      そう考えると『風が強く吹いている』が男二人の入浴シーンから始まるのも......いやいや邪念が頭をよぎりました(笑)

      >(でも、購入した本って、ほんと後回しになるからつらいとこです~~)

      MOTOさんの心の叫びに激しく同意!
      僕も、続編の『まほろ駅前番外地』読みかけのまま積んでます。
      ああ、はやく読まなければ。
      2013/07/06
  • ひょんなことから高校時代の同級生(話したことない)、行天と暮らすことになった、便利屋の多田。便利屋を頼ってくる人々と2人の人間模様を描く。

    大変面白かった。
    癖がない文体で読みやすい。

    話的には「家族」がキーワードになってくるのではないか。
    違う言い方をすれば「一緒に暮らしてるひと」。

    思いかえせば、この物語では色んなパターンの「一緒に暮らしてるひと」を描いている。
    そこには幸せばかりでなく、様々な苦しみや辛さも描かれていた。そこから幸せに向かおうとしたり、逃げたり、付き合って生きていったりする。

    ただ、登場人物それぞれに明確な幸せが訪れた描写も、明確な不幸が訪れた描写もない。
    誰かと暮らしている限り、どちらもやってくる。

    それを「淡々」と「ドラマティック」の間の感触で書いているのが心地良かったんだと思う。

  • 多田と行天の距離感と本質的な想いが心地よく、
    ワタシにとってはいろいろと共通点もあったりで
    一緒に泣いたり、ぼんやりしたり、再生に向かう光をもらったりした1冊でした。

    状況も事情も違うけど、ワタシも生まれたばかりの息子を
    亡くしたばかりなので、中盤からはそこに触れるのかなぁ…と
    少し澱のようなものを感じながら読み進めつつ…

    多田の心情と自分の心情が重なって苦しかったけど、
    失ったものが完全に戻ってくることはないという覚悟の元に
    でも、形を変えながらも、それを求める人たちのところに
    幸福は何度でもそっと再生していくと、今の自分の心情と同じでもあり
    必死でつかもうとしている一筋の小さな光の欠片だったりと
    重なって、涙は止まらないながらも明るい気持ちになれたラストでした。

    上っ面じゃなく、べたべたせず、ぶっきらぼうだけど
    根っこの部分ではココロで感じなくても本能的に
    相手を思う行動をとってしまう、多田と行天の関係を
    もっとたくさん見ていけたらいいなぁと思いました。続きも楽しみ。

  • 第135回直木賞受賞作。東京のはずれに位置する架空の都市まほろ市を舞台に、便利屋を営む多田啓介と高校時代の同級生にして居候にして疫病神の行天春彦が様々なキナ臭い依頼を解決していく、どこか切ない連作集です。大きな賞をとったということもあって賛否両論あるみたいですが、個人的にはかなりハマった作品です。というのも自分自身ボクサーの傍ら引越し屋で働いているので、便利屋稼業の辛さや切なさをリアルに肌で感じることができたし、物語の根底に流れる『深い暗闇に潜った魂が再び救われるのか』を描いたテーマそのものも自分の胸には痛いくらいに響いてきました。そんな深く重いテーマをうっとおしく感じさせずに、サクサクと読み進められるのは何より三浦しをんの実力であると思うし(惹き付けられる台詞が多々あった)、似たような空虚を抱えながらも全く性格の違う多田と行天を筆頭に、曽根田のばあちゃん、被害妄想気味の岡老人、孤独な小学生の由良公、心優しき娼婦のルル&ハイシー、耳にピアスを沢山付けたヤクザの星などの、なんとも魅力的なキャラ設定の賜物と言えるんじゃないかな。人生は何度だってやり直せる。すべてが元通りにはいかなくても修復することはできる。幸福はいつだってそっと、生きていれば何度だって訪れる。そう気付いた彼らの旅はまだ始まったばかり。最後まで見守っていきたいと思えたいい作品です。

  •  映画化された作品でこの作品を知った。瑛太と松田龍平という若い主演陣に興味があり、何となく眺めるでもなく見ていたTVでこの映画が始まったところ、妻がこの原作を読んでいるらしく、身を乗り出してきたので一緒に見るに至った。予想以上に手応えを感じる作品で、なおかつ松田龍平の登場人物が魅力的だった。

     しょぼく、庶民的な、まさにどこにでもありそうな街と、少し昭和の面影すら感じさせる時代でありながら、どことなく古臭いハードボイルド映画みたいな、リズムを感じさせる映画作品であるところにも好感を得た。まるで1970年ベトナム戦争後期くらいにでも作られそうな作品だ。

     時を同じくして映画館では『舟を編む』という映画の予告編を何本も見ることになった。同じ作者三浦しをんの、やはり松田龍平を主演においた作品で、こちらは辞書を編纂する人の物語らしい。そちらは映画も原作小説も読んでいないのだが、何となくいい感じ。おまけに『まほろ…』は直木賞、『舟を…』は本屋大賞を受賞している。

     三浦しをん。ふざけた名前だ。なにせ名前に「を」の文字が使われる作家なんて聞いたこともない。おまけに「シオン」だって? 大物作家だな、と思った。ともかくこれは原作を読まねばなるまい。そう思って今さらながら、25も版を重ね、多くの読者を勝ち得てそろそろそのブームも終わりかけているのだろう時代に、ぼくはこの本を手に取るに至る。

     映画の印象が強すぎたのか、瑛太という俳優については少し小説からの印象は薄いのだが、行天という男は松田龍平以外の誰をも思い描くことができないほど、原作と俳優がぴったりフィットして感じられる原作であった。当然原作を書いていた時の作者は映画化を思い描いて執筆しているわけではないだろうし、行天という男の造形だって松田龍平という実在の俳優の有形な具体像を描いていたものではないと思う。それなのに、不思議とこの小説の中で書かれている行天は、松田龍平以外の誰をも想起させないのだ。珍しい現象、かもしれない。

     そんなわけでこの小説は、行天という男の造形がすべて、であると言っていい。あるひ便利屋を営む多田という主人公のもとに、大して親しかったわけでもない行天という高校時代のクラスメイトが転がり込んでくる。仰天は高校時代を通して誰とも交友関係がないばかりか、会話を交わしたことさえない変わり者であったし、その後言葉を口にするようになり図々しいほどに多田に依存する、成長した行天であれ、まだまだ十分に変人極まりない存在だ。

     しかしその奇人変人が、多田という男の日常に、いろいろな影響を与え始める。多田も、登場人物たちも、埋もれていた記憶や解決のつかないまま眼をつぶっていた宿題の数々を、現在のまほろ市(とんでもない地名を考え出すものだ)に引きずり出して、料理を始める。大人の庶民小説であり、手法はハードボイルドである。男と男のデスマッチや距離感、その中にたまに電光のように走る人間的優しさ、などから、ぼくは三浦しをんを男の作家だとばかり思い込んでいたのだが、最近になって女流作家と知った。男の世界を透視する女性の眼力の鋭さに、まさに恐れ入った一冊である。

  • 最後の3行に、この物語のテーマが凝縮されている。

    =======
    幸福は再生する、と。
    形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。
    =======

    失ったもの、切り離されてしまったもの、最初から得られていなかったもの。
    それらすべてを、主人公の2人をはじめとする登場人物みんなが、物語の舞台である「まほろ市」で手に入れていくお話でした。

    全体を包むあたたかな雰囲気と、事件のたびのドタバタ感が絶妙に混ざりあっていたなあと。このトーンはかなり好き。

    • mixikoko-kさん
      次に三浦しをんさんを読みます。レビュー読んで楽しみになってきました。
      次に三浦しをんさんを読みます。レビュー読んで楽しみになってきました。
      2013/06/14
  • 【第135回直木賞受賞作】
    既に続編にあたる「まほろ駅前番外地」を先に読んでいるのですが(続編とは知らず、間違えて)、本編の方は格段に面白く感じました。テレビドラマで見ているキャストがすごくはまっていることも後押しして、余計に内容に深みを感じました。
    番外地を読んでいて、イマイチ、ピンと来なかったようなところが本書を読むことできれいにつなぎ合わされたのも良かったです。久しぶりに小説を読んで、大変満足でした。

  • これほど人の心を優しく撫でくすぐる小説を私は知らない。多田と行天は正反対の性格のようで実は似ている。それは二人とも家族のいない独り身であり、過去に深い傷を負った経験に起因する。その傷が完全に元に戻ることはないが、傷は修復され、新たな物語が動き出す。人は誰しも、奥底に悲しみを抱きながら生きているものだ。だから、誰かに触れたくなる。触れて愛したいと切望する。全てはそこから、また始まってゆくんだろう。

  • 便利屋の多田と友人の行天。
    彼らに雑用のような依頼を持ち込む人々、娼婦、あぶない薬を捌くお兄さん。
    まほろ市は今日も危険がいっぱい。

    依頼をこなすなかで、見えてくる多田と行天の過去。

    ハードボイルドでクソカッコイイ世界観。

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    ドラマ『俺たちの旅 』やアニメ『カウボーイビバップ』を思い出しながら読んだ。
    共同生活しながら、依頼というか仕事いうかそういうものをこなしていく生活。
    ハードボイルド的でかっこいいと心底思う反面、自分にはできないとちゃんとわかる。一緒に生活しながら仕事なんてケンカしまくっちゃう。できないからこその憧れなんだと思う。

    誰かに使われるわけじゃなくて、自分のルールにだけ従って生活するかっこよさはルパンに似てるのかもしれない。
    弱者の味方で、悪者の力には屈しない。でも、マヌケな失敗をちょこちょこして愛さずにはいられない。
    そんなルパンのような、往年のハードボイルド作品のような、かっこよさがこの作品にはある。

    続編も読もう。映画も観よう。

  • でこぼこコンビが織り成すどだばたコメディ!
    うーんマンガ好きにはたまらん。
    特に行天のキャラクターはたまらんと思います。

    行天が松田龍平ってのはぴったり過ぎる。うーんたまらん。

著者プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。最新刊に、『愛なき世界』。

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