まほろ駅前番外地 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 6504
感想 : 538
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167761028

作品紹介・あらすじ

映画化もされた第135回直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』の多田と行天が帰ってきた!相変わらず、汚部屋清掃、老人の見舞い、庭掃除に遺品整理、子守も料理も引き受ける多田便利軒。ルルとハイシー、星良一、岡老人、田村由良ら、お馴染みの愉快な奴らも健在。多田・行天の物語とともに、曾根田のばあちゃんの若き日のロマンス「思い出の銀幕」や岡老人の細君の視点で描く「岡夫人は観察する」など、脇役たちが主人公となるスピンアウトストーリーを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 『まほろ市は、東京都南西部最大の町。まほろ駅前で便利屋を営む多田のもとに、高校時代の同級生・行天が転がりこんできた』と、始まるこの作品は、「まほろ駅前多田便利軒」のスピンオフ作品です。私の場合、「便利軒」を読んでもう二か月近く経つにもかかわらず、読み始めた瞬間に、作品世界が一気に蘇ってきました。なんてったって多田と行天という、超濃厚なキャラの男性二人の物語。記憶が薄れても決して消えることなどありません。そして、この作品では、そんな二人の相変わらずのドタバタ劇と、そんな二人を取り巻く人たちの裏側に隠された物語が展開していきます。

    7つの短編から構成されていますが、基本的には『まほろ』の世界のお話なので、それぞれが関連している部分もあれば、すれ違うキャラ同士であれば全く単独のストーリーとして展開します。そんな中で特に印象に残ったのは次の二つでしょうか。

    『ここ三日ほど、多田便利軒は暇だった。雨がつづくと、便利屋への依頼は減る』と暇を持て余す多田。そこに『便利屋さーん、元気ぃ?』と、『聞き慣れた陽気な声が』響いてきました。『ルルとハイシーが立っていた』ともう「便利軒」の世界感そのままに一話目の〈光る石〉はスタートします。そんなところへ『便利屋さんですよね』と現れた『二十代半ばぐらいの女』。『行天の奇行と、ルルとハイシーの存在を目にしても、女は帰ろうとしない』と強い意志で多田の方へやってくると『便利屋さん。私もうこれ以上、あの女がエンゲージリングをしているところを見たくないんです!』と言う女性。『やっぱり厄介事だったか』と思う多田。女性は『0.45カラットなんです』と鞄からダイヤモンドの指輪を取り出しました。そして、『小夜のダイヤの方が大きいんです。0.75カラットもあるんですよ!』と、なんのことだか『話の要点がわからない』展開。夜までかけて話を聞くと、婚約指輪を選ぶのに同僚の小夜についてきてもらってティファニーで0.45カラットの指輪を買ったところ、小夜はニューヨークの本店で0.75カラットの指輪を恋人に買ってもらった。そして近々みんなを集めて自慢をしようとしているのが悔しい、というものでした。『明日、掃除の仕事が入ってますよね』という女性。『掃除のついでに、部屋のどっかに隠してください。お願いします。それじゃ』と封筒を置いて店を出て行った女性。『封筒を開けてみると、十万円が入っていた』という状況に考えこむ多田。一方で『囲炉裏屋のノリ弁当なら四百個。シャケ弁当なら二百六十三個買って六十円のお釣り』とぶつぶつ唱える行天。多田はどうするのか…。もう「便利軒」そのまんまな世界。全く違和感なくどっぷりと作品世界に浸れます。

    もう一つは、多田と行天以外の登場人物が主役となる短編〈思い出の銀幕〉。『原節子だって目じゃないぐらいべっぴんだ』と言われていたのが曽根田のばあちゃん。『息子一家は、ただいま沖縄で夏を満喫中だ』という息子に代わって便利屋の仕事として代わりに病院に見舞いを続けている多田と行天。曽根田のばあちゃんから『私のろまんす、聞きたいかい』と若かりし頃、恋に燃えた話を聞かされます。『ばあさんが、なんだかすごくイイ女のように聞こえる』というほろ苦い『ろまんす』を聞いた二人。『この情景もいつか、記憶になるのだろうか。闇に浮かんでまたたく光、夜空に放たれる花火のような光に』といろんな思いに囚われながら帰途につきます。若き日々を語る曽根田のばあちゃんの活き活きとしたまなざしの遠くに見えるもの、そのあと話し終えて、今に感覚が戻ってきた後の姿を思うとなんだかとても物悲しくなると同時に、とても後を引くお話でした。

    『どんな雑用でもお申しつけください』と多田が始めた便利屋というお仕事。『帳簿をめくりながら、「よしよし」と多田はうなずく』。去年の売り上げが一昨年より増えたことを喜ぶ多田。『働く手応えが数値となって表れたことに満足を覚え』ます。でも、どんなお仕事でも人である限りは何かしらプラスアルファが欲しくなるもの。『お金のためだけに働きつづけられるひとは、そう多くはない』と語る岡夫人。『金のためだけではなく、たぶん、惰性や愛着や人間関係ややりがいによって、ひとは働くのだ』というその考え方は我々含め働く人々みんなに言えることだと思います。『やりがいのある仕事』を求め、一方で自分の仕事に『やりがい』を見つける日々のその先に、きっと納得感のある人生が待っている。満足できる終着点が待っている。それが、生きていくということなのかもしれませんね。

    『行天が暗いなにかを抱え、必死になにかと戦っている』という不穏な結末が見せる次に続いていく物語。まだまだ『まほろ』の町と、『まほろ』に生きる人々から目が離せそうにありません。でも、それは読者にとって、とても幸せなことだと思います。そう、多田や行天にまたきっと会えるから。

    サクッと読めて、クスッと笑える安心安定の『まほろ』の物語。今回も存分に楽しませていただきました。

  • まほろシリーズ第2弾。
    第1弾に出てきたキャラのスピンオフ作品。

    多田と行天のやり取りは、面白くて
    心地よさ、みたいなものを感じますね。

    さ、続き(第3弾)が早く読みたいなぁ。

    • さてさてさん
      キョーさん、いつもありがとうございます。
      まほろシリーズいいですよね。私もこの作品まで読みました。多田と行天のやりとりは相変わらず心地よい...
      キョーさん、いつもありがとうございます。
      まほろシリーズいいですよね。私もこの作品まで読みました。多田と行天のやりとりは相変わらず心地よいです。
      シリーズ三作品目も早く読みたいとても思います。
      ありがとうございます。
      2020/07/29
  • まほろシリーズ2作目。
    1作目で主人公ではなかった人達のその後と視点で書かれている。
    相変わらずな日々の中でかっこよくもなかったり変わらない中でも出てくる人達に惹きつけられるのは何故なのか。
    無理せずその人達なりに毎日を生きている姿を丁寧に描かれていて、ちょっとした言葉が心に染みてくる。

  • 狂騒曲、便利軒、番外編と読み進めていったが、狂騒曲で登場した人物との出会い、また依頼者の生活や思いを彼ら自身が説明していく章もあり、多田の観察により読み手が登場人物をイメージするのではなく、こんな人物であるとはっきりと理解ができた。
    「由良公は運が悪い」とは、両親に約束をすっぽかされたこと、財布を無くしたことが運が悪いのではなく、行天と一日中過ごすことになったのが、運が悪いのか?と、思えてならない。

  • 「まほろ駅前多田便利軒」の続編なんだけど視点が多田以外の話も入っていておもしろく、個人的には岡夫人目線が楽しかった。映画版は見ていないのに行天はずーっと松田龍平さんで脳内再生される。ぼかされていた行天の闇が明らかにされるのかな…?というところで次巻へつづく。

  • 先日読んだ狂想曲の前日譚。読む順番が逆だった。
    狂想曲に繋がるストーリーがちらほらあるから、セットで読まれるべき。
    また狂想曲読みたくなった。

  • 多田と行天のまほろ駅前番外編。
    愛すべきキャラの脇役たちを真ん中に添えたドタバタ活劇と思いきや、最後の「なごりの月」で行天の暗い一面が露出され、次作へと引き継がれる。行天の過去にはいったい何があったのか?そして多田との関係はどうなるのか?

  • 1作目がよかったので、2作目も購入。

    「番外編」という名前が気になったが
    やはりスピンアウト作品だったのか。。。
    主人公の2人が主役で出てこないのでもひとつ。
    皆さん1作目より評価が高いんですがなんでなんでしょう。

    とはいえ二匹目のどじょうの作品でなく世界を広げており
    3作目に繋がりそうな話も多く次回に期待は持てました。

  • 多田と行天が帰ってきた!
    あいかわらず行天のキャラが好きすぎる。
    実際こういう人と一緒にいたら困るだろうけど(笑)
    誰に対しても同じ態度、お客さんや子供、やくざ相手にしても変わらない。飄々としてる癖になぜか腕っぷしが強い。
    影があってどこまでもクール!
    まだまだ続きがありそう。
    多田の恋の行へも気になるし。

    ドラマ化もめちゃめちゃ楽しみ。
    映画はまだ観てないんだけど、観たいな。
    松田龍平の行天、似合ってそう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ドラマ化もめちゃめちゃ楽しみ」
      未だ「番外地」に取り掛かってないのですが、ドラマを見ようかどうか悩んでいる(実はTV嫌い)。でも気になるな...
      「ドラマ化もめちゃめちゃ楽しみ」
      未だ「番外地」に取り掛かってないのですが、ドラマを見ようかどうか悩んでいる(実はTV嫌い)。でも気になるなぁ、、、
      「困るだろうけど」
      でしょうね、、、ハラハラするし、何考えてるか計りきれないし。。。
      2013/01/04
  • 「まほろ駅前多田便利軒」のスピンオフ的作品。主要キャラクターが深堀りされて面白い。

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著者プロフィール

三浦しをん

一九七六年東京生まれ。二〇〇〇年『格闘する者に○』でデビュー。〇六年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、一二年『舟を編む』で本屋大賞、一五年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、一九年『ののはな通信』で島清恋愛文学賞及び河合隼雄物語賞、『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。その他の著書に『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『木暮荘物語』『政と源』など。『ビロウな話で恐縮です日記』『本屋さんで待ちあわせ』『ぐるぐる 博物館』などエッセイ集も多数。

「2021年 『愛なき世界(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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