まほろ駅前番外地 (文春文庫 み 36-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167761028

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの三浦しをん。

    【光る石】
    シリーズものなのにもかかわらず、前作の説明も、世界観の紹介も、潔いくらいにnothing(笑)。
    陽気な娼婦2人組…は、「いたような、いなかったような」の記憶でしかなかったものの、メインのバディについては、人となりも、背景も、なんとなくすぐに思い出せた。

    ※たしか、、、両方離婚してるんだけど、片方は服役経験があったようなないような?(違ってるかもだけど、まあそんな感じの「重い事情」があった!ってところまで)

    今回の事件については…まあ、どうでもいいでしょ。連作短編のプロローグ的な位置付けかな。
    ビックリ仰天な解決方法だったけど(笑)。

    【星良一の優雅な一日】
    小ネタ的な"くすり"ギャグと、バイオレンスとの混在。多田は登場せず。そして、星…
    既出のキャラらしいが、一向に記憶に無い(苦笑)。

    前作を読んだのがブクログを始める前だったらしく自分の感想は確認できなかったが…「・・多田便利軒」に書かれた皆のレビューにて確かめたところ、前作でもある程度以上の存在感を放っていたキャラらしい。今後また登場するだろうから、今度こそ記憶に留めておこう。

    【思い出の銀幕】
    昭和ロマン(?)、戦後ロマン(?)。過去に観たり読んだりしたドラマ、映画、漫画たちのおかげで、時代の空気や情景はとてもよく思い描けた。
    啓介が、とにかく格好良かったね。

    【岡夫人は観察する】
    このお宅…前作にも出てきてた?…バス停のくだりに見覚えがあるようなないような。
    多田と行天の関係性が客観的に描写されてて、ニンマリできた。

    【由良公は運が悪い】
    これもまた、前作から引き続いたキャラっぽいけれど…やっぱり記憶に無い(苦笑)。
    行天の指の怪我の由来…も、前作で語られたような、そうでないような・・・。
    行天の人となりを描いた一篇、ってところか。

    ※仮にも「センセ」と呼ばれる立場の大人が、職場最寄り駅でテレクラ・エンコーに及ぶかい?って点だけ引っ掛かった(笑)。

    【逃げる男】
    親子ほど歳の離れた夫を想う亜沙子の語りに少々じんときた。種明かし(実は夫も…と判明する何かが発見、とか。※宴会芸の写真は除く)がなされるかと思いきや、もやもやしたままで締め括られてしまったが、まあそこも、このシリーズの「味」でもあるのかも。

    ※星くん再登場。【星良一の…】は、このための人物紹介的な役割も担っていたのかも(笑)。僕みたいに前作の記憶が薄い読者のために。
    ※終盤にきて「恋に落ちる瞬間」という描写・・・「亜沙子」もこの先、何度も登場することになるのかしら?

    【なごりの月】
    新興宗教まがいの食品健康団体、この後も何かと悪さ(?)して物語に関わってきそう…。
    「亜沙子さん」、準レギュラー化するかも…。
    行天の抱えた闇は???


    ・・・総括・・・

    ★3つ、7ポイント半。
    2019.11.20.古。

    番外地 = 番外編 ってことかな。次に続く「・・狂騒曲」
    への伏線なのだろうな?と思われるエピソードが満載な一冊だった。

    読まねば。




    ※しかし……ここまで前作の内容を忘れてしまっていたとは…(苦笑)。読んだときには、すごく面白かったし、わりと気に入った作品だったのにな。

    再読あいようかしら。。。

  • 図書館で借り。
    一か月ほど前に読んだ本編が面白かったので。
    スピンオフということであった。
    会話の妙とか、完全な丸い人間がいなくてみんなちょっとどこか欠けている部分があるとか、そんな魅力のある作品にまた触れられてうれしい。
    行天の心のなかにある、子ども時代の消えない暗いもの、多田のほのかな恋心や、幼児と触れ合ったときに思い出してしまった暖かいもの、ユラコーの冒険などなど、星くんの気苦労などなど、それぞれに面白かった。


    私の父の四十九日の移動のため、新幹線の車内で読んだ。自分は四十代主婦で、多田や行天のような三十代男性でもアウトローでもなく、割と日向の道を歩いてきたと自負している。そんなわけで、今回は岡夫人に将来の自分や自分の母を投影してしまい、なんとなく彼女に感情移入して読んでしまった。


    ・p34 行天の台詞「気が利くってのは、裏返せば外面がいいってことだ。この部屋を見ればわかるでしょ。それに、本当の悪人なんてめったにいない。だれだって愛されたいからね」

    ・p168 岡夫人が夫婦というもの、老境に差し掛かった自分たち夫婦について思いを馳せるシーンは、何回も読みたくなる…。
    ---
    諦めと惰性と使命感とほんの少しのあたたかさ。こまごまと毎日働き、自分の役目を果たすときの心情と同じ感覚で、細く結びついている。そんな関係を、一言で表す言葉はない。ないから戸惑う。あいかわらず「妻と夫」ですませて安穏としていられる夫に、苛立ちを覚える。でも一緒にいるのをやめたくはない。
    その理由を「愛」と言えたなら、すごく簡単なのだけれど。
    ---

    ・p172 岡夫人の独白 
    過去に触れられたくないということは。(中略)これまでの自分を消してしまいたいということだ。
    でも、記憶喪失になったわけでも感情がないわけでもないのに、そんなことが可能だろうか。たとえ自分を知るものが一人もいない場所へ逃げたとしても、過去は何回でも心のなかでよみがえるだろう。
    逃げても逃げても、いつかはつかまる。


    ・p173 年を取ると堪え性がなくなるとよく言うが、本当だ。怒りや不安は場面に応じてまだ抑えることができる。けれど、愛おしいと思う心だけはあふれでてしまう。互いしかいない老後のさびしさがそうさせるのか、ひとの心を構成する本質が愛情だからなのかは定かではないが。

  • 新たな依頼人、星くん、岡夫人、由良公に視点を当てた短編集。もちろん便利屋視点も。最後の「なごりの月」では行天の中にある暗い何かが垣間見える。それは乗り越えられるものなのか。綺麗には終わらせてくれない本作。個人的には「岡夫人は観察する」が好きです。「ねえ。あなた案外、多田便利軒にの二人を気に入っているでしょう」「そうじゃなきゃ、大事な証拠集めの仕事は頼まねえよ」

  • 2022/07/27 読了。
    感想は某所のブログで書いたものの再掲です!

    ・7月18日に読み始め、27日に読み終えました。

    ・三浦しをん……


    ・愛ですね。めちゃくちゃ愛の話でした。嬉しい~~~。
    ・前作の『まほろ駅前多田便利軒』で依頼者だったりちらりと関わってきた人が主人公になっている短編が何本か入っていて、どれもこれも良かった。「岡夫人は観察する」が一番好きかも。
    ・「そして生活は続く」というコンセプト(?)の話が好きなんだわな、結局…… 生活の話が好き!


    ・「菊子は行天に会って、策略と駆け引きを知った。つまるところ、恋を知ったのであった。」という一文があるんだけど(ここの"行天"は"行天春彦"ではなかったりする)、ホウ恋とは策略と駆け引き…… と思って、また知識が増えた。

    ・三浦しをんさあ、なんでこんなに愛の話描くのがうまいのかな? 三浦しをん、『愛なき世界』の単行本出したときに朝日のインタビューで恋愛の定義を聞かれたときに「まぐわいたいと思うか否か」と言っていたのだけど(2018年のインタビューだから今はどうか知らない)、私が好きな三浦しをんの愛の話って、ほとんど肉体関係にないんだよな。まあこれは「恋愛」の定義であって「愛」の定義の話じゃないんだけども……

    ・でも作品内で明確に「恋愛」が絡んできたものはみんな肉体関係持ってたかも。『愛なき世界』はそもそもくっついてないので除外。
    https://book.asahi.com/article/11917176
    ・↑これ。


    ・あと多田さあ!!! 前作もそうだったけど行天にやさしいこと言ってあげて!!! この前も思ったこと口にも行動にも出さないで当たり障りないこと言った!!!!
    ・でもその当たり障りないことだったり、柔いところにガッチリと触れないところが行天にとっては大きな救いなのかもしれませんね。
    ・助けてください、三浦しをんさん。

  • この2人のでてくるショートストーリーいいですね。じわじわと世界に引き込まれていきます。

  • まほろ駅前多田便利軒の登場人物の短編。それぞれが個性的で、愛すべきキャラなので楽しんで読める。
    最後は少し行天の暗い過去も垣間見える。

  • まほろシリーズの第二作は、スピンオフ作品。まほろに住む人々が主人公となって物語ることで、キャラクターたちの輪郭がより鮮明に浮かび上がり、息づかいまで伝わってきます。この作品を読むことで、第一作や第三作がより魅力的に感じられること間違いなし!

  • 前作に続く多田と行天の一年。相変わらずでほっとします。二人に関わってしまった人たちからの視点が新鮮。面倒であり、迷惑であり、興味の対象であり。多田は昏い過去を抱えてる。行天は闇い過去を抱えてる。便利屋の日々が二人をどう変えるのか。多田は少しずつ変わってく。行天は変わることを頑なに拒んでる。二人の過去の暗さが、決定的に違う…のかな。ただ、一人よりは。二人の方がいい。相手の暗さが、薄れていくことに気付いたのなら。

  • まほろ駅前多田便利軒を読んだのは随分前だ。登場人物のディテールはほぼ覚えてない。でも、楽しく読めた。曽根田のばあちゃんの話が一番良かったかな。やっぱり多田とキッチンまほろの社長がどうなるのか気になるな。

  • 本編読んでないのに先に番外編読んでしまったけど
    これはこれで面白かった。
    ちょっと変わった日常生活を見よるような感じ。
    変人やけどたまに鋭い洞察力を持つ行天の闇が気になった。
    どんな経験もしないよりしたほうがいい。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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