戸村飯店 青春100連発 (文春文庫 せ 8-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167768027

作品紹介・あらすじ

大阪の超庶民的中華料理店、戸村飯店の二人の息子。要領も見た目もいい兄、ヘイスケと、ボケがうまく単純な性格の弟、コウスケ。家族や兄弟でも、折り合いが悪かったり波長が違ったり。ヘイスケは高校卒業後、東京に行く。大阪と東京で兄弟が自分をみつめ直す、温かな笑いに満ちた傑作青春小説。坪田譲治文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 人生に大事な物をメチャクチャ大きく2つに分けると【要領】【努力】になり

    そのバランスで人生は成り立っている
    という話を別の本の感想に書いた事がありますが…

    このバランスが極端に片寄ると駄目
    片寄ると【要領はズルに変わり】【努力は正直者は馬鹿を見るに変わる】

    この戸村兄弟は、それを上手く表現されている。
    長男は要領 次男は努力
    しかしその2つは両方とも大事だけど
    どっちも正解であり、やり方次第で不正解にもなる

    例えるなら
    ●長男はハケやローラーでペンキを塗る作業
    ●次男は瓦を1つ1つ貼ったり、タイルを1つ1つ貼る作業
    と言ったところか…

    ペンキは薄く塗って速く行動に移れる、何かあっても重ね塗りで手直しも塗りの制度はあがる。

    瓦など1つ1つコツコツ作業するのは、時間がかかるが、出来上がりは凄く強いものが出来上がる…しかし何か間違いがあると、殆どやり直しになる。

    人生の場面場面でこの2つのバランスをとり、その時その時にどっちを選択するようにするだけでも

    自分達の心の負担は減るはず

    ※だから結局話が変わるけど俺が何を言いたいかって言うと

    【何十年継ぎ足しのタレってよくリポーターが≪これが何十前のタレか!!≫と言ってるけど。実際継ぎ足ししてるからトコロテン式に古いタレは無くなる為、腐る事もない。だから正確に言うなら≪何十年から引き継がれた味のタレ≫って表現のが正しい気がするよ】って事!!

  • 好きなラジオ番組で紹介されていて、面白そうだったので読んだ本。

    タイトル通り、青春100連発。
    兄と弟のそれぞれの想い。
    それぞれの目線で一章ごとに語られていく。
    お互いがそれぞれの立場で成長していく。

    とってもいい話なのだけれど、それぞれの恋人はそれでよいのか??
    いやその世代にとって恋人こそがすべてでないのか??
    それとも二人とも大人なのか?
    恋愛経験の少ない私にはちょっと切ない。

  • なんやねん、この本、むっちゃおもろいやん。こんな関西弁ばっかりの本、あんまりあらへんのちゃうか。笑いすぎたらあかんでぇ。

    狭いようで広い日本。交通網が発達したことで2時間もあれば、自分が暮らす世界とは環境、文化そして言葉もずいぶんと違うある意味別世界に行くこともできます。特に言葉の違いは歴然。東京から、もしくは新大阪から新幹線に乗ってそれぞれ反対側に降り立つと、特に感じる言葉の違い。これは他の都市間でも同じことでしょう。でも、不思議なのは小説の世界は標準語で書かれたものが圧倒的に多いこと。どうなんでしょう。方言を入れることで、そこに違う色が、もしくは世界が出てしまうことを敢えて避けようとしているのでしょうか。でもこの本はあくまでコテコテで勝負します。その土地を舞台にするならその土地の雰囲気にどっぷり浸りたい。

    『冗談抜きで、俺と兄貴は仲が悪い。』という兄・ヘイスケと弟・コウスケ。『全ての人が阪神タイガースをこよなく愛し、吉本新喜劇で爆笑し、オチがない話をすると、「それがどないしたん」と、戸惑われてしまう町』という大阪のど下町にある戸村飯店で育った二人の兄弟の一年が描かれます。

    6つの章から構成されていて、一章毎に弟兄弟兄弟兄と視点が変わっていきます。『親父は俺には手も足も出して本気で怒るけど、兄貴には声を荒げて怒鳴ることをしない。お袋は兄貴を大事にしているけど、困ったことが起きると兄貴ではなく俺に頼る。』全く性格の異なる二人。両親の二人への接し方も違っています。どんなに親しい間柄でも、その人毎に対峙するスタンスというものは変わるものです。この辺りの描き方がとてもリアルです。

    『先に出て行けるのって長男の特権やん。一つくらい特権あらへんと、長男なんかやってられへん』と一人東京に旅立つ兄。『兄貴の不在は二日で慣れた。』という弟。兄がいなくなったあと、高校を出たら自分が親父の店を継ぐことになる、それがまさか予想外の展開に…。東京の兄に相談に行く弟。『兄貴に相談ごとを持ちかけたことは、今まで皆無だった。相談どころか、兄貴には中身のある話をしたことがない。』でも、そんな弟の窮地に兄は…。兄と弟の-やっぱり兄弟っていいね-というあったかい繋がりが描かれていきます。

    戸村飯店の常連である広瀬のおっさんの『そやそや、恋愛なんてプッシュや。プッシュブッシュ大統領や』、元ヤンキー・竹下の兄ちゃんの『結局はコウスケ、案ずるより生むが横山やすしやで』などなど。もう最初から最後までコテコテの大阪を楽しませていただきました。

    また、瀬尾さんの作品ということで、『親父はエビチリとかカニ玉とか、ちょっとだけよそいきの中華をたっぷりと作ってくれた。』という戸村飯店の中華から、おはぎやビーフストロガノフまで、読み終えても食べ物が登場したシーンがとても印象的に思い出せるのもこの作品の特徴です。

    大阪と東京を舞台に、食べて、怒って、笑って、泣いての一年を綴った、とても楽しくて愉快な作品。それでいて登場人物それぞれの感情の微妙な揺れまで伝わってくる絶妙な表現の数々が人情豊かな人々の力強い生活を感じさせてくれました。そして、何よりも関西弁の会話がとてもいい味を出していたのが強く印象に残りました。

    強烈な書名と表紙のインパクトからなかなか手が伸びなかった作品でしたが、これ『ほんまに』お薦めです。読んで良かったです。

  • まず、表紙の絵が気に入った。
    そしてタイトルが、そのフォントが面白そうな雰囲気。
    そんな理由で読んだ本。結果正解、面白かった!

    人が心の中で思っていることは、実は他人には正確に伝わってない。その時の態度だけで判断すると、意外に誤解が生じる。小さな誤解がどんどん積み重ならないように、お互いを理解するにはまずコミュニケーション。

    ...なーんて簡単にいけば、揉め事なんて起こらないよねえ。家族間だったら照れや恥ずかしさが先にたってますます言えないよねえ。でもね、年月が経って気付いたら、実はそうだったの?....っていうお話でした(ん?)。
    最後はもちろんきちんとほっこり。

    この本を読んで気付いたのですが、会話が関西弁のところはノリツッコミで読むので、読むスピードが異常に速くなるんですよー。そんなアホな。

  • のっけから「関西」全開で始まる。ついていけるのか少し不安だ。どっこい、へたすると本物の漫才より面白い。コメダ珈琲店でずっと下を向いて噴いている自分がいた。まずい、面白すぎる。誰かページをめくる手を止めてくれ、と。
    瀬尾さんがすごいのか、関西がすごいのか、いや、どちらもだろう。
    物語は進み、故郷を離れたからわかる故郷の人々や家族との絆、兄弟のあれやこれやもすっと心にはいってくる。
    兄弟が周囲の人々との出会いと別れの中、それぞれの明日を見つけていく。なんて爽やかな読後感なんだ。

  • 久しぶりの瀬尾まいこさん。
    『戸村飯店青春100連発』

    大阪の下町にある超庶民的中華料理店、戸村飯店の2人息子 ヘイスケとコウスケの青春物語。

    関西の気質とか東京との違いとか物凄い分かる。
    そうそう、大阪と東京って両方都会なんだけど、似て否なるだよなぁって・・・
    いやいや、全然似てないのだ笑
    大学時代を大阪で一人暮らしして、就職後に転勤で関東に出て来た私には、共感する所が多すぎる作品だった。

    そして物語の随所に出てくるコテコテの大阪弁でのやり取りがとっても懐かしく響いた。吉本新喜劇のくだりとか、上手いこと表現されてる。
    流石は大阪生まれの瀬尾まいこさん!
    いつも優しく温かな言葉で癒される作品が多いのだが、いや〜やっぱり関西弁喋らせたら完璧なんやろなぁ笑

    性格も見た目もまるで違う兄弟だけど、お互い相手のことを実はしっかり想っている。ラストは心温かく目頭が熱くなった。兄弟を囲む周りの友人やバイト先、戸村飯店の常連さん、可愛い彼女さん達も、みんな大好きになってしまった。

    時として幼い頃の記憶は、本人が思っていた事と、側から思われていた事が相違することも多い。自己表現がまだまだ未熟だからこそ、家族であっても思い違いをしている事はあるだろう。それでも互いを尊重し思いやる気持ちは変わらない。
    本作の主人公ヘイスケとコウスケも同様で、特に兄のヘイスケは周りからのイメージと自身の思いのギャップが大きく、更に傍には単純でノリが良く愛されキャラの弟コウスケがいるため、自分の居場所探しが必要だったんだと思う。
    親元の大阪から東京に出たことで、みえる世界や気付きがヘイスケを成長させたのだから、やっぱり一度は親元を離れるのって大事だよなぁとつくづく感じた。
    きっとこれからも兄弟の絆を少しずつ深めながら逞しく生きていくんだろうと明るい未来が感じられて、優しい気持ちに包まれる作品だった。
    進路に悩める学生さんにもオススメしたい。

    岡野と戸村兄弟の今後も気になるし、ヘイスケの仕事ぶりや、コウスケの大学生活も気になる♪
    これは是非続編も見てみたいと思った。

  • 良かった。二人の友情(?)がいいなー、と思った一冊。

  • 瀬尾まいこさんの小説に出てくる男子というのは、どうしてこう、オバさんの心を射抜くのだろう…。

    全くタイプの違う兄弟で、仲良いわけでもないけれど、2人ともそれぞれ親のことを思い、兄、弟のことを互いに思っている。

    こんな孝行息子に育ったら、言うことありませんわ!
    やっぱり子どもは、自由にさせてあげんといかんですな。
    2021.8.12

  • 大阪の中華料理屋の兄弟の話
    要領が良く大人しめに見えてしまう兄
    アホだけど責任感が強いタイプの弟

    料理屋を継ぐものだと考えている弟
    とにかく騒がしい大阪を離れ東京で暮らす兄の日々が描かれる。

    私にも弟がいるけど、この本で言うと逆で私は弟に似てて、私の弟はこの本では兄に近いかもしれない。

    出てくる人たちが良い人ばかりで、終わりに近づくとちょっと読み終わりたくないなと思ってしまった。
    ちょっとした会話が楽しく、大阪弁も心地よい。
    二人の視点から見てる風景の違い。自分の兄弟にもあるはずで、色々と考えてしまった。万年反抗期のような弟が、久しぶりに実家に帰ってきた時
    「お久しぶりです」とバカ丁寧に挨拶さした時のことを思いだし少し笑う。

    古嶋、良いやつだな…こんな友達欲しい。

  • まさに青春!兄弟(姉妹)間のモヤモヤした気持ち、親への反発、将来やりたいことが決まらない焦り、周囲の友人がまぶしく見える、自己嫌悪、失恋…あぁそんな感情で頭の中がいっぱいの時期もあったなー。瀬尾まいこさんの小説は温かいですね。

    • koalajさん
      ゆうママさん、こんばんは。いつも11時頃には寝てしまうんですが、なんか今日は眠れなくて…「元彼」表紙がかっこよくて気になってましたがまだ読ん...
      ゆうママさん、こんばんは。いつも11時頃には寝てしまうんですが、なんか今日は眠れなくて…「元彼」表紙がかっこよくて気になってましたがまだ読んでません。今ゆうママさんお薦めの「島はぼくらと」佳境に入ってます。私は読むのが遅くて、ゆうママさん程は読んでいませんが、瀬尾まいこ「あと少しもう少し」道尾秀介「透明カメレオン」ローラン「ミッテランの帽子」が面白かったです。また情報交換よろしくです!
      2021/06/17
    • koalajさん
      ゆうママさん、追伸。
      あとこの前レビューを書いた獅子文六「悦ちゃん」はお薦め!三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズもすごく面白いです(...
      ゆうママさん、追伸。
      あとこの前レビューを書いた獅子文六「悦ちゃん」はお薦め!三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズもすごく面白いです(こちらはシリーズ7冊+新シリーズ2冊が出てるから読むのが大変かな?)
      2021/06/17
    • アールグレイさん
      こんにちは、koalajさん!
      昨夜は大変失礼しました!せっかくの就寝中に申し訳ございませんでした!
      koalajさんは、お若い方?ご主人の...
      こんにちは、koalajさん!
      昨夜は大変失礼しました!せっかくの就寝中に申し訳ございませんでした!
      koalajさんは、お若い方?ご主人のいらっしゃる方?もしご主人が怒っていたらお詫びを伝えて下さい
      <m(__)m>
      我が家では、主人が帰るのは9時半頃、それから食事、後片付けが終わると10時半を過ぎます。時々ドラマを見てしまうと11時過ぎです。いつもは早く帰る息子が今日は8時半から9時だそうです。
      そんな事情であの時間は我が家にとって、まだまだ早いと言うことになります。勝手でごめんなさい(^-^;
      本のことを・・・・道尾秀介さんの「透明カメレオン」もしかしたら読んだかも知れません。が、これっぽっちも覚えていないのです!
      情けなァ~ふぇーん読もうと思います。あと少しもう少し、は絶対に読むつもりで本棚に並べてあります。私は駅伝が好きで、三浦しをんさん「風が強く吹いている」これは超いい!駅伝をよく知らない人でも絶対に感動もの。
      島はぼくらと、終わりましたか?衣花の網元の娘という立場に涙する場面がありました。ラストシーンはすごくいい!爽やかで、目に浮かびます。ラストばかり、何度も読みました!koalaさんのレビュー、待っています!
      (^-^)/
      2021/06/17
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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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