永遠のとなり (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2010年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167772024

感想・レビュー・書評

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  • 幼馴染でそれぞれが鬱病とがんを患っている二人の話。幸福感を感じられない二人ですが納得しているのかな。私の周りにも鬱病を発症した人がいましたが基本的に真面目というか物事を真摯に受け止める人が多い気がしました。

  •  主人公「私」は青野精一郎が語り部となっています。
    小説の舞台は福岡市で地元の高校から、現役で早稲田大学の政経学部に進学し、卒業後業界五番手の損害保険会社に就職しました。四十三歳で企画部門の部長に抜擢され、仕事に手応えを感じ始めていた矢先、会社が業界最大手の会社と合併してしまったところから彼の転落人生になります。
     主人公は、かつて部下だった女性と不倫関係に陥ったことがあります。そのことが、後年になって深いダメージを受け、うつ病を発症し、退社とともに離婚もしました。

     小説が書かれている時期は、その後ちょうど一年を経過したところから物語が始まります。主人公は、故郷の福岡に帰り、一人暮らしをしていたのです。

     主人公の親友は、津田敦という人物で、本書では、「あっちゃん」と呼ばれ、同い年の幼なじみです。彼は主人公と同じ高校を出て一橋大学に進み、卒業後は都市銀行に就職、母子家庭で努力家です。

     二十代で独立し、東京・銀座で経営コンサルタント事務所を開業していました。銀行勤務時代に親孝行をしようと思って母親を東京に呼び寄せていたところ、母親は死んでしまいます。そして煙草も吸わないのに肺がんになり、つらい治療に耐えているのです。この世の不合理に怒りさえ抱いてしまう。

     主人公とあっちゃんは、時に対話しながらそれぞれの考えを深めて、再生するという過程が、この物語の特徴ではないかと思います。

     著者の作品を読むのは初めてですが、読みにくい小説ではなく、著者とは世代が同じくらいで、所々含蓄があり腑に落ちて、思索をしていました。

     ※本書より抜粋
    『いつでもどんなことがあっても自分だけは、いまの自分というものを根本的に愛し、認め、許すようにしようと言い聞かせつづけてきた。結局、そうした他愛のない子供じみた自覚だけが、自らの病気を徐々に癒してくれる』
     お薦め作品です
     読書は楽しい。

  • 自分が虚ろな状態が鬱ではないか。未来の病気や過去の男出入りのことへの嫉妬、ましてやいま目の前の人に対して、天涯孤独な下枝を選ぶなど、自分のことばかり欲しがる。すべては己がつくりだした幻で、その幻に苦しめられる。いまだって、本を読んでいなければ、ぼくの中にできた心の隙間に幻が入り込んできて、自分を保てなくなってしまう。本に向き合ういまでさえ、君はどの文で泣き、笑い、励まされたのか思いを馳せてしまう。いつでも、どこでも、その気になれば情報を得られる現代、死を身近に感じることが減り、あきらめきれないことが多すぎる。生きること、死ぬこと、愛すること、愛されること、いつ、どこで、自分もどうなるか分からないなと思った。みんななにかを抱えてる。裏表があるから成長できる。まあ、それでも、ぼくの問題はそんなややこやしかったり、大きなことではなくて、自分のことばかりな幼稚さ。それだけのことなのに、いままで生きてきた癖はなかなか直せない。いまは気づけるようになったので、後悔の連続。それに気づかせてくれたのは、とても有り難い。だから、心からなにか力になりたいとは思う。応援するしかできないけど。現状への不平や不満ばかりを募らせて、いつも性急によりよい自分になろうとし過ぎていた。だからこそ、こうしてずっと厭いつづけてきたかつての自分自身たちから強烈なしっぺ返しを受けている。時が経ち、誰かに相談し、新たな関係性が築かれていくということは、もうもとには戻れない自覚を強めていく。そういうものだとも思う。

    女性は、やさしく、強く、たくましいな。

  • 死を意識したときの人。病んだ心を休ませ、ゆっくりとした回復途上の人。混ざりあったときの、静かな静かな心の交流。

  • 進学と就職で東京に出て、故郷に戻ってきたおじさん友達の話。
    わしと自称すると気が大きくなる、とかそんなことを言う友人をなぜそんなに主人公が親しく思うのか意味不明だった。あっちゃんが主人公に取って魅力的に見えるような描写が少ないせいで、最後の方で主人公があっちゃんをかけがえのない存在のように言ってていたがしっくりこなかった。

    また2人の過去についてももう少し掘ってくれないと2人の人間性全体像がよく見えてこない。

    中途半端な小説に感じてしまいました。

  • あらすじに再生物語とあるのを目にし、読んでみました。
    まさしくその通りで、ゆったりとリアルに物語が進み、少しずつ鬱症状が寛解し、前に進んでいく姿が描かれていました。
    途中のあっちゃんの腹立たしさについての独白とも言える語りがとても印象的でした。

  • 永遠のとなり。
    それは友情であったり、故郷であったり、病であったりだけれど、永遠にとなりにあって決して混じることはないんだろうと思いました。
    個々、という感じ。並び立つと言ってもいいかもしれません。
    それは苦しみでも寂しさでもなく、救いなんだろうな。

    冒頭からせいちゃんとあっちゃんの待ち合わせ場所が香椎浜イオンモールだったのでたいへん動揺し、実家が東区込みのエリアなので(福岡市内ではない)なにもかも土地勘バリバリある中読み進めるという珍しい読書体験でした。
    菓子折り文化もちゃんとある。
    このレベルの流暢な博多弁、喋らない地域の方には読み難いんじゃなかろうかと思ってしまった。語尾同じだけど意味が違うのもいっぱいあるし。
    でもこれやったら音読できる……

    「要するに、わしらは毎日生まれて毎日死によるんよ。明日生まれんのが死ぬていうことやろ」…あっちゃんのこれには、「なるほどですね〜」(方言)と思いました。
    幸福とは、人それぞれの小さな世界との折り合い。ちょっとだけ心が軽くなった、良いお話でした。

  • 読み始めは淡々とストーリーが進んでいて、イマイチかもって思っていたのが、だんだんだんだん何をテーマにしているのかが分かってきて後半は惹き込まれた。
    生と死、病、家族、仕事、友情、そして人生とは、、深かった。
    博多が舞台というのも良かった。
    博多には一度しか行ったことないけど好きな街。
    博多弁も好き。

  • 実は読むの2回目
    最近出た白石氏の新刊を読んでもう一度
    読みたくなり再読。
    鬱病になった主人公と癌を患った親友が
    東京から故郷福岡に戻った日常生活を描いた作品。
    幼馴染むの二人の距離感がなんとも言えず良い。
    この作品の二人と同世代の年齢の私は
    凄く共感出来る部分もあり、
    逆に毎日仕事に追われる身としては
    自分の時間がある主人公を羨ましく思うところもある。
    白石氏の作品の中で1番好きな作品。

    • ギテンさん
      またしばらくしたら読みたくなりそう
      またしばらくしたら読みたくなりそう
      2020/04/05
  • 順風満帆な人生を送ってきた男が部下の自殺により、鬱病を発症し東京から郷里へ帰ってきてからの物語。
    ガンと闘いながら生きる幼馴染みとの交流を描く。
    淡々と香椎で暮らす男たちの日常。
    再生の物語ではあるが、登場する幾人かの女性に寄り添えず、いまいち入り込めなかった。
    今年の11冊目
    2017.11.6

  • 私、この作家さん好きです。
    うつ病ってそうなんだって、実感できる表現。がんを患うとそうなんだって胸に迫る表現。

    あとまだ何冊か購入済み。楽しみ。

  • 二人のまわりで起こることが淡々とした文章で書かれている。白石さんの文章はものすごく綺麗でも流暢でもないが、するする淡々と読めてすっと心に入る。心の中も話す言葉も会話も、普通の人が生活しているうえで感じていても誰かに伝えられない感情を言葉にしていると思う。また白石一文の本を読みたいと感じた。

  • 白石作品の多くはエッジが強い。その文筆の強さがこの作家の魅力でもあるが、その強さは読む者にも大きなエネルギーを必要とする。

    本作は従来の作品に比べると穏やかである。社会と欲望との責めぎ合いが薄く、登場する人物も穏やかであり流れる時間も緩やかである。

    しかし、物語の中心となる二人には抗うことから逃れられない病気が側にいる。彼らは病気と向き合いながら自分自身と向き合う。来し方行く末を案じる。

    人生は生きているだけで価値があるというのはとても納得できる。誰かの死を通じてでしか自分の死と生を感じることはできないかもしれない。だからこそ焦らずにゆっくりと歩こうとするこの作品には鋭さよりも厚さがある。

    圧倒的な強さを持った白石節を期待すると少し物足りないかもしれないが、他の作品を知っているからこそ、本作の魅力がより味わえるということでもある。

  • 最後まで読めずに断念。イマイチストーリーがすっと入ってこなかった。自分に合わなかったのかも。

  • 再読の必要性・・・筆者作品の中で「中」
    うつ病文学といえる。
    ざっと早読みした。

  • f.2024/8/3 (2024-62)
    p.2010/3/11

  • ふたりの関係はなんだか良いなあ。福岡はいいところだよなあ。




    私は、私という人間のことが本当に嫌いだったのである。
    そう気づいた瞬間、何だそうだったのか、とすべてが了解できる気がした。
    四十七年間もの長きにわたって嫌いな人間と一緒に生きてくれば、誰だって心に陰鬱な翳りを生じさせてしまうのはむしろ、当然ではないか。

  • うつ病になって故郷に戻って来たせいちゃんと
    癌を患って再発の心配をしながら生きているあっちゃん。

  • 40代後半でうつ病を発症し離婚して生まれ故郷の福岡に戻った主人公。肺がんを患っている親友との交流を通して自分の人生を見つめ直す。

    お互いにしんどい状況になった時に支え合える相手がいるのは非常にうらやましい。若干の厄介ごとに巻き込まれながらもお互いにより良い人生を歩もうと助け合える友人を持つことは歳をとっていくに当たって非常に大事なことだと思う、ら
    しかしながら、主人公は過去に女性問題をおこしており、親友は3回の離婚と再婚をしてさらに不倫中。両者とも罪悪感はゼロ、
    不倫を扱った小説は多いが、主人公のほうの女性問題は設定としてなくても良かったのではないかと。もっと反省しろと思ってしまう。

  • うつ病になったせいちゃんが故郷に戻って人生を振り返って今感じることを語っている。冒頭から中盤まではいまいち分からないことだらけで読みすすめるがしんどかった…福岡の地理や方言に馴染みがあったりすればまた違うのだろうけど。
    家族も仕事も失って故郷の幼なじみだけがよりどころになっている、独り身で身軽になったと思ったら息子からは学費の催促だけは届く…

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著者プロフィール

白石 一文(しらいし・かずふみ):1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第22回山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で第一四二回直木賞を受賞。著書に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『草にすわる』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『翼』『火口のふたり』『記憶の渚にて』『光のない海』『一億円のさようなら』『プラスチックの祈り』『ファウンテンブルーの魔人たち』『我が産声を聞きに』『道』『松雪先生は空を飛んだ』『投身』『かさなりあう人へ』『Timer 世界の秘密と光の見つけ方』等多数。

「2024年 『代替伴侶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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