- Amazon.co.jp ・本 (646ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167773083
作品紹介・あらすじ
口喧嘩無敗を誇り、いじめた相手には得意の火計(放火)で恨みを晴らす-なんともイヤな子供だった諸葛孔明。奇怪な衣装に身を包み、宇宙の神秘を滔々と説いて人を煙に巻くアブナイ男に、どうしてあの劉備玄徳がわざわざ「三顧の礼」を尽くしたのか?新解釈にあふれ無類に面白い酒見版「三国志」待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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吉川英治は三国志の後書きで「鬼才奇才と演義は言うけれど、孔明は偉大なる平凡人ではなかったか」と語っている。
後世の小説や映画などに登場する、とことん真っ直ぐで正直で正義の塊のような人物は、そのあまりにも浮世離れした「白さ」によって周りから怪訝な眼に晒されるという演出を施される事が多い。その元祖は三国志の諸葛亮孔明にあるのではないかとも思う。
本作の孔明も偏屈で計算高くて変わり者として描かれていて(劉備やその配下も概ねそうだ)歴史の本流に突然現れて二十数年で表舞台から消えた謎の多い人物の、謎の部分を皮肉と笑いに替えて描いている。
親近感の湧く描写になっていて、孔明の周囲の人々…姉や弟や舅や師匠などとのやり取りも、一風変わっていて面白い。
ただ、ひとつ残念なのが
孔明出廬から長板玻での張飛と趙雲の活躍、孔明の呉での大論陣、周瑜との駆け引きや赤壁の大戦に至るこの辺りの流れは三国志演義全体のクライマックスと言ってもいいし、個人的に好きなシーンの連続なので2巻以降、少し引き締めた調子で描いて欲しいなぁと思ったりはする。 -
吉川三国志、柴練三国志、北方三国志と読んできた。さてさて、酒見さんのはどんなんかなと読み始めたが、ちょっとびっくり。
予想の斜め上をいっています。
講談調なのにまずビックリ。でもこれって、水滸伝もそうであるように、三国志演義も元々はこうなのかも。
それぞれの人物造形も現代だと、こうなんだろうなと妙に納得します。
想像した感じとは違っていたが先が楽しみ。 -
ものすっごく笑った! 笑った! 出てくる登場人物がみーんな変(笑)
でも、それを補う作者の三国志愛が感じられるから嫌みじゃないんですね。
さりげなく(いや、堂々とだな)書きこまれる作者のボケ突っ込みに、諸星大二郎さんの『西遊妖猿伝』の講釈師の姿を見た!!
まぁ、別な作品の挿絵書かれてますもんね。続きが楽しみ~♪ -
抱腹絶倒三国志!?って聞いたけど、抱腹絶倒はしなかった。
くすっとなったり、にやっとなったりはしたけど。
だいたい、普通の三国志によくある聖人君主然とした劉備がいやだったりする。曹操が悪で、劉備が善で・・・って、そんな単純なわけないやろ。
だから、あの蒼天航路の劉備を見た時は胸がすくようだった。
ひょっとしたら、こっちの方が実像に近いのかも・・・と思ったりした。
そんなわけで、この本に出てくる劉備三兄弟、そして諸葛孔明も、ひょっとしたら、こんなんだったのかも・・・と思わせてくれて、結構、好きだ。(この平和な世の中で、こんな人がそばにいたら、好きと思えるかどうかは置いといて)
無茶苦茶なくせに、なぜか憎めない。
勧善懲悪が大好きな講談とかが作り出したもんを剥ぎ取って、そこにある姿を想像してみるのは、なかなか楽しい。
もともと、三国志って、歴史上の人物に、どんな人だったんやろ、こうだったらいいなぁ、楽しいなぁって思いを(ちょっぴり)足して出来上がったもの。
だから、物語を作る人の思い(やその人の生きた時代の匂い)で、少しずつ、登場人物像も変化する。
こんな呂布がいてもいいんじゃないの、孫策はもっとかっこよかったはずだ、いくらなんでもこの曹操はなしだ・・・。
そして、そういう違いとかブレを楽しんだりもする。
そういう楽しみ方は、再演を繰り返してるお芝居を見る時にも似てるかな。
役者さんが変われば、印象も変わる。
演出家の指示で、衣装やセットが違うだけでも、違う作品になる。
ましてや、脚本家が台本を手直しをしたら、まるで違う世界が見えてきたりする。
お芝居でなくても、物語の脇役があんまり魅力的だから、スピン・オフやら番外編やらができたりする。
同人誌なんかで、物語のキャラがいろんな姿で登場したり、物語を読むだけだった人がいきなりコスプレを始めたりする。
しまいには、なせだか戦艦が女の子になってたりまでする(いや、これは違う。でも、関羽が女の子になったりする)。・・・。
携わる人が増えるたび、物語群のように育っていったりする。
ともあれ、ひとつの物語からブレを作り出して、それを楽しみ、その中で遊ぶのって、意外に普遍的なものなのかも。
要するに、この本は、結構、お気に入りだったりする。
ホウ徳(ホウ統のおじさんらしい)が劉備に、軍司とは、と語るとこなど、なかなかの名場面。 -
-歴史とは解釈の賜物だ!-
三国志はこれまで複数の著者の作品を読んできた。それなりの知識を有している自信はあったし、本筋は理解しているつもりである。それでも本作を通じて新しい発見があった。
それは一言で表すと歴史とは解釈の賜物なのだ、という当たり前だけれど忘れがちの事実である。正確な歴史なんてものはないのだ。歴史はどうしても書き表す人の思想や哲学から逃れることはできない。資料の狭間狭間を埋めるものは想像力であり、希望であり、悪意なのかもしれない。
本書においては、これまでとは一味違ったスパイスを加えられ、劉備三兄弟や孔明が描かれている。この本を読むとこれまで吉川三国志や陳舜臣三国志や横山三国志に親しんできた方は新鮮な感想を抱くだろうし、人によっては不快感を覚えるかもしれない。しかし、そういう論争やざわつきを生み出すことができたなら著者にとっては大成功と言えるだろう。
単行本版だと一冊500ページ弱という分量でありつつも、なかなか物語は進まず非常にじれったい。少し蛇足が多いというか冗長なところがあるので、星はひとつだけ減らした。
しかし、歴史とは解釈の賜物という改めての訓戒を与えてくれたのと、三国志のしらざる世界をもっと知りたいというモチベーションを与えてくれたので概ね満足できる一冊だ -
【読了メモ】諸葛均を保護したくなる三国志No.1です。
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題名通り諸葛孔明が主人公の三国志演義準拠作品
泣き虫弱虫というより奇人変人というべき
吉川三国志から見れば驚きの内容かもだが
『蒼天航路』以降の現在だと普通
場面ごとの描写は楽しいが
かといって長く詳しければより良いというものでもない -
真面目な孔明本かと思ったらそんなことなかった
そして長い。1巻でやっと三顧の礼までたどり着いた
小説とエッセイの混ざりもののような感じで、笑い要素が強いかな