街場のアメリカ論 (文春文庫)

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レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773687

感想・レビュー・書評

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  • フランス思想(!?,間違っていたらごめんなさい)がご専門の内田先生によるアメリカ論.日本辺境論でもそうだったが,独特の視点でアメリカを論じていていて興味深い.特に前半は面白く読ませていただいた.

  • 弱者ゆえの気楽さと強者の陥りやすい落し穴《赤松正雄の読書録ブログ》

     またまた、内田樹さんを読んだ。今度は『街場のアメリカ論』。いやはや面白かった。実は、先日、新学而会という学者と政治家との勉強会があり、その場で内田さんとの出会いについて持ち出し、合気道や天風会のことに触れた。東大社会学研究室のS教授が「あの人が書かれるものはあまり評価しませんが」と言われた。まあ、街場での人気と象牙の塔の住人との受け止め方には落差があるのは仕方なかろう。

     日米関係の系譜を出発点に、ファーストフード、アメリカンコミック、統治システム、児童虐待、訴訟社会など10ものパーツを取り上げて、縦横無尽に語りつくす。これ一冊で今のアメリカ社会の概要が分かる。いや、分かった気になる。ご本人は、渡米経験は僅かに二回、しかも観光旅行と言われるから、考える淵源は映画や文学にあると見る。その証拠に随所に映画や本からの引用が。それにしてもこの人の「市井の人たちの生活実感を通過させて説得力のある言説を展開したかった」との狙いは成功していよう。

     「歴史について他人の意見をそのまま鵜呑みにするというのは、知性の活動を放棄するということに等しい」「原因と結果について自前でオリジナルな説明をひとつ作り出すことだけが、仕事」と言い切る小気味良さ。要するに、「原因という言葉を人が使うのは原因がよく分からないときだけだ」と。自分の頭で考えることの大事さについて、「分からないことを経験してほとほと困ることが必要なんです」などと言った言い回しは身につまされる。

     日本を困った状態に陥らせて、その結果としてアメリカに依存せざるをえなくするというのがアメリカ一流の戦略であり、アメリカに従属させられていながら自立を唱えて有事法制化を進めており、論理的に矛盾しているのに、それを気に止めず、自縄自縛に陥りながら、弱者ゆえの気楽さでのほほんと生きている、と。当事者の一人としてまことに手厳しいと唸らざるをえぬ。アメリカの呪いに、囚われの身となっているとのアメリカ論から透かしてみえる日本論は、現代日本の政治家として正視に堪えない。もっとも第一義的には、アメリカという強者のはまりやすい落とし穴もみえ、役に立つことうけあいではある。

  • アメリカ社会の問題点の根幹がよく分かった。
    今後の日米関係を考察する上でも、念頭におきたい事象にあふれていた。
    満足度9

  •  街やメディアにあふれる情報から、アメリカの深層心理を探り出す刺激的な本です。どの章を読んでも、漠然と感じていた理由をクッキリと描き出してくれる。扱う内容は、スローフードとファシズム、アメコミ・ヒーローが象徴するもの、アメリカの統治システム=「多数の愚者による支配」=建国時の理念をより維持できるシステム、アメリカが対外戦争を好む理由〜内的戦争による没落、子供嫌いの文化、連続殺人〜「子供嫌い」と「うちのママは世界一」の間、身体と性〜メッセージとしての下層階級の肥満、福音主義〜「人民の人民による・・」宣言は「under God」、訴訟社会〜「他責」が政治的に正しい国、等々。著者は、170年前のフランス人・トクヴィルを意識し、いくら変わっても変わらないアメリカ人論を書くことを目指しています。それによって、日本人が無意識的にアメリカに対してとる心的態度を意識することを問いかけています。

  • とっても読みやすかった。

    それもそのはず、この本の読者の対象はトクビルだから。
    トクビルが読んでも理解できるように書いたそうです。

    こういうところが、内田さんらしくて好きです。
    このような考えで自らの著書を書いている人は
    トクビルと内田さん以外にいるのでしょうか。

    アメリカについて一から学習したい方にとって
    とてもお薦めの一冊です^^

  • 「アメリカという国の構造」と「日本がアメリカをどうみるか」について論じてある。
    「アメリカという国の構造」については、歴史的背景や宗教に基づくアメリカ人の考え方をベースに語ってあるので、全体像が掴める。
    興味深いのが、アメリカは理想国家として既に存在しているというところからはじまったということ。ということは最初が100で後は下がっていくしかないということになると思うのだけど、確かに現在のアメリカはそんな状況になってきてる。そんな落ちていくアメリカなしに国のあり方について語れない日本はどーすればいいのか?
    それを考えるために筆者が提案しているのが、アメリカという国をまっすぐに見つめるということ。日本は戦争経験からアメリカと言う国だけをまっすぐに見れていない。自らよりも大きくて然るべき国と思っているから、アメリカという国を理解できなくても当然だと思っている。
    そんな日本人のアメリカ観をぶちのめすために、現在の日本がアメリカをどうみているか、どのような見方をするべきなのかを考えさせてくれます。

    筆者の専門がフランス文学というところも私のおススメポイントです。
    アメリカの専門家にはできない視点から読みやすく楽しく語ってくれるのがいいです。
    内田先生みたいに、専門外領域についても、専門を活かして積極的に論を展開してくれる学者さんがいると、文学部がもうちょっと盛り上がるんじゃないかなあって思います。

  • 内田樹の街場のアメリカ論を読みました。現在の日本はアメリカの大きな影響下にあるので、現在の日本を考えるためにはアメリカについて考える必要がある。そのために素人の立場からアメリカ論を書いてみよう、というエッセイでした。歴史を振り返るときに、歴史の転換点でなぜこうなったのか、という視点だけでなく、他の可能性もあったのに、なぜそれらの可能性は実現しなかったのか、という視点でも考えてみようという質問の立て方で議論されています。アメリカの影響下にあって、日本人が利益を得ている部分は大きいけれど、アメリカ自体でも問題が顕在化しているような事柄まで取り込んでしまう傾向があるのはいかがなものか、と感じました。例えば、訴訟社会(自分の権利だけを声高に主張する社会)、子供嫌いの文化、自分の体の感覚ではなく理念が先になる文化、格差社会、などなど日本人の資質として残したいもの(これは一人一人の考え方で違いはあるんだろうけど)を残していきたいものだなあ、と思いました。

  • アメリカの北朝鮮問題や沖縄軍事基地・靖国参拝に対する行動が納得できた。最近の日本を見ていると、アメリカや中国との関係はこのままどちらかが崩壊するまでずるずる行ってしまうんではないか、内田先生がおっしゃる最悪な事態になってしまうのではと感じた。子どもに対する意識の文化の違いやアメコミ、フェミニズム、連続殺人、訴訟などについても興味深かった。もう一度読みたい。

  • 第一章の、歴史学と系譜学〜日米関係の歴史の読み解き方が面白い。それ以降もファストフード、アメコミ、統治システム、戦争、シリアルキラーなどのキーワードから、アメリカとは?を新しい切り口で見せてくれる。氏のアメリカ民主主義理解のベースとなっているトクヴィルは必読。さっそく探してみよう。

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著者プロフィール

うちだ・たつる 1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)。道場兼能舞台兼私塾「凱風館」館長。神戸女学院大学名誉教授。翻訳家。専門はフランス現代思想史。東京大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ブログ『内田樹の研究室』。



「2019年 『そのうちなんとかなるだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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