ぼくらは海へ (文春文庫 な 63-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773694

作品紹介・あらすじ

船作りを思い立った5人の少年。それぞれ複雑な家庭の事情を抱えながらも、冒険への高揚が彼らを駆り立てる。やがて新たな仲間も加わるが-。発表当時、そのラストが多くの子どもの心を揺さぶった巨匠・那須正幹の衝撃作。30年の時を経て文庫版で登場です。

感想・レビュー・書評

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  • 今年に入り、ややダーティな那須作品をいくつか読んだが、この作品が一番凄かった。
    素晴らしいと思った。
    鬱屈した少年たちの、それぞれの心の動きがリアル。
    狭い学校、教室、プール、塾と、それらの世界から解き放たれた、埋め立て地とそこでの船造り、少年たちの微妙な力関係など、家庭の事情や、それぞれの性格エピソードを丁寧に描き、一人一人が、まさにそこに生きている人間のように見えた。
    海へ、船へ、という巨大な動きのエネルギーに、取り憑かれた子も、やや距離を持って見ている子も、何度も飽きたりした子も、それぞれが自分のゴールに向かって全力で走り行くラストに、(展開は苦々しいにも関わらず)私はどこか救われた想いもした。

    それぞれの子について
    さとし、那須キャラらしい主人公。やや影があるが、そつ無く何でもこなしそう。まさくんと仲良しなのがいい。

    まさとし、モーちゃんで、この作品の良心。良くも悪くも、彼の狡さ、動かなさにホッとする。読者の代わり。

    いさむ、陽気な流れ者。こういう人、好きだよ。彼は何も知らずに去っていったのだろうか。子供時代の人間関係のドライさもまたリアル。

    しろう、ヒロイン(ちがいます)。泣ける。泣けるんだよ。胸が痛い。守ってあげたい。この舞台である80年代にはこんな家庭がまだあったし、たぶん今もある。

    やすひこ、出来杉くん。この子の学力は学校内だけのものなの??塾の力関係と、学校の学力の違いがよくわかんなーい。

    しげお。ジャイアン。

    くにとし。大人。真性ヒロイン(ちがいます)
    彼で〆る展開に胸があつくなった。
    そうだよ、ダイナマイトだよ。

    那州雪絵さんの短編マンガ「冒険者たち」を思い出した。
    子供だけの漂流に失敗して、戻ってきた男女が高校生になったときの話。
    あれもいいです。
    作者はナス違いだけど、ここにメモしておく。

  • 子どもは形が小さいだけの大人。
    教育関連の仕事をしていて、こういうふうなことを語れる人を私は尊敬しており。子どもだって、毎日いやなこともありうれしいこともあり、悩んだり苦しんだり、じょうずにごまかしたりしながらやり過ごすこともあり、いろんな理不尽や矛盾や闇や毒にまみれながら、生きている。

    たいていの児童書は、そこを端的に描いて、でも希望があるよ、がんばろうよ!乗り越えたからでこその今だね!笑顔がいいね!なんてなことを書いて終わる。でもこの本はちがう。煮え切らないものを抱えながら言葉や態度にできないもどかしさ、人のもつ、汚い汚い部分に気づいたときの恐ろしさ。そんなものを大人のそれと共に丁寧に描き、最後まで、希望は描かない。あとは自分で考えろ、だ。

    読み終わった直後は、なんでこんなものを、那須さんの文庫なんて珍しい!なんてノリだけでブックオフにて買ってしまったんだろう、となんともいえない苦い気持ちになったけど、あさのあつこさんの解説が秀逸で救われた。感じたことが言葉になってて、涙しながら読んだ。

    那須正幹といえば「ズッコケ三人組」シリーズだけど、あれだって、すごくリアルな少年を描いているからこそのベストセラーだ。

    ときどき、那須さんのダークな児童書に出会う。『そうじ当番』はいまも家にある低学年向けの、毒ある児童書だ。

    子どものリアルが、ここにもあった。

    そして大事なこと。文章が美しい。

  • 男の子の心情がよく解かったような気になれる一冊。[more] けど、山場らしい山場はどこだったのかと首を傾げてしまった。それに児童文学とは思えないショックな結末で胸苦しい。

  • 好きなお話。
    でも、作者は何故このお話を書くエネルギーがあったのだろう

  • ズッコケシリーズ大好きだったのに。

    思考が共感できたり、できなかったりギャップが激しいし、最後はファンタジーかのようだし。

  • スタンドバイミーで、リバーフェニックスが心情を吐露するシーンを思い出した。
    闊達な子たちであってもその家庭環境にはいろいろある。おとなに見える世界と子どもに見える世界は違う。そんなことを思い起こさせてくれる。

  • ぼくらは海へ(文春文庫)
    著作者:那須正幹
    発行者:文藝春秋
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeli/users/collabo39698
    発表当初、そのラストシーンが多くの子供の心を揺さぶった巨匠。
    少年時代の友情、希望、夢現実が詰まった衝撃作。

  • 小学生の大人への気持ちが痛いほどわかる、思い出した本。

  • 生まれた年代が微妙に主人公とかぶる

    子供のころ秘密基地や自分たちで大人に内緒で何か作ったり、

    あのころのドキドキ感を思い出させてくれる1冊

    約30年前の作品、自分の中にストンと落ちた・・

  • 久々の星5つ本。『君たちはどう生きるか』みたいにぐさっとくる本。読み進めると止まらなくなって、終わり方が衝撃的過ぎて思わず「まじか」とつぶやいてしまう。

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著者プロフィール

那須正幹(なすまさもと):広島県生まれ。児童書の大ベストセラー「ズッコケ三人組」シリーズ全50巻(日本児童文学者協会賞特別賞・ポプラ社)をはじめ、200冊以上の本を執筆。主な作品に『絵で読む 広島の原爆』(産経児童出版文化賞・福音館書店)『ズッコケ三人組のバック・トゥ・ザ・フューチャー』(野間児童文芸賞・ポプラ社)など。JXTG児童文化賞、巖谷小波文芸賞など受賞多数。

「2021年 『めいたんていサムくんと なぞの地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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