黒い悪魔 (文春文庫 さ 51-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (553ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773892

感想・レビュー・書評

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  • さすがの佐藤賢一、と唸るばかりだ。
    筆運びの卓抜さときたら、まったく尋常じゃない。
    いきなりの「三銃士」のオマージュにニヤリとさせられ、そこから先はトマ・アレクサンドル・デュマの豪放かつ数奇な運命に、読んでいるこちらも呑み込まれていくかのよう。
    常人離れした肉体の強靭さに恵まれながらも、その精神面はともすれば虚弱とも表現することができ、いかにもといった人間臭さを感じさせる主人公の描写が巧みだ。
    そしてあくまでも実在の人物をモデルにしているという節制が作用しているのか、人種差別に象徴される普遍的かつ文学的な課題を作中に盛り込んではいるものの、ゆき過ぎず抑えられているバランス加減も絶妙である。
    読者に思索を促すことはするけれども、その本分はエンターテインメント面にあると言わんばかりに。

    作品のタイプはまったく異なれど、皆川博子氏が書くクロニクルに通じる魅力がある。

  • 文豪デュマの父親、アルクサンドル・デュマの話。
    黒人と白人のハーフで奴隷から将軍になった。

    唯我独尊なキャラクターが面白く、良かった。

  • 2010-08-00

  • 「三銃士」を書いたデュマの父親の話。

    そもそも三銃士も読んでないし、作家の本の中でおもしろそうだなと全く知識もなく読んだけど、1人の激情家の話として楽しめた。

  • 他に比べて元気さというか、はちゃめちゃさというかが少ない気が。あと、いかにも、な、男のヒトが喜びそうな表現とかも。
    デュマを描くにあたって、文豪の父から始めるところがいい。その英雄ぶりが文豪の冒険小説の登場人物を彷彿とさせる。内面が完璧な英雄でないところも読ませる。
    とはいえ、血湧き肉踊る、あの怒濤のような勢いがない・・・。ちと、残念。

  • アレクサンドル・デュマの父の話。

    この物語で良くも悪くも家族、とくに息子にとっては父の(娘にとっては母の)影響は計り知れないとわかる。
    そして、過去の境遇なども、その後の人生に大きく影響を与える。
    その影響からくる決断は、その人の人生にとってもちろん過大な影響を与える。
    小さな決断、大きな決断。
    そんな当たり前といっては当たり前のことがよくわかる。

    この物語の主人公は、カリブで生まれた黒人と白人の混血であり、また時代が時代であるから、相当に複雑な境遇であったゆえに、彼の思考は常に川に浮かぶ小船のごとくユラユラしていて、まさに波乱万丈を呼び寄せる。

    傲慢で傍若無人かと思えば、非常に繊細で、クヨクヨしたり、面倒くさい男なのですが、彼の奥様がそうであったように、魅力的である面も少なくなくダメだな~と思いつつ、ついつい応援して読み終えてしまった。
    近くにいたら、彼の副官のごとく胃が痛くなる思いをすることになるだろうけど。
    アンシャンレジームやナポレオンが活躍した時代に彼がいたことを知れてよかったです。


    発売当時に新聞の書評で見て暖めていたシリーズ。ようやく読みました。
    現在Eテレ「100分で名著」でも取り上げられ
    3月からは宝塚で「モンテクリスト伯」が上演されるし、良いタイミングといえばそうかも?

  • 時代背景はフランス革命からナポレオンが台頭する頃あたり、植民地のコーヒー農園で働く黒人奴隷が「黒い悪魔」と恐れられる将軍にまでのし上がる、立身出世の痛快劇です。
    主人公は、『三銃士』や『モンテクリスト伯』で知られる文豪デュマの父親です。
    黒人奴隷出身ゆえの劣等感からか「共和制」に理想を求め、強靭な肉体と美貌を武器に動乱期のフランスを駆け抜けていきます。
    デュマ家三部作の第一部で、『褐色の文豪』『象牙色の賢者』へと続いていきます。
    http://ameblo.jp/happybookreviews/entry-11258989854.html

  • デュマ将軍がナポレオンに認められた時、不覚にも涙出た。

  • アレクサンドル・デュマで、『厳窟王』や『椿姫』を連想しながら読み始めたら、お父さんの方のデュマでした。3代続けて同じ名前で(初代はトマ=アレクサンドル・デュマ)、2代目(大デュマ)が『厳窟王』『三銃士』、3代目(小デュマ)が『椿姫』を書いた人なんだそうです。
    『黒い悪魔』は3部作の初巻で、現在のハイチで黒人奴隷として過ごし、青年期にフランスに渡って軍人となり、フランス革命やナポレオン戦争を経験した初代の物語です。奴隷に戻りたくない、自由でありたいという強い思いを生涯持ち続けた美丈夫のお話をかなりわくわくしながら読んだので、この後、大デュマ、小デュマとストーリーがつながっていくのだと思うと楽しみです。(ちなみに2巻目は『褐色の文豪』、3巻目は『象牙色の賢者』というタイトル)

  • 「三銃士」「モンテ・クリスト伯」で知られる文豪デュマの父トマ・アレクサンドル・デュマを主人公にした小説です。
    時代はフランス革命の前後。貴族と奴隷とのあいだに生まれたトマが並外れた肉体を武器にのし上がっていくさまが描かれています。が、ただのサクセス・ストーリーではありません。
    それどころか人が隠し持っている複雑で嫌らしい内面を、執拗に露にする心理描写にうんざりさせられるかもしれません。
    それでも最後には、彼はただひたすら愚直だっただけなのかも…と思えるのですが。
    それともうひとつ、この時代がかった文体は慣れるまで読みづらいかもしれません。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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